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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2022.03.29
生涯のベストバウト#1 ~初代モンキーターン~
――「くっ……モンキーなんか打つんじゃなかった」
カメラ前で顔を歪め吐き捨てた。半分は本音。でも、残り半分は不思議とまだヤレるような気がしている。
状況は最悪だ。
モータースポーツには明るくないが、ボートやF1に例えるなら周回遅れの状況にある。しかも1周ではない。2周遅れに等しい、まさに絶望的な状況だ。
そんな窮地に立ってもなお、なにかが起こるような気がしている。パチスロ「モンキーターン(以下、モンキー)」とは、まさしくそんなマシンだった。
ドル箱は片手で軽く持てるほど痩せていた。敗北など、万に一つも許されない。なのに俺は、自分でも不思議なほど冷静だった。
変則タッグマッチ。
この日は攻略誌Hの動画収録だった。それまで収録といえばCS番組がメインだったが、この頃から雑誌の付録DVDやYouTubeチャンネルの番組が一気に増えはじめた。
番組内容はライター2人×2人のタッグマッチ。とはいっても、タッグを組む2人が一緒に実戦するわけではない。そこがこの番組の面白いところであり、大きな特徴でもあった。
まず開店と同時に各タッグの1人目が実戦をスタート。そして夕方あたりから、残る1人にバトンタッチ。その2人合わせた差枚数で、2チーム間の勝敗を決する……というわけである。
重要なのは1人目から2人目への引き継ぎ。
高設定やロングARTを2人目に残せたら、もちろん勝つ可能性は格段に高まる。それが叶わなくても、立ち回りに有益な情報を引き継ぐ必要がある。
俺の相方は、編集部員時代からお世話になっているZ先輩。ノーマルタイプからART機まで幅広い知識を持ち、俺が読者の頃から攻略誌Hを支えてきた攻略ライターだ。俺とはもう10年ほどの付き合いになる。
番組は勝ち残り方式で、3連勝したタッグにはレギュラー番組が与えられるそうな。逆に敗北したタッグは即解散。対人戦での3連勝は運が占める割合も大きいため、そう易々と達成できるタッグは出てこないだろう。
引き継ぎ。
実戦順はZ先輩→俺に決定。俺は日が傾きかける夕方頃に現場へ向かった。
現場に着いてもスグにホールへ入ることは許されない。2人目が実戦前に得られる情報は、1人目からの引き継ぎタイム中に限られた。
引き継ぎタイムは3分間のみ。1人目はその3分間で、現在の収支や立ち回りに役立つ情報を2人目に伝えねばならない。俺はメモ帳とペンを握りしめそれに備えた。
そして緊張の3分間がスタート。
Z先輩「北斗(世紀末救世主)を打ってるんだけど」
――「はいはい」
Z先輩「1167番台、コレを打て。それだけ」
――「はい? それだけですか?」
俺はメモ帳にせっせとペンを走らせる。仕事柄、素早いメモには慣れているが、制限時間3分と言われるとどうしても焦ってしまう。
Z先輩「……引いて、それが続いてるだけなんで」
――「ん!? まだART中なんですね?」
Z先輩「そうそう! とりあえずコレを終わらせないで」
――「な、なるほど……ほかには」
Z先輩「それだけ」
――「だけ!?」
一部聞き漏らしがあるかもしれないが、話をまとめるとこうだ。
北斗の高継続率らしきART中のまま俺へと引き継いだ。総投資は11,000円で、現在の持ち玉は約2,800枚! 差枚数は概ね+2,250枚!! 台移動してスグに当たったため、設定は不明のままらしい。
収支としてはこの上ない状況だが、立ち回りのヒントはほとんどナイ。俺がやるべきことは、まず現在の“高継続率らしきART”を終わらせないこと。そして、この台の設定を判別すること。低設定なら当然移動する必要がある。
ちなみに対戦相手にも勝っているようだが、当然ながら相手の詳細な収支は分からない。ただ相手も大量出玉を持っているそうなので、油断できる状況ではなさそうとのこと。
これはなかなか厳しい。
現在の高継続率らしきARTが終われば、ほとんど情報ナシのホールに放り出されるのと変わらない。差枚数が大幅にプラスのため有利なのは間違いないが……。
Z先輩「とにかく今のARTを終わらせないで」
――「いや~、それは緊張するなぁ」
Z先輩「まあ、気楽にやってくれて構わないよ」
――「ありがとうございます」
こうして3分間の引き継ぎタイムが終了。そしていよいよ緊張の本番、2人目実戦が始まった―――。
強くてニューゲーム。
予定通りZ先輩から引き継いだ台に腰かける。そして現状を把握しようと液晶を見ると……驚愕した!
