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元・ホール店長カタギリのしくじり店長

元・ホール店長カタギリのしくじり店長

2017.05.17

しくじり店長・第44話『北斗SEというトリガー』

元・店長カタギリ 元・店長カタギリ   元・ホール店長カタギリのしくじり店長

 

「とにかく返してよ、10万円」


エスパー伊東にソックリな、推定年齢40代後半の男性が眼前に立ち尽くしている。瞬きの回数が異常に少ない彼の口から飛び出したその言葉に、私は自分の耳を疑っていた。

「アンタの店のインチキイベントでヤラれた10万円。俺の今月の家賃なの。何が設定④⑤⑥だよ、ウソばっかりじゃないですか。とにかく家賃を払えないと、俺は家を追い出されちゃうの。だから返して、10万円」

故障したロボコップみたいな不安定な足取りでジリジリと私に詰め寄りながら、彼はプログラミングされているかのように同じ言葉を繰り返す。

「返してよ、10万円、俺の家賃……」

まるで息絶える寸前の深海魚のような目つきだ、そう思いながら私は冷静に諭す。

「お客さんはハズれた宝くじを売り場に持って行って、返金を求めますか? ハズレ馬券を窓口で見せたら、買ったお金を返してもらえますか? ご自身の意思で使ったお金は、私どもではどうすることも出来ませんね」

愚痴ならばいくらでも聞ける、苦情であれば冷静に対応させていただく。だが、理不尽な要求には容赦しない。こちらも相手が怒るのを覚悟の上で、強気の対応だ。

「10万円、俺の家賃、どうするの、10万円……」

一切の輝きを失った瞳で、復活の呪文でも唱えるかのように何度も呟いている。それは期待が裏切られ、自分を見失い、店へと向けられた悲しい怒りの矛先だ。気持ちは理解できる、だが同情はできない。

「ご自身が、ご遊技に使ったお金です、その点をどうかご理解ください」

押し問答の末にパチンコ店の責任者として、彼に伝えられる精一杯の言葉を差し出すと、家賃を失った男はようやく踵を返した。薄く、小さくなってしまった背中を見守る胸中に、安堵と少しの不安が渦を巻く。

「パチスロで負けるのは仕方ないけど、自分に負けちゃいけないよ……」


その日の閉店後、コジマ店長に一連のやり取りを告白する。

「へ? その人が10万負けた台って、この台っすよね?」

ホールコンピュータのデータを確認した彼は私を伴って『北斗の拳SE』のシマへ向かうと、電源の落ちた筐体に設定キーをブッ刺して、再び遊技台を立ち上げる。そこに表示されていた数値は⑥、つまり問答無用の最高設定だったのだ。

「まあ、運が悪かったとしか言いようが無いですよね、その人。これだけ出なければインチキ呼ばわりされても仕方ないかもしれませんけど、ねえ」

パチスロで大敗を喫して家賃を支払う術を失った彼を、運が悪かったと一蹴するのは容易い。だが彼が大金を失ったきっかけ。それは間違いなく店の誘い水である。最高設定台を掴めた好機と、手のひらから零れ落ちた幸運。彼の無念に対してかけるべき言葉は、他にもあったのではないか? 躓いたのは彼の責任だとしても、原因となった石ころを撒き散らしているのは我々に違いないのだから……。


無言の抗議として台を殴りつける癇癪持ち。誰の目にも触れないのを良いことに横行する、トイレの便器を破壊する陰湿なイタズラ。そして彼のように理不尽な要求をスタッフに突きつける、断崖絶壁での戦いに敗れた者。ホールで目にする様々な悲壮感の漂う人間模様に思いを馳せれば馳せる程、私の心は底の見えぬ泥沼にズブズブと沈んでいくかのように陰鬱さを増していったのだ。 この世界は何かが大きく狂っていて、その歪みを見せかけの美しさで隠し続けている。


私はこの当時、ホールの片隅でビジュアル系バンドのボーカルみたいな表情をしながら、そんなことばかりを考えていた。パチンコ店がパーラーと呼び名を変え、タバコを吸う店員の姿を見かけなくなった店内。精一杯の作り笑いを浮かべながら、懸命にシマの中を走り回るスタッフ。最新のデータランプのボタンを押しながら遊技台を吟味する、学生風の若者たち。私が高鳴る胸の鼓動を必死に抑えながら、初めてハンドルを握った15年前と比較しても、ホールに対する不安や不満は格段に減少したことは語るまでもない。

