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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2022.05.10
名機復活祭~押忍!番長2~
キイキイと情けなく鳴る音は、停めてくれと懇願しているようだった。しかし、ペダルを漕ぐ力を緩めるわけにはいかない。
人通りの多い大通りは避けた。かつて「マイホ」と呼んでいた店への最短ルートは街中を通る道順だが、通勤時間に直撃すると身動きがとれない。だから、朝イチは決まってこの小川沿いの道を選ぶ。
水量は十分あるが、せせらぎは一切耳に入らなかった。ただただ自分の荒い呼吸だけが聞こえている。
小さな田畑をいくつか超え街中に入ると、少しスピードを緩めた。まだ全力で漕ぎたいところだが、いつ歩行者が飛び出して来るとも分からない。
抽選時間には間に合うハズ。あとはどれだけライバルが集まっているかだ。
E店から届いた久々のイベントメール。長らく沈黙していた店だ。きっと、しばらくぶりのイベントに社運を賭けてくるに違いない。
「さて、どれほど並んでいるか……」
次の角を曲がればホールが見える。強めにブレーキを握り、はやる気持ちを抑えつつ最後の角を曲がった。
物語る信頼度。
――「おい……ウソだろ???」
思わずポロリとこぼれた。ここまでの光景は予想していなかった。
――「誰も……誰もいねえじゃねーか!!」
抽選時間は何度も確認している。間違えているハズがない。しばらく低迷が続いているE店とはいえ、再起を賭けたイベントで並び客がゼロとは信じがたい!!
――「ここまで落ちぶれるとは……」
数年前、このホールを紹介してくれたのは先輩ライターだった。かつて一緒に誌面実戦をする際、良いホールだからと勧めてくれたのである。
オシャレさの欠片もない時代遅れな外観。店内に入ると、遊技台の上にはこれでもかとたくさんのイベント札が刺さっている。もちろん、札の大半には意味がない。
一見すれば、いわゆるボッタクリホールだ。先輩から詳細を教えてもらうまで、俺も腰を据えて打つ価値のないホールだと思っていた。
連日行われている〝イベントのようなもの〟はフェイク。打ちに行っても返り討ちに遭うだけ。攻めるべきは特定日のみ。昔からずっと続く特定日だけは、複数のシマに高設定を投入する。
ちなみにE店は、あまり熱心にメールを配信しない。配信は新台入替か特定日の前夜・当日くらいだ。つまり、新台入替を除けば本気のときにしか配信しないのである。
近所のプレイヤーはそれをよく理解しており、メールが届く特定日だけは街中のプレイヤーが集まっていた。
しかし、それも昔の話。ここ最近は頼りの特定日も出し渋りが目立った。通常営業でまったく回収できていないのだから、還元できなくなるのも当然である。
そんなE店も一応はチェーン店だ。ほかの店舗で回収できているから、この店舗は大目に見てもらっていたのだろう。が、それも遂に許されなくなり、いよいよ特定日も頑張れなくなった。正確なことは分からないが、概ねそんなところだろう。
店の前のわずかな駐輪スペースに、くたびれた自転車を停めた。1台ぶんのスペースを確保するにも一苦労だった昔が懐かしい。
1人だけ張り切っているみたいで恥ずかしいが、ゆっくり正面入り口の前に立つと、スグにドアが開き店員が出てきた。
店員「おはようございます! 抽選のお客様ですね?」
――「……はぁ、まあ」
抽選もクソもあるか。抽選時間まで1分をきったのに、客は俺1人しかいないのだ。
店員「かわいいスニーカーですね~」
――「はぁ、ありがとうございます」
店員「僕もジョーダン1とかダンクが好きなんです」
――「そうなんスね……(言うてる場合か)」
呑気なものだ。メールを配信した本気イベントで客が1人。もはや店の命運は決まったと言っていい。ほかの常連客のヨミ通り、もはやこの店に設定が入ることなどないのかもしれない。
店員「では抽選時間になりましたが、お客様だけですので」
俺はフフっと小さく笑い1番の入場整理券を受け取った。再整列までの20分は、いつものカフェに行こうと決めていた。
愛着。
打って変わってカフェは賑わっていた。別のホールの開店待ちと思しき若者の姿も多い。俺は暗がりの1人席に腰かけ、アイスコーヒーを啜った。
