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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2019.04.16
『ギフト』~大花火~
靖国通りはいつもと変わらず人で溢れていた。早足で人混みを縫うように進む。雨脚は少し強まったように思えた。左手は形ばかり傘の柄を握っているが、この人混みでは意味がない。頭から首にかけてはじっとりと濡れている。しかし、気にしてはいられない。この機を逃せば次はない。俺は脇目も振らず歌舞伎町へと急いだ――。
思い立ったのは、つい十数分前だ。編集部で作業をしていた際、ふとカレンダーが目に入った。今夜から数日は編集部にカンヅメになり、校了明けまでシャバに出ることは許されない。誤解されぬよう書いておくが、編集部からそう命じられているわけではナイ。ギリギリまで追い込まれてから仕事を始めるタチなので、純粋無垢な「自業自得」である。
さっそく今夜から徹夜か…。力なくイスにもたれ、掃除したばかりのデスクに目を落とす。すると一冊の雑誌が目に入った。参考資料としてとってあった、数年前のパチスロ攻略誌である。仕事をする気になれず何気なく古い攻略誌の表紙をめくると、俺がパチスロを始めた頃の懐かしい機種が並んでいた。
アステカ
ワードオブライツ
マリーンバトル
グランシエル
アラベスクR
ゲゲゲの鬼太郎SP
大花火
……大花火!?
イスから跳ねるように起き上がり、カレンダーを睨んだ。たしかこの界隈の大花火設置店は残すところ2店舗のみ。その撤去日が明後日だったような…。明日からは校了に向けラストスパートだ。遊びに行くヒマなどない。自宅周辺の大花火は綺麗サッパリ撤去済み。もうホールで打つ機会は…。
▲4号機「大花火(アルゼ)」
1999年の晩秋にアルゼがリリースしたAタイプ・大量獲得機で、今なお続くハナビシリーズの第2弾。BIGの獲得枚数はリプレイハズシを実践すると約632枚にも上る。いわゆるA-600タイプだ。
ハナビの後継機だけあり、リール制御の完成度については言うまでもない。筐体上部に鎮座するのは横回転の4thリール、通称「鉢巻リール」だ。その演出が出目と相まり、プレイヤーの興奮を一層掻き立てる。名機ひしめく4号機時代においても、屈指の名機と言えるマシンである。 |
ふと、数か月前に打った大花火を思い出した。仕事帰りに立ち寄った新宿駅近くの某店。2階の隅にひっそり残っていた大花火は満身創痍で、筐体のそこかしこにガタがきていた。最も深刻なのが左リール。ストップボタンを押さずとも不規則に止まることがあり、回転が全く安定しなかった。
それでも衝動を抑えられず打ち続けると、案の定BIG中が大変なことに。左リールの回転が不規則ゆえ、三連ドンすらまともに狙えないのである。もちろんBARを狙ってのビタハズシなど不可能で、獲得枚数は400枚強にとどまった。ハナビではない。大花火なのに400枚強なのだ。
即座に店員が謝りに駆けつけたが、怒る気など更々なかった。そうなることを予想しつつも打ったのは俺なのだ。それよりも、そんな状態になるまで大花火を置いてくれている。その気持ちが嬉しかった。
あれが大花火での最後のBIGか…。
イヤだ!
間違いなく歴史に名を残すマシンなのだ。そのラストBIGが「中折れ」なんて寂しすぎる! キチンとBIGを消化し、最後にお別れを言いたい。飾ろう、有終の美を!
