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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2024.05.07
パチスロ攻略ライター時代の終焉~挫折と反発~
前回までのあらすじ
パチンコ・パチスロ業界の動画時代に適応すべく、動画制作会社の設立を目指すこととなったラッシー。しかし、学生時代に映像を学んでいたとはいえ、いきなり会社を始めるわけにもいかない。編集部の協力を得ながら、まずは動画編集を学ぶことに。座して学ぶより実践したほうが早いというわけで、さっそく新番組を担当するが、あまりの難しさに大きな時間を要し心が折れかける。どうにかチェック用動画まで漕ぎつけるも、膨大な修正の量に押しつぶされるのだった。
チーフ「うん、だいぶ見られるようになったじゃん!」
――「………ありがとうございます」
どうにか絞り出した感謝の言葉だった。折れかけた心をギリギリで保ち、やっとの思いで漕ぎつけた3度目の動画チェック。これ以上ない完成形まで仕上げたつもりだったが、まだ公開できる段階には至ってないらしい。
額に手を当て目をつむると、自然と溜め息が漏れた。
チーフ「はは、そんな分かりやすく落ち込むなって」
――「いや、大丈夫。大丈夫」
思い返せば編集部に入ってからの12年間は、人に弱っている姿を見せたことなどなかった気がする。少なくとも、仕事仲間の前ではそのはずだ。
超人の集まり。
紙(雑誌など)の編集部員時代にも、追い詰められたことはたくさんあった。朝焼けに染まるビルの非常階段から、地面までの高さを確認したことも1度や2度ではない。
それでも平静を装い仕事をこなしてきた。「全然平気です」、「これくらい余裕です」。そんな顔をして、幾多の危機を乗り越えてきた。
フリーランスの人間は「できない」を見せてはならない。オーバーワークぎみでも「余裕でできますよ」とハッタリをかます必要がある。言わずもがな、同業者より自分のほうが優れていると見せつけねばならないためだ。
先輩たちがそうしたように、俺も「できません」は言わなかった。もらえる仕事はすべてもらった。ここまで気合いと根性だけでどうにかやってきたし、その実績に対する自信もそれなりにあった。
しかし動画編集は、いとも簡単にその自信をブチ壊した。積み木を完成させては崩し、また完成させては崩す。そんな作業の繰り返しだ。紙の編集の校正も似たようなものではあるが、1人で抱えるタスク量は動画のほうが遥かに多く感じる。
チーフ「まあ、最初はみんなそんな感じよ」
――「マジ? 俺が特別できないわけじゃなくて?」
チーフ「そんなことねーよ。むしろやれてるほうだと思うよ」
――「………ありがとう」
「ウソこけ!」、「やれてるほうなわけねーじゃねえか!!」。パソコンデスクを全力で叩き、そう叫びたかった。もちろん、そんな気力など残っていない。
これで言葉通り「やれてるほう」ならば、そうでない場合はどれほど時間がかかるというのか。とっくに心が折れて逃げ出してるに違いない。
ということは、我が編集部の動画班に残っている面々は、みな「やれてるほう」だったのだろう。そして飄々と涼しい顔で仕事をしている姿から察するに、「俺よりやれていた」のだろう。
これまで動画を作ってくれていたスタッフ陣が、まるで超人の集まりのように見える。まだ編集部に来て2~3年の若者ですら、自分がどれだけ背伸びしても敵わない超人に見えた。彼らに対し、自分はなんと無能なのだろうか。
チーフ「ここまでくれば、もう勝ち確だからさ」
――「…うん」
チーフ「あとちょっと頑張ろうよ」
――「……はい」
その〝ちょっと〟が、初心者の俺には果てしなく遠く感じる。
チーフ「とりあえず尺も確定したしさ、モザ入れ教えるよ」
――「モザ入れ???」
新たな地獄の始まりだった。
まだ未来じゃない。
チーフ「まずエフェクトのマスクを映像に適用して」
――「マスク……コレかな?」
チーフ「そう。で、適用したマスクをダブルクリック」
――「はい…うわ、なにこれ?」
ひと目見ただけで分かる。これは相当面倒くさいヤツだ。モニターには数えきれないほどの文字が並び、意味不明な〝グラフのようなもの〟も鎮座している。
チーフ「上のツールから円ツール選んで、適当な人の顔を囲んで」
――「はい…囲みました」
チーフ「あとは下のタイムラインを動かしながら、円を人の動きに合わせてドラッグ&ドロップして…」
――「タイムラインを動かしつつ、ドラッグ&ドロップ」
チーフ「そう、そんな感じ。すると、ここにキーフレーム出てくるでしょ?」
――「……はぁ、なんか出てきてるね」
モニターの大半を占める〝グラフのようなもの〟に、小さい点が打たれていく。
チーフ「タイムライン動かして、円も動かす。その繰り返し」
――「ええ!? これ1コマ(※)ずつ動いてるよね?」
1コマとは?
