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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2021.12.21
フリーライター家を買う!?#03~新居は問題だらけ!?~
――「じゃあ、開けるよ?」
カミさん「早く早く!」
キレイに塗装された金属製のドアは、今のマンションのそれとは比較にならないほど頼り甲斐があった。鍵穴は2つ。鍵そのものの形状も複雑で、素人目でもセキュリティー性が高いと分かる。
2つの鍵を開け、重いドアを力いっぱい開けた。中は昼なのに少し薄暗いが、新品の匂いが鼻先をくすぐり、悪い気はしなかった。
カミさん「わー、キレ~」
――「だね! おじゃましまーす」
カミさん「なに言ってんの。私たちの家だよ?」
――「いや、そうだけどさ」
俺とカミさんは、遂に完成した新居の内装チェックに来ていた。
内装チェック。
新築マンションが完成すると、入居の2~1ヵ月前に内装チェックの場が設けられる。たとえばキズがついていたり、壁紙に浮きがあったりなどと、内装に不備があったとしても、入居後となると直すのは難しい。
そのため入居の1~2ヵ月前にチェックをし、不満がある箇所をリストアップするのである。リストはマンションを販売している不動産業者(工務店)の子会社が回収し、壁紙やガラスといった各専門業者に取り換えを依頼するというわけだ。
言うまでもなく不満箇所の修正・修繕は無料。あとで不満が出ぬよう、隅々までしっかりチェックする必要がある。ちなみに入居後も1年間は無料で修繕してくれる。家具が入ってしまうと修繕も面倒になるが……。
まだ電気は通っていない。俺とカミさんは懐中電灯を持ち、まずはリビングから見て回った。
カミさん「わー見て! いい眺め!!」
――「おー、ホントだね! 東京方面もよく見える」
さほど高層階ではないが、リビングの向い側に高いビルがないため見晴らしはいい。あと1~2階上を買えたらよかったが、それだけでもローンの総額は大きく変わる。身の丈に合った景色。それでも俺らには十分だった。
――「さて、じゃあキッチンから見ていきますか?」
カミさん「了解です!」
キッチンに入ると、スグにこれまでのマンションとの違いを実感した。
カミさん「わ~、ちょうどいいサイズ!」
――「よかったね~」
カミさんの身長は俺とほぼ同じ173cm。これまで住んでいた昭和生まれのマンションではキッチンの高さが合わず、腰に大きな負担がかかっていたらしい。そのため新居のキッチンはオプションで最も高いサイズを選んだ。
マイルール。
カミさん「レンジフードも頭ぶつからない!」
――「ギリッギリだけどね。ちょっと背伸びすると当たるけど」
カミさん「いいの! まず当たらないのが嬉しいじゃん?」
――「そう、気に入ったならよかった」
もうすぐ40になるカミさんがハシャいでいる。それが嬉しかった。
俺には9つ上のカミさんと一緒になる際、1つだけ心に決めたルールがあった。それは「ライターだからできません」を絶対口にしないこと。
同業者には式も挙げず、新婚旅行にもいかない人が多かった。俺もなんとなく「パチスロライターとはそういうものだ」と思っていた。式を挙げたり新婚旅行に行くヒマがあるならパチスロを打つべし。そんな空気さえ流れていたようにも感じる。
しかしそれは、ライターという職業を選んだ俺の都合。カミさんには関係ない。
カミさんからすれば、俺の職業など何だって構わないのだ。ライターなどという不安定な仕事を好き勝手にやらせてもらっているのだから、せめて人並みの幸せは提供してあげたい。
式や新婚旅行など、カミさんが望むものは思い通りにしてやろう。「友達は普通に経験しているのに、旦那がライターなばかりに経験できなかった」では可哀想だ。
もちろんこの家を買ったのも、その1つというわけである。
カミさん「キッチンは文句ナシだね?」
――「そりゃそうでしょう」
文句などあってたまるか! ウン千万もする買い物。一般的に「一生の買い物」と位置づけられるのが住宅購入だ。素人でもスグに見つけられる粗があるようでは困る。言わずもがな、内装を手掛けているのは〝その道のプロ〟なのだ。
キッチンを出てリビングへ。そして何気なく壁紙を見ていると………
――「ん!?」
カミさん「どうしたの?」
一か所、壁紙と壁紙の繋ぎ目が気になった。そもそも新築でも壁紙の繋ぎ目は存在するのだろうか――!?
