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パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
2016.09.28
5号機版AT機
前回は、思いつきでの『セブンスビート』編。ぶっちゃけまして、うん。純増速度は早くありませんよね。今時の機種に慣れている方にとっては、物足りないと感じる方もいらしたことでしょう。そこを敢えて書かなかったのは、1回は当たりまでを体験して欲しかったから。打ってみると起こる事象はシンプル。それを理詰めで考えながら打つのを楽しんでいただければと思いました。
まぁね、あれで純増速度が早ければ……と思わなくもないのですが。今の機種は、ボーナス込みでの純増が2.0枚未満でなければなりません。「その速度に慣れなさい」という気は毛頭ありませんよ。でもね、その純増速度だから、低投資で当たりやすいゲーム性に出来ているのです。
パチスロは、得てしてジャンケンのような“3すくみ”が多いものとなっています。「ホール・メーカー・打ち手」のように。それは、機種のスペックも同じなんです。
・初当たり確率
・純増速度(一撃性)
・通常時のベース
1000円でたくさん回って、初当たりが軽くて、一撃性もある。打ち手としては理想ですが、それではホールが経営できません。もちろん、出玉率など型式試験が通りませんけどね。どこを強くするかといったバランス調整が大事になってきます。その際に「できる範囲」が広いほど、多様性のある機種を作れることになります。 そんなメーカーの努力から生まれたのが、5号機版のAT機です。
『ゼロボ』の誕生
前々回。ボーナスを搭載していないART機では、純増は最大でも約2.4枚になると書きました。長期出玉率(17500Gで120%未満)の全小役を奪取するシミュレート試験を突破できるように、リプレイと15枚小役で抽選値を埋めた場合の数値となるからです。これを突破させるためのカギは、ボーナスが握っていました。ボーナスで出る分のコインは、純増から差し引かなければならない。そう説明しましたが、矛盾していますね。まさに盲点でした。
シミュレート試験で苦慮するのは、小役をすべて奪取してしまうこと。この試験方法では、120%未満となる最終地点に向かって、右肩上がりの直線を描くことになります。しかし、どこか途中でコインの増えない区間を強制的に作れれば、まだ出せる余力分だけ増える部分の角度(純増枚数)も上げることができます。
では、そのコインが増えない部分をどう作るのか。それがボーナスでした。2枚掛けで2枚払い出しの増えないボーナス。通称“ゼロボ”です。このゼロボを高確率で成立させると、シミュレート試験ではすべて入賞させてくれます。もちろん、いくら揃えたところでコインが増えません。その余力分を純増速度に回したのです。
ちなみに、型式試験は出玉率だけでなく、さまざまな項目もチェックされます。ボーナスで払い出したコインと通常時で払い出すコインの比率というのもありまして。それに引っかからないなどのバランス調整も必要ですが、ややこしくなるだけなので割愛します(汗)。
1Gあたり約2.4枚。その壁を突破するAT機に必要な“ゼロボ”。これをどのように使ってAT機になっていったのか。そして、発展していったのか。実際の機種を参考に解説していきましょう。
初のゼロボ搭載機『エージェントクライシス』
エージェントクライシス(エレコ:2011年10月)
“ゼロボ”を使ったAT機時代の幕開けを告げた『エージェントクライシス』。今の押し順AT機の前身で、荒々しい作りとなっていました。
0)ゼロボを搭載
1)通常時もボーナスを揃えられる
2)しかし、告知まで揃えてはダメ
3)告知から揃えるとAT突入の可能性あり
4)30GのAT状態後に、純増3.0枚のART状態へ移行
5)15枚役も目押し必須
6)ART終了時もボーナスを入賞させる
うーん、ややこしいですね(笑)。今の押し順ナビが出るまで待てばいいAT機とはまったく異なります。ただ、これがAT機のルーツなんです。
通常時は、ゼロボを保持したまま進行していきます。普通に小役狙いをしていれば大丈夫ですが、うっかりするとボーナスが揃ってしまいます。しかし、そこは“ゼロボ”。いくら揃えたところで、コインが1枚も増えません。また、ここからATに入ることもありません。なので、ボーナスを入賞させてヤメるという嫌がらせが横行して、稼働が伸びなかったのはあります(笑)。
ボーナス終了後の30G間は、ボーナス後RTで……など、説明するとかなり長くなるので割愛させてくださいませ。ここから、皆さんお馴染みのAT機となっていきます。
『押し順AT機』の登場
ねぇ~ねぇ~島娘(オリンピア:2012年4月)
パチスロ鉄拳デビルVer.(山佐:2012年5月)
『エージェントクライシス』の半年後。次に出た純増3.0枚の機種が『ねぇねぇ島娘』となります。実は、その直後に登場した『パチスロ鉄拳デビルVer.』は、その前の1月に発売された『パチスロ鉄拳2nd』のタイミングでも出せた……なんていう噂もありますけどね。いずれにせよ、ここからAT機の全盛時代がやってきます。
0)ゼロボを搭載
1)基本的にボーナスはリプレイと小役で隠される
2)その通常時はリプレイ確率が高い
3)どこからでもATに突入するチャンスあり
4)小役は押し順タイプ
いや、かなりスッキリしましたね。一番のポイントとなるのが、“ゼロボ”をリプレイと小役で隠すことです。もちろん、この“ゼロボ”も高確率で抽選されています。シミュレート試験では、それを揃えてくれますね。しかし、プレイヤーはなかなか揃えることはできません。これで、揃えて捨てられることはなくなりました(笑)。
冗談はさておき。内部的に、純粋な通常時は、工場出荷状態(&ボーナス終了後)のみとなっています。ここはリプレイ確率が高くありません。そこでボーナスが成立し、かつ入賞させられないと“ボーナス成立後RT”に移行し、リプレイ確率がアップします。このリプレイ確率アップで、ボーナスを揃えることのできる完全ハズレの確率を激低にしています。
