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パチ7虎の穴
2026.03.08
【ロマンティックパチンカー】No.17 メニゴリー

メニゴリーの話をしよう。
メニゴリーというのは人の名だ。もちろん本名ではないが、苗字が「目仁」だったわけではなく、オランダ人でもない。
ただ、その目が濁っていた。幽遊白書の「黒の章」でも見てしまったのだろうか。そう思わせられるような澱んだ色を、瞳に湛えていた。目が濁っているからメニゴリー。いつしか俺は、頭の中で彼をそう呼ぶようになった。
メニゴリーと出会ったのは20年以上前のことだ。以前働いていた職場で発注した商品を届けにきたのがメニゴリーだった。その商品は消耗品でありメニゴリーと顔を合わすのは月に1度、会話は軽く挨拶を交わす以外は仕事のことばかりで、職場を離れプライベートの時間でメニゴリーのことを考えたことなどなく、向こうも同様だっただろう。そんなメニゴリーと俺の人生が交錯する日がくるとは、神ですら予想できなかったに違いない。
当時の俺は、今のような軟弱なスロッターではなく、筋金入りのパチスロジャンキーだった。仕事は手を抜くがホール通いは皆勤賞、その日も退勤時間1分前にタイムレコーダーの前に陣取り、時計の針が6時を指した瞬間カードに打刻を済ませ、風のように職場を後にした。
足早に馴染みのホールに向かう道すがら、どの台で勝負するかで頭を悩ませた。その月は、というかその月も厳しい戦いを強いられており財政は果てしなく赤字、もはや紅に染まっていた。AT機やストック機は打てない。
ならば花火しかない。そのホールはAタイプを大事に使っており、コンチ4Xや獣王が猛威を振るう時代にあっても花火をシマ単位で残していた。数日後の給料日まで、花火を打って耐え忍ぶのだ。
しかし、そんな決意は一瞬で崩れ去った。ホールに到着し一目散に花火のシマへ向かおうとした俺の視界に、見知ったシルエットが飛び込んできた。
メニゴリーがいたのだ。しかも、シェイクを打っていた。当時の俺はシェイクを「最凶のストック機」と呼んでいた。あの台は、相当な覚悟がなければ打てない。真の漢でなければ打てない。
背後からこっそりデータを確認すると、BIG後の台で天井(2500ゲーム)を目指しているようだ。普段からこんなスタイルでパチスロを打っているのだろうか。目が濁るわけだ。
ひとしきりメニゴリーを観察し考えた。もしメニゴリーがトイレなどで席を立ち、花火を打っている俺を発見したとする。
「へえ、俺はシェイクを打っているのにこいつは花火か…。情けねえ野郎だ。よーし、今度料金を値上げしてやろう」などと思われかねない。
俺はホールを飛び出した。向かうはATMだ。ありったけの金(たましい)を引き出す。いろいろな引き落としを翌日に控えていたがかまわない。携帯やガスが止まろうとも、負けられない戦いがそこにはあるのだ。
再びホールに舞い戻り、お目当てのマシンを確保した。そして、メニゴリーの元へと向かいその肩を叩いた。
「ああん!?」というドスの利いた声とともに振り向いたメニゴリーは「今の俺に触るものは全て斬る」というような顔をしていた。その気持ちは非常によくわかる。俺も同様の顔を注文を聞きにきたコーヒーレディにしてしまう時がある。シェイクでハマりを食らっているときに、コーヒーなど飲むわけがないだろう。
しかし、その濁った目が捉えた人物を脳が分析し取引先の社員だと認識したのか、慌てたように席を立った。
「おおおお世話になっております!」
激しくキョドっている。無理もない。取引先の社員にパチスロ、しかもよりによってシェイクを打っているところを目撃されたのだ。メニゴリーはいま、お母さんに内容がキツめの裏ビデオが見つかったときのような気分になっているに違いない。
「変なところで会いましたね。しかもシェイクっすか、やりますねえ!じゃ、俺は今からあれ打つんで」
そう言って俺が親指を向けた先にあるのが、これまた最凶のAT機であるミリオンゴッドだ。シェイクに対抗できるのはこの台しかない。
メニゴリーは「アンタも好きですねえ」というような生温かい笑みを浮かべた。その瞬間、俺たちの間に奇妙な友情が生まれるのを感じた。もしもお互い勝利できれば飲みにいく流れだ。
しかし、パチスロはそんなに甘くはない。俺はもちろんボロボロに負けた。帰り際、シェイクのシマに行くとメニゴリーの姿はすでになく、その台のデータにはバケが一回追加されていた。
それからも職場でメニゴリーと顔を合わせることはあったが、無言のまま別れたあの日のことが妙に気まずく、互いに一晩限りの間違いを犯した男女のような目線を送るようになり、パチスロについて話すことはなかった。
