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俺とスカイガールズ
俺とスカイガールズ
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たれめさん
ストップボタン押すために仕事してる - 投稿日:2017/01/28 17:59
プロレスラーは皆、フィニッシュホールドを持っている。猪木の卍固めしかり、ハンセンのウエスタン・ラリアットしかり、オースチンのスタナーしかり、武藤のシャイニング・ウィザードしかり。
言うなればそれは止めの一撃。決まれば相手はただ3カウントを待つばかりだ。
パチスロにも、フィニッシュホールドは存在する。プレミアフラグか、最上位特化ゾーンか、天井か、台によって様々ではあるが、決まれば確実に勝利を手中に出来る。だがそれは、決まらなければ逆に完膚無きまでに叩きのめされる諸刃の刄。
あの日、確かに俺はその一撃をぶちかました…いや、ぶちかまされたのかもしれない…
その日は三日酔いでフラフラだった。前々日に友人との約束の前にフラリと座ったパチンコで訳も分からないまま7万の勝利を収め、しかもその現場を友人に見られるという事件が起こった。こうなってしまったら奢らないわけにはいかない。寧ろ降って湧いた泡銭をケチケチしてもしょうがない。一から十まで俺が出してやる!祭の始まりだ!と高らかに告げ、焼肉屋から居酒屋、その日の晩泊まった友人宅での酒盛りまで一切の会計を持つこととなってしまった。
祭は一日では終わらず、連休なのをいい事に翌日も朝から晩まで遊び呆け友人宅に連泊、身体中の血液がアルコールとなった錯覚を起こすほどに飲み倒す運びとなった。
三日目の朝、今日こそは家に帰ろうと最寄の駅に向かう道中、とあるチェーンのパチンコ店が見えてきた。連休も最終日だというのに朝の並びにはそれなりの人数が集まっている。それを見て素通りするほど人間が出来ていれば、今頃麻布の一等地に大豪邸でも建てているというもの。吸い込まれるように列に並び、開店を待つ。
開店の時間が訪れ、虚ろな目を擦りながら入店し、あてもなく店内を徘徊する。最初はパッと目に付いた、当時新台で入っていた「ボンバーパワフル2」を打っていた。出ては呑まれ出ては呑まれ、賽の河原のような攻防の果てに、盛大な音とともに突入した「ビッグバンスパーク」が30Gの上乗せで終わった辺りで完全に嫌気が差し、移動先を探す。時刻はまだ11時半、勝負を投げるにはまだ早い。勝ちへの一歩を踏み出すため吟味を重ねていると、神は指折でエキセントリックな道を指し示した。
「スカイガールズ」が800嵌りで落ちていた。
正確には、ゲーム数カウンターは100G程だったが、その店はARTをREGでカウントする機器だった。直前の履歴はREG。実質当日ノーボーナス。スカイガールズの天井はボーナス間1500G。あと700Gで終わらないARTが待っている。冷静に考えるなら、まだ引き返すことが出来る場所で止めた前任者が正しいのかもしれない。しかし、ギアスの天井狙いで脳が麻痺した過去を持つ俺は、迷うことなく着席した。
「パチスロ スカイガールズ」
みんな大好き高砂電器産業が生み出した、最高に狂った台。(褒め言葉)
萌えの皮を被った人喰い鬼。
キャッチフレーズは「終わる気がしない!」
ART中のモードを最上位の「SONICモード」まで上げれば、理論上終わらないARTとなる。
何度か打ったことはあったが、一筋縄ではいかない台だということは解っていた。それでも、前々日の勝利とSONICさえ行けば万枚射程圏内という魅力が俺を後押しした。
黙々と打ち続けること300G。まだまだ序の口。いつ当たっても構わないと思っている分、優位性は俺にあると言える。
400G。徐々に懐かしさにも似た感覚が蘇ってくる。身体から由来の分からない汗が流れ出す。謎の倦怠感が全身を襲う。ギアスを脱した後、久しく感じていなかったこの境地に再び舞い戻ったのだと実感した。
500G。当日のゲーム数は1300を超えている。据え置きならそろそろARTが発動してもおかしくない。目眩に耐えながら割り出した正確な前日最終ゲーム数との合算が1500を超えた時、以前変わらぬ液晶に嗚咽を覚えた。そこまでの直近100Gは「据え置きなら後100G…据え置きなら後100G…」と念仏のように唱えながら耐えてきた。その僅かな心の支えが無くなった時、もう正気ではいられなかった。震える手で怯えながらレバーを叩く。あの時、俺は確かに生きていた。
歓喜の時はあっけなく訪れた。前触れなく突入した前兆を消化すると、レニー・ハートが高らかにART突入を叫ぶ。再び、俺は成し遂げたのだ。じわじわと脳が弛緩していく。全てが心地いい。もうこのまま帰って寝てもいいくらいだ。
天井の恩恵は無限ART「V-1モード」と最上位の「SONICモード」確定。お膳立ては整った。時刻は12時半。あとは閉店までブン回すだけだ。
