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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2019.03.05
『 職業:攻略ライター』~超お父さん~
――「終わったー」
シャープペンシルを軽く放り、そのまま机上に突っ伏した。やっとの思いで当月分のラフ(記事の設計図)を切り終えたところだった。写真集めに表作り・校正と仕事は山積しているが、そんなものラフのツラさに比べれば些細なもの。ウイニング・ランみたいなものだ。
こうして編集部に常駐しラフをきるのもあと数か月。少し寂しい気もするが、ラフをきる苦しみから解放される喜びのほうが強い。あと数か月乗りきれば、待ちに待ったフリーライター生活だ!
机の冷たさが気持ちイイ。デザイン会社にラフを送り、担当ライターにもネーム(文章)を発注しなければならないが、しばらくこのひんやりとした机に身を任せていたい。ラフが終わった余韻を愉しみたい。
おや…睡魔が…。
無理もない。 この2日で睡眠は2時間ほど。
デザインとネームの発注くらい、仮眠のあとでも問題ないだろう…。
睡魔よ、 好きにするがいい――。
現(うつつ)の音が遠くなり、 夢の世界へ片足を入れた。
が、肩への刺激で現実へと引き戻された。驚いて起き上がると、隣に座る編集長が俺の顔を覗き込んでいた。どうやら肩を叩かれたらしい。急用なのか、左手には受話器だ。
編集長「ラフ、どこまで終わってる?」
――「ラフ? 俺に電話ですか?」
編集長「まあ、そんなとこ」
――「全部きり終えましたよ」
相手は上司だというのに、俺は不満を隠しきれなかった。寝起きの機嫌が悪いのは、子どもの頃から変わっていない。編集長は俺との会話をそこで切り、電話へと戻った。
編集長「全部終わってるみたい…ええ」
デザイン会社からの催促だろう。内容は容易に想像がつく。作業をしたいから、早くラフを送れということだろう。しかし、ラフ入れの予定は18時だ。今はまだ10時過ぎ。急ぐ必要はナイ。
編集長「はあ、なるほど…それは」
編集長「うん…じゃあそうしよう」
編集長「なら手配はこちらで。今夜で?」
電話は続いているが、構うものか! 寝よう。今度こそ。再び机に突っ伏したが、またしても編集長に肩を叩かれた。
――「…なんすか?」
編集長「きり終えたラフ見せて」
――「はぁ…」
俺は瞼(まぶた)をこすりつつ、渋々ラフを手渡した。
編集長「なるほど。解析数値で埋まってるわけね」
――「ええ、今月は解析数値が多めなので」
言いかけて、再び机に突っ伏した。眠気はピークに達し、もう5秒と待っていられない。
編集長「ラフきり直して」
さあ、睡魔よ。
俺を夢の世界へ…
え!?
★強力な変判手順。
俺は勢いよく起き上がった。
――「い、今なんて…」
編集長「ラフきり直してって」
――「あ゛!?(キレ気味)」
寝ずにやっとこ仕上げたラフ。それをきり直せだ!? 心中は穏やかでなかった。上司の言うことは絶対だが、ラフは編集にとって子どもも同然。大きな苦しみを伴い、やっと作り上げたのだ。軽くきり直せと言われても、易々と納得できるものではない!