だが、パチンコ店の本質は何ひとつ変わっていない。平等を掲げる接客と、不平等な遊技台。遊技客の落とす大切なお金で賄われる日々の営業。そして、数字の多寡で評価されるホールの責任者の能力。数多の孤独や耐え難い悲しみを、煌びやかに浮かぶネオンの灯りが目眩まししているだけなのだ。

シャッターの扉を下して、昨日とさして変わらぬ一日が終わる。寂寞とした夜道をとぼとぼと歩きながら、たくさんの笑顔や泣き顔を思い出す。それが、一人きりで部屋に閉じこもって過ごした日々に天井に浮かんだ異形の顔と同じように、お客様やスタッフとの数々の出会いと別れが心の中で少しだけ美化された幻想に過ぎないとしても、私は嬉しかった。そして、それ以上に情けなくなってしまったのだ。


「所詮、長く続けられる世界じゃない、来る者拒まず、去る者追わずだ」


麦焼酎のお湯割りで顔を真っ赤にしたオーナーが、いつしか私にそう教えてくれた記憶が蘇る。私はその言葉に従って、同じように人と接してきた。いや、正確に言えば去ろうとする者を引き留める術を知らなければ、その理由すらも見つけられなかったのだが。私はきっと、もはやこれ以上、誰かを笑顔にする願いを叶えることは出来ないだろう。 万事休す、だな。


存外に強く吹いた初秋の風に棚引かれたか、急に視界がグニャリと歪む。失いつつある意識の中で、そう呟いたのは誰の声だったのだろう。体力よりも気力や精神力が、もはや限界。こんな状況で務まる訳が無いのだ、パチンコ店の責任者なんて。


こうして私はパチンコ業界に嫌気が差して、去る者として新たな道を歩むことを選んだ。だが、自分が本当に嫌いだったのは悩んでも結論の出ない問題に答えを求めて、いつまでも前進する勇気を持てない自身の不甲斐なさだと気付いてもいたのである。
 

 

カタギリ・今週の1枚

その日も敗色濃厚、死に場所を求めて座ったエヴァ11でいきなり10連チャン。時短突入後、12回転目にインパクトフラッシュが発動して引き戻し、都合15連チャン達成。一撃22,000発の大逆転で会心の逆転勝利となりました。

楽しかったですが久々の大連チャンは後半、とにかく疲れて帰りたくて仕方ありませんでした。これも年齢のせいでしょうか?
 

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この記事へのコメント(11 件)

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りしぇる
投稿日:2017/08/11
パチスロってどうしてこんなにハマるものなんでしょうね
2つの意味で…
あの光や音の中に人を狂わせる企業努力が詰まってると考えると
人ってこわいなぁって思いました。(小並感)
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元・店長カタギリ
投稿日:2017/05/28
はらいそさま。

高設定がしっかり反応しない機種って誰も得しないんですよね。
きちんと設定を使って差玉をアピールしたいホールも、少ないながらに存在する訳ですから。
ま、SEに関しては初代の大ヒットによるファンの期待が大き過ぎた、というのもあるかもしれませんが、それにしてもあの客飛びっぷりには唖然とするしかなかったですねぇ……
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元・店長カタギリ
投稿日:2017/05/28
すろ さま。

良い思い出のある人は少ないでしょうねぇ。
個人的には大負けしなかった(そこまで突っ込まなくて済んだ)ので、割と良いイメージなんですよね。
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元・店長カタギリ
投稿日:2017/05/28
トリオレの三女さま。

あからさまな高設定挙動の台、あっさり座れてましたからねぇ。
あの時期に心が折れてパチスロ引退した人、かなり多いんじゃないでしょうか……

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元・店長カタギリ
投稿日:2017/05/28
あきうめさま。

個人的には初代よりSEの方が相性が良かったんですよね、不思議なことに。
クランキーもコンドルよりコンテストが好調だったということを考えると、私の場合は高設定を反応させやすい体質なのでしょうか(笑)?

元・店長カタギリ
代表作:しくじり店長

シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。

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マンガ版しくじり店長でも、カタギリしくじる!

原作:元・店長カタギリ 漫画:井上二郎(チャーミング)


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