1コマ=1フレーム。撮影時の設定により異なるが、動画の1秒は24枚 or 30枚 or 60枚の静止画で構成されている。パチンコ・パチスロの動画は概ね1秒=30コマ。つまり1コマは1/30秒ということになる。
チーフ「そう、1コマずつだね」
――「いや、どんだけ時間かかんだよ!」
チーフ「ふはは、対象の人物が一定の動きしてればラクできるから」
――「ちょ……なに言ってるか分からない」
チーフ「そのうち分かるから、まずは練習」
――「はぁ…モザイクなんて指定すれば勝手に追跡してくれないの?」
チーフ「ああ、トラッキングね。あるけど、まだ精度がね~」
――「そうなんだ…」
トラッキングとは、いわゆる〝自動追尾〟機能のこと。2024年の現代ではだいぶ精度が上がってきたが、それでも多くの人が行き交う場面などでは上手く追尾できないケースが多い。
チーフ「とりあえず、このカット自力でやってみて」
――「了解です」
15分後―――
――「フゥ、フゥ…できた!」
チーフ「じゃあ次のカットは…3人か」
――「ええ!? これを3人分やんの!?」
チーフ「ふはは、まあ慣れれば簡単だから」
――「慣れるの? コレが? 物理的に絶対時間かかるじゃん」
チーフ「まあ、いずれ早くなるから」
――「お…あ、あ…あ…あ…」
視聴者は気にも留めないモザイクも、実はとてつもなく膨大な時間がかかっている。動画編集者には、この〝モザ入れ〟を嫌いな作業の第1位に挙げる人も多い。
ちなみにここから数年後には時短する方法を身につけ、今ではむしろ得意な作業になっている。それでもラクではナイのだが。
ここからさらに修正を重ね、やっと公開に漕ぎつけた頃には、収録から1ヵ月半が経っていた。
厳しい反応。
後輩「どうです? 最近の調子は」
――「へっ、良さそうな顔に見えるかよ?」
吐き捨てたあと、一気にビールを呷った。〝昼から飲める〟だけが取り柄の安居酒屋。後輩ライターとここへ来たのはいつぶりだろう。制作会社を作ろうと思ってから2ヵ月ほど経っているから、概ね2ヵ月強といったところか。
後輩「お疲れのようですね」
――「まあね。思った以上に動画編集が難しくて」
後輩「難しいって聞きますもんね~」
――「想像以上だったわ」
動画の勉強会に参加した6人は、誰一人として残らなかった。気持ちは分かる。あの膨大な作業量と実働時間を目の当たりにすれば、俺のようによほど追い詰められていない限り離脱してしまうだろう。
後輩「ラッシーさんは続けるんですか?」
――「は? 当たり前でしょ。もう2本目の編集してるよ」
後輩「へ~、スゴいスね」
――「なんもスゴくねえよ。なんも…」
記念すべき1本目が完成を迎える前に、2本目の撮影素材が上がっていた。番組を任された以上、立ち止まることなど許されない。泣こうが喚こうが、手を進める以外に選択肢はナイ。
後輩「でも、公開されて達成感はあったんじゃないスか?」
――「ははっ、いやもう酷評の嵐よ」
後輩「酷評?」
――「コメント欄が荒れる荒れる」
『マジこいつツマンネーな』
『音量小っせえ』
『コイツ知識ねえな』
『テンポ悪っ』
『こいつ喋り下手だな』
『こんなヤツよりA(先輩)出せよ』
『誰が見んだよこんな動画w』
『そもそも誰だよコイツ』
今にして思えば、この酷評はとてもよかったと思う。なぜなら、動画の〝演者〟も俺だったからだ。演者のミスや弱点をフォローするのも編集の仕事。1本目ではソレができていなかった。
もし自分以外の演者だったら、相当に傷つけたに違いない。他人を傷つけずに学べたのだから、価値のある失敗だったと言えるだろう。
――「まあ、いい学びになったよ」
後輩「キツそうですけどね」
――「まあ…少しね」
塩の味しかしない枝豆を乱暴に口に運び、適当に頷いた。
経営者適正。
後輩「ギャラはどうスか?」
――「文句はナイよ。出演+編集だしね」
後輩「そうスよね」
――「まだ編集が遅いから時給換算するとエラいことなるけど」
後輩「時間かかりますもんね」
――「そう。まあ、学ばせてもらいながらギャラ貰えるんだから、この上なくありがたいことだよ」
後輩「たしかに。会社はいつ作るんですか?」
――「ああ、それね……ヤメよかなって」
後輩「えっ?」
――「会社作んのヤメようかなって思って」
後輩「ええ!? だって、まだ編集はじめたばかりじゃないスか?」
――「まあね、分かんないけど…」
