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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2023.06.06
勝者の責務~リニューアル2日目~
前回のあらすじ
競合他誌の後輩Gとともに、都内のリニューアルオープンを狙ったラッシー。集まった抽選人数は500人超で、ものの見事にほぼ最後尾の500番を引いてしまう。どうにかパチンコで勝ち切り、翌2日目のためにパチスロフロアの下見に向かうと…。「明日は全台据え置き営業」という衝撃的な店内アナウンスが流れたのだった。
前回(前編)はコチラ
――「は!!?」
手が震えた。
後輩G「ええ~~~!!」
――「ウソだろ…マジか…」
抽選参加人数は、前日と変わらずおよそ500人。せめて200番以内で…と祈りながら引いた結果がこれである。
後輩G「いいな~。勝ち確じゃないスか!」
――「えっ?」
後輩G「僕なんて180番ですよ? ギリ高設定っぽい台に座れるかどうか」
――「ちょ待って。俺が……勝ち確?」
ゾッとした。俺が1番で入場する様子は、ここにいるほとんどの人間に見られている。もしも〝全台据え置きの1番入場〟で負けたりしたら、この界隈で〝伝説のザコ〟として語り継がれるに違いない!
サッカーでいえば、無人のゴール前にボールが止まって落ちている状況だ。外れるわけがなく、万が一にも外してはいけないシーンである! この上なく嬉しい状況にもかかわらず、俺はプレッシャーのあまり狼狽した。
――「ど、ど、ど、どうしよう?」
後輩G「そらもうジャグ一択でしょ?」
――「いや、そうなんだけど…」
昨日のリニューアル初日はマイジャグ3のシマが別格だった。全6ではナイと思われるが、全456はありそうな雰囲気だ。当然、先頭での入場ならそこに行くのが定石。しかし、それでもあと一歩足りない。
なにせ1番なのだ! この500人ほどいる中で1番という最強カードを手にしたのだ!!
設定4では足りない!
設定6でなければ!!
――「6だと自信を持って座れる台は……」
後輩G「僕の知り合いが打ってた角4しかないスね」
――「だな。しかし……」
現場のオキテ。
Gの知人のウデを疑っているわけではない。Gの立ち回りは俺以上。その彼が信用している人物なのだ。実際に6だった可能性が高い。
問題は、その知人が打っていた台を俺が取っていいかどうかだ。あくまでGの知人であって、俺の知人ではない。こうしてメディアに露出している身だ。俺のアンチという恐れすらある。
――「その知人、怒ったりしない?」
後輩G「いやいや、それは大丈夫っスよ」
――「マジ?」
後輩G「さっき抽選300番台だったって連絡きたんで」
――「でも、Gが座るなら別だけど、知り合いでもない俺が座ったら」
後輩G「心配性だな~、ラッシーさんは」
プロにはプロのルールがある。高設定と分かっていても、あえてスルーし相手に譲ることもある。プロじゃない俺には関係のない話だが、それでも相手が後輩の知人とあらば、角が立たぬよう配慮する必要がある。
――「念のため訊いておいてよ」
後輩G「もう、分かりましたって」
Gは呆れたように笑いながら首を縦に振った。
数分後―――
後輩G「連絡きました!」
――「おお、ほんで?」
後輩G「自分は絶対座れないからお好きにどうぞとのことです」
――「ありがたい! よろしく言っておいて」
後輩G「了解です!」
かくして〝勝ち確〟への安全ルートを無事に確保。あとは入場時に先を越されたり、うっかり別の台に座らぬよう注意するだけ。ここが案外難しい。
元々、入場時のトラブルが多い店だ。1人ずつ間をとって入店するが、それでも全力で走って前の人を追い抜こうとする輩は多い。
加えてマイジャグ3のシマへのルートは1本道じゃない。当然、俺は最短ルートを行くが、別ルートからダッシュされれば先を越される恐れもゼロではない。
後輩G「じゃあ、どうかご無事で」
――「ありがとう! Gは?」
後輩G「欲張らず不人気機種のシマから回りますよ」
――「また連絡して。無事ツモったら閉店まで回すけど」
後輩G「ですね。頑張ってください!」
――「ありがとう!」
Gと別れ、俺は足早に再整列のため正面入り口へ向かった。
勝者の責務。
午前10時、開店―――
店員「それでは1番のかた~」
正面入り口の脇に立つ店員に入場整理券を手渡し、それと交換する形で台確保券を受け取り店内に入った。まずはマイジャグ3が置かれたパチスロフロアの最上階を目指す。
そして、やっとのことで長いエスカレーターを降りると、すでに数メートル後方に2番入場者の姿が見えた。猛烈な勢いでエスカレーターを上がってくる!
