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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2019.06.25
『最大の危機』~デビュー直後の脳内クラッシュ~
――「あだだっ! あだ…あだだだだ…」
彼女「え!? ど、どうしたの!?」
心当たりはあった。そして瞬時に悟った。俺は死ぬのかもしれないと。不思議と恐怖はなかった。新婚生活を目前にして逃す、その悔しさが勝っていたのだろう。想定を遥かに超え、あまりにも早く訪れた「それ」。ほどなく俺は、かつてないほどの強烈な睡魔に襲われた。
――「も…らめ…寝る…眠い」
彼女「えっ? 大丈夫?」
バタリと布団に倒れ込む俺。彼女はアタフタしながら心配そうに見つめている。俺はそっと瞼を閉じた。2度と開かないかもしれない瞼を。人はこうして死ぬのだろう。ある日、突然に。
――「だめ…眠い、寝る」
彼女「えっ? えっ? えっ?」
体内から放たれるシグナルは強力で、抗うことはできなかった。ヒトの身体にそんな機能があるかは知らないが、「危ない! 寝ろ! 今すぐ寝ろ!」というあの時のシグナルは、今でもハッキリと覚えている。人間の身体は命を脅かすほど大きなダメージを受けると、被害の拡大を抑えるために、このシグナルを放つのかもしれない。
宿命。
ジージッジッジッジッ
ジージッジッジッジッ
ジージッジッジッジッジー
ダイニングから聞こえてくる機械音で目が覚めた。頭蓋に釘を打たれるような激しい痛みは続いている。どうにか即死は免れたが、同時に「夢ではない」ということに少しばかりショックを受けた。
彼女「起きた? 大丈夫?」
――「クスリ…鎮痛剤ちょうだい」
彼女「うん。救急車は?」
――「大丈夫。仕事しなきゃ」
彼女「仕事!? できるの?」
――「できるもクソもないさ」
俺の体調に関係なく締め切りはやって来る。「できない」という選択肢はナイ。「やる」以外にないのだ。
彼女「なにが起きたか分かる?」
――「…くも膜下出血かな」
彼女「くも膜下!? そんな!」
――「でも身体は動きそう。頭痛いけど」
フラフラと立ち上がり、ダイニングへと続くドアを開けた。案の定たくさんのFAX が届いていて、今もなお粛々とA4普通紙を吐き出し続けている。なるほど、どれだけ待っても機械音が鳴り止まないわけだ。数機種ぶんの解析資料が送られてきている。今でこそ資料のやりとりはPDFやExcelだが、当時はウン十ページにも上る資料がそのままFAXで送られてくるケースもあった。
彼女「明日はどうする?」
――「明日か…」
俺は彼女から手渡された鎮痛剤を飲み、余った水も全て喉へと流し込んだ。明日は実家の両親に初めて彼女を紹介する日だ。言わずもがな、新幹線、彼女のホテル、料亭…全て予約済み。そのキャンセル料を思うと、頭痛は一層強まった。
さて、身体は…。 今のところ、頭痛以外に目立った変化はない。そしてなんとなく、本当になんとなくだが「死には至らない」という感触があった。本当に深刻な状況であれば、こうやって歩くことも喋ることもできないハズだから。
――「とりあえず仕事を片付けるよ」
彼女「ほんと大丈夫?」
――「うん。仕事中にヤバいと感じたら明日はキャンセルだ」
彼女「分かった」
もともと偏頭痛持ちだからこそ分かる。この頭痛は普通ではナイ。明らかに脳内で何かが起こった。祖父は脳梗塞、母親はくも膜下出血のサラブレッドだ。しかし25歳で訪れるとは…。
新幹線の時間は午前9時。まずは原稿を朝までに終わらせる必要がある。やっと静かになったFAXから分厚く重なったA4普通紙をひったくり、PCの電源ボタンを押した。
大事な日。
ドラッグストアで大量の鎮痛剤を買い込み、彼女と2人で東京駅へ向かった。少しでもクスリの効果が切れると、スグに頭蓋に釘を打たれるような痛みが襲ってくる。鎮痛剤の用法・用量には「1日3回を限度とし、服用間隔は4時間以上おいてください」とあったが、そんなことに構ってはいられない。2~3時間に1回のペースは崩せなかった。
無事に新幹線へと乗り込むと、またスグに目を瞑った。結局書き仕事は出発直前までかかり、一睡もしないまま故郷の山形へ向かう羽目に。
山形に着いたら在来線へと乗り継いだ。両親は山形駅まで迎えに行くと言ってくれたが、俺が青春時代を過ごした景色を少しでも彼女に見てほしかった。
実家の最寄り駅に着くと、両親が出迎えてくれた。そこから小さな街を一望できる山の上の公園に寄り、両親が予約してくれた料亭へと向かった。
1時間後――
彼女「すみません、ちょっとお手洗いに…」
彼女は一礼し席を立った。彼女の姿が見えなくなると、スグに親父が口を開いた。