――「なんでですか?」
編集長「今KUNNYから電話だったんだけど」
――「KUNNYさんから?」
KUNNYさんとは―――――――
パチスロ攻略誌「H」の第一線で活躍した攻略ライター。現在はパチンコ・パチスロ動画サイト「パチビー」で動画作成を担当しつつ、ライター・演者としても活躍中。攻略誌「H」における元祖イケメンライターで、動画・誌面において多くのファンを魅了した。現在もそのイケメンっぷりは衰えていない。ちなみに「パチ7」でお馴染みの佐々木真御大とも親交が深い。
しかし、きり直せとはどういうことか。
――「で、なんと?」
編集長「変判手順を見つけたってさ」
――「設定変更判別? マジすか!?」
編集長「今号に間に合わせるなら…」
――「たしかにスグに検証が必要ですね」
俺は小さく溜め息をついた。そんな強力な攻略ネタなら、きり直しも仕方がない。解析部分を極力小さくし、変判手順を大きく載せるようレイアウトを変更する必要がある。
編集長「ラフは一旦ストップで」
――「デザイン会社には連絡しておきます」
編集長「じゃあ俺は深夜実戦を手配するよ」
――「お願いします。今日…ですよね?」
編集長「もちろん。間に合わなくなるからね」
――「…了解しました」
この瞬間、3日連続の徹夜が確定した。
★深夜実戦。
23時少し前。新宿駅近くの実戦店に着くと、すでにKUNNYさんが缶コーヒーを片手に待っていた。
――「お疲れ様です」
KUNNYさん「お疲れ。ごめんね、ラフきり直させちゃって」
――「いえ、変判手順を載せられるなら」
KUNNYさん「確信できたのが今朝だったから」
――「載せられるだけありがたいです」
KUNNYさん「それはよかった」
実戦検証を行う機種は「超(スーパー)お父さん」だ。
▲5号機「超(スーパー)お父さん」(SNKプレイモア)
2006年の春に登場した5号機のボーナス+RT機。BIG・REG終了後は必ずCZへ移行し、CZ中にベルを引けば30G固定のRT「バトルチャンス(BC)」に突入。30G消化後は再びCZへ移行するので、BCをループさせつつボーナス当選を待つというのが主なゲームの流れ。なお、CZ中にチェリーを引くと通常時へ転落してしまうので、いかにチェリーより先にベルを引けるかが重要となる。
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5分ほど待つとシャッターが開いた。
このホールは「今晩、深夜実戦させてください」という急なお願いにも、いつも快く応じてくれる。こうしたホールの協力があり、パチスロ攻略誌は作られているのだ。 店長さんから台キーと設定キーを預かり、まずはKUNNYさんから手順の説明を受けた。
KUNNYさん「設定変更後もCZなのは知ってるよね?」
――「ええ、もちろん」
設定変更後もボーナス後と同じくCZからスタートする。しかし液晶上は通常時と変わらないため、外見からCZ中か否かは見抜けない。運よくチェリーより先にベルを引きRTに突入すれば設定変更と予想できるが、逆にチェリーを先に引いてしまうと変更か否か判断できない。これがそれまでの常識だった。
KUNNYさん「その内部CZを確実に見抜くんだ」
――「確実に!? 可能なんですか?」
KUNNYさん「そう。ある特性を利用してね」
――「めっちゃワクワクします!」
慣れた手つきで設定変更を行う俺。設定はいくつでも構わないが、せっかくなので6に打ち変えた。
――「はい、変更しました」
KUNNYさん「じゃあ始めるね」
回し始めるKUNNYさん。
KUNNYさん「まず前提として、内部CZ中はベルとチェリーが成立しても演出が発生しないんだ」
――「えっ!? 絶対に?」
KUNNYさん「そう、100%」
KUNNYさんはリールを止めず、カラ回しのまま話し続けた。
KUNNYさん「理由は想像できる?」
――「う~ん、チェリー確定の演出が起きたら萎えるから?」
KUNNYさん「まあ、それもそうだけど…」
そのとき、リールが一斉に停止した!
自動停止である。
昨今の機種ではすっかり見なくなったが、昔の機種はリールの自動停止が当たり前だった。4号機は自動停止でも小役・ボーナスの入賞は有効。対する5号機は無効となるため、必ず成立役を取りこぼしてしまう。
つまりRTやCZのパンク役が成立した際、あえてリールをカラ回しし、パンク役入賞を回避するという延命打法も可能だった。それを利用した最初の機種が、エレコの「キューティーハニー」である。
KUNNYさん「もし演出からチェリーが分かったら、カラ回し自動停止で回避できちゃうでしょ?」
――「そしたらベルばかり入賞させられるから、RT突入率が跳ね上がっちゃいますね」
KUNNYさん「それを防ぐため、ベル・チェリー成立時は演出が発生しないんだろうね」
――「ほー、なるほど!」
