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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2017.12.26
『逸脱』~禁断の獣王
横目でドットを捉えつつ、毎ゲーム祈るようにレバーを叩いた。たまにドットが動いても、ハズレパターンかリプレイナビばかり。頭上のデータ表示器を見るや否や、大きなため息が漏れた。完全ハズレを引いたのは、もう40Gも前のことだ。投資はすでに4万円を超えている。悔しいが撤退するしかない。これ以上追えば、次の奨学金受給日までの生活が苦しくなる。力なく立ち上がり歩きはじめると、ふと獣王で3連敗中であることを思い出し眩暈がした。ダメだ。高設定がツモれない。このままでは…。
あの初打ち以来、俺は「獣王」にハマっていた。ひとたび突入すれば、ボーナス同等の出玉を吐き出すAT「サバンナチャンス」。そのATが連チャン性を有しているのだ。ノーマルAタイプやCT機しか打ってこなかった俺にとって、これはあまりに大きな衝撃である。獣王で勝ちたい! あのサバチャンを飽きるほど連チャンさせたい! 俺はその一心で攻略誌を買い漁り、来る日も来る日も獣王の情報収集に明け暮れた。
AT抽選のメイン契機である「完全ハズレ」の見抜き方は完璧。順押しでも完全ハズレ目は存在するが、変則打ちならごくごく簡単に見抜くことができる。たとえば逆押し2連赤7狙い。赤7が上・中段に停止すればチェリーorBIGで、中・下段に止まればチェリーorボーナスor完全ハズレだ。後者の出目でチェリーを否定し、ボーナスも非当選なら完全ハズレと判断できる。出目こそ違えど中押しも似たようなもので、通常時は第1停止でのチェリーorボーナスor完全ハズレ目をひたすら待つ形になる。
攻略誌から得た最も大きな収穫は、「デモフラッシュ」による内部状態判別だった。BETせずに台をしばらく放置すると、リールバックライトのデモフラッシュが発生する。その際、滞在している状態によってフラッシュのパターンが異なるのだ。デモスタート時は、まず一旦全てのバックライトが消灯する。注目すべきはそのあと。右リール上段のバックライトだ。
低確中…一拍おいて点いたら、以降光りっぱなし
高確中…スグに光って一旦消灯し、再び点灯
完全ハズレ時のAT当選率には、低確・高確それぞれで設定差がある。
設定 | 低確中 | 高確中 |
1 | 4.3% (1/23.3) | 21.5% (1/4.7) |
2 | 7.0% (1/14.2) | 30.9% (1/3.2) |
3 | 4.3% (1/23.3) | 41.0% (1/2.4) |
4 | 9.8% (1/10.2) | 49.6% (1/2.0) |
5 | 4.3% (1/23.3) | 60.5% (1/1.7) |
6 | 92.2% (1/1.1) | 92.2% (1/1.1) |
設定を推測するには完全ハズレをどちらの状態で引いたか正確に知る必要があったため、このバックライト判別は非常に役立った。しかし、それだけではない。
獣王の朝イチには大きな秘密があった。 設定変更時は状態移行抽選が行われ、その振り分けは下記の通り。
設定 | 低確へ | 高確へ |
1 | 94.9% | 5.1% |
2~6 | 0.4% | 99.6% |
つまり朝イチでデモフラッシュを確認し、高確フラッシュなら設定2~6の可能性大、低確フラッシュなら設定1の恐れが高いということになる。朝イチの獣王のシマはデモフラッシュを判別をするのが当たり前だった。もちろん高設定の据え置きでは使えないし、設定変更後に高確が終わるまで回すという対策を講じるホールも少なくなかった。また、あえて設定2にしてプレイヤーに打たせるホールも多かった。
当然、俺もデモフラッシュをチェックして設定2以上に座ったハズだが…。設定2の出玉率はフル攻略なら100.7%。しかし、これはあくまでシミュレート上の話。ATに恵まれなければ、大きく負けることも珍しくない。そう。このころの俺は度重なる大敗で、精神が相当参っていたのである。このまま設定2を打たされ続けたら負けてしまう。ホール選びを見直さなければ。そこで考えついたのが、少々危険を伴うホール選びだった。
駅前のE店――
前にも当コラムに登場した、あのサクラのような軍団が根城にしているホールだ。最近はめっきり打ちに行かなくなっていたが、データを見るために立ち寄ることはしばしばあった。件の軍団は相変わらずで、最近は獣王を重点的に攻めている様子。おそらくホール側から高設定の位置を教えてもらっているのだろう。いつ見に行ってもメンバーがドル箱を積んでいた。とはいえ、設定6ではなさそうだ。設定6はエクストラ設定ゆえ、小さなE店で連日投入することはできない。無論、露骨に設定6をツモらせ続けたら、あまりに目立ちすぎて鈍感な他の常連客も気付いてしまう。おそらく設定3~5あたりを連日ツモらせているのだろう。
E店の入場方法は抽選でなく並び順。要するに軍団より先に並べば、ヤツらが座る予定の台を取ることも可能! もし絡まれたとしても、命までは取られまい。ケンカに自信など1つもないが、いざとなれば身を守るくらいはできるハズ。
――そして次の休日
俺は開店の1時間前から並んで先頭を確保。件の軍団はおよそ15分後に訪れ、俺を見つけるやザワつきはじめた。
いざ開店。俺は真っ直ぐ獣王のシマへ。ゆっくり台を選ぶヒマはないので、とりあえず前日最も出ていない台を確保。少し遅れて軍団がゾロゾロと獣王のシマ入ってきたが、確保したのは1台だけだった。いつもは最低でも2台は打っている。つまり…。軍団の1人が俺を睨みつけ、分かりやすく舌打ち。その瞬間、この台が「当たり」なのだと理解した。気を落ち着かせデモフラッシュをチェックすると、案の定、高確フラッシュだった。ちなみに両隣は低確フラッシュ。つまり対策はしていない! 作戦が見事にハマったのだ!!