親父「いや~、いい娘さんだな~」
――「なっ!? この前はあんなこと言ってたクセに!」
この日の約束をするため実家に電話したときのことだ。彼女が9つ年上だと告げると、親父はいつになく真剣な声でこうのたまった。
親父「いいか、これは父親としてではナイ。男としてのアドバイスだ。奥さんは年下にしておけ」
そんな親父が彼女に会うや否や捩じ切れるほど手のひらを返したのだから、笑わずにはいられない。
母親「9づも上だなんて信じらんにぇね」
親父「んだな。だいぶ若ぐ見える」
母親「雰囲気もお上品だし」
親父「そりゃウヂど違って立派な家の娘さんだもん」
――「で、反対するつもりあるの?」
親父「ない!」
母親「一つもない。おめでとう」
――「ありがとう。今後もよろしく頼むよ」
こうして我が五十嵐家でも結婚を認められ、数か月後に入籍することが決まった。
親父「じゃあ改めて乾杯すっぺ」
――「ああ…ごめん、水でいい」
母親「どうしたの?」
――「いや、昨夜から頭が痛くてね」
親父「母ちゃんみだいにくも膜下んねべな?」
――「…まさが」
両親に心配させる必要はない。俺は睡眠不足だと嘘をついたまま、翌日彼女とともに神奈川へ戻った。
杞憂。
山形から戻った翌日。俺は朝イチで大学病院へ向かった。自宅から徒歩で1分。5分ほど歩けば、別の大学病院もある。
脳神経外科は朝から混んでいて、診察を受けられたのは正午が迫った頃だった。
医師「え~と、五十嵐さん…」
医師はうんうんと小さく頷きながら、俺が書いた資料に目を通している。
医師「あ~、くも膜下出血じゃないかと?」
――「ええ、数日前から激しい頭痛が続いてまして」
医師「いやいやいや、まだ25でしょ?」
――「はい、そうですが…」
医師「そんな歳じゃなりませんて!」
――「いやでも祖父が脳梗塞、母がくも膜下出血なんです」
医師「お母さんはご存命で?」
――「ええ、回復して後遺症もないです」
医師「そう。くも膜下出血は大病です」
――「知ってます」
医師「1/3が即死で、1/3は後遺症が残る」
――「で、残る1/3が完治ですよね」
医師「そう。それくらい怖い病気ですから。発症して歩いて病院に来て、こうして話していることがありえません」
――「そうですか?」
医師「普段から偏頭痛持ちなんですか?」
――「そうです」
医師「なら偏頭痛だ」
――「いや、でもいつもの偏頭痛とは質が違うと言うか」
医師「心配なら検査してみます?」
――「お願いします」
医師「では手配しますので、2つ隣駅の〇〇へ行ってください」
――「は? ここで検査じゃ」
医師「MRIという検査機械が足りなくて、別の検査専門機関にもお願いしているんですよ」
――「なるほど。朝から脳外科混んでますもんね」
医師「そう。結果は明日出ますので、検査が終わったらお帰りください」
――「分かりました」
医師「何も出ないと思いますが、明日また来てください」
――「ありがとうございます」
その後、2つ隣駅の検査機関で人生初のMRIを体験。MRIとは、言わばCTスキャンの上位版。CTスキャンの画像は2Dの写真だが、MRI画像は3Dなので立体的に体内を見られるのである。
検査を終えると、気分は少しばかり晴れていた。医師の偏頭痛と決めてかかる態度は気に食わなかったが、案外その通りなのかもしれない。俺は少し心配性なところがある。祖父も母親も脳血管系の大病をやっているから、ついついくも膜下出血だと思い込んでいた感も否めない。 そうだ! ちょっとヒドいだけの偏頭痛なのだ! ならば…
パチスロを打っても大丈夫!
スグさま虎さんにメールすると、近所のホールで「押忍!番長」の設定6を打っているとのこと。その足で同じホールへと向かい、大好きな「イミソーレ-30」を打ち始めた。
危うく昇天。
▲4号機「イミソーレ-30」(E.M.A)
10月2日更新の『衝撃的な出会い』に登場した4号機ストック機。連チャンゾーンは192Gと長いため、ダラダラとした連チャンが特徴。兄弟機「メンソーレ-30」に比べればマイルドな仕様だが、それでも驚異的な出玉性能を有している。詳細な仕様については先述の過去記事をご覧ください。
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数日ぶりのパチスロは絶好調で、着席から30分ほどで初当たり。その後もゾーン内での連チャンが続き、あれよあれよとドル箱が積み上がっていく。とはいえ30φなので、出玉は2000枚~3000枚といったところか。設定的な感触もいい。
鎮痛剤のせいかアドレナリンのせいか、頭痛はだいぶ和らいでいる。やはり我々パチスロ打ちにとって、パチスロこそが良薬なのだ!