KUNNYさん「要するに朝イチのベル・チェリー成立時に演出が発生しないなら内部CZ中濃厚、すなわち設定変更濃厚となるわけ」
――「逆に演出が発生したら据え置き濃厚ですね」
KUNNYさん「そういうこと!」
――「でも、朝イチすぐにチェリーが入賞したら」
KUNNYさん「だからリールからチェリー・ベルを察知して、カラ回し自動停止で入賞を回避するわけ」
――「なるほど! それなら何度もサンプルが採れますね」
KUNNYさん「じゃあ実際にやって見せよう」
KUNNYさんは再び打ち始めた。
KUNNYさん「まずは中押し」
――「はい!」
KUNNYさん「中リール上・中段にBARを狙うんだ」
――「上・中段BARですね」
KUNNYさんがピタリと手を止めた。中リール中段にはベルが止まっている。
KUNNYさん「お、来た来た! これ!」
――「中段ベルがベルorチェリーですか?」
KUNNYさん「そう、この停止形になった際の演出の有無が重要」
――「たしかに演出ナシでしたね」
KUNNYさん「そうでしょ? もう演出ナシの時点で変更濃厚だけど…」
――「CZ中以外でも演出ナシの場合があるんですか?」
KUNNYさん「そうなんだよ。実戦上、通常時の演出発生率は9割くらいかな」
――「なるほど。もう1~2回は中段ベル時の演出を見ておきたいですね」
KUNNYさん「そう、だからカラ回し自動停止での小役ハズシが必要なわけ」
――「たしかに! スゴい変判手順じゃないですか!」
KUNNYさん「ラッシーも隣の台で試してごらん?」
――「ではさっそく」
検証の結果、たしかに内部CZ中のベル・チェリー成立時は演出が発生しないと判明。カラ回し自動停止を用いて小役入賞を回避し、2~3度ほど中押し中段ベル時の演出をチェックすれば、ほぼ100%で設定変更or据え置きを判別できるという結論に至った。
――「めっちゃスゴいじゃないですか!」
KUNNYさん「いや、まあこのくらいね」
――「手順も簡単だし!」
KUNNYさん「初心者でもできるもんね」
――「よく見つけられましたね!」
KUNNYさん「実際のホールだと変更したか分からないでしょ? だから大変だったけど」
――「それでも見つけるんだからスゴいっす!」
KUNNYさん「次号に載せるんだったら1人でも検証できたけどね」
――「え? 1人で?」
KUNNYさん「ほら、俺って自分で深夜実戦しちゃうから」
KUNNYさんが他のライターと一線を画すのは、まさにソコだ。ホールのオーナーや店長に知り合いが多く、コレと思った攻略ネタを見つけたら、編集部を介さず1人で深夜実戦を行うのだ。たとえば「あの機種、設定1でも甘いんじゃない?」などと話題になれば、数日に亘り深夜のホールを借り、その甘さを検証する。ホール側からの信頼、そして貪欲に攻略を探す情熱。それを備えていたKUNNYさんだからこそ、そんな検証が可能だったのだ。
もちろんホールとの黒い繋がりは一切ナイ。オーナーや店長と仲が良くても、そこはキッチリと線引きしていたのだろう。だからこそ信頼を得て、深夜のホールを借りられるほどになったのだ。
――「いや~、そんなことできるのKUNNYさんだけっすよ」
KUNNYさん「やめてよ恥ずかしい。ラッシーもライターになるんだろ?」
――「あら、ご存じでしたか…」
KUNNYさん「じゃあ、もうすぐライバルだな」
――「いやいや、ライバルだなんて」
KUNNYさん「はは、ラッシーも1人深夜実戦すれば?」
――「いや…幽霊出たらどうするんすか」
KUNNYさん「出るかっ!!」
こうしてただの解析記事になる予定のページは、より実戦的な変判手順を加え生まれ変わった。俺の肉体的な負担は増えたが、やはりこういう「生きた情報」を掲載することこそ、パチスロ攻略誌の使命だと俺は思う。KUNNYさんのお陰で納得のいく素晴らしいページができました!
俺の現在のライター歴は、当時のKUNNYさんのライター歴を大きく上回っている。しかしあの頃のKUNNYさんにも、まだ追いつけている気がしない。それほどKUNNYさんは俺に大きな影響を与えたホンモノの攻略ライターだった。 攻略ネタを見つける嗅覚は尊敬に値します。あと年齢を重ねても衰えないルックスね。それは尊敬というか、純粋にズルいと思います。本当に!
いわゆる誌上プロや動画演者と攻略ライターでは、必要な資質がまるで違う。攻略ライターはネタを見つける臭覚、そしてそれを検証する努力・情熱。攻略ライターは誌上プロや動画演者に比べ華がナイ。けれども、まさに「攻略の匠」という感じがして俺は好き。まあ、そんなことを言っているから俺は「化石ライター」なんて揶揄されるんだけど。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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