理想と現実。
――「この繋ぎ目、ちょっとイヤだなぁ」
カミさん「この壁のサイズだと、繋ぎ目ナシは無理だったんじゃない?」
――「そうだろうけど……」
ほかの壁もチェックすると、目立ちはしないがたしかに繋ぎ目はある。
カミさん「やっぱり繋ぎ目はあるね。これは仕方ないのかも」
――「でも、あの繋ぎ目だけ明らかに目立ってない?」
カミさん「たしかに。ほかのところみたいにしてほしいね」
――「か、書いておこう! チェック表に」
俺は分かりやすく狼狽した。そこまで立派なマンションではない。とはいえ、たまにテレビCMが流れる程度のブランドマンションではある。大手不動産会社のブランドマンションの名を冠しながら、こんなにも早く粗が見つかるとは!
いや、これは壁紙業者の小さなミスだ。ヒューマンエラーなど、誰でも起こし得る。気を取り直してチェックを続けた。次いでリビング横の子ども部屋へ。
あと2ヵ月ほどで誕生予定の子ども。その子が独り立ちするまで過ごすであろう部屋だ。
入居予定日は出産予定日の5日ほど前。必ず順番通りになるとは限らないが、ギリギリ迎える準備はできた。部屋から外の景色を見た瞬間、安堵の溜め息が漏れた。が………
カミさん「ねえねえ、この壁……」
――「なに!? また壁紙?」
カミさん「そうじゃなくて、ちょっと触ってみ?」
――「触る……?」
ぱっと見ただけでは分からないが、壁の一部にボコボコとした凹凸があるではないか!!
――「なにこれ!? ボコボコじゃん!」
カミさん「だよね? これ壁紙じゃないよね?」
壁紙ではない! 明らかにそれより中。壁そのものがボコボコしている――!!?
落胆。
建築のノウハウがないため分からないが、壁のコンクリそのものの問題かもしれない。瞬時に、ひと月前の入居者説明会の話を思い出した。
不動産屋曰く、コンクリートが乾燥して固まるまでには5年ほどかかるらしい。5年以内は水分を多く含んでおり、比較的柔らかいそうな。
しかし、乾燥してこの凹凸が無くなるとは思い難い。このボコボコの状態で固まられてはたまらない! そもそもコンクリを削り、平らにすることなどできるのだろうか?
――「マジか……念のため書いておこう」
カミさん「そうだね。こんなの壁紙貼る前に分かりそうだけど」
――「コンクリと壁紙で業者(職人)が違うんでしょ。壁紙業者からすれば、壁の凹凸なんて管轄外。知ったこっちゃないのかも」
カミさん「マジか、これは……」
――「思った以上に厳重なチェックが必要!!」
ナメていた。大手だからと安心しきっていた。いや、俺らが過敏すぎるのかもしれない。壁紙が不格好であれ壁に凹凸があれ、問題なく生活はできるだろう。
しかし、俺らにとっては初めて購入する家だ。これからなにごともなければ「終の棲家」になる予定である。仮にまた引っ越しするにしても、売りに出す際にウイークポイントを残したくはない。
カミさん「ちょっと待って! あのドア見て!」
――「ドア?」
廊下とリビングを隔てるドア。そのすりガラス部分に目をやると……
――「ウソ……キズついてない?」
カミさん「だよね!?」
長さ60cmはありそうな大きなキズ! すりガラスのため見落としそうになったが、遠くから目を凝らせばハッキリと視認できる。
――「クゥ~、M(不動産担当者の名前)~~~!」
その後も懐中電灯を握りしめ、部屋中を調べ歩いた。昼過ぎにチェックを始めたが、気づけば日が傾いていた。
偶然の出会い。
A4のチェック表はビッシリと埋まった。文章だけで上手く伝えられなさそうな箇所は、デジカメで写真も撮影した。それを修正・修繕部門(不動産会社の子会社)に提出し帰宅。すると、夜に不動産屋の担当者・Mから電話がかかってきた。
M「五十嵐さま、新居はいかがでしたか?」
――「少し辛辣な言い方になるけど、ガッカリはしましたね」