やはりみんなマイジャグ3狙いか。店内を走ってはいけないので、限界スレスレの早足でマイジャグ3のシマへ向かう。そしてアクロス系のシマを抜け中央通路に差し掛かったとき、再び視界の端に2番入場者の姿を捉えた。
――「……(マジかよ! ズルすぎる)」
案の定、俺とは別ルートでダッシュしたのだろう。店内で走ることは禁止されているが、言うまでもなく大人しい客ばかりではない。
中央通路を横切ると、スグにマイジャグ3のシマだ。一直線に目的の角4に向い、台確保券を差し入れた瞬間、シマの向こうに人影が見えた。どうやら猛ダッシュでシマ反対側に回ったヤツがいたらしい。直後、シマの中に人が雪崩れ込んできた。
――「ふ~、あっぶね~~~」
一瞬でも気を抜けば取られかねない状況だったが、どうにか無事に角4を確保。すかさずサンドに一万円札を投入し、メダルが貸し出される間にポケットから小役カウンターを取り出した。
次いで席につき、メダルを右手に握りながらスゥ~ッと大きく息を吸った。俺は稼働で生計を立てるプロではナイ。それでも、リニューアル2日目の全台据え置き営業で1番入場を引いた責任がある。
当然、出玉で1位になどなれるわけはないが、誰もが納得するほどブン回す義務がある! 台の情報をくれたGの知人や、この男気溢れる状況を用意してくれたホールに報いるために!
トイレには極力行かない。そしてメシはもちろん、給水すら制限する必要がある。少し前に34回目の誕生日を迎えたが、体力の衰えは感じていない。終日ブン回す程度のパフォーマンスなら十分発揮できるハズだ。
ジャグラーのシマは、まだ右へ左へと行き交う人々で混沌としている。俺はその喧騒を尻目に淡々と回し始めた。
萎む熱気。
投資6,000円で初BIG。そこから100G以内のボーナスが続き、設定6然とした展開が続く。ブドウ出現率も序盤こそ悪かったが、徐々に数値を上げ、常時1/6を上回っている。まだ確信にまで至らないが、素直にツモれたと思って良さそうだ。
が……
どうにも周りの台の様子がおかしい。昨日は全456の雰囲気を漂わせていたマイジャグ3だが、今日は厳しい展開の台が多く見られる。もちろんジャグラーも短時間で判断できるほど簡単ではないが、立ち上がりの印象はお世辞にも良いと言い難い。
――「………(これはヤッてんな)」
とりわけ目立つ設定5・6はそのまま。そして設定4だったところだけを低設定に変更。これなら設定5・6で据え置きの印象を担保しつつ、設定4はヒキ弱なだけだと客を納得させられる。
要するに全台据え置きはウソなのでは?
それでも十分すぎると言っていい。堂々とウソをついているのは感心できないが、そもそもリニューアルの短縮営業から全台据え置きなど普通に考えて難しい。気付かれない程度に平均設定を下げることくらい、ホールは平気でやってくる。
設定5・6でさえも下げられて当たり前。プレイヤーは鵜呑みにせず、よりウソを見抜きやすい機種を選択する必要がある。その「ガセを掴まされるリスク」も込みでのジャグ狙いなのだ。
開店から3時間、4時間……と経つにつれ、徐々にシマは熱気を失っていく。もはやマイジャグ3を全456だと思っているプレイヤーは残っていない。それでも一縷の望みを捨てきれないのか、空いてもスグに埋まる状況が続いている。
肝心の俺の台も、2,000枚を目前に足踏みが続いている。REG先行の展開が続き、出玉が思うように増えていかない。それでもブドウ出現率は好調を維持したまま。煮え切らない状況だが、ヤメたいという気持ちは少しも湧いてこない。
淡々と打ち続けていると、ほどなく2台隣の台が2箱半を持ち帰って空き台に! すぐさますっ飛んでくるプロの面々。しかし、誰もが台の前でピタリと足を止め、台を確保するまでに至らない。下皿に物品でもあるのだろうか? 横目で様子を観察すると……
BIG18回、REG4回
思わず笑ってしまった。総ゲーム数までは見えないが、開店から4時間半だ。少なくとも2,700Gは回っているハズ。普通に考えれば約3,000G。それでREG4回では手が出せない。低設定のBIGヒキ強。雑に言えばそんな印象だ。
結局プロの面々は手を出さず、空き台を探していた高齢の男性座ることに。プロの気持ちはよく分かる。俺だってあの極端なBR比では手が出ない。短いゲーム数ならいざしらず、約3,000Gであれなら打たぬが吉だ。
やはり前日と同じお祭り状態ではない。そこかしこに罠がある。俺の台も安心とは言い切れないため、やはり設定推測を止めるわけにはいかない。改めて姿勢を正し、黙々とレバーを叩き続けた。
理の外の至福。
その後も苦しい時間が続いた。中ハマリ⇒REGを連続で繰り返し、出玉は一時1,200枚ほどにまで落ち込んだ。しかし、幾度とピンチを招いても、必ずBIGの連打が訪れドル箱に空いた大きな穴を埋めてくれる。
