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パチ7虎の穴
2026.04.08
【ロマンティックパチンカー】No.18 貴様なんぞに娘はやらん

10年前、初めて我が子を抱き上げたあの日のことを、今でも鮮明に覚えている。
里帰り出産を希望していた妻は、出産予定日の2ヶ月前に実家に帰っていた。その実家近くの病院までは、当時住んでいたアパートからどんな交通手段を使おうとも5時間はかかる。予定日の3日前、21時ころに陣痛が始まったため出産には間に合わず、産まれた翌日に病院へ駆けつけることになった。
長旅を経て辿り着いた病室のドアを開けると、7月の強い日差しはレースカーテンに受け止められ、室内を優しく照らす光となっていた。その光に包まれ、すやすやと眠る赤ん坊、それが我が子だった。
産まれたての赤ん坊というものを初めて見た。あまりにも小さい。作り物のようだ。しかし、その胸元は確実に上下しており、命を宿していることを伝えてくる。
「だ、抱いてもいいかな」
そう言うと、妻は笑って頷いた。
抱き上げた赤ん坊は軽く、柔らかく、温かかった。胸の奥からじんわりと、味わったことのない感情が溢れ出す。もしかすると、これが愛というやつか。サウザーもこの子を抱けば、聖帝十字陵の建設を思いとどまったはずなのに、と思った。
「やべえ、かわいすぎて死ぬかもしんねえ」
初めての我が子を抱きながら、妻とこの子の未来を想像した。どんな人生を歩むのだろうか。幼稚園では友達ができるといいな、小学生になったらやりたいことはなんでもやらせてあげよう、中学生になったら、高校生になったら…。とにかく健康に生きてさえくれれば、それだけで俺たちは幸せだ。
会話は続き、妄想はついにこの子がもしも結婚することになったら、というところまで辿り着いた。俺は幸せに包まれながら言った。
「結婚相手に俺みたいな男をつれてきたら、どうする?」
すると、部屋の空気が一変した。どうやら地雷を踏んでしまったようだ。妻は、まるでチンピラのような顔をしながら吐き捨てるようにこう言った。
「とりあえず、最低でも目潰しはきめるよね」
当時の俺は、スリルを求めていた。荒い台ばかりを好んで打ち、「生活費に手をつけるという背徳感こそが、パチスロを打つにあたり最高のスパイスとなる」であるとか「消費者金融に融資を断られてやっと一人前」といった発言を真顔でするような、ダメなスロッターであった。
これが友人だったり職場の同僚ならば「サバイバル能力がありそうな頼もしい人だなあ」と微笑ましく思えるのだろうが、娘の結婚相手となると話は別だ。妻は正しい。こんなやつがきたら、目潰しの1発や2発喰らわせなければならない。
だが、子を授ったことで俺は変わった。初めて背負う責任というものに真正面から向き合い、それまで怠惰に過ごした人生を精算するかのように仕事に励んだ。
その甲斐あってかどうにか人並みの生活を送れるようになり、暮らしにゆとりができた俺は、ホールへと舞い戻った。そんな今の俺のプレイスタイルは、まるで貴族がワイングラスを片手にレバーを叩いているような優雅なものであり、そこにはもはやスリルなど必要なかった。
ホールは戦場ではない。パチスロとは本来、このように付き合うべきだったのだ。そんな事に気づいた俺が、今1番ハマっているのがこの台だ。

マイジャグラー。ホールには様々なジャグラーがひしめきあっているが、俺はこの「マイ」一択だ。6の出玉率の高さが売りのマイだが、そこに惹かれているわけではない。
告知ランプが左下にある他のジャグラーとは違い、マイは中央に暗闇がある。ボーナスフラグの成立とともに、音もなく灯る青い光。その輝きを見るたびに、ある1人の女性を思い出すのだ。
世紀末を目前に控えた1999年2月、俺は恋をしていた。彼女の名前はリノア・ハーティリー。そう、あの名作RPGファイナルファンタジー8のヒロインである。 今では圧倒的にキスティス先生派の俺であるが、当時はまだ若かった。あのあざとさに見事にやられた。サイファーとの過去を知った際には嫉妬で狂いそうになったが、あんな奴としたキスの回数なんて俺が3日でぬいてやるぜ、と不眠不休でコントローラーを握り続け、サブイベントには脇目もふらず、一心不乱にエンディングを目指した。
