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パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
2016.04.12
リール制御の基本
拙い文章ばかり書いていてお恥ずかしいのですが、大学では国文学を専攻しておりました。いわゆる古文です。卒業論文のテーマは土佐日記。「男もすなる日記といふものを女もしてみんとてするなり」という書き出しですが、作者は男性の紀貫之。今の時代に彼が生きていたら、素晴らしいネカマに……という話ではありません。
パチスロのリール制御と古文は似ていると感じています。
学生時代に古文が得意だったという方は少ないかと思います。学んでも日常生活や将来に活かせることが少ないので、モチベーションが低くなって当たり前。 さらに、それを教える中学・高校の先生も「これは趣きのある文章ですね」と、意味不明なことを言ってきます。感性の異なるピチピチの10代に、侘び寂びを押し付けたところで、興味を持つ人は少ないでしょう。
それがどうでしょう。あくびをしながら聞いていた生徒たちも、侘び寂びを理解できる大人になり、ホールに長く通うようになるとこんなことを言い出すんです。「アクロスのAプロジェクトとか、リール制御が凄いよね」と。
私から言わせれば、古文なんて誰でもある程度は読めますよ。日本語は、接続詞と助動詞で感情を表します。「○○すべし」の“べし”とかがそう。現代語訳にすると「○○するべき」。筆者の主張部分ですね。こういった基本さえ覚えてしまえば、古文単語とか、あまり覚えずとも読めるのです。しかも、新しい古文は増えませんからね。1度覚えたら、それを使い回せます。
リール制御も、基本が大きく変わることはありません。さらに、覚えなければならないことも、ほとんどありません。もっと簡単なものなんです。
パチスロは4コマまでしかスベらない!?
まずは「リール制御」という言葉から説明しておきましょう。どこを押すとどう止まるのか。これを決めるプログラムのことを意味しています。もちろん、パチスロはボーナス以外に小役などたくさんの成立役(フラグ)があり、それぞれのフラグに応じたリール制御が用意されています。ボーナスが成立していない時に赤7などが揃わないのも、小役が揃って払い出しをしてくれるのも、このリール制御があるからです。
なるべく多くの小役を獲得してコインロスを減らし、ボーナスなどの当たりを待つ。そんな手順を作成する際に「ストップボタンを押した位置から4コマまでしかスベらない」と書きました。確かにそのような機種しか出てきていないので、そう覚えてもらって問題ありません。
このような書き方をするだけあって、厳密には違うんですけどね。
法律には「ストップボタンを押してから、0.19秒以内にリールが停止すること」と、書かれています。リールの回転速度は、1分間に約80回転。約0.75秒で1周します。そのうち0.19秒は停止しなくて良い……スベって停止できることに。「0.19÷0.75=25.33%」。0.19秒経つと、リールは1周の25.33%もスベってしまいます。パチスロのリールは最大でも21コマですから「21×25.33%=5.32」。法律的には、最大で5.32コマまでスベれることになります。
ただ、実際はそんなギリギリの設計にすると、ちょっとした誤作動などで0.19秒をオーバーして法律違反となってしまう恐れがあるので、余裕を持って4コマまでしかスベらないようになっています。要は、ストップボタンを押してから停止するまでの時間は、0.19秒以内であれば、任意に決めて良いのです。
5号機のリール制御は簡単!
5号機のリール制御は、とてもわかりやすいものとなっています。成立した小役絵柄が、ストップボタンを押した位置からを引き込める範囲にあった場合は、必ず揃えようと有効ライン上に引き込まなくてはなりません。4コマまでスベる機種だとしたら、4コマ以内ということですね。
4号機時代は、ベルやスイカの近くを押したのに引き込んでくれない……という意地悪なリール制御もあり、押してみないとわからないことも多かったです。それに対し、5号機は素直。リール配列と正確な役構成さえあれば、机上で組み立てた手順がほぼそのまま使えるのは、この規定があるからです。
また、リプレイはどのような押し順・押し位置でも取りこぼしがないようにしなくてはなりません(ボーナス中など特殊な場合を除く)。特殊リプレイ成立時に変則押しなどをすると、取りこぼしてしまうようなリール配列だった場合は、必ず通常リプレイが揃うことになります。
さらに、小役なども含めて、フラグ1つにつき1パターンのみのリール制御しか認められていません。なので、正確に押せば小役は同じ形で揃うことになります。機種によっては、強チェリーや弱チェリーなど、チェリーでも停止形が異なる場合もありますが、「小役+小役」の同時当選をさせて異なるフラグとさせているだけです。そのような機種は、必ず正確な役構成に1枚役など、滅多に揃わない形の小役も用意されています。
AT機やART機の押し順小役も同様です。押し順違いの際に、1枚役が揃う機種も多くありますよね。複数の小役を同時当選させて、押し順が合致した際にベルなどのメイン役に。押し順は違っても押し位置が合致した際に、違う形などで揃うようになっているのです。
とまあ、ゴチャゴチャ書きましたが、成立した小役は4コマスベリ範囲内で押せばすべて引き込む。リプレイは取りこぼさない。これだけ覚えておけば十分です。ね、簡単でしょ。
パチスロは規制の歴史
