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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2017.11.28
『あやまち』~出来心のナイン
「大花火」ドンBIGのBGMが鳴り響く中、俺はボーッと天井を見つめていた。
ポップな洋風の木目とは違う、少し陰鬱な和風の木目。所々、人の顔や熊に見えなくもない。遮光カーテンの隙間から入った鋭い日差しは、ナイフで割いたかのように部屋を二分している。
意識がハッキリすると、けたたましく鳴り響くBGMが着信音であることに気が付いた。スグに液晶を確認すると、学校の同期・Tからだった。
___「…はぃ」
T「なんだ、こんな時間まで寝とったんか?」
___「いま何時?」
T「13時や、午後1時。ネボスケやな」
___「久々の休みだからいいでしょ」
長く続いた映画製作の実習が終わり、この日は久々の休みだった。ちなみにTと俺は別の班で、彼の班はウチより1日早く実習を終えている。
T「そら起こしてスマンかったな」
___「いいけど、どうしたの?」
T「飯まだやろ? ちょっと出てきてくれんか?」
なんだろう。Tらしくない。いつもなら俺の都合など訊かず迎えに来るようなヤツなのに。そして声に元気がない。普段は絵に描いたような明るい関西人だが…。
___「別にいいけど…」
T「ほな、車で迎え行くわ」
___「アパートの前に着いたら電話して」
T「了解」
30分後――
T「おう、待たせたな」
___「いや待ってねーよ。早すぎるくらいだわ」
T「俺が腹減ってんねや」
___「俺、寝起きなんだけど」
T「そう言うなて。はよ出て来んかい」
アパートのカギを締め、Tの車の助手席へとすべりこむ。
T「久しぶりやな」
___「実習長かったからね」
T「飯、洋食でええか?」
___「なんでもいいけど、実習で6万自腹切ったから安いトコにして」
T「ハハ…俺が奢ったるから心配すなよ」
___「いいよ、明日からまたバイト頑張るし」
T「…バイトな」
Tは煙草に火を点けると、大通りへ向け車を走らせた。やはりいつものTとなにか違う。走りだす前は決まってニュートラルで1発エンジンをふかすが、今日はソレがない。 Tに連れられ入ったのは、郊外にある立派なレストランだった。学生からすると、少し贅沢と思えるほどの店である。
___「安いトコで良いって言ったのに」
T「エエやん、俺の奢りやし」
___「なんだよ。今さら『俺、ゲイやねん』とか言うなよ」
T「アホ言え! 俺の女好き知ってるやろ!」
___「ふはは…」
席に着きメニューを頼むと、Tは煙草に火を点けたまま、急に黙り込んだ。
___「なんか元気なくない?」
T「はは、そう見えるか。せやろな」
___「どういうこと」
T「実は…お前に謝らなあかんことがあんねん」
___「は? 謝る?」
T「次のバイトはいつや?」
___「明日の遅番」
T「そうか…なら先に言うで」
そう言うとTは水をひと口飲み、うつむきながら語り始めた。
T「……俺な、お前の店でトラブル起こしてん」
___「俺のバイト先のホールでってこと?」
T「せや。俺、一昨日に実習終わったやろ?」
___「うん」
T「打ち上げ会場が、お前の店の上の居酒屋だったんや」
___「ああ、あそこね」
バイト先のホールは大きなビルの1・2階で、上層階には学生向きの安居酒屋が数軒入っていた。
T「酔っ払って帰ろうと思ったら、お前の店の前にデカいゴミ袋が積まれてあってな」
それはオカシイ。店舗のゴミは専用の倉庫に置くのがルール。店前に置かれることはナイはずだが…。
___「それで?」
T「気になってゴミ袋調べてみたらな、中に大量のメダルが入っててん」
___「…廃棄のメダルかな」
T「せやな。それで…つい…」
Tは廃棄のメダルをポケットいっぱいに詰め込み、翌日、つまり昨日、そのメダルでプレイしたらしい。
T「不思議なことにな、パチスロにそのメダル入れるとエラー起きんねん。で、店員呼ぶとエラー直してくれるやろ? でもまたスグにエラー起きんねん」
___「で、バレたと」
T「2回目のエラーで事務所連れてかれたわ。もちろんポケット調べられるやん? そこから大量の廃棄メダルが出てきて、たっぷり絞られたっちゅうわけや」
___「…」
T「ほんまスマン。お前に迷惑掛けてしもて…」
Tは同期だが、歳は俺の2つ上だ。バイト経験も豊富で、俺から見れば「大人」だった。そのTが、そんなつまらぬ罪を犯すとは。もちろんTは素性を調べられ、俺と学校の同期だと簡単にバレたらしい。俺はTになにも言えず、ただ茫然と固まっていた。
T「明日、久々のバイトやろ?」
___「そうだね。2週間くらい実習で休んでたから」
T「もし…もし俺のせいでクビになったら」
___「さあ…どうだろう」
T「もちろん言ったで! 五十嵐には関係ないんですって! たまたま店の前を通りかかったら捨ててあったから、魔が差しただけなんですって」
