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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2017.09.19
『地の獄』-前編- ~裏道
「ド~ン! 大当たりっ!」
聞き慣れた声と台枠ランプが、ボーナスの始まりを祝福する。その瞬間、たしかになにかが脳内を駆け巡った。アドレナリンかエンドルフィンか、そういった類が分泌されたのだろう。これがいわゆる「脳汁」というヤツか。そりゃ脳汁だって出る。こんな状況であれば否が応にも…。
この日は休みで朝イチから稼働するつもりだったが、起きたらすでに正午前。連日のバイトで、かなり疲れが溜まっていたらしい。急いで身支度を整え、原付に跨る。目指すはあのB店だ。線路沿いの道に出ると、思わず目を細めた。路面は薄いピンクで覆われており、照り返しが眩しい。田舎から出てきて間もない俺には分からなかったが、この年のサクラは例年より早かったらしい。実家を出てちょうど1年が過ぎた。寂しいと思ったことは1度もナイ。学校もバイトもパチスロも、全てが充実していたからだろう。今年はどんな1年になるだろう。そして、どんなパチスロがリリースされるだろう。ピンクの絨毯の上を走りながら、そんなことを考えていた。
B店に着き、真っ先に向かったのは「デカドンちゃん2」のシマだ。導入から間もないにもかかわらず、稼働状況は少し寂しい。それでもボーナス出現率の優秀な台が空いていたので、迷わず打ち始めた。
「デカドンちゃん2(通称:デカドン)」
2001年春にアルゼからリリースされた大量獲得マシン。ハナビシリーズの第4弾に数えられるが、リール配列・液晶演出・フラッシュなどは「ドンちゃん2(ドン2)」と一緒なので、新機種というより「ドン2のスペック違い」といった認識だった。基本的なゲーム性やリーチ目もドン2と一緒だが、BIG中だけは大きく異なる。
ドン2のBIG中については8/8更新の『壁』で記した通り。10枚役の提灯成立時に複合14枚で獲得すれば、獲得枚数を大きく伸ばすことができる。しかし手順はビタ押しなので上級者向けと言える。BIGの獲得枚数は400枚前後で、複合ビタをキメまくると500枚を超えることもある。
対してデカドンのBIG中はとても簡単。打ち方は概ね「大花火」と一緒で、レバーON時に打ち上がる花火が成立役を示している。「デカ花火」ならドン・提灯・提灯(15枚役)成立なので、左リールに三連ドンを狙い、中・右リールは適当打ちでOK。「緑花火」ならJACイン成立。ハズシ手順はドン2と全く一緒で、2コマの余裕がある。言うなれば「ハズシが2コマになった大花火」だ。ハズシさえ完璧なら中級者でも難なく500枚超を獲得でき、600枚を超えることも珍しくない。ただしBIGの獲得枚数が多いぶん、ボーナス確率は重い。
ドンちゃん2 | デカドンちゃん2 | |||
設定 | BIG | REG | BIG | REG |
1 | 1/297 | 1/585 | 1/431 | 1/655 |
2 | 1/282 | 1/528 | 1/409 | 1/630 |
3 | 1/264 | 1/512 | 1/381 | 1/606 |
4 | 1/252 | 1/468 | 1/356 | 1/585 |
5 | 1/244 | 1/409 | 1/292 | 1/409 |
6 | 1/240 | 1/364 | 1/240 | 1/364 |
設定1~5のボーナス確率はドン2に比べ遥かに重い。改めて見ると、よくこんな台を打っていたなと思うほどだ。ただし設定6に限ってはドン2もデカドンも変わらない。デカドンの設定6が、いかにエクストラ設定だったかよく分かる。1度も設定6を使わず撤去日を迎えたホールも多いだろう。ちなみにデカドンの設定6の機械割は135%超と言われている。対する低設定域は決して甘くなかった。
ドン2の面白いところといえばBIG中の複合14枚獲得手順だ。それを削ぎ落とし、ボーナス確率も重い。そんなデカドンに対する世間的な評価は低かったと言わざる得ない。それでも俺が好んで打ったのには2つ理由があった。1つは通っているB店にドン2はなく、デカドンがあったため。もう1つは、まだ技術的に成熟しきっていない俺にとって、技術介入の難易度が低くラクだったため。ここでしつこくドン2を打っていたら、今より目押しが上手くなっていたかもしれない。
初BIGまで8Kを費やしたものの、その後は面白いようにボーナスが繋がる。打ち始めから3時間が過ぎる頃には、すでに2箱半の出玉を得ていた。6ではナイにしろ、いつもの低設定とは明らかに異なる感触がある。このまま打ち続ければ大勝は間違いない。BIGを揃えるたび、脳内をなにかが駆けていく。さて、この勝ち分でなにを買おう。服か、それともゲームか。ゴキゲンで打っていると、ふと隣に女性が着席した。打つでもなく、コチラを見ている。気にせず自分の台を回していると、肩をポンポンと叩かれた。なにか言っているようだが、声が小さくてよく聞こえない。
俺「なんですか?」
女性「ソレワタシウッテタダイ」
俺(え!? 外国の人?)
女性「ソレ サッキマデ ワタシ ウッテタダイ」
俺(私が打ってた台?)