それほどハマりにハマり、今だに我がゲーム人生トップ5内に君臨しているファイナルファンタジー8のイベントで、宇宙空間を彷徨うリノアを救い出すという、というものがある。ゲーム内屈指の名シーンだが、マイジャグラーの初打ちでその青い光を浴びた瞬間、衝撃が身体を貫いた。
これが、デジャヴってやつか…。頭の中で、暗闇に灯る青い光と宇宙空間に浮かぶリノアが、ピッタリと重なり合った。
あれからマイが光るたびに、リノアを愛した青春の日々を思い出し、胸が熱く高鳴るのだ。 (注:リノアは青い服を着ています)
さて、今回の対戦相手はもちろんマイジャグラーなのだが、珍しく実戦前日に下調べを行った。普段通っているホールはマイの台数が多く、狙いが絞りにくい。どこかに穴場はないだろうか。
すると、あるホールのデータが目に止まった。マイの設置台数は4台と少なめだが、その日は全台高設定を匂わせるほどボーナス回数がついていた。日曜日ということで、大盤振る舞いでもしたのだろうか。
しかし、その内1台だけがREG地獄を食らい、本来の実力を発揮できないまま閉店を迎えたようだ。スランプグラフも地を這う蛇のようで、この台を終日回した方は、さぞかし無念のまま帰路についたことだろう。
そして、閃いた。もしもこのホールの店長に人の心があるのならば、この台は据え置くのではないだろうか。不発に終わったマイに、もう一度輝くチャンスを与えるのではないだろうか。俺は、1人呟いた。
「決まりだな」
狙うは高設定の据え置きだ。いつもはロマンを重視している当コラム、今回はプロっぽく戦ってみようと思う。
翌日、開店20分前に件のホールに到着した。平日ということもあり俺以外には誰もおらず、胸を撫で下ろす。ポールポジションの確保により、無事狙い台に座れそうだ。
しかし、開店5分前になっても俺の背後に列はできなかった。下町とはいえ、東京23区内の駅前にあるホールの開店を、たった1人で待つ中年男性の姿を想像していただきたい。なかなかの地獄絵図である。街ゆく人々の、残念な生物を見るかのような視線に耐えつつ、この苦行の先には必ずエルドラドがあることを信じて開店を待った。
そして10時ジャスト、さすがに数人が店の前に集まり開店となった。自動ドアが開くと同時に入店しお目当ての台を無事確保、いざ実戦開始とレバーを叩くとリールがブルった。今日の俺はいつものオカルトスロッターではない。まさか、下げられたのだろうか。さらに最初の1Kで揃ったブドウはたったの1回。プロならどう動くべきなのか。
まだ客は少ない。ここは隣の台もチェックすべきだと移動を決行する。再びリールがブルり、本日の勝負に暗雲が立ち込める。全台下げなのだろうか。
しかし、この台はブドウがほど良く落ちる。しばらく回すべきだと4Kほど投資したところで、再び不安の虫が騒ぎだした。
今回は前日からデータをチェックし狙いを定め、家から1時間ほどかかるホールにわざわざ朝イチから並び、羞恥プレイに耐えてまで確保したあの台をたったの1Kで見切ってよいのだろうか。もしも盛大に掘られでもしたら、多分帰りの電車で泣き崩れてしまうだろう。
せめて1回当たるまでは面倒をみようと再移動すると、ほんの数回転で暗闇がリノア色に染まった。これが単独REG、その出玉はペロリと飲まれたが、追加1Kで再び単独REGを引き、天に向かってガッツポーズをした。
やはり狙いは間違っていなかったのだ。REG消化中、俺の頭の中に流れていたのはもちろんフェイ・ウォンのEyes On Me、今日はたっぷりリノアに会うことができそうだ。
その後も浅いゲーム数でポンポンと当たり、下皿がカチ盛り状態となった。ここだ。6号機のノーマルは、ここから箱に至るまでに高い壁が存在するのだ。
案の定、次のボーナスは367ゲームと軽くハマりカチ盛りは崩壊、その後も浅いゲーム数で当たるがなかなか下皿プレイから抜け出せない。
ここまでのブドウ確率は、もしもお母さんがスロットに詳しければ「ようすけは本当にバカなんだから!こんな台を打つなんて!」とお説教を食らうほどの数値であり、今回も残念な実戦になる気配を醸し出している。
しかし、メダルはなかなか呑まれなかった。すんでのところで耐えボーナス、下皿満タンでハマるを繰り返した。この状態は伝説の格言「出る台は呑まれない」に該当する。