スカイガールズのARTには上乗せ特化ゾーンである「LOCK」当選時の振り分けに関わる6つのモードが存在し、上乗せ平均23Gの「DELTA LOCK」か、上乗せ平均123Gの「QUADRA LOCK」かを決める。最上位のSONICの振り分けは1:1、つまり当選したLOCKの50%がQLとなる。ボーナス当選時のモードアップ抽選にパスすれば上がる仕組みなのだが、それを一足飛びでSONICに到達する方法がフリーズか天井である。
スタート直後のLOCKはDLだったが天井にはV-1モードも付いてくる。ここでボーナスを引かずにある程度の上乗せを重ねれば一先ずは安心といったところ。1500も嵌った直後だ、ボーナスを引かない事など欠伸が出るほど簡単だ。
余裕を持って消化をしていると50G程で中段チェリーを引いた。
スカイガールズの中段チェリーはボーナス確定。……何故だ。何故今引く。もうちょっと無限ARTを楽しませてくれてもいいじゃないか。少し遣る瀬無い気持ちになったが、この中段チェリーがSKY BIGを引っ張ってきた事で状況は一変する。
SKY BIG中は通常BIGの約10倍の確率でLOCKをストックする。このSKY BIGでLOCKを6つ獲得し、内4つがQLという結果に。消化し終わる頃には残りゲーム数が600Gを超えていた。
そこからは気力との闘いだった。回しても回してもゲーム数が減らない。寧ろ増えていく。終わる気がしないとはよく言ったものだ。この時俺は終わらない恐怖を味わった。残りゲーム数が100を切りようやく終わると思ったら、QLの連打で500まで連れ戻される。増え続ける残りゲーム数に怯え、BIG中位しか心休まる時がない。つい数時間前まで緊張感で吐き気を覚えていた身体は、今度は疲労感で吐き気を訴えていた。眠い、辛い、頭がガンガンする、肩が重たい。全力で休息を求める身体など御構い無しに、台は景気良く上乗せをしていく。
それでも、人生初の万枚を叩き出してやるんだという野望のみが、俺の身体を動かす。道半ばで倒れるくらいなら、いっそ壊れたように閉店まで続けばいい。全てが終わってから死んだように眠ってやる。そう自分を奮い立たせ打ち続ける。獲得枚数がカンストした時も、「あぁ…これでいつ終わってもいい」と贅沢な事を考えていた。
願いが通じたのか、終わらないARTは開始から9時間、閉店を待たずして約12000枚の獲得で終了した。三日酔いと睡眠不足でフラフラになりながらも、達成感に包まれ家路に着くこととなった。
2014-15の三重県オールナイト営業では3万枚オーバーを叩き出したスカイガールズ。突入リプレイを外す「延命」と組み合わせればその破壊力は確かなものとなるが、いかんせんART中が単調な為、疲労感も凄まじい事になる。
SONICモードの威力が注目されがちなスカイガールズだが、4種類の告知方法と楽曲が選べるBIG、業界初のMOLPシステム搭載のREG、叩きどころの超高確、ART中のライジングモード管理、ウナギが出てくればQL0確など、そつのない作りとなっている。
この台のPVを見たことない方は是非一度ご覧になって頂きたい。「反撃開始!」「反撃シリーズ第一弾」「終わる気がしない」とインパクトのあるフレーズが並び、観終わる頃には何故か胸がじわりと熱くなる。高砂の反撃、その姿に自らを重ね、何か凄いことができるんじゃないかという根拠の全くない自信が湧いてくる。爽快なカタルシスを感じることのできる良質なPVとなっている。
他にも
「瑛花さんが全く釣り上げない件」
「エリーゼBIG失敗時の演出が悲しすぎる」
「LOCK上乗せ音デカすぎ問題」
「フリーズっぽいブラックアウトが全然フリーズじゃなかった事件」
など、語りたい事は山ほどあるが長くなるので割愛する。
スカイガールズの天井を体験した日を境に、俺の中で変わった事が2つある。
1つは、二日酔いの日は打ちに行くのを止めるようになった事。
もう1つは、ギアスの天井狙いで壊れかかっていた俺の脳味噌が完全に壊れた事だ。
あの日以来、生半可な天井では興奮しない脳になってしまった。ポテンシャルでは5号機最強、到達=万枚視野のスカイガールズの天井を体験したことで、ちょっとやそっとじゃ脳が痺れない。寧ろ天井クラスの痺れを求めてよりとち狂ったな道を探すような愚行を繰り返すこととなった。
あの日あの時あの場所で、放ったのか放たれたのかわからない一撃が、今も脳裏にこびりついて離れない。
高砂が残した確かな爪痕、スカイガールズ。いつの日か再び相見える日が来たならば、終ぞ引くことのできなかった零フリーズに果敢に挑み、後には引けなくなって天井に望みをかけては爆死してやろう。そこに、終わらないARTの夢がある限り。
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たれめさんの
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このコラムへのコメント(2 件)
ありがとうございます
そう考えると天井って登山みたいですね
登ることに意義がある…笑