M「あ……なにかございましたか?」
――「壁紙の繋ぎ目は雑だし、壁も凹凸の気になる所が数か所あって」
M「左様でございますか。申し訳ありません」
――「いや、Mさんのせいじゃないけど」
心地の悪い沈黙。Mはしっかりと俺の憤りを感じているだろう。
――「Mさんは、今26でしたっけ?」
M「はい、左様でございます」
――「あと数年もすれば、同じように住宅を購入するかもしれませんね」
M「はい、おそらくは」
――「それで同じ経験したらショックだと思いますよ」
M「はい……」
――「あなたにはたった一件の契約かもしれないけれど、ウチにとっては大きな買い物なんです」
M「はい、存じ上げております」
――「子どもを迎えるにあたり用意した家なんでね」
M「仰る通りでございます」
ふと、熱くなっている自分に気が付いた。このMは販売部門の人間だ。実際の施工に関しては一切責任がない。Mを責めても仕方がない。
――「いや、すみません」
M「いえ、こちらこそ。お気持ちは分かります」
――「ただ、眺めは想像してたよりずっと良かったですよ」
M「それはよかったです! 夏には花火が見えるかもしれません」
――「ホントに? パンフには記載なかったけど」
M「あくまで僕の予想ですが」
――「はは、とりあえず根気よく修繕をお願いしていくよ」
M「お手数おかけします。またなにかありましたら、お申し付けください」
――「ありがとうございます」
M「では、失礼いたします」
Mにはどうにも頼り甲斐のないところがある。各種手続きの説明や言葉遣いの端々で、少し抜けているなと感じるときがある。しかし、そこが可愛らしくもあり憎めないタイプだ。
そこそこ大手の不動産屋だ。就職はラクではなかっただろう。きっと俺らが想像しているよりずっと優秀で、こういった愚痴を普段から上手にいなしているのかもしれない。
このMこそ、マンション購入のきっかけになった人物だ。ポスティングに来ているMをカミさんが見つけ、ウチでも買えるかと訊ねたのがはじまりだった。
あの日あのとき、Mがポスティングに来ていなければ、子どもが生まれるまでに新居を準備することは叶わなかっただろう。彼にとってはただの仕事かもしれないが、強力に背中を押してくれたのは、ほかならぬMなのである。
社会の理。
修正・修繕は1度で済まなかった。直して欲しいと伝えたところがそのままだったり、直したつもりが甘かったり。それでも現場担当者はイヤな顔1つ見せず、根気よく対応してくれた。
なるほど。マンションの販売は、ただ建てるだけでは終わらない。やはり建てた段階ではミスもある。決して欠陥住宅といわけでなく、それが普通なのだ。そして購入者が納得いくまで修繕し、ブランドを維持しているのだろう。
もし家を買わなければ、こんなことにも気付けなかったハズだ。テレビCMで流れるようなマンションは、建った時点で完璧に仕上がっていると思っていた。
これは、我々パチンコ・パチスロメディアも変わらないのではなかろうか。取材段階で得する打ち方や設定差あたりをつけ、導入後のホールでさらに実用的な打ち方・立ち回りを模索する。
結局、なんの職業もトライ&エラーを繰り返して磨き上げていくのだろう。そうしてみんな妥協なく働いて、この社会は回っているのだ。狭い業界でばかり仕事をしているせいで、俺はそんな簡単なことも忘れていた気がする。
「家を買えば一人前」ではない。
家を買うことで、多くのことを学ぶのだ。
修繕を重ねるたび、俺が押す確認済みのハンコが増えていく。そして遂にすべての修繕が終わり、入居の日を待つこととなった―――。
つづく
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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