突き抜けはしないが〝上〟の感触は間違いない。この店では何度も読者から声を掛けられている。今日も見られている可能性が高い。プロではナイけれど、攻略誌のライターとして恥ずかしくないパフォーマンスを見せる必要がある。
トイレ休憩は1度きり。その帰りに飲み物を2つまとめて買い、時折それで口を湿らせながら一心不乱にレバーを叩き続けた。もちろんデータ採取も忘れてはいない。こういったデータも、稀に誌面やWEBサイトに掲載する場合がある。
少し面倒だとは思いつつも、メモと小役カウントを続けながらフルウエイトで回し続けた。そして……
午後10時半―――
――「さて、引き上げるか」
閉店まで15分ほど残っているが、パチスロフロアを見て回りたいため少し早いがヤメることにした。総ゲーム数はボーナス中を除き9,460G。ボーナス合算は79回で、BIGが41回、REGが38回。
400Gを超えるハマリは終日で1度きり。ブドウ出現率は終盤に大きく失速したが、それでも5・6は間違いないだろうという感触だった。流した枚数は3,573枚。投資は6,000円なので、十分すぎる結果と言っていい。
出玉を流し、データ表示器を眺めながらパチスロフロアを見て回った。自分の台に集中していたため気付かなかったが、状況はそこまで良くなかったらしい。前日高設定と思しき台も、大きく沈んでいるケースがほとんどだ。
――「結構キツかったんだな」
そして再びマイジャグ3のシマに戻り、改めて全台のデータを見返してみると……
――「ふはは、何だコレ!!?」
BIG54回、REG18回
途中で人が変わったあのBIG偏向台が、さらにBIGに偏ったまま差枚数+5,000枚を突破している!
――「こんなの狙えねーよ」
俺やプロが避ける台が、終日BIG偏向のまま出続けるのだから分からない! 総ゲーム数は8,500Gに達しようとしているところなので、BIG出現率は驚異の1/160以上。理論の遥か外を行く展開である。だからジャグラーは難しくて面白い。
高齢男性は満足そうに笑みを浮かべつつプレイしている。それをシマの端から複数人のプロが羨ましそうに睨んでいた。気持ちは痛いほど分かる。理論で動く俺らには、絶対に味わえない展開だ。仮に同様の展開になっても、きっと途中で捨てているだろう。
設定は皆目見当もつかないが、約8,500GでREG出現率が約1/470ではさすがに下だろう。他にも低設定らしい曲線を描き、普通に差枚数マイナス域に沈んだ台もチラホラある。マイジャグ3とて安泰ではなかったというわけだ。
たまたま自分のマイジャグ3が〝許されただけ〟の、か細い勝利のように感じた。とりわけ客からの注目度が高いマイジャグ3だったからこそ、目立つ6が変更されずに残されたのだろう。少しでも台選びを妥協していたら、1番入場とて負けていたハズだ。
全台据え置きの正体。
フロアを1つ下ると、すぐに後輩Gを見つけた。
後輩G「ヤメたんスか?」
――「データ見て回りたくてね」
後輩G「いや~、やってくれましたね今日は」
――「まあ、そうそうウマい話は無いってこった」
パチスロフロアの惨状を見るに、全台据え置きはガセだったと言わざる得ない。
――「で、今日は勝てたの?」
後輩G「ええ、直ヅモはムリでしたが絆でマクれました」
――「それは良かった。俺はお陰さまで」
後輩G「知ってますよ。何度も後ろ通ってましたから」
俺の様子を見にきては、声を掛けずに通りすぎていたらしい。少しでもメダルを抜こうと必死にブン回していたが、彼の目には34才にもなって余裕がないように映っただろうか。まあ、そう思われても一向に構わないが。
――「さて、終電まで一杯付き合ってよ」
後輩G「もちろん! 半分は僕のお陰ですもんね」
――「……まあ、たしかに」
後輩G「いやいや、冗談ですって!」
――「いやホントGさんのお陰ですから、ぜひ奢らせてください!」
後輩G「ちょ~、なんかタカったみたいになるじゃないですか~」
全台据え置き営業はガセで、俺は抽選結果とGの知人にたまたま助けられただけにすぎない。ほどほどの抽選結果でAT機の据え置きを狙って負けていれば、相応に腹が立ったことだろう。SNSが発達した現代なら、炎上していてもおかしくはない。
勝ったから言っていると捉えられても仕方ないが、俺はガセがあることも含めグランドオープンやリニューアルオープンを楽しむべきだと思う。きっとこのホールも、ギリギリ許される範囲のガセを模索し攻めてきたのだろう。
どうすればガセの中から数少ないホンモノを掴めるか。ガセった際のリスクを最小限に抑え、なるべくガセにならない機種を攻める。そういった立ち回りを考えるのも、またパチスロのゲーム性なのだろう。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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