――およそ6時間後
AT初当たりは3回で、高確からが2回、低確からが1回。挙動から設定6は否定している。奇数設定は低確からまず当たらないので、設定4と予想するのが妥当だろう。投資は2万円弱で、出玉は1500枚を超えている。大勝ちはなさそうだが、このままプラス収支で押し切れそうだ。俺はこれまでの獣王とは違う展開に機嫌を良くし、鼻歌交じりでトイレに向かった。閉店近くまでブン回すなら、なるべくトイレ休憩は少ないほうがいい。そう思い用を足していたら、不意に肩に腕を掛けられた! あまりのことに言葉を失う俺。用を足しているので、この上なく無防備な状況である。開店前から溜め込んだせいで、俺から放たれる水流は止まる気配がない。
「お兄さん、出てるね」
見覚えがある。軍団の中でも特に若いヤツだ。仮にAとしておこう。歳は俺と同じか、1つ2つ下だろう。
__「まあ、ボチボチ」
A「あの台狙ってたの?」
__「いや、たまたま」
A「へえ~、そう。俺の友達が狙ってたんだ」
__「そうなんだ」
A「そうなんだじゃねーよ。分かってんだろ?」
__「なにが?」
A「お前Tの仲間だよな?」
Tは専門学校の友人で、ゲーセンでバイトをしている。軍団はTのバイト先の常連客でもある。
A「(軍団の)先輩がさ、今日は見逃してやるってよ」
__「……」
A「またやったら、分かるよね?」
__「だから、たまたま…」
A「たまたまでも困んだよ!」
__「……」
A「Tの連れだから穏便にすませてーんだ。頼むよ」
今にして思えば、命知らずだったと思う。若さゆえ、仮にモメたとしてもどうにかなるだろうと楽観的に考えていた。しかし軍団の上の連中は得体が知れない。現代の「軍団」とは明らかに違う、半グレ・チンピラの「軍団」だ。たしかなのは常識が通用しないということだけ。今日と同じ手段を使えば、また獣王の高設定域を打てるが…。
__「分かったよ」
A「あー、助かるわ。今日は思う存分抜いていいから」
__「……」
この日は結局22時すぎまで打ち、およそ2500枚を流した。最終的な予想設定も4のまま。獣王で高設定域を打ったのは、コレが初めてだった。 勝ち額には満足だが、気持ちは晴れなかった。なぜ正しく打っている俺が、あんなヤツらに屈しなければならないのか――。
翌日の夜、Tから電話が入った。
T「おい、アイツらから聞いたでー」
__「お前に言われると思った」
T「E店には行くな言うたやろ」
__「いやそうだけど」
T「アイツら必死やからな」
__「でも俺、悪いことしてねーだろ」
T「いや、待てて。世の中、良い悪いだけやないで」
__「なんだよそれ」
T「俺は心配してんねんで?」
__「……」
T「前も言ったけど、あのナンバー2は元ヤ〇ザや。本気で怒らせたら、俺でも助けてやれんて」
__「分かってるよ」
T「納得できんかもしれんけど、世の中正しいことばかりやないんや」
__「母ちゃんかよ」
T「な、頼むから退いてくれ」
__「分かったよ。もうしない」
T「約束やで! ほな、今度飯でも行こ」
__「はいはい」
俺だってこうなることは予想していた。でもリスクを負ってでも、獣王の高設定が打ちたかったのである。振り返れば獣王は、完全に「遊技」の領域を逸脱したマシンだったと思う。それまでのノーマルAタイプとは、投資額も一撃性もケタ違いだ。俺もそれに魅せられ、冷静さを失っていたのだろう。当時のホールには、素人が踏み入ってはならない領域がたくさんあったのだ。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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