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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2018.03.06
『トビラ-後編-』~パチンコパチスロメディア業界へ
その階段は、弁当屋の脇にひっそりあった。時計を確認し、汗を拭きながら階段を上がる。薄暗い階段には、蝉の声が響いていた。4階のドアはいかにも重そうな金属製で、中の様子は窺えない。ドアの中央には、社名が入った小さなステッカーが貼ってあった。インターホンはない。呼吸を整え、おそるおそるノックした。 ドアが開くと、しばらくしてポロシャツ姿の男性が顔を出した。
男性「キミが五十嵐くん?」
――「はい、はじめまして! よろしくお願いします」
男性「よろしく。さ、暑いから入って入って」
――「失礼します!」
事務所に入ると、玄関にパチスロの実機が置いてあった。ミズホの「マリーンバトル」だ。
男性「そのマリンバ、収録で使ったやつね」
――「へ~、そうなんですね」
男性「じゃあ、そこのイスに座って。冷たい麦茶でいい?」
――「はい、ありがとうございます」
リュックから履歴書を出し、そっとテーブルに用意した。
男性「はじめまして、社長のYです」
――「よろしくお願いします」
社長「キミのことは山さんから聞いてるよ。どれどれ…」
社長は履歴書を手に取り、小さく頷きながら読んでいる。
社長「いろんな資格持ってるんだな」
――「高校が商業科だったもので」
社長「車の免許があるのもいいね」
――「田舎から出て来てからは乗ってませんが」
社長「車は社員が運転するから、キミには原付を貸すよ」
――「はぁ…(え? 採用?)」
社長「いつから出られる?」
――「いや、あの、業務内容は…」
社長「ああ、ADは初めてか。主に雑用かな」
ADの業務内容は容易に説明できない。この会社では…
■収録現場の準備・後片付け ■現場でのディレクターサポート ■粗編(編集の初期作業) ■MAスタジオへのテープ運び ■買い出し …etc. |
要するに、収録やその後の編集作業を円滑に進めるための雑用係だ。それらをこなしながら、徐々にディレクターの演出技術やVTR編集を学んでいく。
社長「まあスグに慣れるから心配ないよ」
――「ありがとうございます」
社長「もう夏休み? いつから出られる?」
――「いつでも大丈夫です」
社長「じゃあさっそく、〇日から出てくれるか?」
――「3日後ですね、分かりました」
社長「その日はスタジオで収録なんだ」
――「スタジオ収録!?」
いかにもプロの現場らしい響きに、少しだけテンションが上がってしまった。同じ専門学校の同期でも、スタジオ収録の現場に出たヤツは少ないハズだ。テレビ番組でよく見る「スタジオ」で、まさか自分が仕事することになるとは!
社長「じゃあ社員と事務所の設備を紹介するよ」
――「ありがとうございます」
社長「こいつがS。ディレクターをやってくれてる」
――「五十嵐です。よろしくお願いします」
Sさん「…よろしく」
社長「あとAってヤツがいるんだが、今日はMAに行ってるから次回紹介するよ」
――「分かりました」
社長「社員は僕を含め3人。小さい会社だろ?」
――「いえいえ、そんな…」
社長「で、こっちの小さい2部屋が編集室。VTRのノンリニア編集をするとこ」
――「ノンリニア編集?」
社長「ああ、学校はまだフィルムなんだっけ? テレビではVTRをビデオで撮影して、パソコンで編集するんだ」
――「そうなんですね」
社長「キミにも手伝ってもらうよ」
――「ええ!? できるかな…」
社長「若いからスグ覚えるでしょ」
――「はぁ、頑張ります」
この頃の俺はパソコンをほとんど使っておらず、猛烈に不安になったことを覚えている。今ならもっと即戦力として役に立てそうだが…。
社長「じゃあ次の収録は…朝8時半にココに来て」
――「分かりました。なるべく黒っぽい服装ですね」
社長「はは、そんな気にしなくていいよ」
スタッフの服装は黒が望ましい。光を反射しないためだ。
――「あと髪型は…」