女性「ズルイ クヤシイ」
俺「エッ? いや…だって」
座る際に下皿やドル箱周りをチェックしたが、台を確保している様子はなかった。俺が彼女の台を取ってしまったとは考え難い。しかし東南アジア出身と思しき女性は、今にも泣き出しそうな雰囲気だ。譲るか? いや、でも……
俺「ごめんね、でも空いてたから」
女性「オカネ チョーダイ」
俺「はいぃ?」
女性「モウ ダイ イラナイ オカネチョーダイ」
俺「それはダメだわ!」
女性「ダッテ ワタシ モウオカネナイヨ」
俺(いや、知らねーし…)
女性「ウッ、ウッ、ウッ、ウッ…」
俺「ちょ、泣かないでよ! 俺が泣かせたみたいじゃん」
そのときだった――。 1人のオバちゃんが俺と女性の間に割って入った。
オバちゃん「ダメだよ、そんなことして」
女性「ダッテ…」
オバちゃん「見てたよ、アンタさっきパチンコ打ってたでしょ」
女性「ダッテ オカネ モウナクテ」
オバちゃん「ほら、お兄ちゃんも困ってるから」
女性「デモソノダイ ワタシ アサウッテタシ」
俺はただ茫然と、そのやりとりを見ていた。
オバちゃん「しつこいと警察呼ぶよ」
女性「ケーサツNO! モウカエル!」
女性は涙をぬぐいながら出口へ駆けて行った。オバちゃんは仁王立ちでそれを見送り、全く仕方ないねと苦笑いを浮かべる。
俺「ありがとうございます! 助かりました!」
オバちゃん「ダメよお兄ちゃん、ハッキリ『あっち行け』って言わなきゃ」
俺「は、はぁ…すみません」
オバちゃん「このへんもたまに変な女いるのよ」
俺「はぁ…」
オバちゃん「ああやって金取ろうとしたり、勝ってる人に体売ろうとしたり」
俺「ホントすか?」
オバちゃん「お兄ちゃん大人しそうだから狙われたのかもね。気を付けなさいよ」
俺「は、はい。気をつけます」
オバちゃんはそう言うと、パチンココーナーへ消えて行った。やはりここは都会。田舎のホールとは違ったキケンが潜んでいるのだ。ホールには善良なプレイヤーだけが集うとは限らない。金の臭いを嗅ぎつけ、大なり小なり悪党も入り込む。改めてホールは大人の社交場で、若い自分はまだ弱者なのだと思い知らされた。しかしあのオバちゃん、どこかで会ったことがあるような…。このB店では見かけない顔だが、別のホールで会ったのだろうか――。イカンイカン。今は目の前のデカドンに集中しなくては。B店でここまで優秀なデカドンにありつける機会は滅多にない。結局この日は閉店までブン回し、流したメダルは4000枚強だった。
数日後――
正午を告げるチャイムが鳴った。級友とともに廊下へ出ると、そこにあのオバちゃんがいた。緑の作業服姿で、右手にはモップを持っている。
オバちゃん「お兄ちゃん、ここの学生さんだったか」
俺「ええ、そうです。アナタは…」
オバちゃん「清掃屋だよ」
俺「は~、なるほど! どこかで会っていた気がしてたんです」
オバちゃん「…あたしがパチンコ打つこと人には話さないでね(小声)」
俺「は、はい。分かりました」
オバちゃんは、俺が通っている専門学校の清掃員だった。学校の職員ではなく、清掃会社から派遣されているらしい。このあと俺とオバちゃんは、世間話やパチンコ・パチスロの話をする仲になっていく。
そしてある日――
オバちゃん「はい、おにぎり」
俺「俺に? ありがとうございます」
オバちゃん「東北人なら『すじこ』好きでしょ?」
俺「へー、岩手の人も好きなんですね?」
オバちゃん「そう。おにぎりといえば『すじこ』でしょ」
オバちゃんは旦那さんと2人暮らしで、子どもはいないらしい。同じ東北出身であか抜けない俺を、どこか息子のように思っていたのかもしれない。
オバちゃん「いや~、昨日パチスロでいっぱい負けちゃってさ」
俺「はぁ…どこで打ったんですか?」
オバちゃん「ウチの近所のL」
俺「L…行ったことないですね」
俺の最寄り駅から4駅隣の街にあるホールだ。名前だけは知っているが、実際に入ったことはナイ。
オバちゃん「常連で仲が良いお兄ちゃんが『この台そろそろ出るよ』って言うんで粘ったんだけど」
俺「そろそろ出る?」
オバちゃん「ドハマリ喰らって大敗よ」
きっと「獣王」か「インディージョーズ2」を打ったのだろう。常連のお兄ちゃんがどれほど知識のある人かは知らないが、それら以外「そろそろ出る」台なんて存在しない。このころはAT機が登場したばかりで、それらを除けば天井を搭載している機種はなかった。ATや「獣王」・「インディージョーズ2」については、また別の機会に語るとしよう。
俺「打ったの獣王?」
オバちゃん「いや、サンダーとドン2」
俺「サンダーとドン2に『そろそろ出る』とかナイから」
オバちゃん「だって常連のお兄ちゃんが言うんだもん」
俺(AT機かと思ったらオカルトかよ)
オバちゃん「たまにホッパーがいっぱいになって台を開けるでしょ? それを見て『そろそろだ』って言うんだもん」
俺「う~ん、あまり信じないほうが良いと思うよ。ハマれば出るなんて根拠ないもん」
オバちゃん「そうかい。気をつけるよ」
常連のお兄ちゃんに悪意があったかは分からない。純粋にオカルトを信じている人もいる。いずれにせよ「ただのオカルト」だ。そう思ったのだ、このときは。
だが、ほどなくこれが間違いだったと気付かされる。そして幼き日の俺は、遂に健全営業のウラに潜むアレと対峙することになる――。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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