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パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
2020.07.28
『小麦ちゃんマジカルて』から5号機の技術革新は始まった!
「そこ来たか!」思わず画面を見てニヤリとしてしまいました。岡井モノさんのJPS全機種レビューです。私のコラムを読んでくださる方は、絶対に面白いと思います。その文中にこんな一節がございました。
JPSの歴史は発明の歴史とも言えるのですが、特に初期は画期的なものが多く業界にも多大な影響を与えたと思われます。このあたりは佐々木真さんがとんでもない熱量で朝の5時まで小麦ちゃんを語ったりするので、私が書くのもちょっと怖いのですが、改めて主だったものを解説していきましょう。
みなさま朝の5時までスケジュールは空いているでしょうか。嘘です。流石にそこまでは長くなりません(笑) 画期的な機種でいろいろやっていますが、楽しむ要素はギュッと絞られていたのです。ちょっとしたポイントを理解するだけで何倍も楽しめる。そんな機種になっていました。なので、解説はコンパクトに。
唯一(?)残っていたニューオオネさんの台も、昨年末にその役目を終えてしまって、もう打てませんしね。そんな古い機種はまだ打っていなかったから分からない。そんな方も、エッセンスだけ理解してくださると嬉しいです。
現在のパチスロは内部的に難しいことをやって作っていますが、それは階段を一段ずつ登ってできあがったもの。いわば応用編です。応用編を理解するにはまず基礎から。そんな基礎にあたる機種が、この『ナースウウィッチ小麦ちゃんマジカルて』なのです。
▲『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』(JPS:2006年2月)
最後の“て”が平仮名なのはタイプミスではございません。原作のアニメがこのタイトルなのです。「ソウルテイカー(The Soul Taker〜魂狩〜)」からのスピンオフ作品で、魔女っ子アニメのパロディとなっています。ナースウィッチだけに“マジカル”と“カルテ”を合わせたんでしょうね。アニメには疎いので、平仮名にした理由までは分かりませんけど。
そんなわけでございまして。レッツビギンでございます! ←この台詞から始まる対決演出で当たった記憶があまりない(笑)
★4号機と同時期に見せた5号機の未来
『小麦ちゃん』が導入された2006年2月は、まだまだ多くのスロッターが5号機時代を感じる前のことでした。4号機以前で検定の切れた古い台が全撤去されたのは2006年6月。まだまだ4号機が残っているどころか、新たな4号機も導入されている時期でした。そんな中で、5号機はどのような輝きを見せられるのか。
2005年7月に、パチンコの設備でパチスロを楽しめる“パロット”として『CRP花月伝説』が。9月には初のパチスロとして『新世紀エヴァンゲリオン』が登場してきました。そこから徐々に機種数は増えていきますが、枚数が固定されたボーナスとゲーム数を固定されたRTばかりとなっていました。
それはそれで面白い機種もありましたが、そればかりでは物足りない。そんなところに登場したのが、新規参入メーカー(当時)のJPSが開発した『小麦ちゃん』です。
その発表会では面食らいましたよ。よくメーカーの発表会が開催される総合宴会場でしたが、入った瞬間にメイドさんの「お帰りなさい、ご主人さま」という声。こういう枝葉にお金をかける機種は得てしてコケる。しかも、新規参入メーカーだし……。って、打ってみたら面白いのなんの。むっちゃ硬派じゃないの!
★ボーナス中の技術介入の元祖
まだ、機種の概略も書いていませんでしたね。ボーナスは、赤7揃いのBIG(最大288枚純増)と青7揃いの2種BB(第二種特別役物・MB)の2種類。両ボーナス後は最大60G継続するRTに必ず突入します。同時当選に期待できる小役は、チェリー(確定)・スイカ・チャンス目。ボーナス成立後はリプレイ確率がアップしてコインロスを和らげてくれます。以上です。
文字だけでは、そこまでに出てきた5号機と大差ないように思えますが、中身が大きく違いました。
BIGはレア小役をハズすか揃えるかで出玉が増減する仕様となっていましたが、2種BBがまったく違ったのです。特定小役を狙って入賞させることによって、純増枚数を増やすことができる。通常時などの小役狙いは普通にありましたが、5号機の技術介入の元祖と言っても差し支えないでしょう。
※成功すると祝福カットインも出ますが、そんなん個人では撮影困難(笑)
獲得するのは、中段チェリー1回とスイカを1回。どちらもビタ押しが必要です。普通にベルのみで終了させると純増180枚でしたが、これにより188枚へと8枚アップさせることができます。いまでは役構成の妙などでBIGでも枚数アップ打法はあるように当たり前のことですが、それも『小麦ちゃん』が扉を開いてくれたのです。
実は、ちょっとした狙いもあったと思うんです。目押し自慢に打って欲しかったのかな。それ以外の部分もかなり硬派なので。筐体や演出に似つかわしくなく。
★“リプパン方式”の元祖
▲ひっそり告知、しっかり説明。
ボーナス終了後のRTは、60Gありますが体感ではまあまあ減ります(笑) ですが、ベースが高い状態でボーナスを待てる効果は大きかったです。5号機初期は減るRTに対する風当たりは強かったですけどね。そんな微妙なものなので、RT中もひっそりと背景にモアイ像が出てくるのみ。静かでした。そして、その静けさの中に醍醐味が詰まっていたのです。