社長「ああ、そのままでいいよ」
――「え? ホントですか?」
社長「こだわりがあるんだろ? 別に切らなくていいよ」
そう、このときの俺の髪型は…
▲若かりし頃のドレッドラッシー
ドレッドヘアだった。今にして思えば、ドレッドで面接に行くのもどうかしている。ホールでのバイトを辞めたあと、このタイミングしかないと思い、憧れのドレッドにしたのだった。山さんが「社長は髪型とか気にしないよ」と言うので、そのまま面接を受けることに。社長からは「スタッフから顔を覚えてもらいやすいから、むしろそのままのほうがいい」とまで言われた。
そして翌日――。
ブンちゃん「おい、見ろよ! リーチ目出たぞ!」
――「ちょ~、ブンちゃんだけズルいわ」
俺とブンちゃんは並んで「ハードボイルド2」を打っていた。専門学校の実習が終わったあとも2人の予定がなかなか合わず、連れ打ちの約束を果たせずにいたのだ。
▲4号機「ハードボイルド2」
「ハードボイルド2」のゲーム性は前回紹介した通り。ART中に成立したボーナスは全て一旦ストックされ、ART終了後に放出される。4号機は5号機と違い、ボーナスと小役の同時成立(重複フラグ)は存在しない(※例外アリ)。そのためART中のボーナス成立ゲームでは、リーチ目やハズレ目が出現する。もちろんART中にボーナスを引き、そのあとにハズレを引いた場合もリーチ目が出現する可能性がある。なお、ART中にBIGを揃えてしまうとARTが終わってしまうため、BIGの入賞だけは絶対に避けねばならない。
ブンちゃんはART中にリーチ目を確認したところだ。つまりART終了後に必ず何かしらのボーナスが放出される。
ブンちゃん「さっきのリーチ目だとバケもありそうだな」
――「当たってるだけ羨ましいですよ」
俺も何度か当たっているものの、2度入ったARTは、いずれもボーナスをストックできず駆け抜け終了。お昼を過ぎた今なお、現金投資が続いている状況だ。しかし、諦めたわけではナイ。BIGとARTがループすれば、2000~3000枚などあっという間。BIG確率が低いためきっかけを掴むのは容易でないが、1度掴めば夢のあるゲーム性だった。
設定 | BIG | REG | 出玉率 |
1 | 1/485.5 | 1/829.6 | 94.7% |
2 | 1/445.8 | 1/799.2 | 98.6% |
3 | 1/412.2 | 1/771.0 | 102.5% |
4 | 1/381.0 | 1/762.1 | 106.6% |
5 | 1/352.3 | 1/744.7 | 111.0% |
6 | 1/286.2 | 1/720.2 | 119.9% |
BIG確率はご覧の通りなので、150GのART中に引くのはなかなか難しい。それでも確率の偏りにより、想像以上にボーナスをストックするケースは度々あった。 ブンちゃんのARTは残り50Gほどに。
ブンちゃん「さて、ボーナスチェックが楽しみだな」
――「BIGならハイパー確定だからデカいっすね」
ブンちゃん「またBIGからARなら最高だけど…」
――「あっ!?」
ブンちゃん「どした?」
――「今、液晶にブルース・リーがいたような」
ブンちゃん「ああ、スイカ対応だっけ? チェリーか?」
「ハードボイルド2」の演出は総じてシンプル。ルーレット演出による小役ナビやボーナスの当否を知らせる告知もあるが、演出頻度はそこまで高くない。そして秘かにアツいのが「ミニキャラ」の出現・通過だ。基本的に各ミニキャラには対応役が存在し、それを否定すればボーナスが確定する。中には出現時点でボーナス濃厚となるものも。ちなみにミニキャラの出現・通過には効果音すらナイ。レバーONで音もなく出現し、スグに消えるものもある。脳トレの間違い探しに似た感覚だ。
――「もう投資3万だから、そろそろ…」
左リールに1確目の2連BARを狙うも、ズルッとスベって中段にスイカが停止。
ブンちゃん「スイカか…」
中リールに白7・スイカ・白7を狙うとすんなり止まり、中段でスイカがテンパイした。
――「スイカっすね…」
肩を落として右リールにスイカを狙うと、スイカがハズれてリーチ目に!