実際にやってみて分かった動画編集の過酷さ。いや、編集だけではない。制作も撮影も、動画作りのすべてが信じられないほど大変だ。タイトなスケジュールでの納品となれば、そのストレスは計り知れない。
大袈裟に思われるだろうが、動画は本当に命を削ってできている。気が狂いそうになるのを抑えつつ膨大なタスクをこなし、やっと完成に漕ぎつけるのだ。
――「俺が営業して仕事とってきたとしてもだよ?」
後輩「はあ」
――「実際作業してくれる人から、1件につき何万か中抜きするなんて考えられない」
後輩「はあ…そういうもんスか?」
――「そうだよ。命削った人から1万円でも取り上げるなんてできねえよ」
後輩「経営者向いてナイすね」
――「そう! 今回痛切に分かったわ。俺は経営なんてできない」
後輩「非情になれないから?」
――「はは、そういうと世の経営者みんな非情みたいになるけど」
後輩「そんなことはナイでしょうけど」
――「だね。でも、いずれにせよ誰かに制作とか編集させて、そのギャラから摘まむのは俺は無理かなって思った」
後輩「でも、動画編集は続けるんスね?」
――「そらそうよ。もうそれしか道はナイから」
後輩はレモンサワーを口に運んだあと、俺からゆっくりと視線を外した。
――「なんだよ? なんか言いたいことあんの?」
後輩「いや…ホントにそれしか道ないんスかね?」
今日も旨い酒は飲めそうもない。
さえずり。
――「は? どゆこと?」
後輩「書き仕事はどうするんスか?」
――「そりゃ、やれる範囲で続けるよ」
後輩「そうスけど…連載はもうしないんスか?」
――「連載ね~…」
攻略誌『H』の俺の連載は、1年ほど前に終了したままだ。その後は企画書すら書いていない。
――「まあ…おいおいかな」
誌面の連載について思うことはあった。しかし、付き合いの長い後輩にも話したくなかったため言葉を濁した。
後輩「そうスか……でも」
――「でも? 何か言いたいことあんの?」
後輩「動画編集がライターのすることスか?」
――「は?」
後輩「ほかの先輩も言ってますよ、『ラッシーは動画編集の前にやることあるんじゃないか?』って」
――「はああ? チッ…」
思わず出た舌打ちを、すっかりぬるくなったビールで流し込んだ。しかし、怒りは一瞬で退いていった。俺はもう、その程度で揺るがない。
――「まあ誰か分からんけど、ご指摘はごもっともだよ」
後輩「はあ」
――「でも、俺はもう〝さえずり〟を聞かない」
後輩「さえずりですか?」
――「先輩方はいつも正しい。そしてカッコイイ。正解だよ」
後輩「はあ…」
――「でもそれは、先輩方がスターだからだ」
後輩「スターだから?」
――「動画に出れば観られ、書けば読まれる。でも俺は違う」
後輩「そんな」
――「いや分かったろ、いい加減。俺は先輩方とは違うんだよ」
後輩「…そうスかね」
――「ライターも演者も、みんな立場もギャラも違うんだ」
後輩「そうですね」
――「スターの正解は、俺には当てはまらねえよ」
後輩「………」
――「スターの〝さえずり〟は甘いしカッコイイ」
後輩「……そうスね」
――「けど、俺みたいな凡人がマネしたら死んじまうんだよ」
後輩「そうでしょうか」
制作会社を作ろうと思ったときから、ライターや編集に煙たがられることは予想していた。想定の範囲内だ。人の心など分かるハズもないが、俺を〝ただの攻略ライター〟にしておきたい気持ちはあるだろう。
――「なんとでも言ってくれ。なに言われても構わねーよ」
後輩「でも…」
――「みんなにどう思われようが関係ねえ」
後輩「…はい」
――「みんなに嫌われたって、家族さえ味方ならそれでいいじゃん?」
後輩「たしかに…そうかもしれません」
――「俺、もっと嫌われることするかもしんねーし」
後輩「え? まだなんかするんスか?」
――「今はまだナイショ」
後輩「ええ…怖いんスけど」
――「なんか冷めたな。恋バナ聞かせて」
後輩「ちょ~、そんなのあると思います?」
制作会社を設立することは一旦諦めた。それでも希望を失ったわけではない。〝動画編集もできる攻略ライター〟になれば、俺にしかできない仕事もあるのではないだろうか。
こうして俺は色んな反発を受けながら、徐々に動画編集へとのめり込んでいった。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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