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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2018.03.20
『収録デビュー』~ライターH氏
都心駅前の喫茶店なのに、その静けさはさながら森林だった。猫舌の俺はホットコーヒーをちびちび啜り、落ち着きなく時計とメモ帳をチェックしていた。スタジオ収録のスケジュールはこうだ。
ADの入り時間 …AM9:00
スタッフの入り時間…AM9:30
パチンコの演者入り…AM10:00
パチンコ収録終了 …PM1:00
昼休憩 …PM1:00~2:00
パチスロの演者入り…PM2:00
パチスロ収録終了 …PM5:00
この日はパチンコ番組とパチスロ番組の2本撮りだった。ADの俺は、演者が入る1時間前に現場入り。しかしながら、AM9:00ピッタリに現場に行けば良いというわけではナイらしい。
数日前――
社長「言うまでもないけど、遅刻は厳禁だからな」
――「分かっております」
社長「電車が遅れても許されないからな」
――「なんと!?」
社長「電車が遅延しても間に合うよう逆算して家を出るんだ」
――「はぁ…」
社長「そうだな、目安としては集合時間の40分前」
――「つまりADは9時入りだから…8時20分!?」
社長「そうそう! 無事に早く着いたら近くの喫茶店でも入ってなよ」
――「…分かりました」
社長「喫茶店で領収書もらったら経費で出すから」
――「ホントですか? ありがとうございます」
社長「ああ、とにかく遅刻さえしなきゃいい。遅刻は他のスタッフからの信頼を失うからな」
――「分かりました! 気を付けます」
自宅からスタジオまでは、乗り継ぎ2~3回でおよそ50分。つまり家を出るのは…早朝の7時半!「ADはキツい」と聞いてはいたが…これはとんでもないバイトを選んでしまったかもしれない。
初めての現場入り。
スタジオに入ってからの動きを何度もメモ帳で確認し、コーヒーを飲みきって席を立った。スタジオの場所は聞いているが、実際に行ったことはない。少し早めに入る必要があった。
渡された地図を手に歩いて行くと…そこにあったのは、どこからどう見ても普通のマンション。しかも築25年は経ってそうな、少し古めの外観である。地図を見間違えたかと思ったが、建物の名前はメモと符合している。おそるおそる階段を上がり、部屋番号を確かめる。ここ……本当にスタジオなのか!? 前日手渡された鍵を、ゆっくりと鍵穴に挿入。今にもマンションの住人が出て来て通報されそうだ。鍵を回してみるとカチャッと音がし、古びた鉄のドアが開いた。どうやらこの部屋で間違いないらしい。
想像していたスタジオとは全く違った。普通のマンションの一室である。玄関に入り、部屋の間取りを確認する。左手にキッチンとトイレ、右手には和室が1部屋。そして廊下の奥に2部屋だ。奥の洋室は生活感が溢れており、まるで普通に人が住んでいるかのよう。賃貸か分譲かは分からないが、普通のマンションをスタジオとして使っているのだろう。そう解釈し、仕事の準備を始めようと思ったそのとき、明らかにベッドが軋んだ!
俺「わあぁぁぁ!!」
ベッドの掛布団がたしかに膨らんでいる! 誰か寝ているではないか! やっぱり普通に人が住んでいるマンションじゃねーか!! あまりの出来事に固まる俺。そっと観察してみると、体格のいい大男が寝息を立てている。これは起きた瞬間に強盗と間違えて殺されるかもしれない。早く逃げねば……
大男「お、おお?」
――「あわわわ…」
大男「もうそんな時間か?」
――「へっ!?」
大男「いま何時だ?」
――「…8時50分です」
大男「そうか。ちょっとテーブルの上からタバコ取ってくれ」
――「は、はぁ…」
タバコをおそるおそる大男に渡すと……
大男「うわぁぁ、誰だお前っ!?」
――「エッ? エッ? ○○(制作会社)の者ですけど」
大男「なんだ、社長さんとこのADか。そういや新人が来るとか言ってたな」
――「そうです。新人の五十嵐です。よろしくお願いします」
大男「ディレクターの松山(仮名)だ、よろしく」
松山Dはベッドから起き上がり、タバコに火を点けたのち、俺をまじまじと観察した。
松山D「しかし…スゲー髪型してんな」
――「はぁ…はい」
松山D「外国人の強盗が入ってきたと思ったぞ」
――「すみません」
松山D「なにも謝ることねーよ。あ~、眠い」
――「ここに住んでるんですか?」
松山D「こんな女子みたいな部屋、住めるかよ」
たしかにインテリアや内装は女子の部屋といった雰囲気だ。
松山D「明け方までロケやって、その現場から直で来た」
――「ロケ?」
松山D「ああ、ドラマのロケな」
――「ドラマ!? ドラマのDもしてるんですか?」
松山D「そうだよ。別にフツーだろ?」
くっ…カッコイイ! 見た目は熊のような大男だが、映像業界の一線で活躍しているようだ。
松山D「ほら、俺と喋ってるヒマあるのか? 怖い先輩が来ちまうぞ」
――「はい、準備始めます」
松山D「俺は本番までもう一眠りするから、演者が入ったら起こして」
――「了解です」
