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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2023.07.18
肌色多めの衝撃~長き戦いのはじまり~
店内はウソのように静かで、普段の営業中では聞こえない機械のモーター音や空調の音が場を薄く包んでいた。
編集「じゃあバインダー回収しまーす」
ライター・編集一同「うーい」
バインダーを担当編集に渡し、アクビを噛み殺しつつ帰り支度を整えた。席から立ちあがった面々は、思い思いに体を伸ばしたり、落ちかけたメイクを整えたりしている。
深夜実戦にも慣れたもんだ。
20代の頃に比べれば疲れが出るようになったが、それでもまだ余力があるように感じている。不規則な生活を長く続けているからか、夜の活動もさほど苦ではない。
後輩K「ぼちぼち始発ですかね?」
――「だね」
後輩K「軽くメシ行きます?」
――「いや~、俺はいいかな」
後輩K「え~、メシ食ってから打ちにいきましょうよ」
――「ハハ、大学生かよ? 俺はパス」
後輩K「もう、ジジイなんだから」
――「違うわ! 今日、取材あんの!」
後輩K「マジすか?」
――「そう。だから御徒町まで行ってネカフェで少し休むよ」
後輩K「お疲れさまです」
――「うん、またね」
編集「じゃあ、みんな外に出ましょう」
腰の高さほどに開けられたシャッターをくぐると、朝の陽ざしがまぶたに刺さり、目の奥に鈍い痛みが走った。
ライター・編集一同「ありがとうございました!」
店員「お疲れさまでした! またどうぞ」
深夜実戦は、協力ホールのご厚意だけで成り立っている。誌面や動画で「協力ホール」として紹介することはあるが、お礼として金銭を渡すことはない。当然、貸しっぱなしというわけにもいかないため、最低でも1人は従業員を朝まで残してくれている。
協力ホールには感謝してもしきれない。
――「んじゃ、みんなまたねー」
編集「お疲れ様でーす」
後輩たち「お疲れっす~」
みんなと別れ、一人でJR新宿駅に向かった。新宿はよく『眠らない街』などと言われるが、そんなことはまるでない。歌舞伎町あたりでさえ、深夜から早朝にかけては割と静かで落ち着いている。地方の歓楽街のほうがよっぽど賑やかに感じるくらいだ。
たくさんのカラスがゴミ捨て場を荒らし、路上にはゴミが散乱している。目を逸らそうと少し視線を上げると、朝日に照らされたビル群がキラキラと輝いていた。生まれ育った田舎に比べれば汚い街だが、それでも俺は、この朝の新宿が嫌いじゃなかった。
なんと言うか、生きている心地がする。 朝の新宿の光景を見るのは、だいたい仕事から解放されたときだ。ライターになり編集部に泊まり込むこともなくなったが、その解放感を体が覚えているのだろう。
だいぶ大袈裟に言うのなら、朝の新宿はデスゲームから生還したような希望を感じるのである。
しかし、今日はまだ終わりじゃない。
ついつい自宅方面に向かう路線を見てしまったが、体を反転し、まだ静かな山手線ホームへ向かった。
肌色の衝撃。
案の定、朝の御徒町も眠ったままだった。聞こえるのは絶え間なく行き交う車のエンジン音と、カラスの声だけ。俺は小さな路地を迷うことなく進んだ。
都内の主要駅付近には、それぞれお気に入りのネカフェがある。財布はいつもネカフェの会員証でパンパン。寝ていたら財布を盗られたという知り合いが何人もいるため、仮眠をとるときはカギ付きの個室がある店舗と決めている。
見慣れたビルに入ると、すぐにエレベーターに乗り込み行き先階ボタンを押した。取材は11時からだから、身だしなみを整える時間を考慮しても3~4時間ほど寝られるハズ。そんなことを考えながら何気なく顔を上げると、ふと〝モニター〟が目に入った。
なんの変哲もないただのフルカラーモニター。液晶には、今まさに乗っているエレベーターの防犯カメラ映像が映し出されている。普段なら気にも留めない映像だが……
俺は釘付けになり、そして驚愕した。
――「な、な、なんだコレは!!?」
暑かったためキャップ(帽子)を脱いでいたのだが、その俺の頭が〝肌色〟なのである! たしかに坊主頭ではあるのだが、どんなに目を凝らしても黒は少しも確認できず、純粋無垢な〝肌色〟なのである!!
――「あ、あ、あぁ………」
デジタルの残酷さ。
瞬時に思い出したのは、学生時代の先生の言葉だ。こう書くと冗談と思われそうだが、先生は日本映画界で〝ゴッドハンド〟と呼ばれた音声技師で、天皇陛下から勲章を頂いたこともある人物である。
その授業は、デジタルとアナログの違いについてだった。俺が学生だった当時は、映像や音声データはどんどんデジタルへと移行する時期。デジタルは収録も編集もラクなのだが、やはり美しさや繊細さにおいてはアナログのほうが遥かに上…という内容だった。
先生「じゃあ、アナログとデジタルの違いを図で説明しよう。音というのはご存知の通り波で、波形で表すことができます。下の図を見てみて」
アナログのイメージ
先生「レコードや磁気テープなんかのアナログは、波形をそのまま記録します」
デジタルのイメージ
先生「対してデジタルは、紫色で示した棒が波形に触れているところだけを記録している。つまり、棒と棒の間は記録されない(※)」
※実際の間隔はずっと狭いですが、分かりやすく伝えるため間隔を広くとっています。
アナログはありのまますべてを記録するのに対し、デジタルは厳密に言えば部分部分を切り取って記録している。つまり繊細な部分は〝無い物〟として表現しているわけだ。
要するに……
モニターに映し出されたデジタル映像では、俺の頭髪の〝繊細な黒〟は無い物として表現されたということか!!