俺は財布と傘を握り編集部を飛び出した。
★餞別。
軒下に入って傘を畳むと、スグさま時計を見た。21時55分。かなり急いだつもりだが、人混みにもまれ思いのほか時間がかかった。自動ドアが開く時間すらもどかしい。
店内はいつも通り静かだった。この店は歌舞伎町でも恵まれた場所に位置しているが、平日・休日を問わず常に閑散としている。つまりは「そういう店」。設定を期待して打つ者など皆無と言っていい。夜の仕事の人が出勤前に打ったり、当時はまだ多く見かけたソチラの筋の人がドデカい一撃を狙うためにあるような店だ。プロの姿などほとんど見たことがない。俺は古い機種や珍しい機種を目当てに、ちょこちょこ立ち寄ることがあった。
大花火のシマの光景も、いつもと全く変わらなかった。まるで2日後に撤去されるのが嘘のように閑散としている。設置は10台ほどで、稼働しているのは1台のみだ。時間的な余裕はないが、一応データ表示器を見て回る。
BIG 0
REG 0
BIG 0
REG 0
BIG 0
REG 1
BIG 2
REG 0 …
稼働はほぼナイ。過去3日分のボーナス回数も表示されているが、連日BIGが0~2回という状況。撤去目前だというのに。
ムリもない。普段でさえ設定を使わない店なのだ。わざわざ撤去目前の機種に設定を使うことなど考えがたい。設定は連日1と思って間違いないだろう。
だが、それがどうした?
歴史に名を残す名機との今生の別れなのだ! 1万や2万くらいくれてやらぁ! 俺からの餞別だ! 時間的に2万円も負けられないと思うが…。
時計の針は22時を示そうとしていた。両替機で2万円分を千円札にくずし、とりあえず本日2回BIGが当たっている台へ。どの台に座っても違いはないが、2回当たっているという実績。これが大事! 「故障でボーナス抽選を行わない」などという事態はないハズだが、当たっているということは、ちゃんとボーナスを抽選している証。設定はどうせ1だろうけど。
閉店まで1時間。
設定は推定1。
引けるだろうか?
俺の最後のBIG。
設定 | BIG | REG | 出玉率 |
1 | 1/431.2 | 1/655.4 | 99.9% |
2 | 1/399.6 | 1/655.4 | 103.8% |
3 | 1/364.1 | 1/606.8 | 109.4% |
4 | 1/321.3 | 1/606.8 | 117.1% |
5 | 1/292.6 | 1/512.0 | 124.7% |
6 | 1/240.9 | 1/481.9 | 140.5% |
大量獲得機だけにボーナス確率は重い。しかし1時間だ。600GもあればBIGを1発は引けるハズ。
苦しい展開は覚悟している。とにかく後悔しないようブン回さねば! クレジットが無くなる前に、次の千円をサンドへと流し込む。大花火は鉢巻の演出をキャンセルできないためフルウエイト消化は事実上不可能。それでも可能な限りのスピードでプレイしていると、わずか2千円でチャンスが到来。
レバーON時に予告音が鳴れば鉢巻始動の合図。始動タイミングはレバーONから第3停止時まで様々で、それによっても対応役やボーナス期待度が変わってくる。
左リールにBARを狙うと、BARはピタリと下段に停止。鉢巻はまだ動かない。恐れるべきは「山」。ハナビでいうところの「氷」だ。中リールには七を狙った。七の上には山があるため、山フォローの最もベタな箇所である。すると七が中段に止まり、山が上段でテンパイした。それと同時に鉢巻が動き始め、右回転で赤ドン→次いで右回転で三尺玉が停止。打つ機会が激減して久しいからうろ覚えだが、このパターンの対応役はたしかリプレイと山。やはり山か…。
小さく溜め息をつき、右リール枠上付近にドンの2つ下にある山を狙うと…ズルリとスベって上段にドンが停止! 思わず声を上げると、その瞬間V字のリールフラッシュが発生した。
何十回見ただろう。何百回かもしれない。少し恥ずかしくなるほどベッタベタなリーチ目だが、なんと美しいのだろう。
第2停止始動の右回転赤ドン→右回転三尺でVフラならBIGだったような…。おそるおそる1枚掛けでボーナスを狙うと…
「ひゅーん…どどどん♪」
予想通り七が揃ってBIGがスタート! 聞き慣れたBGMが静かな店内に響き渡る。大花火のBIG中BGMは、イントロから全力で興奮を煽る。700枚を目指してやろうという気にさせてくれるのだ! ちなみによく「七BIGとドンBIG、どっちのBGMが好き?」という議論が起こるが、俺には選ぶ自信がない。桐谷美玲と佐々木希を比べるようなものだ。選べるわけがナイ!