急いで収録の準備に取り掛かった。スタッフ・出演者用の麦茶を作り、軽いおやつの用意。そしてパチンコを設置する枠の準備。そうこうしていると先輩ADがパチンコ台を持って現れたので、2人で協力して枠へと取り付けた。玉の循環システムが問題なく稼働するかを確かめた頃、スタッフが続々と集結。そしてカメラや照明の準備が整ったAM10時、いよいよ出演者が現場に入った。
当時、一世を風靡した「ボキャブラ世代」の某お笑いコンビである。俺も例に漏れずその2人のファンだったが、平静を装いADの仕事をこなしていった。ちなみに番組の内容は新機種紹介である。
ライターH氏の凄み。
本番が始まってからは、玉の循環システムにパチンコ玉を補充する作業に徹した。スタジオでパチンコの収録をする際は、この作業が欠かせない。テレビには映らない、地味な苦労が隠されているのだ。ちなみにメーカーショールームや実際のホールであれば、フルオートの玉循環システムが完備されているため、この作業が必要ない。ショールームでの撮影が許可されない場合、このように台を借りてきてスタジオ収録となる。
AM10時から始まったパチンコの収録はPM1:00くらいに終わり、そこから1時間ほど昼休憩。もちろん昼食用の弁当を取りに行くのも俺の仕事だった。昼食後はパチンコ台を片付け、またしても借りてきたパチスロを設置。某お笑いコンビはここで帰り、入れ替わりでパチンコ・パチスロライターの2人が現場に入った。
このライターの1人が、近年パチ7編集長とも仲良くしている某メーカーの偉い人。某CS放送局の代表取締役も兼任しているといえば、名前を出さずともお分かりいただけるだろう。そう、俺が初めて生でお会いしたパチンコ・パチスロライターは、このH氏だったのである! もう1人の出演者は、のちに同じ雑誌の先輩となる「元祖スロドル(パチスロアイドル)」。
当時は女性ライターが珍しく、この方はまさにスロッター達のアイドルだった。俺が読んでいた攻略誌のヒロインでもある。ホールバイト時代の先輩・ぶんちゃんが「サイン貰ってきて」と言っていたが、当然そんなこと言えるわけがない。
このパチスロの収録はかなり大きな衝撃だった。当時は無料動画など存在せず、動画といえばCS放送と出版社が稀に出すVHSやDVDくらい。学生の俺は当然CSなど加入していないため、パチスロライターの解説を見聞きするのは初めてだった。
この頃はAT機が盛り上がり始めた時期で、斬新なシステムを採用した機種も多かった。循環システムの要らないパチスロの収録中は割と余裕があり、H氏の解説をじっくり聞いていたが、それでも分からないことばかり。もちろんH氏の説明が下手だったのでは断じてない。そこで俺は気が付いた。
詳しく知っていると思ったパチスロ。しかしそれはまだほんの上辺だけで、知っていると思い込んでいただけでは――!?
各機種のシステムや内部数値を把握するのは容易い。攻略誌の機種ページを丸暗記すればいいだけだ。しかし、それで本当に「パチスロに詳しい」と言えるのだろうか。もっと根源的な「パチスロの仕組み」を知らないと、パチスロに詳しいとは言えないのではないだろうか――。
カメラが止まり休憩に入るたび、元祖スロドルはH氏に質問攻め。それを面倒がるでもなく、1つ1つ丁寧に返していくH氏。
スロドル「なんで目押し不要で小役が連続するの?」
H氏「普段は高確率で成立してて、それを制御で蹴って…」
スロドル「なんで当たったのにスグに発動しないの?」
H氏「当たったら潜伏ゲーム数を抽選で決めて…」
なにを訊かれても動じることなく、即答で返していく。なお、このときのH氏はホールコンサルタント業もやっていたらしい。これがパチンコ・パチスロライターという職業か!「スロプロ」には幾度となく出会ったが、彼らとは全く違う。言うなれば解説のプロだ。H氏は俺が読んでいた攻略誌の所属ライターではなかったが、俺はこのたった数時間でガッチリ心を掴まれたのだった。
芽生えるもの。
収録後、先輩が運転する車に乗って制作会社の事務所へ。
社長「おう、どうだった? スタジオ収録は」
――「いや~、ライターさんってスゴいですね。知識量が」
社長「ハハ! まあHさんは特別だけど、他にもスゴいヤツはゴロゴロいるよ」
――「ホントですか!?」
社長「ああ。立ち回りが上手いヤツ、目押しが上手いヤツ…」
――「へー、お会いするのが楽しみです」
社長「ふふ、五十嵐もライターになりたいなんて言い出すんじゃないだろうな?」
――「いやいや、俺なんてとても…」
とは言いながらも、この日、将来の選択肢が増えたことは間違いない。それまでは遠い存在で、ただただ眺めるだけだったパチスロライターという職業。それを始めて生で目の当たりにし、リアルな存在として認識できた。この経験がなかったら、ライターを目指そうなんて考えには一生至らなかっただろう。
自身のため、最短距離で勝利への道筋を探し出すスロプロ。それとは全く異なり、他者にパチスロの勝ち方や楽しみ方を伝えるライター。
やっとプロの映像の現場に足を踏み入れたというのに、俺の心には新たな気持ちが芽生えていた。
「もっとパチスロに詳しくなりたい」
こうして俺は、より深くパチスロの世界にのめり込んでいった。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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