SENZIN伝：第0話「秋葉原で性欲を叫ぶ」

タイルまん SENZIN伝

016年4月某日。

その日俺は人と会う約束があり日本有数の電気街である秋葉原にいた。

天気は大雨。

そもそも…何故俺はこの大雨…そして日曜の午前9時頃の閑散とした秋葉原駅前のカフェの窓際席でコーヒーを飲んでいるのだろうか。

予定では前日の土曜の昼下がりだったはずなのに…。

予定通りだったら昨日パチンコ屋なんか行かなかったのに…。

そして負けなかったのに…。

何故あそこで打ってしまったのか…。

何故あんなに追いかけてしまったのか…。

そして1番の疑問は…

何故今、俺の隣に…

しくじり店長ことカタギリ氏がいるのか…。

これは既に俺もしくじり仲間という事なのだろうか？

俺「カタギリさん…なんでいるんですか？」

カ「分かんないよ…。」

俺「雨っすねぇ…。」

カ「凄い雨だねぇ…。」

2人「…。」

2人で煙草をふかしてコーヒー飲みながらボーッと外でザンザンと降っている雨を見つめて時を過ごしていた。

なんだこれは！！

なんか見ようによってはお洒落だけどさ…デブと初老のアンニュイなひと時って端から見たら気持ち悪いわ！！

B級フランス映画のワンシーンか！？

くそ…何もかもあの…

！

俺「カタギリさん…やっと着いたみたいですよ」

カ「行くか」

雨を避ける気力もなく、ある人物との待ち合わせ場所に向かった。

そう…この男のせいで！

俺が前日負けたのも… 初老…いやカタギリさんとアンニュイなひと時を過ごしたのも…。

大雨が降ったのも…。

昨今の芸能界の不倫騒動も…。

美味しいコーヒーが飲めたのも…。

全てこの男のせいで…！

パチ7編集長—！！

編「よぉ〜！待った？タイルまん久しぶりだねぇ」

1日半待ったわ！！

俺「お久しぶりです！」

日本の社会人とは哀しい生き物。

罵声を浴びせたいけどギリギリの所で踏み止まり自分の言いたい事も言えない…まさにpoison。

事は2月某日。

お試し連載しませんか？とパチ7からスカウトメールがきた。

とりあえず企画を考えてくれと言われたので何個か送ったが…あまり良い反応が来ないので

あー！もう面倒くせー！直接喋って決める！！

という訳で東京に降り立った。

編「タイルまんさぁ…」

俺「はい？」

編「太ったろ？」

おい誰かパイプ椅子持ってこい！

失礼極まりない彼の脳天にバスコーン振り下ろしてやる！

俺「ストレスっす…」

編「そんなもん溜め込むなよ」

貴方が！送った企画にあまり良い顔しないから！！無駄にストレスが溜まっていったの！！！

俺「それよりなんで昨日じゃなくて今日なんです？」

編「ん？昨日知り合いの結婚式でさ。すっかり忘れてたんだよねぇ。」

普通忘れないよ！

編「でも待ち合わせの相手タイルまんだし別に予定変更しても問題ないだろ？ねぇカタギリさん？」

カ「うぇ！？いや…そうっすね！」

大人が権力者にひれ伏す光景を見た瞬間であった。

編「とりあえず腹減ったからファミレスで飯食べてから打ち合わせしよっか」

モリモリと食べる編集長。

モリモリと食べるタイルまん。

パンケーキみたいなの食べる初老。

乙女かよ！！

編集長のお腹は満たされたらしく幸せそうな顔をしていた。

そして

編「そういえばカタギリさんなんでいるの？」

カ「あんたが呼んだんでしょうが！」

編「あぁ…そうでしたね。いや暇かなと思って。あと文章連載の先輩の意見も聞きたいし」

絶対に後者は後付けだろ…。

暇だろと思ってなんとなく呼んだな。

カタギリさん…どんまい。

編「で？タイルまんが送ってきた企画だけどさ…」

お？やっと本題か！

編「ダメ」

ええぇー！
一言！？

文字に起こしたら2文字だよ？

その欲が満たされて少し幸せそうな顔からは程遠い2文字だよ？

編「もっとさ…君には苦しんでもらいたい訳よ」

言葉のチョイスがおかしい…。

面と向かって君には苦しんでもらいたいという言葉が常人の口から吐き出されるだろうか？

『今から君達には殺し合いをしてもらいます』

という某映画の台詞に脳内で変換されたんだけど。

編「君が普通に実戦やっても面白くないじゃん」

俺「俺は面白いですよ？楽しく打ちますし！」

カ「彼に実戦記事書かせたら楽しそうですけどね」

ナイスカタギリ！

編「そうっすか？こいつ毒しか吐かないっすよ？」

カ「確かに！」

ひれ伏すの早いわ！

カ「でもそれも彼の持ち味じゃないですか？」

ナイスカタギリ！

2度目のナイスだ！やれば出来るじゃん！

編「いや…まだ早いですよ。何書いてくるか分かったもんじゃない」

カ「確かに！」

カタギリこの野郎！！頑張れよ！！

編「…確かタイルまんさぁ…福祉の仕事だよね？」

俺「はい」

編「じゃあパチンコ屋にいる高齢者と喋ってきて面白く書いて」

俺「はい…え？は？」

顔色変えずにぶっ飛んだ事を言ったぞ！？

編「今って高齢社会でしょ？パチンコ屋にも沢山のご高齢の方がいるじゃない？」

俺「いますね」

編「そういう人達って今の時代とても大切な切っても切れない存在だと思う訳よ。」

確かに日本の総人口から見て今の日本は高齢化社会ではなく高齢社会になっている。近い将来…総人口の約2割が65歳以上になり超高齢社会となる。

編「そこにスポット当ててくべきなんだよ。」

なるほど。

高齢者をターゲットにする事もマーケティングとしては必要不可欠だよな。

編「その人達のマイオカルトだったり何故パチンコを打つのかだったりさ。どんな気持ちで打ってんだろうとか今のパチンコはこの人達にとってどう見えてるんだろうとか。キャラ濃い人達もいるしね。そんな人達と喋ったりタイルまんなりに考察して記事にして欲しい。」

なんか…ただただ狂ってるマスクかと思ったけど…

ちゃんと今後の業界の事を考えてるのか。

あまり踏み込まれていない領域だし…やってみるか！

俺「分かりました。やります！」

編「でもそんな堅くなくていいから。君にそこまで期待してないし。」

おい！少し見直したと思ったらそれかよ！

編「面白おかしくやって」

1番の無茶ブリだよ…。

そんな経緯がありパチ7にお世話になる事になりました！

肩肘張らずに俺と先人達(高齢者)の奇妙なやり取りを生温い目で読んでください！

店を出ると先程まで土砂降りだった雨はすっかり晴れていた。

交通量も多くなり、まるで今まで雨から隠れていたかの様に歩行者も増えていた。

編「今日は今から久しぶりに息子と遊ぶんだよ。」

俺「そうなんですねー」

編「でもさぁ…最近思うんだけど子供出来ると性欲というものが無くなるもんなのかね？」

…午前中から何言ってんだこの人。

編「歳なのかなぁ？カタギリさんも性欲無いでしょ？」

カ「何言ってんすか！！バリバリ性欲あるしギンギンっすよ！！！」

秋葉原の中心で性欲ギンギンだと今日1番の怒号で叫ぶカタギリ。

あんた本当に今日何しに来たんだよ！