他店の抽選を受けたプレイヤーからすれば、俺なんていい笑い者だろう。それでも、E店を信じたいという思いがあった。あれほどの状況から持ち直したホールをいくつか見たことがある。昔よく通った通称:ヤ〇ザの店も、ヒドいときはあんな調子だった。
そして重要なのが本日のイベント「名機復活祭」。
今さらながら「押忍!番長2」を4台入れるらしい。もちろんE店にも番長2はあったが、それも1年以上前の話だ。とっくに撤去済みで、今回は新台入替のテイをとり倉庫から引っ張り出してくるらしい。
新台を買う余裕はないが、このイベントで再起を図る。それがE店の狙いだろう。俺としても、この時期に新台入替のテンションで番長2を打てるのは嬉しい。しかし、こうも常連が来ないと不安にはなる。
――「………(今日で最後かな)」
1台くらい高設定を使うと信じたい。いや、E店が本気なら入れてくるハズだ。4台中1台でも当りがあれば、十分狙う価値はあったと言える。
問題は無かった場合だ。
新台も買えず、メール配信イベントでも頑張れないとなれば、今日が〝お別れ〟になるだろう。残念ながら、俺も去り行くホールにお布施を続けるほど裕福でもヒマでもない。
――「クソ……んだよこの気持ち」
先輩から勧められて以来、数年通ったかつてのマイホだ。できることなら無くなってほしくはない。まるで面接に向かうような緊張感を抱きつつ、ほとんど意味のない再整列に向かった。
店の本気度。
店舗前に立つ2人の客を見つけ、少しばかり気がラクになった。どうやら同じ気持ちの人間が他にもいたらしい。しかし見ない顔だ。かつての特定日に通っていた人物なら、顔くらいは記憶しているつもりだが……。
午前9時、開店――
この店の好きなところは、1人1人をゆっくり店内に入れるところだ。それゆえ朝イチに争いが起こることもほとんどない。そもそも抽選は俺1人で、あとの2人は一般入場だが。
少し懐かしさを覚える店内をゆっくり歩くと、スグに番長2のシマを見つけた。
――「フフ……」
思わず頬が緩んだ。壁沿いのシマのメイン通路側は、この店の看板機種を置く定位置だ。ホールを支えた歴代の名機たちは、必ずこのシマからキャリアをはじめていた。そこに置いたということは……。
台選びも迷うことはなかった。昔ながらの店だ。高設定を入れるなら角か角2と決まっている。角台に座り、いざ実戦スタート。
遅れて入ってきた2人は、並んで内角2台に座った。この店を知っていれば角2に座るハズだが、ゆっくり連れスロを楽しみたいだけなのかもしれない。
▲5号機「押忍!番長2」(大都技研)
2011年の秋にリリースされた5号機屈指の名機。厳密に言えばボーナス+ART機だが、基本的にはARTのみで出玉を増やすタイプ。
ARTは擬似ボーナス「BB・RB」とART「頂RUSH」の2つに分けられる。純増はいずれも約2.0枚/Gで変わらないが、擬似ボーナスはゲーム数管理で、頂RUSHは1セット50G+αのセット数管理。
初当たりのメインは擬似ボーナスで、その擬似ボーナスから頂RUSH突入を目指す。BB中に7が揃えば頂RUSH確定だ。また、ART中も通常時と変わらず擬似ボーナス抽選が行われ、規定ゲーム数到達による当選もある。
……などと説明してみたものの、番長2のシステムは現役プレイヤーのほとんどが知っていると思うので、詳細については割愛させていただこう。
打ち始めると投資2Kで前兆挙動がスタート。この台がどこから引っ張り出されたか知る由もないが、一応新装初日のテイだから当然全リセのハズだ。案の定、稼働中の3台すべてがリセット挙動を見せた。
うち1台だけBBが引っ掛かったが、肝心の俺はスルー。その後、200G台のゾーンで赤BBを射止めたが、頂RUSHへの突入はナシ。
長い戦いになりそうだ。
しかし、この厳しい時間がまた愛おしい。
言わずもがな、設定は早く判別できるほど気がラクだ。しかし、この期待しながら推測のサンプルを集めている時間こそが楽しい。特に番長2は決定打が少ないため、6と断じるには時間を要する。そのもどかしさも、またいいのである。
E店のことだ。かつての常連客にアピールするなら、真っすぐに角台へ入れてくる可能性が高い。対抗はまだ稼働していない隣の角2。〝高設定を使っているならば〟だが。
そもそも設定5・6を使ってこないようなら、それまでのホールと諦めるほかない。残念ながら今日でお別れになるだろう。
推測は難しいが5でも構わない。
まだ打てる店だと証明してくれ―――!!