右の写真は、筐体に貼られたシール。「必要なものは剥がれてしまうこともあるシールでなく筐体に印刷しなさい」ということで、いまではすっかり見なくなってしまいましたね。
そこに書かれているのは「RT中、目押しが苦手な人は逆押し!!」ということ。レバーONで「ムギーッ」という予告が発生すると1枚役の可能性が高いです。このときに順押ししてしまうと、チャンス目が出現してしまうことがあります(出現しないこともあります)。出てしまってはマズいのです。
▲左:チャンス目、右:1枚役入賞
チャンス目が出現すると2GのプチRTに突入します。ボーナス後のRTが50G残っていたとしても2Gに書き換えてしまいます。それを避けるために逆押しをさせてチャンス目を出さないよう打つ必要がありました。
ボーナス後契機のRTは、ほかのRT契機となる出目となったら必ず書き換えなくてはならない。いまでは当たり前のように解説していますが、それに初めて出会ったのが『小麦ちゃん』でした。そして、これこそがリプパン方式の元祖。RTがパンクしてしまう方式、延命手順が必要な方式ということですね。
これを応用したのが『スパイダーマン2』であり『リングにかけろ1』ということになります。サミー系も『小麦ちゃん』直後の4月には『ボンバーマンビクトリー』で実現していましたけどね。ユーザー的に最初の衝撃は、この『小麦ちゃん』でした。
写真左にあるチャンス目の説明は筐体写真の役構成です。さすがに右の1枚役成立時にチャンス目が出るとまでは書かれていませんが、2GのRTに入ることまで表記されています。最近は役構成を非表示にする流れとなっていますが、ヒントをちゃんと与えてくれれば、プレイヤー自身で理解を深めたり楽しみを増幅させる打ち方を模索する好例かもしれません。
★逆押しはボーナス後だけではない!
▲チャンス目は通常時契機のゲーム数固定RT。右は当時のリール制御ならではの同時当選確定目。
気付かされたのは、ボーナス後契機のRTの書き換えだけではありませんでした。チャンス目が出てから2G目に再びチャンス目が出現した場合です。2回目のチャンス目から再び2GのRTに入ることがなかったんです。これにより、通常時の出目契機のゲーム数固定RTは、途中でRT契機出目が出ても書き換えない。ということも分かりました。この機種と出会っていなかったと思うとゾッとします。
ということは。チャンス目後2Gの消化方法が変わるんです。普通の状態であれば、1枚を捨ててもRTのリプレイとして帰ってくる分のほうがお得なので順押し。しかし、既にRTに入っているならば1枚を取ったほうがお得。この2Gだけはボーナス後と同様に逆押ししたほうが理にかなっているんですね。また、逆押しのほうがボーナスの成立も気が付きやすい効果がありました。
ところどころ、サッと逆押しする。上手そうに見えません? そんな優越感を得られる効果もありました(笑)
右の写真は『小麦ちゃん』でもっとも好きな1確目です。この当時は、小役よりもボーナスを優先するリール制御しか認められていませんでした。ボーナスも成立小役も無理矢理同じ枠内に留めたい。そんなチカラが働いた出目です。
通常の逆押しだとスイカは中段に停止します。青7の上にもスイカはあるので、ズルンとスベってきます。しかし、この位置に止まったということは……。そう、スイカと青7(2種BB)の同時当選です。
スイカ濃厚演出もありましたが、チャンス目の後のRT中も逆押しできると知っていれば、この停止形を拝む回数も増えるわけでして。ただ、その前のチャンス目で当たったのか、このスイカで当たったかは分かりません。同時当選のリール制御は、ボーナス成立ゲームに限った話ではないですから。成立後だって普通に出ます。
★萌えスロも階段を上がっていった
それまでもリオちゃんなどはいましたが、“萌えスロ”という言葉が定着したのは、5号機になってからかと思います。アニメ版権の進出ですね。5号機初期が出玉的に穏やかな時代だったこともあり、私は“萌えスロ”というと「親しみやすい・遊びやすい」というイメージを持っていました。萌え系が好きで、この当時にパチスロを始めた方々は打ちやすかったことでしょう。なかなか勝てなかったとも思いますが。
最近「萌えなのにちっとも遊びやすくないな」と思う機会も増えました。『小麦ちゃん』や『スカイラブ』程度の機種が好きな私にとっては不満でもありますが、それは萌え系でパチスロを覚えた方々がキャリアを積んで成長し、出玉やリスクの面の好みも多様化した影響もあるのかな。そう感じるようになってきました。ただ、モチーフとなる題材と荒さは比例してほしいかな。
あと、この撮影のために回して改めて感じました。ドジっ子最強。むしろ演出が成功するほうが驚きます。ってね、こんなことを書くようになるとは。あの発表会のときには微塵も思いませんでした。いまや実機も持っていますし(笑)
ガセ煽りも少なく、いまどきの機種と比べると通常時はちょっと寂しいかもしれません。メイン小役が15枚で安定感がないのも時代を感じさせますが。システムや出目・手順がお好きな方は、スロゲーセンで『小麦ちゃん』を見かけたらちょっと触ってみてください。
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- 佐々木真
- 代表作:パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。
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