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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2022.09.13
不可能なミッション~押忍!サラリーマン番長①~
――「特番に……俺がですか?」
買ったばかりのスマホを耳に当てながら固まった。いつもは誰かのレギュラー番組のゲスト役ばかりだが、初めて特番のメインキャストに抜擢されることとなった。
当然「他に適役がいるだろう」とは思った。それでも、わざわざ自分から引き下がる必要はないし、なにより出演機会が増えることはいいことだ。この業界は言うまでもなく、知名度が収入に直結する。
電話をくれた制作スタッフは「ウチのスタッフ、みんなラッシーさんのファンなんですよ~」などと調子のいいことを言っているが、俺もそこまで馬鹿ではない。
俺のファンではなく、A先輩やライバル誌ライター・Mがモノマネする〝誇張したラッシー〟のファンなのだ。
独り歩き。
この頃から知らない番号からの着信が増えた。発信元は決まってどこかの制作スタッフで、内容は決まって「ラッシーさんの名前と宣材写真だけ使わせてください」だった。
どうやらA先輩をはじめとする親交のあるライターが、番組内で俺のエピソードをモノマネを交えつつ披露しまくっているらしい。だから、ワイプで出す顔写真が必要というわけである。
無論、名前と顔写真を出すだけだから、金銭的なやりとりはナイ。出演はしないが、顔写真だけが使われるという謎の状況が当たり前になりつつあった。
とりたてて実害はないが、強いてあげるならば、直接会った視聴者から「あの決めゼリフお願いします!」や、「例のポーズお願いします!」などと、謎の要求をされるケースが増えたことだ。
「なにそれ?」と訊くと、「ほら、いつもAさんがモノマネでやっているポーズですよ!!」といった具合である。もはやラッシーという元ネタの人物より、A先輩やライターMがモノマネするラッシーのほうが認知度が高かった。
それでも、良かれ悪かれ名前が挙がるだけまだマシだ。いずれ仕事に繋がるケースがあるかもしれない。そう思い放置していた結果、やっと1つ実を結んだというわけである。
無視できないマシン。
特番で打つ機種は決まっていた。まさに世を席巻中の大人気機種『押忍!サラリーマン番長』。言わずと知れた5号機AT機の名機である。
▲5号機「押忍!サラリーマン番長」(大都技研)
2014年の夏に登場。スピンオフ作「押忍!操」も含めれば、番長シリーズ第4弾にあたる。通称は「サラ番」。基本のゲームフローは名機「番長2」を踏襲しているが、CZ「仁王門」を搭載したり、頂RUSHがATになったりと大きな進化を遂げている。
メインAT「頂RUSH」はゲーム数管理で、初期ゲーム数は50G。純増は2.8枚/Gと、当時としては速い部類に属す。ATゲーム数の上乗せ性能も高く、レア役やBB中の7揃いによる上乗せのほか、強力な上乗せ特化ゾーンも複数搭載していた。
サラ番は誌面やCS番組といった媒体で活動する者にとって、避けては通れない機種だった。どこのホールも一様に大量導入し、誌面では何号にもわたりサラ番特集が組まれた。サラ番を知らずして、当時のライター業は務まらなかったわけだ。
幸いなことに、設定状況は割とどこのホールも良好だった。というか、大量導入ゆえ設定を入れざる得なかったという認識が正しい。
設定1の出玉率(機械割)は97.5%と、数値のうえでは他機種と変わらない。しかし低設定域は数時間にわたり頂RUSHナシという展開も珍しくなく、体感的には数値以上にキツかった。それゆえホール側も安易に抜きまくることはできなかったのだと思う。
特に導入当初はホール間の争いが苛烈で、俺のような専業でない者でも十分高設定狙いで立ち回れた。
その大人気機種の特番なのだ。きっと視聴数も多いハズ。少しでも知名度を上げたい俺に、断る理由などあるはずがなかった。
無茶な要求。
電話口でざっくり聞いた特番の概要は以下の通り。
【番組タイトル】
「頂RUSH三千里」
【出演者】
A先輩、ラッシー、後輩Tの3人
【趣旨】
「押忍!サラリーマン番長」の魅力を伝えるべく、3人で協力して頂RUSH(※)の3,000G消化を目指す。制限時間は6時間(延長ナシ)。
【実戦内容】
各出演者が轟・鏡・雫を担当。BB中も頂RUSH中も、それぞれの担当キャラのみを選択。
※頂RUSHには絶頂RUSH、頂(S)SRUSHも含む。ボーナス中は含まない。
――「ははっ、3,000Gて……」
思わず笑ってしまった。3人で3,000Gなので、単純計算なら1人あたり1,000G。終日実戦ならAT1,000G超など珍しくないが、実戦時間は6時間である。黙々と打てば時間あたり700G強だが、解説やリアクションも入ると600Gを回せるかどうかだ。
加えて収録は営業中のホールで行われるため、当然ながら設定も分からない。低設定なら、そもそも頂RUSH初当たりを引くのに苦労するだろう。
語呂の良さと勢いだけで決めたタイトル。まさにそんな印象である。
しかし、制作スタッフもそれを理解しているのだろう。その実、頂RUSH 3,000G到達など問題ではない。真の番組テーマは、きっと機種の魅力を伝えることに違いない。だとすれば、攻略誌「H」のライターで固めたキャスティングも頷ける。
――「まあ、3000G到達は無理でしょうけど」
スタッフ「またまた~」
――「ありがたくお受けいたします」
スタッフ「ありがとうございます!!」
スタッフ「で、ここから相談なのですが……」
――「相談?」
スタッフ「ラッシーさんには、鏡を担当してもらいたいんです」
――「ああ、いいっスね~! 鏡が1番好きですから」
スタッフ「で、鏡のコスプレをしてほしいんですね」
――「……………はい???」
『機種の魅力を伝えることこそ攻略ライターの仕事(キリッ)』などとカッコいいこと言ってみたが、バリッバリのバラエティーじゃねーか!!