最後の1台。
――「もう限界だな」
午後1時を過ぎたころ、連チャンゾーン抜けで手が止まった。モード移行と頂RUSH引き戻しから、偶数設定の疑いは強い。しかし、肝心の通常頂(※)は2,000G以上回してナシ。左第1ベルと共通ベルは、低設定域の値をユラユラしている。
通常頂
通常時からの直撃頂RUSHのこと。当選率には大きな設定差が存在
通常頂当選率 | |
---|---|
設定1 | 1/3540.0 |
設定2 | 1/31860. |
設定3 | 1/2896.4 |
設定4 | 1/2360.0 |
設定5 | 1/1930.9 |
設定6 | 1/1027.7 |
朝イチから稼働していた2台も偶数設定らしき挙動が見られたが、30分ほど前に空き台になったまま放置されている。彼ら2人も、きっと俺と同じ結論に達したのだろう。
〝最高設定4の
全台偶数設定責め〟
番長2でありがちな設定配分だ。もちろん俺の台にも6の可能性は十分残されているが、4時間も回してRBスタートのBB(※)も通常頂もナイのは厳しい。加えて設定差がある小役の落ちも悪い。
RBスタートのBB
RBからスタートしてBBに昇格するパターン。
90G以上のBB当選時に発生する可能性アリ
90G以上のBB当選時 RBスタート割合 |
|
---|---|
設定1・3・5 | 12.5% |
設定2・4 | 20.0% |
設定6 | 25.0% |
断定はできないが、よく〝打たされた〟設定4挙動。そんな印象である。
メールを配信し、ホール内の看板コーナーである壁沿いシマの通路側に設置。ここで本気だと思ったが、やはりこれがこの店の限界なのだろう。
総投資は28,000円
回収は400枚弱
設定6なら出玉率は114%超だ。すでに勝負はついていると薄々気付いていたが、それでもただの下振れであってほしいとズルズル打ち続けてしまった。
――「サヨナラか」
誰にも聞こえないように呟き、下皿のメダルを箱に移していると……
店員「ヤメですか?」
抽選時間にスニーカーの話をした店員だ。歳はまだ20代前半に見える。
――「ええ、偶数っぽいですけど」
店員「そうですか。せっかく再導入ですけど、やっぱり稼働してくれませんね」
――「……そうっスね」
番長2を打つプレイヤーの腕は、とっくに熟練している。よほど巧妙に仕掛けない限り、設定4以下を長時間稼働させるのは難しいだろう。
店員「ここまで動かないとは」
店員は、さも「お手上げ」と言わんばかりに寂しく笑った。結局、隣の対抗も1,000Gほど回されただけで捨てられている。
いや、待て。
対抗がたった1,000G!?
さっきまでいた2人と俺は、なんとなく「全台偶数の最高4」みたいな雰囲気を作ってしまったが、本当にそう断じていいだろうか?