そして、数ヶ月後メニゴリーが移動になったことを後任の担当者が報告にきた。その後、メニゴリーには1度も会っていない。
若い頃の俺は、とにかく人の目を気にする男であった。イキることに全てを賭けていた。
音楽は洋楽以外聴かない、ハッピーエンドの映画は嫌い、洋服はユナイテッドアローズでしか買わない、などとのたまうクソ野郎だった。
しかし、下流の石が丸くなるように、時の流れは人を変える。今ではB'zが大好きと胸を張って言えるし、映画のドラえもんで涙するし、服はワークマンとしまむらにお世話になっている。
そんな今の俺だからこそ、多くの方々に読んでいただくコラムの実戦でも着飾らず、朝イチから遊パチに突撃することができる。荒い台を打つことがドラマを生むのではない。どんな台を打っても熱く戦える、それこそ俺がロマンティックパチンカーと呼ばれる所以だ。
2月の分厚い雲が、街を灰色に染め上げている。心まで寒くなりそうだ。しかし、ホールに飛び込みハンドルを握れば気分は常夏、そんな台がある。

糖質、脂質、タンパク質は人体に必要な3大栄養素というが、全パチンカースロッターにも必要不可欠な栄養がある。GOGOランプ、ハイビスカス、魚群がまさにそれにあたる。
そして、現在俺には魚群が圧倒的に不足している。1年以上魚群を拝んでいないのだ。魚群欠乏症と診断される前に、手を打たねばならない。
かといって大好物の大海5スペシャルはあまりに危険だ。かつて、ノーボーナスノー魚群、マイナス43,000円でフィニッシュした際(ロマンティックパチンカーNo.8)に負った傷は、未だに癒えていない。
今回の実戦は、金銭的な勝利を求めるものではない。魚群が拝めれば俺の勝ち、そんな戦いがあってもいいではないか。そういう訳で、台の吟味はせず、とりあえず居心地を重視し端台に腰を下ろし実戦スタートだ。
初当たりは投資5K、泡からサメが当たり舌打ちする。俺が求めているのは魚群なのだ。出玉ではない。
そよ風のように10回転のSTと時短をスルー、追加投資を始めたところで今度はアグネスジャンケンからジュゴンで当たる。そして、再びSTと時短をスルーした。
その後も当たるが泡とノーマルばかり、途中もしやと思いカスタムを確認するも、しっかりと魚群は75%と表示されており、オフにはなっていなかった。こうなれば根比べだ。今日は投資に上限は設けない。魚群が出るまで全ツッパだ。
そして、7回目の当たりでついにその時が訪れた。108回転、サメでリーチがかかり出現した魚群には神々しさすら感じた。当然のようにサメが揃う。これにてミッション達成だ。
しかし、ひとつだけ心残りがあった。ST中の大当たり確率は1/20ということだが、1度も当たっていないのだ。今回のSTもあっさりとスルーしたところで、大当たり確率計算機というツールを用いて「70回転で1/20に当選する確率」を算出したところ、97.242%という驚きの数字が弾き出された。
おもしれえじゃん。思わず呟いた。ST中に当てること。追加ミッションの発動だ。
結果から言うと、9回目のSTでついに当たった。魚群で当たってくれればちょっとしたドラマだったが、ノーマルでアンコウが揃った。わずかばかりの出玉を打ち込み、真顔になったところで席を立った。なんなんだ、この実戦は。ロマンティックパチンカーが聞いて呆れる。以下、結果である。
投資 17.5K
回収 0玉
結果 -17.5K
目も当てられない実戦となってしまったが、長くパチンコを打っていればこんな日もあるだろう。ドンマイ、俺!そう自分に言い聞かせ、寒空の下を歩いた。
ふと、メニゴリーのことを思った。彼は今でもパチスロを打っているのだろうか。現役であればメニゴリーのことだ、きっと荒めのLT機やスマスロで目を濁らせているに違いない。
もしも今日、同じホールに居たら、あの日のように俺の心に火をつけてくれただろう。俺も負けじと吉宗などを打ち、熱い戦いができたに違いない。
改めて思った。
やはり、コラム用の実戦で遊パチはねえわな。
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- ダスト
- 代表作:ロマンティックパチンカー
ルパンでパチンコを覚え、アステカでパチスロを覚え、ミリオンゴッドでギャンブルを覚えました。子供が生まれた時に一旦現役から退きましたが、先日7年ぶりにパチンコ屋に行き、再び悪い心に火がつきました。リハビリ感覚で、ハネモノ、遊パチから始めようと思います。
プレイスタイルはロマン打ち、愛があれば確率なんて超越できると信じています。嫌いな言葉は下ブレです。