これが今生において最後のBIGになるかもしれない。ハズシミスなど万が一にも許されない。MAXの711枚なんて贅沢は言わない。普通でいい。普通にミスなく600枚を超えれば……。
ここで少しばかり大花火のBIG中を紹介しよう。
小役ゲーム中のレバーON後は「鉢巻リール」に注目。赤ドン停止なら左リールに3連ドンを狙い、中・右リールはフリー打ち。これで15枚の払い出し。青ドン停止ならJACイン成立の合図。リプレイハズシは目押し技術によって選択できる。
中・右リールをフリー打ちすると、リプレイは必ず中段にテンパイする。目押しに自信があるなら左リール中段にBARをビタ押しし、成功すれば100%でJACインを回避できる。目押しに自信がなければ左リールに三連ドンを狙う。三連ドンの上にはリプレイ絵柄があるが、アシストが働き3/4(75%)でJACインを回避できる。3度目のJACインは小役ゲーム残り8Gまで引っ張り、残り7Gからはハズシを実践せずJACインさせる。ハズシを無事にこなせばBIG1回で平均632枚を獲得できた。
BIG開始早々に1度目のJACイン。その後、15Gほど空いて2度目のJACイン。そしてハズシの必要な3度目のJACインは、小役ゲーム残り8Gで訪れた。
既述の通りハズシ戻しゲーム数は7Gだ。あと1G遅かったらハズシを実践せずに終わるところだった。このビタハズシこそが大花火で最も燃えるところ。このヒリつきを体験せず、生涯ラストBIGは終われない――!
★成長。
俺がホールに出入りするようになった頃、大花火はすでにソコに居た。
ある朝教室に行くと、男子のおよそ半分が登校していないことに気が付いた。そして昼休みを過ぎた頃、ぞろぞろと遅刻組が登校してきたのである。その内の1人に理由を訊いて驚いた。
「せっかく大花火の新装行ったのに、全然当たんねーでやんの!」
俺がパチスロを知り、大花火を知ったのは、それから半年ほどあとのこと。
大花火は小遣いの少ない学生にとって手を出しにくい機種だった。俺も大量獲得の夢を見て幾度となく挑み、幾度となく敗れ去った…。
大きなリターンには
大きなリスクを伴う。
人生の厳しさ。
己の無力さ。
それらを教えてくれたのが大花火だった。言わば大花火は人生における先生だった。
右・中リールをフリー打ちし、手に持っていたメダルを下皿に放った。
見てってくれ先生。俺、もう立派に働いてるんだ。目押しもちょっとだけ巧くなったんだ。成長した俺の姿、最後に見てってくれ!!
カッと目を開き、BARを捉えた。
今だっ!!
左リール中段にBARを狙うと、BARはズルりと枠外へ逃げて行き痛恨のJACイン!
――「あ゛~~~!!」
ダサさここに極まれり! 大花火における今生ラストのBIG。そこでハズシをミスるとは!!
もうヤダ! 俺嫌い!! 有終の美を飾るハズだったのに、最後にクソみてーな思い出作りやがって! 心中で己を罵倒しならが最後のJACゲームを消化した。
く…情けない。だが、ここは当たってくれたことに感謝しよう。即ヤメなんてヤボなことは抜きだ。とことん行こう。店員から肩トンされるまで! 出玉をノマれても餞別と割り切ればいい。
再び可能な限りのスピードで消化していると、90Gほど消化したところで手が止まった。特にアツいパターンがないため気を抜いていたが、左リール上段に三連ドンの1番下のドン、中・右リール上段にリプレイだ。この形はNGパターンもあったハズだが…。
3枚掛けでレバーを叩くと予告音が発生。左リールに下にチェリーが付いている七を狙うと、七は下段に停止した。同時に鉢巻が動き始めたが、俺の目は中リールの七を追っている。山の可能性はあるが、前ゲームの出目がアレなら…。
中リール枠上・上段あたりに七を狙うと…右上がりに七がテンパイ! 大花火を代表する美麗2確目だ!!
なんと神々しい…。
右リールはあえて七を避けた。
理由は言うまでもない。
3枚掛けでドンを狙う。
「てぃろりてぃろりりん♪」
これだ。この嵐の前の静けさを際立たせるトリプルテンパイ音。メダルの6枚程度どうだっていい。金じゃねーんだ! これは大花火へのリスペクト!!