ブンちゃん「ぎえぇぇぇ~、なんと美しいリーチ目!」
――「この中リールの白7・スイカ・白7がたまらん!」
コレがBIGで、ノーマルBIGがスタート。
ブンちゃん「知ってる? BIGの獲得枚数が400枚超えると、ARが当たりやすくなるんだってよ」
――「いやいや、オカルトでしょそれ」
ブンちゃん「攻略誌で見たんだもん」
当時はオカルトを掲載する攻略誌も多かったため、こういった類の情報も多かった。
ブンちゃん「ほら、ハズシ引っぱって400枚超えないと」
――「パンクしたら困るんですけど」
たまたま3度目のJACインフラグ成立が遅く、獲得枚数は400枚オーバーに。そしてBIG終了時にARTの当否を告知するルーレット演出が発生。白い玉が「あたり」に入ればART確定だ。俺とブンちゃんが固唾を飲んで見守る中、玉は不自然な動きで「あたり」にコロリ!
――「よっしゃ!」
ブンちゃん「ほら、やっぱり400枚超えると入るわ」
ブンちゃんは得意気だ。そしてブンちゃんのARTが終わり、いよいよボーナスチェック。ストックの有無はココで1つずつ知らされる。ルーレットで「BIG」や「REG」が止まればボーナスが放出され、「AR」が停止すればART1000G確定。残り850GのARTがスタートする。ブンちゃんのルーレットは「BIG・BIG・REG」だった。
――「これはBIGですね」
ブンちゃん「だな」
しかし、停止したのは無情にも「REG」!
ブンちゃん「っざっけんな! マジかよ!」
ARTループの夢が潰え、渋々REGを揃えるブンちゃん。しかし、REG終了後1G目のレバーを叩くと…
ブンちゃん「ん!? 今、パトカーが通過したような…」
――「小役じゃないすか?」
ブンちゃんが左→中とリールを止めると、左リール下段BAR・中リール中段赤7のボーナス2確目が降臨!!
――「わ、わぁ~~~!!」
ブンちゃん「ストック1発だけじゃなかった!」
――「そのボーナス後1G目のリーチ目ヤバすぎますよ!」
ブンちゃん「マジたまらん!」
ART終了後に放出されたREGやART非当選のBIG後は、この1G目が肝心。レバーONで強めの演出やミニキャラが出現すれば、さらにストックが残っている可能性大=リーチ目出現の可能性大となるわけだ。これがたまらなくアツかった! ブンちゃんは再びハイパーBIGからARTへ。
ブンちゃん「REGで終わりと思いきやコレモンですわ!」
――「もう何枚出るか分かりませんね」
ブンちゃん「よっしゃ! どうせ設定なんて入ってねーし、夕方まで打ったら飲み行こうぜ。ラッシーのADバイト決定祝いだ!」
――「ありがとうございます! 俺、まだ酒飲めないけど」
ブンちゃん「ほんと〇〇ぴょんのサインだけは貰ってきてね」
――「貰えるかっ! ADがサインくれってオカシイだろ!」
ブンちゃん「そこをなんとかお兄ちゃんのためにぃ~」
――「よそ見してるとBIG入賞しちゃいますよ」
ブンちゃん「俺、ラッシーと違って上手いから、そんなミスしないし」
――「はいはい、そっすね」
こうして俺は、パチンコ・パチスロ番組のADになった。ちょうどハタチを迎える夏のことだ。俺が今も持ち続ける「プロ意識」。それを教え、与えてくれたのが、他ならぬ制作会社の社長だった。次回は社長の熱い人間性が明らかに!? 社長本人から許可は貰っていませんがね。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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