かつての特定日も、角2に6が入ったことは多々ある。たしかに店内状況から察するに可能性は薄いが、とはいえこれを確かめずしてスッキリ帰れるだろうか―――。
いや、たしかめたい!
どうせお別れを言うのなら、
極限まで嫌いになって別れたい!
すでに20Kほど負けている。ここからもし2を打ったりすれば、さらに負債が膨れる恐れが高い。でも、それでこのホールに諦めがつくのなら……。
――「持ち玉移動、大丈夫でしたよね?」
店員「もちろんです! 打たれます?」
――「じゃあ、隣に」
店員「ありがとうございます。ごゆっくり」
彼の目に、俺はどう映っただろう。滑稽に見えたかもしれないが、それでも一向に構わない。
俺が記憶している限り、彼と会うのは初めてだ。この状況で新しいバイトを雇うとも思えないので、他の店舗からヘルプに来たのかもしれない。
もちろんホールの内情など分からないが、おそらく彼より俺のほうがこの店を信じている。数年遊ばせてもらった経験があるのだ! まだこの店を諦めたくない!!
総ゲーム数は1,000強で、BB2回にRB1回。リセット挙動はあったが、今のところ頂RUSHにも入っていない。加えて200G台のゾーン抜けでヤメられている。打ち始めの条件としては最悪だ。
頼むから次の400G台で当ってくれ!
それだけを祈りながら回し、遂に迎えた400G台。薫出現から特訓に移行し、そのラストでサキ×ドッジボールに発展。
――「ふー、とりあえず助かった」
確定パターンではナイものの、危なげない展開で主人公・轟が勝利! 下皿のメダルは残りわずかだったが、どうにか追加投資ナシで繋がった。軽く安堵の溜め息をもらしBETを押すと……
台「頂ラーーーッシュ!!」
――「……は!?」
台移動して1発目の当たりが通常頂!! いや、待て。もう通常頂を1発引いたくらいで騒ぐほど子どもじゃない。これまで何度騙されたことか。
4だって引く。
なんなら1だって引く。
こんな店内状況で通常頂を引き舞い上がっていたら、さすがに嘲笑の的だ。俺はさも何もなかったかのように、つとめて冷静にプレイを続けた。
地の底ゆえの快感。
店員「お客様、手を止めてくださーい」
――「……はい」
結果、閉店取り切れずヤメ! 液晶に表示された獲得枚数は3,000枚を超えていて、残りゲーム数も190Gほどある。
設定は断定できないが、挙動から見て偶数高めは間違いない。通常時をあまり回せていないので難しいが、俺のガバガバ推測なら6と断じたいほどである。
店内の客は、すでに俺1人だった。店員も遅番に変わり、見慣れた店長らしき男が出玉運びを手伝ってくれた。
店員「いや~、出したね」
――「……出す気だったんでしょ?」
店員「さあ、どうだか」
白髪の男はニヤリと笑った。想定通りという意味か、想定外という意味かは分からない。
流した枚数は7,000枚強。3,000枚超のカタマリが2回での7,000枚OVERだった。ちょっと出しすぎたかなと心配になった。
絶頂はなかったが3ケタ上乗せが頻発し、ついつい楽しくなって本気でブン回してしまった。店内の稼働状況は終日通してヒドい。なのに、こんなに抜いてしまっては……。
いや、元来俺はそういうひねくれたヤツなのだ。人の少ない店だからこそ、たくさん出せたときの喜びが大きい。勝つのが難しそうな店でこそ、燃えるタチなのである。
どうやら、まだしばらくは楽しめそうだ。こんな営業を続けてくれたら、また少しは客が戻ってくるだろう。
やはり好きだったホールが衰えていく姿を見るのは辛い。自分1人が頑張っても支えられるわけはナイが、それでもできるだけ長く続いてほしい。
まだまだ5号機時代が続く頃の話だが、改めてそう思わされた一戦だった。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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