「ひゅーん…どどどん♪」
一瞬の静寂の後、これでもかと興奮を煽るBGMがスタート。まさかこの短時間で七とドン両方のBGMが聴けるとは! 報いよう! 今度は慎重にミスなく消化するべし! 1・2回目のJACゲームを消化後、2度のビタハズシに成功。少しパンクしそうな雰囲気を感じていたが、無事に残り3GでJACインフラグが成立! かくして目的を達成したのだった。
残り時間は30分以上ある。もう思い残すことはなにもない。おそらく設定1であろう台で、2回もBIGが当たってくれた。それだけで満足じゃないか。残り時間はゆっくり回そう。決してメダルが惜しいわけじゃない。1G、1G、噛みしめたいんだ…。
★最高の別れ。
幸福感に包まれながらプレイしていると、30Gほど回したところで予告音が発生。
何の気なしに友人が好きだった右リール上段ドン狙いを実践すると、そのままビタッと停止。対応役は三尺or山orボーナスだ。鉢巻はまだ動いていない。中リール中・下段に七を狙うと…ズルッとスベって小役非テンパイ! 問答無用の2確目だ! 鉢巻はまだ動かない。左リールを止めると、やっと鉢巻が始動した。
左回転で青ドンが出たのち、右回転で三尺玉が停止。ちなみに三尺玉は小役以上確定である。そして音もなくゆっくりと上がる三連花火。俺にはまるでスローモーションのように見えた。
この短時間でBIGが3回も当たるとは考えがたい。最後はREGで終了というオチなのだろう。次ゲームは1枚掛けで中リールにBAR・チェリー・BARを狙った。5号機のハナビ同様に、1枚掛けは中段1ラインだ。
BAR・チェリー・BARは1コマも欠くことなく、綺麗に中リールに納まった。美しく、そして明瞭にREGを否定したのである。
その瞬間、温かい何かが頬を伝った。
嗤ってくれて構わない。
俺は泣いていた。
自身でさえそれが涙だと理解するまで数秒を要した。ぐちゃぐちゃに歪んだ視界のまま3枚掛けでレバーON。
「てぃろりてぃろりりん♪」
「ひゅーん…どどどん♪」
祭の喧騒を思い起こさせる激しいBGMの中、走馬灯のように数々の思い出が浮かんで消える。レンタルビデオの返却ついでに打って、千円で当たったBIG。初めて「間延び」を感じた日。友人たちと並び打ちした日々。来る日も来る日もビタハズシを練習した日々。
そう。俺がパチスロを始めてから今日に至るまで、大花火はずっとホールにあった。設置台数は全盛期に比べ大きく減ったものの、それでも当たり前のように傍にいた。その「当たり前」が、遂に終わりを迎えるのだ。
正直、このBIG中のことは全く覚えていない。おそらくビタハズシの機会すらない平凡な内容だったのだろう。記憶にあるのは何度も目元をぬぐいながらプレイしたことだけ。
「本日も最終最後のお時間までご遊技頂き、誠にありがとうございます。ただいまをもちまして本日の営業は…」
店内アナウンスが静かな店内に響く中、そっと精算ボタンを押した。そして、優しく台枠をなでた。
――「ありがとう…ありがとうございました!」
6年もの長きに亘りお世話になった。それだけでも十分なのに、餞別を渡しに来たつもりが土産まで持たせてくれたのだ。「ありがとう」以外の言葉が浮かばなかった。
まぶたの下のダムは、いとも容易く再び決壊した。
「こんな最高の別れかたがあるかよ」と、あれから13年が経った今でも思う。パチスロは言うまでもなく機械で、感情が伝わることなど有り得ない。それでもあの日は、まるで心が通じ合っていたように感じたのである。
頭がイッてると嗤われても構わない。でも俺は、ぜひ皆さんにも似たような体験をしてほしいと思う。2019年は数々の名機が撤去される予定だ。化物語・エウレカ2・ペルソナ4・ハーデス・バジ絆…。悔いを残さないよう打ちに行きましょう! そしてこれを超えるような素晴らしいサヨナラを体験してください。
くれぐれもハンカチのご用意をお忘れなく!
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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