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パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
2022.08.09
パチスロライターに“なってしまって”episode.0(雑誌作りの形態)
3月に入り、いよいよ出社開始となります。この編集部はパチンコ雑誌を作っているので、雑誌作りのノウハウはある。新たにパチスロ雑誌も請け負うことになったので、パチスロに詳しい・パチスロを打てる人が欲しい。そのための人員拡張とは聞かされていました。
しかし、どの雑誌を作るのかは伏せられていました。“2ちゃんねる”もでき始めていた時期でしたし、ホイッと来た新人にベラ〜っと話してしまうのも危険と判断したのでしょう。
雑誌作りのシチュエーションは主に2種類あります。出版社の中に編集部があるパターン。集英社の中に「週刊少年ジャンプ」の編集部があるようなものですね。もう1つは、編集プロダクション制。出版社から「1冊これくらいの金額で出して欲しい」と依頼されるものです。私が就職したのは後者。編集プロダクションでした。
ということは、つまりです。どこかの出版社から「作ってちょ」と依頼されるわけです。完全に新規の雑誌を立ち上げるのでなければ、この編集部が新たに請け負う分、どこかの編集プロダクションが仕事を失うことになります。そう簡単にペラペラと話せることではありませんね。
ちなみに版元(出版社)直のほうがお金持ちで、時代が時代だったのもありますが、経費とか大らかでしたね。一方の編集プロダクションは金額の決まった請負仕事なので、カツカツ……なことが多かったです。これはパチスロ雑誌に限らず、どの業界でも同じですね(汗)。
★最初の仕事はスカウト?
それはひとまずさておいても。パチスロ部隊の人数が少な過ぎませんかね。パチンコ雑誌班から回ってくる人も含めて編集は3人(うち、ド新人の私を含む)とライター候補が2人程度。規制緩和の影響もあって1999年に登場したパチスロ機は140機種強。月に10機種以上のペースになります。
ただ打てば良いのではなく、ここから分析やら執筆・編集の時間が取られるわけです。機種を打つにも、いきなり正解とならないこともあります。正解ではない手順で消化した小役データも無駄になることだってあります。この人数ではまかないきれません。
後から冷静に考えれば。その引き継ぐ雑誌でスタッフ募集の広告を出すわけにもいかないですし、私のように“知り合いを通しての口コミ”しか方法がなかったのでしょう。そんな事情はさておき、人が圧倒的に足りないわけです。雑誌を作るとか以前に、そもそも新機種を打って調べるだけでも足りないのです。時間があって、パチスロに精通していて、計算など分析もできて、打つのも苦にならない人が欲しいわけです。
一人いるではありませんか。ええ、パチスロフォーラム(初期インターネット)で出会った師匠です(笑)。師匠を始め、無職そうな人、学生さん、いろいろ誘ったなあ。なんせインターネットです。それぞれのパチスロの知識というか探究心や考え方。さらには文字のクセまで把握できます(私も新人なので偉そうなことは言えないですが)。編集部にも紹介しやすかったですね。
こちとら「パチスロを打つだけでも人が足りない」という危機感だけでスカウトしていましたが、ド新人にしてはちょいと越権行為だったかもしれないですね。受け入れてくださった編集プロダクションにも当時の編集長にも感謝です。まあ、ライター候補の方も同じだったようですが。徐々にその人が通っていたホールの仲間も加わることになりました。
★ただ文字を書けば良いわけではない。
まだ雑誌名も伝えられず、本格始動もまだまだということで、出社はしているけどカタログ整理くらいしかやることもない日々が続きます。それだけでは暇なので、パチンコ班の先輩の仕事ぶりを見学。
もちろん、記事作成なのでパソコンやワープロに向かってカタカタしている時間もありますが、皆さん紙と鉛筆を持ってイメージ図のようなものを書いている時間が長いのです。「これは何をやっているんですか?」話しかけられそうなタイミングの先輩を捕まえて質問。ページの構成を描いているそう。これをラフというらしいです。
ページのイメージや使いたい写真の指定をデザイナーさんに渡して印刷所に送れる完成データに仕上げてもらい、そこでの文字量が返ってきて書きあげる。こんな流れだそうです。機種説明のページはカコミなどいあって割とカチッとしていますが、企画ページなど自由な発想で作って欲しい場合(こういうのはデザイナーさんのほうがセンスある)、四角と渦巻きなど幼稚園児のお絵かきみたいになるようです(笑)。
先輩方がラフを作ってから約1週間後、印刷所から最終の確認がやってきました。「終わった!」と各々帰路について、そこから数日間姿を見かけません。そして、またその約1週間後に出来上がった雑誌が届きます。え? こんなにタイムラグあるの?
▲Nは縦組みの文章、Zは横組みの文章が入るということです
私たちが発売されたばかりの雑誌を手に取って「これなら私のほうが多くのデータを取っている」なんて悦に入っていたのもタイムラグがあったからなんだな。しかも、勝てそうとか面白そうな機種だけでなく、その他の機種のデータも取りつつです。そうでなくても人が足りないと思っていましたが、ほんとこれ大丈夫か? という不安のほうが大きくなりましたね。ラフを作らなければいけないという未知の恐怖よりも。本当はもっとこちらを気にしろよと後からは思いますが。
師匠との雑談の中心は「どの雑誌を作ることになるのか?」ということでした。いろいろ予想大会です。大手3誌(ガイド・マガジン・必勝本)はまず違う。それ以外は主だったところだと「パチスロ王」か「攻略の帝王」か「パチスロファン」か……。中でも直近で仲間内の評価を上げていたのが『必勝パチスロファン』でした。ちょうど解析が重要視され始めていた時代で、そういった記事が増えてきていたんですね。
その発売日に編集長から集められてこう言われます。「我々がこれから作るのはパチスロファンです」と。今日発売されたのは、前の編集プロダクションで作る最終号。そこには次号より大幅リニューアル、発売日も変更となる自社広告が掲載されていました。
白目です。白目。置き土産としてここまでどの雑誌にも載っていなかった『グランシエル』の最速解析記事も掲載されています。私が卒業試験として最後に打ちまくった機種。これで4ページくらい作ろうということになっていました。しかし、あくまでも私が持っているのは実戦値。解析記事の次に出すものではありません。詰んだ……。
余談ですけど。編集プロダクションが変わる大幅リニューアルの際、続き物の連載企画って“最終回”と銘うたないことも多いみたいですね。じゃあ、もう次号は手に取らないと思わせないためか、手に取って「全然違うやんけ」と愕然とさせるのが狙いか、次の編集プロダクションへの嫌がらせか(いや、この前編プロとも後に編集部同士で仲良しに)。
まあ、この『必勝パチスロファン』。これから6年後にまた再び違う編プロへ旅立つんですけど。我々も“最終回”と締めることはなかったです。移った先も知らない人ではありませんでしたが(笑)。
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- 佐々木真
- 代表作:パチスロ攻略ライターの思考ルーチン
裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。
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