――「えっ? えっ? 俺だけ?」
スタッフ「他のお二人にもスーツは着ていただきます。スーツお持ちです?」
――「そりゃありますけど、赤いスーツなんてさすがにないっスよ!」
高校時代に訪れた空前のモードブーム。そこで相当こじらせていた頃、ポール・スミスの赤い細身のスーツを着ていたが、もう〝ふくらはぎ〟すら入らなくなり捨ててしまった。
スタッフ「いえいえ、普通のスーツで構いません」
――「まあ、普通のスーツなら」
スタッフ「金髪ロン毛のヅラとバラの花は用意します!」
――「はぁ……」
いや、冷静に考えればこの条件は飲まざる得ない。いつもの俺は派手なシャツにキャップかハットを被っているが、スーツを着てしまったら本当に誰か分からない。そしてスーツ姿の俺はあまりに〝薄い〟。
A先輩は言わずもがな、多数のレギュラー番組を持つ売れっ子ライターだ。そして後輩TもCSにレギュラー番組を持ち、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げている若手有望株。二人とも、スーツを着たとて〝誰か〟はハッキリ認識できる。
対して俺は……
――「被らせてください、金髪ロン毛のヅラを」
スタッフ「ありがとうございます!!」
かくして、金髪ロン毛姿での特番出演が決定した。特番だけでも緊張するのに、1人だけ金髪ロン毛とは! この日は緊張からか、なかなか寝付けなかった。収録の日程は、まだまだ先なのにもかかわらず。
In a Pinch.
A先輩「あなた、喋るんならちょいちょい英語交えてくれない?」
――「お、おーけー。Ah~~~,understasnd」
この日は「バラエティー役に徹しよう」と覚悟を決めてきたつもりだった。しかし、いざオープニングが始まると、まったくもって言葉が出てこない。場馴れしたA先輩・後輩Tに押されているうえ、笑いに繋がるような英語単語も出てこないのである!!
いつも以上に緊張し、ろくに喋ることもできぬままオープニングが終了。やはり俺にタレントは無理らしい。ならば、せめて実戦内容で魅せねばなるまい!! 喋りでは二人に敵わないとしても、パチスロでなら大差はないハズ―――!!
後輩T「はい、朝イチ赤BBから頂RUSHでーす!」
――「さ、さすがだな!!」
後輩T「あ、稲妻柄のビーチボールから100G上乗せです!!」
――「やりすぎぃ!!」
後輩T「あ、AT抜けでまた赤BBから頂RUSHです!」
――「もう今日はキミに任せた」
パチスロでも勝てねえっ!! さすがは攻略誌「H」の若手有望株。「いつも見てます! 握手してください」と言っていた読者時代の彼が懐かしい。デカくなったな小僧!!
いや、俺にはまだA先輩がいる。さっそくATMに駆け込んでカメラ前から姿を消しているが、一緒にハマる仲間がいれば、メンタルも保てるってもんよ。
しかし、しばらくして……
A先輩「キター! 赤BB中の最強チェリーから青頂RUSH!!」
――「出たチート! スターすぎぃぃぃ!!」
一応、俺も頂RUSHに入れ、直乗せもちょこちょこと引いてはいるが、いずれも+20~30Gばかり。引き戻しもあったが駆け抜け終了。とにかく地味なのである。
――「……ただズラ被ってるイタいヤツじゃん」
そして、実戦時間の1/3にあたる2時間が経過。ここまでの3人のトータル頂RUSHゲーム数は……
600G。
すっくね~~~!! 目標を達成するなら1,000G前後には到達している必要がある。
――「ほら、だから目標設定が間違ってんだって!」
番組の真のテーマは「機種の魅力を伝えること」だとしても、さすがに番組タイトルの3,000Gまで遠すぎれば〝落としどころ〟が難しくなる。無理矢理オチを考える必要に迫られるかもしれない。
これはエラい現場に来てしまった。せめて2,000G台までは持っていかねば! そんな焦りが胸中を支配していた。
つづく
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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