通常時からリプレイ確率が高い。小役の押し順ナビが出るかどうかだからAT機。多くの読者さんがわかりやすいように、こう分類されていますが。常にボーナス成立後RTを消化しているから、ART機というのが正しいのです。いや、押し付けませんし、私も機種原稿などではAT機と書いていますけど。
いずれにせよ、これで純増3.0枚の気楽に誰でも打てるAT機が誕生しました。基本となるメインのシステム設計は、どれもほぼ同じ。通常時のベースもほぼ同じとなるので、初当たりと一撃性(純増は同じなので継続率など)のバランスのみ調整していくこととなりました。システムマニア、冬の時代到来です(笑)。
『アクセルAT』の登場
激闘!西遊記(KPE:2014年1月)
「ハイハイ、またAT機ね」と、新機種取材のモチベーションが当社比66.7%ほどになっていた頃、画期的な機種が登場します。『激闘!西遊記』です。AT機でありながら、通常時がリプレイまみれでない。この“アクセルAT”の登場によって、通常時のベースを大きく下げることが可能となりました。
通常時のベースを下げるとどうなるか? 1Gあたりの純増は、3.0枚までという内規があるので、そこは変わりません。一撃3000枚以内となるような内規もありますが、1回あたりの期待枚数を上げることは可能。そして、確実に言えるのは、初当たり確率の高い機種も作りやすくなります。最初に書きましたよね。機種の開発も“3すくみ”と。そのバランスの自由度が大きく広がることとなりました。
なぜ、こんなことができたのか。そのカギもボーナスが握っていました。通常のAT機のボーナスは“ゼロボ”。主に第二種特別役物(2種BB・MB)を使用することによって、ボーナス中を2枚掛けの2枚払い出しで安定させていました。
しかし、アクセルATは、BIGを使っています。2枚投入しても、払い出さないこともある。要は“減るボーナス”を採用しました。ボーナス中に減ってしまう分も通常の小役に回せます。通常の小役を増やせるということは、リプレイを削れます。通常の小役は、押し順のペナルティなどで揃いにくくすることが容易。なので、ベースを削ることができたのです。
ゼロボが認められるのなら、減るボもアリじゃない。なんで今まで気が付かなかったの。メーカーの開発も大したことないなあ……などと言わないように。5号機初期から、実はそういう発想はありまして。ボーナスは払い出し枚数管理なので、そこでコインを減らしまくって、ボーナス終了後の通常時にコインを増やしていく。そんな発想もありました。そんな機種は見たことがない? そうでしょう。お上が激怒して世に出なかったのです(笑)。
その経緯を知っていると、減るボという発想はできなかったかと思います。このアクセルを見たメーカーの方曰く「同じ質問状は、時期を見て何回も出さないとダメだね」と。ええ、私もそう思います。
かくして、ベースも削れるアクセルATという新たな手法が加わり、より激しい機種も出せることとなりました。各メーカーも試行錯誤しながらアクセルATが増えていくことに。
そんなタイミングでした。5.9号機に向けた規制が開始されたのは。その後のAT機も、作り方は変わりありません。ただ、いろいろな規制によって、ベースが高くなるなど、牙を丸められることとなりました。そのあたりは「パチスロ5.9号機への規制の流れ」をご覧になってくださいませ。
↓「パチスロ5.9号機への規制の流れ」記事は下記より
https://pachiseven.jp/articles/detail/1553#contents
AT機の欠点
私は、あまりAT機が好きではありません。その理由は主に2つ。一撃の出玉よりも、初当たりの多い機種のほうが好きだということ。跳ねる魅力を追求して生まれたAT機は、その対極となることが多いです。
もう1つは、出目の意外性を求めるのが困難なこと。AT機は“ボーナス成立後のRT”状態を使っています。このRTを終了させるには、ボーナスを揃えるしかありません。しかし、ボーナスは揃いません。つまり、常に同じRT状態に滞在していることとなります。
ノーマルタイプのリーチ目のようなものも、AT確定目として作れなくはありませんが、前兆などでドキドキ感を継続させたほうが売上に繋がるし、タイアップの世界観を活かしやすいため、滅多にはありません。また、同じRT状態ということは、特殊リプレイの確率変動も許されず。特化ゾーンなど逆押しで赤7などが揃うのを見ても「通常時はペナルティ。AT中も違う押し順ナビで隠してるのね」と冷めて見てしまうのです。
なので、AT機時代が終わろうとして、少しホッとしています(笑)。
AT機がダメなパチスロと言っているのではないですよ。ノーマルでは物足りないという方が好むのもわかります。リプレイと押し順小役が中心なので、技術的な敷居も低くなります。成立役察知をさておくと、取りこぼしでのコインロスはほぼゼロです。前兆などを経由して当たるのは、コンテンツの世界観を出しやすいですしね。私も好きなドラマなどがパチスロになるなら、出玉はともかく、AT機くらいで気軽に打ちたいですもん。
フォローになったかはわかりませんが、AT機はこんなところで。次回はどうしようかな。『セブンスビート』のような特別編が入るかも。入らなければ『リノ』システムあたりを考えています。
ライター佐々木真氏の体調不良(ギックリ腰)により、更新が1日遅れましたこと、お詫び申し上げます。今後共、パチスロ攻略ライターの思考ルーチンをよろしくお願い致します。
パチ7編集部
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- 佐々木真
- 代表作:パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。
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