前回、規制案のことを少し書きましたが。この5号機の法律も、規制によって生まれたものとなっています。4号機を終焉させたのは、ストック機でした。ストック機のスペックダウンを目的とした規制はいろいろ入りましたが、最終的に法律を改正することによって5号機となったのです。
ストック機は、ボーナスを内部的に溜め込みますが、かなり高い確率で抽選されるリプレイによって邪魔をされて揃わなくさせる&好条件では連チャンさせるシステムです。若干異なりますが、5号機では『リノ』が近いかな。これを封じるために、ボーナスの複数保有が禁止され、リプレイの取りこぼしも禁止されました。二重にロックをかけられました。
また、5号機当初は、小役とボーナスが同時当選しても、引き込み範囲内にボーナス絵柄があれば、それを優先するボーナス優先制御しか認められていませんでした。ということで、出てきました。次のキーワードは、ボーナス優先制御です。
ボーナス優先と小役優先
特殊なボーナス中を除いてリプレイと小役が同時に当選することはありませんが、「小役+ボーナス」や「リプレイ+ボーナス」という形は往々にして現れます。この時に、何を優先して揃えさせるようにするのかが、リール制御を作る際に問題となってきます。
まず、リプレイはすべてにおいて優先されます。次に、小役とボーナス。2008年3月3日に規則緩和されて、どちらを優先しても良いこととなりました。これにより、小役とボーナスのどちらを優先するか、作り手が選択できるようになったのです。ボーナス優先制御は「リプレイ>ボーナス>小役」。小役優先は「リプレイ>小役>ボーナス」ということになりますね。
今は、ほとんどの機種が小役優先制御を採用しています。同時当選した小役を蹴っ飛ばして、ボーナス絵柄がズルッとスベってしまうと、当選契機も関係なしに「スベリ待ち」の機種だらけとなってしまいます。また、演出で盛り上がる瞬間も作りにくくなってしまいます。演出全盛時代にはそぐわないですし、アクロスのAプロジェクトのようなリーチ目のバリエーションも難しくなってしまうのがその理由。
こういった小役優先制御の場合、ボーナスと同時当選している場合も、通常小役と同じ停止形になることが多いです。取りこぼしのないメイン小役は特に。なので、基本的には小役を獲得する手順だけを組み立てれば、それがベスト手順となりやすいです。
しかし、ボーナス優先制御は一筋縄ではいきません。ボーナスと小役が同時当選した場合に、ボーナスを優先しつつ、小役も揃えようと少しだけ頑張ってくれます。これを利用した成立後のベスト手順というのも出てくるのです。
単独ボーナスの際に逆押しをすると、ボーナス絵柄が上段に止まるのに、成立後のベルに当選していると、中段までボーナス絵柄がスベって上段にベルが停止する。こういうケースなら、残りリールでボーナス絵柄を避けてベルを獲得したくなりますよね。小さなことかもしれませんが、ベルが10枚役なら5回で50枚。これを獲得できれば、収支も大きく変わってきます。
で、気になりますよね。最近ではどのような機種がボーナス優先なのかって。『アイムジャグラー』系と『ニューパルサー』系くらいなものでしょうか。どちらも小役確率の下がる1枚がけでボーナスを揃えられるので、気にしなくても大丈夫です。
このような特殊手順は、押して調べてみないとわからないことが多いので、面倒と思うかもしれませんが、こういった“もう1つの手順”を楽しめる機種も面白いものですよ。ボーナス確定時や濃厚時だけ実行できる特殊手順って、ちょっと優越感ありません? って、いかん。古文の先生のような言い方になってしまいましたな。そのついでに私の“趣き”論でも。
リール制御の“趣き”
「アクロスのAプロジェクトとか、リール制御が凄いよね」こういった趣向というのは、何が正しいとかはありません。キャリアがないからわからないとか、そういうものではないのです。なので“私の場合は”と、させてください。
新機種発表会などでは、レア小役が10種類もあるから出目が豊富とか謳われることもありますが、小役揃いは同時当選確定目以外、単なる小役揃い(強弱察知成功)としか思えないんです。
思わず写真を撮りたくなるリーチ目といった気持ち良さや、右リールがズルスベリしていたらリーチ目だったのに。残りリールをあと1コマズレていればリーチ目だったのに……というハズレ目の妙こそが“出目”だと思っています。これだと弱性チャンス目だわという心の動きを生み出したり、レバー操作時の予告音や、1リール目にアツい停止形となった際に、残りリールをどう止めてやろうかと思えたら最高です。
そのためには、全リールとも押し位置が多いほうが選択肢も広がるから嬉しいんですよ。どれがベストなのか探るのは大変になりますけど。同じリーチ目しか出ないものよりは、ずっと飽きません。単に出る出ないではなく、ちょっとした面倒臭さも、リール制御が生み出す“趣きの1つ”なのかな……なんてね。いや『リノ』の逆押しみたいにシンプルなのも好きですけど。
多くのスロッターが、このような停止形に求める好みやコダワリを持つようになれば、バラエティに富んで面白い機種がノーマルタイプでもっと出てくると思います。
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- 佐々木真
- 代表作:パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。
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