こんな気分が良い時こそ「アレ」が引ける。
そんな根拠のない考えが脳内に浮かんだ直後JACハズレが発生! JACハズレを引くと1/8でスーパーモードへ。スーパーモードなら早いボーナス放出が確定し、かつ約75%でスーパーモードがループする。今これを射止めれば5000枚オーバーも見えて来るが…。
ちょうどその時、虎さんが様子を見に来た。
虎さん「おま…めちゃめちゃ出てんじゃん」
――「いや~、数日ぶりの稼働なんで嬉しいっす」
虎さん「朝イチからしこしこ番長の6打ってんのアホらしくなるな」
――「そんなことないでしょ! 今は番長に設定が入る時期ですし」
虎さん「そうだけどよ…」
――「あ、今JACハズレ引いたんす」
虎さん「おっ! でも1/8はそう簡単に…」
――「いや、引けます! そんな気がするんです」
虎さん「へっ、何を根拠に…」
――「見ててくださいよ!」
毎ゲーム祈りを込めながらレバーを叩いた。
シャレにならないほどの頭痛に襲われたものの、ただの偏頭痛だった。そう、今の俺はツイているのだ。この勢いに乗れば、フリーズなんてわけない。必…
バヒューン♪
――「あっ!!」
虎さん「うあーーー!」
10Gほどでクラッシュフリーズが発生! 脳内に何かが溢れ出るのを感じた。そして自分でもしっかりと分かるほど、鼓動は早く、強く、打っていた。
ブ~ン ブ~ン ブ~ン♪
ドットには荒めの流星が降り注いでいる。
虎さん「マジか~!!」
――「ほらね!」
このフリーズで勢いに乗り、出玉は一層加速! 結局閉店近くまで連チャンが止まらず、鎮痛剤を飲むのも忘れ一心不乱にレバーを叩き続けた。
流した枚数は10200枚ほどに。差枚数万枚には惜しくも届かなかったが、期待を遥かに超えた戦果に大満足! さすがに体調が悪いため虎さんとの反省会は辞退したが、スキップを抑えるのがやっとというほど気分は軽やかだった。
翌朝――
着信音で目覚めると、即座に始まる釘を打たれるような頭痛。ケータイの液晶には見知らぬ番号。市外局番はウチと一緒なので、市内からの電話ということになる。通話ボタンを押したのち、ケータイを耳と肩の間に挟み、次いでタバコに火をつけた。
――「もしもし?」
男「五十嵐さんのお電話で間違いないでしょうか?」
――「はい、そうですが」
男「私〇〇大学附属病院の高田と申します」
――「はぁ…結果ならあとで伺って聞きますが…」
高田「落ち着いて聞いてください」
――「は?」
高田「決して興奮しないでください」
――「それってつまり…」
高田「残念ながら…くも膜下出血です」
――「で…ですよね」
驚きはしなかった。不思議なほど冷静に、ゆっくりと昇っていく紫煙を見送っていた。やはり自分の身体は自分が1番分かるのかもしれない。
高田「救急車手配しましょうか?」
――「いえ、結構です」
高田「タクシーで?」
――「自宅からスグなので歩いて行きます」
高田「そっとですよ? そ~っと歩いてきてください」
――「分かりました。スグに行きます」
電話を切って窓を開けた。タバコがいつにも増して美味しい。もしかしたら、これが生涯で最後の1本になるかもしれない。
彼女「電話、誰からだった?」
――「病院」
彼女「何て?」
――「やっぱりくも膜下出血だって」
彼女「ええ!? ホント?」
――「入院の支度しなきゃ」
彼女「私も一緒に行く」
――「ごめんね。両親にも会わせたのに」
彼女「ううん、私は大丈夫だから」
――「うん…」
今は平気だが、もしも重い後遺症が残ったら…。婚約は解消だろう。いや、彼女のために解消すべきだ。そんな考えが故障しているハズの脳内を駆け巡っていた。
しかし、あのクラッシュフリーズは危なかった。あそこで病状が悪化していたら、死にはせずとも深刻な事態になっていたかもしれない。やはり医者の言うことを鵜呑みにするのでなく、体調が悪いときは素直に休むこと。これが1番! みなさんは体調悪い時に打ちに行かないように! 絶対にマネしないでくださいね!
次回、衝撃の発症理由が明らかに――!?
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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