___「うん…」
T「もしクビになったら、俺がもっといいバイト紹介するから」
そう言うと、Tはテーブルに額をつけた。
T「どうか堪忍してくれ! 魔が差したんや!」
___「…もうやっちまったモンはしょうがない。なるようになるしかない」
T「ほんまスマン!」
Tがしたことは許されない。しかし、Tがここにこうしているということは、店側も大事にする気はナイということだろう。聞けば警察にも突き出されず、学校にも連絡されなかったらしい。
廃棄メダルが他店メダルなのか、古くなったので一斉に替えたメダルなのかは分からない。なんらかの対策により、その廃棄メダルを使用するとエラーが起こるように設定されていたようだ。
___「まあ、俺からもマネージャーに謝っておくよ」
T「申し訳ない。きっぱり『俺は関係ない』って言ってエエから」
___「…ちなみにそのメダルで何打ったの?」
T「ナインや。お前がオモロい言うてたヤツ」
▲4号機「ナイン/エレコ」
1999年にエレコからリリースされたノーマルAタイプ。金色の筐体にブラックリールという派手な外見だが、ゲーム性は至ってシンプルだ。リールにはボーナス絵柄以外にもたくさんの7絵柄が配されており、9コマの枠内に停止した7絵柄の数だけ、リール下のランプが点灯する。8つ全て点灯すればボーナス確定だ。
全リールに3連チビ7(ブランク絵柄)が配されるなど、それまでのアルゼ系とは一線を画すリール配列も大きな特徴の1つ。ヒット機種とは到底言えないが、俺は他機種では拝めない大胆なリーチ目や耳に残るBGM、そしてアツさが集約された中押し小役狙いが大好きだった。ちなみに現代のユニバ系機種のプレミアでたまに出現する宇宙人は、このナインの告知ランプのキャラである。
___「面白いって言ったけど、そうまでして打つ台じゃないよ」
T「返す言葉もないわ。金輪際、ホールには立ち入りません」
___「ナインて…もっと他にあっただろ」
T「いや、機種のダメ出しすなよ。そういう問題ちゃうわ…」
Tが反省していることは、顔を見れば分かる。これ以上責める気にはなれない。あとはバイト先のマネージャーからどう言われるかだ。テーブルには普段ならありつけないような料理が並んでいたが、どれも味はしなかった。
翌日――
事務所に入ると、マネージャーが釘調整用のハンマーで肩を叩きながらモニターを睨んでいた。遅番の出勤時間には少し早すぎるためか、ほかの社員やバイトは1人もいない。
___「おはようございます!」
マネージャー「おう、おはよう」
___「すみません、昨日、俺の友達が…」
マネージャー「ああ、あのメダルのな」
___「申し訳ありません。俺からもキツく言って…」
マネージャー「あ~、全然大丈夫」
___「え? 俺、バイト続けてもいいのでしょうか?」
マネージャー「は? なんでお前が?」
___「アイツの友達ですし」
マネージャー「お前がアイツに廃棄メダルのこと教えたわけじゃねーんだろ?」
___「はい、メダルの廃棄があることすら知りませんでした」
マネージャー「じゃあお前に関係ないし、アイツも言ってたよ」
___「え?」
マネージャー「土下座しながら『五十嵐は関係ありません。五十嵐には迷惑掛けたくないんです!』ってな」
___「…土下座」
あの陽気なTが土下座。自分の保身もあっただろうが、それより俺に迷惑を掛けまいと誠意を見せたのだろう。俺がバイト先を気に入っていることは、アイツも知っている。だから…。
マネージャー「それはそれは見事な土下座だったぞ(笑)。副店長のヤツが警察に突き出そうって言ったんだがな、俺が止めたんだよ」
___「本当にありがとうございます」
マネージャー「まあ当然、出禁にはしたがな」
___「ご迷惑お掛けしました」
マネージャー「アイツまだハタチそこらだろ?」
___「22かな」
マネージャー「俺だって若い頃は悪いことしたもんさ。廃棄のメダルをガメるなんてカワイイもんだよ」
___「はあ…」
マネージャー「さあ、お前にはまだまだ働いてもらうぞ」
___「ありがとうございます」
こうして俺は何事もなくバイトを続けられることになった。 もちろん今は大人になったし、こんな仕事をしているから、さすがにあのときのTのようなマネはしようとすら思わない。でも、もし俺も未熟な頃に別のホールで同じような状況に出くわしていたら…。
あの頃は1円でも多く得したいと躍起になっていた。常にホールの「穴」を探していたくらいだ。誘惑に耐え切れず、同じ過ちを犯していた恐れも否定できない。
この出来事から17年。Tは道を踏み外すことなく、立派に会社員として働いてる。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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