もしかしたら、リノアは高設定である自分を信じずちまちまとブドウをカウントしている俺に対し、腹を立てているのかもしれない。俺は女心がわかる男だ。もうブドウを数えるのはやめよう。おまえにならば、裏切られたって悔いはない。
そうしてレバーを叩き続けること5時間、ついに出玉が消滅した。普段であれば心が折れている場面だ。しかし、ここまで単独レギュラーが約1/300と6をぶっちぎっている。ここでやめてはただの素人だ。
ついに奥の手を使う時がきたようだ。俺はおもむろに、2K分のメダルを一気に借りた。そのメダルを投入し、クレジットを満タンにする。そして、ブドウが揃うまで1ゲームごとにメダルを再投入し、常にクレジットを満タンにしておく。
すると、5ゲーム後にブドウが揃い、下皿にメダルが払い出された。これにてセット完了だ。これは、台にメダルを吐き出させることにより「君にはメダルを呑み込むだけじゃなくて、吐き出す機能もついているのだよ」と思い出させる、とっておきの必殺技だ。
するとそこから8K、634ゲームでついにゴールに到達した。やはり、信じるものは救われるのだ。チェリーを契機に当選したそのビッグから、台が壊れたように連チャンが始まった。
その連チャンはまるであの伝説の台「獣王」のサバンナチャンスのようだった。モリモリとメダルが増えあんなに苦労した下皿超えもあっさり果たし、あっという間に1500枚オーバーのメダルを手にした。
やはりこの台は当たりだったのだ。1箱カチ盛りとなり、ここでやめれば今年の初勝利が確定する。しかし、高設定なら回せば回すほど出玉が増えていくはずだ。
今日は閉店まで1ゲームでも多く回そう。そう決意したとたん、本日2度目となる超ド級のハマりに襲われた。時刻は18時、俺は長考に入った。
現在のビッグ確率は設定1以下、レギュラー確率は設定5以上、合算は4付近と、明らかに足りていないビッグ確率が収束しはじめれば、もう1度夢を見られるかもしれない。
しかし、だ。それはこの台が本当に高設定だった場合だ。カウントをやめたので正確な数値はわからないが、ブドウは依然としてあまり揃わない。もしや、今日の我がアームが神がかっているだけで、本当はこの台、低設定というオチはないだろうか。そもそもBIGが1以下なのはどう考えてもおかしい。
そんな疑惑が頭によぎると、もうダメだった。
今やめれば、若干の浮きで帰れる。ここが潮時なのかもしれない。そう判断した俺は、メダルを流すことにした。
しかし、ここが東京で、等価交換が禁止されていることを完全に忘れていた。投資した金額と回収した金額は全くの同額で、約6000ゲーム叩いた後の、拳の痛みだけが残る結果となった。
投資 14K
獲得メダル752枚数
回収 14K
疲れ果てていた俺は、帰宅し入浴を済ませると浴びるようにいいちこを呑み、泥のように眠りについたが、ふと真夜中に目覚めた。
あの台はいったいどうなったのだろう…。
家に居ながらにしてデータを確認できるとは、便利な時代になったものだ。眠い目をこすりながら、スマホで台データ情報をタップする。そして、飛び起きた。
あの後沈み続けた元我が台は、REGを契機に覚醒し、最終的に若干のプラスでフィニッシュしていた。総プレイ8807回転でBIGが29、REGが37。前日に引き続き、典型的な高設定の不発パターンではないか。
せっかくお店が用意してくれた高設定のマイジャグを、2日続けて台無しにしてしまうとは…。
もしかすると、前日あの台を打っていたのは俺のドッペルゲンガーだったのかもしれない。とても他人とは思えない顔も知らないその人と、もしも出会えたならば大親友になれるに違いない。
だが、そんな奴が将来娘と出会い、結婚相手として家に来たら目潰しをお見舞いしてしまうだろう。
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- ダスト
- 代表作:ロマンティックパチンカー
ルパンでパチンコを覚え、アステカでパチスロを覚え、ミリオンゴッドでギャンブルを覚えました。子供が生まれた時に一旦現役から退きましたが、先日7年ぶりにパチンコ屋に行き、再び悪い心に火がつきました。リハビリ感覚で、ハネモノ、遊パチから始めようと思います。
プレイスタイルはロマン打ち、愛があれば確率なんて超越できると信じています。嫌いな言葉は下ブレです。