無いに等しい黒!
ほぼ肌色!!
店員「お客様! お客様? ご利用ですか?」
――「え? あ、はい……」
店員「まず降りていただいて、会員証をご提示ください」
――「はい……」
気付けばネカフェの受付階に到着していた。反射的にリュックに付けていたキャップを被り、次いで震える手でリュックから財布を取り出した。
店員「何時間のご利用でしょうか?」
――「え~、あ~、え~と…」
あまりの衝撃に狼狽し、なにも考えることができなかった。
サラブレッドの血統。
希望通りカギ付きの個室に入ると、スグにスマホのアラームをセットして横になった。しかし、とてもじゃないがスヤスヤと寝られる気分ではナイ。
覚悟はしていた。
いや、していた「つもりだった」。
父方のじいちゃんは生涯坊主頭だったため正確に分からないが、父親は紛うこと無きハゲだ。そして母方のじいちゃんも、ジャック・ニコルソンと同種のハゲだった。それゆえ十代のうちから「俺もうハゲ確じゃん」と諦めてはいた。
まさにハゲ界のサラブレッド!
逃れられぬ宿命!!
案の定、20代前半の編集部員時代からその兆候が表れた。俯瞰で撮られた結婚式のチャペルのビデオも、親族やカミさんは「感動的だね」なんて言いながら観ていたが、俺は自分の寂しくなった頭髪が気になって仕方なかった。
もちろん策を練らなかったわけではない。
30歳になった頃は一段と頭髪に寂しさを感じ、月に1~2回ほど頭皮洗浄マッサージに通った。カミさんが通っていた美容院で、行くたびにカミさんも髪のケアをしてもらっていた。が……
「また頭皮が詰まってますよ!」
「また頭皮が硬くなってます!」
「ま~た頭皮にゴミが付いてます!」
どれだけ念入りにシャワーを浴びていっても、頭皮が汚いだのなんだのと毎回怒られる。もちろんアドバイスを受けキレイにキレイに洗っているつもりだが、褒められたことなど一度も無い! 毎回毎回「頭皮が汚れている」と言われ続けるのだ。
しかもお会計はいつも5万円オーバー! 決まって5万円オーバーだ。月に2回行けば、たったそれだけで10万円が飛んでいく。それで効果があるのなら理解もできるが、体感的にはただただ5万円を払って罵られに行っている感覚である。
文字通りむしり取られていたのである。髪だけに……って、やかましいわ!!
で、とうとうキレまして「もう、毎回5万もとられるならハゲたるわ! 上等だ!!」となったわけである。それからも自力で頭をキレイに保ったり、頭皮マッサージをしたりしていたのだが……。
――「クソが…ここまでか」
ゴロリと横になったまま腕を組み、ギュッと瞼を閉じた。まあ、仕方がないことだ。俺がハゲるのも自然の摂理。平成の世になり、いくら科学が進歩したとはいえ、やはり人間は自然の前にあまりに無力。 あまりに無力なのだ。
座して死なず。
いや、もういいだろう。幸い結婚をして、すでに娘もいる。古くから代々続く五十嵐家の当主として、最低限の責務は果たしたハズだ。両親も口には出さないが、本当は跡取りとなる男の子を望んでいたかもしれない。でも、もうそんな時代じゃねえ。
五十嵐家は娘が継ぐ。
俺は五十嵐家の跡取りとしての役目を終えたのだ。
ありがとう、俺の頭皮。ここまでよく耐えてくれた。そう思いながら、これからの髪が無い人生に思いを馳せた。娘の小学校卒業式、中学校卒業式、そして高校卒業式……。家族写真では、いつも俺の頭が輝いている。
イヤだ!
イヤだ、イヤだ、イヤだ!!
想像したのは十年後の未来。
娘の友達「こんにちは~、おじゃましてま~す」
――「おう、友達か! ゆっくりしてって!」
娘「ちょ、パ~パ! あっち行ってー!!」
――「はいはい、そんな怒んなって」
リビングを追い出される俺。
娘の友達「フフ…●●ちゃんのパパ、ピカピカだねw」
娘「そうなの~、恥ずかしくて~。みんなには絶対内緒ね!」
泣いちゃう泣いちゃう~~~!!!
アンチからネットで「ラッシー、ハゲててワロタw」とか書かれるのはいい。知らない人から何を言われても、それは無いのと一緒! 実際、AIみたいなBOTが書いているかもしれないし。そんなのノーカウント。四捨五入すればノーダメージだ。
しかし、娘は違う!
娘に恥をかかせるわけにはいかないッ!!
娘の友達「えっ…●●ちゃんのパパ、なんかカッコよくない?」
娘「え~、まあ…なんとなく若い気はするけど」
それなんだよ!
そうであるべきなんだ!!
――「寝てる場合じゃねえ!!」
ガバッと起き上がるやパソコンの電源ボタンを押した。そしてデスクトップが表示されると、すぐにブラウザを呼び出した。
『AGA 治療薬 凄い』
生やす!
全力でッ!!
これは俺だけの戦いじゃない! 娘のための聖戦なのだ!!
つづく
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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