高継続率らしきARTの獲得枚数は、表示上470枚ほど。しかし、出玉は全部で約2,800枚。つまりZ先輩は、この高継続率らしきARTの前に2,300枚ほど出していたことになる!!
――「一体なにが? スゴすぎぃ……」
ARTは現在5連目。これが終われば、イチから立ち回る必要に迫られる。とにかく終わらせてはならない……と言われましてもねえ? 継続率も分からないし。
▲「パチスロ北斗の拳~世紀末救世主伝説~」(Sammy)
2011月の晩秋に登場した「5号機北斗」第4弾。ボーナス+ART機だが、基本的にはARTで出玉を増やすタイプ。ボーナスはARTへの突入や、上乗せを促す役割を担う。
基本的なゲームの流れは、伝説的名機である4号機「パチスロ北斗の拳」を踏襲。通常時には複数の状態があり、上位状態でレア役を引けばART当選のチャンスとなる。
ART「激闘乱舞」は1セット38G+αの継続率管理で、純増は2.2枚/G。ここも「4号機北斗」を踏襲しており、ラオウとの継続バトルに勝利すれば次セットへ継続となる。肝心の継続率は50%・67%・79%・84%・89%の5段階だ。
言うまでもなく4号機北斗のバトルボーナスとはシステム面から異なるが、ART「激闘乱舞」の美点を挙げるなら、やはりゲーム数上乗せだろう。レア役から直乗せもあるが、お気に入りは上乗せバトルだ。
ART中にも複数の内部状態があり、ショート・ロングに移行すれば毎ゲームがバトル発展のチャンスとなる。液晶にボスが出現すれば発展だ。バトルは2G継続で、その間は成立役を参照し勝利抽選が行われる。ケンシロウが勝利すれば+20~300Gだ!
打ち始めてまもなく継続バトルに発展。高継続率とは聞いているが……。
――「おおう! 百裂拳ヒット!!」
ケンシロウの北斗百裂拳がヒットし79%継続以上と判明! どうやらガチで高継続率らしい。その後も順調に継続し、9連目には待望の上乗せ連打が発生。下皿がパンパンになったため、出玉を箱に移すことに……。
ここでピンときた!「あえてユル盛りにしよう」と。その理由は相手チームの2人目、つまり俺の対戦相手にあった。
誌上プロと攻略ライター。
以前も当コラムに登場した後輩ライター・Kは、我々のような攻略ライターとは少し違う。普段はスロプロ同様の生活をしており、その立ち回りなどを発信するいわゆる誌上プロである。
攻略ライターと誌上プロではライフスタイルが違うため、通常であればあまり絡むこともない。しかし、Kは編集部員として下積みしていた時期があったため、よく知った仲だった。加えて家が近いこともあり、プライベートで連れスロすることもしばしば。
純粋に立ち回りの実力・実績で言えばKが圧倒的に格上。俺が原稿を書いたり誌面の編集をしている間も、Kはほぼ毎日ホールに通っている。現場で積む経験値がまるで違う。
攻略ライターは自分が担当する1機種に特化して知識を蓄えるが、誌上プロは違う。現役稼働中のあらゆる機種を網羅し、勝てる機種の情報を精査・厳選していく。
勝てる情報だけに特化していくのである。
しかし、俺は過去の対戦やプライベートの連れスロからKの弱点を見抜いていた。そこを突こうというわけである。
Kの弱点は精神面。普段はキレキレの立ち回りを見せるが、こういったバトル形式の番組で競った局面になると、焦りから自爆することが多い。対戦相手に勝ちたいという衝動に駆られ、どっしり構えることができないのだろう。
だからメダルをあえてユルく積み、ドル箱をたくさん使うことにした。こうすることで出玉を多く見せ、Kにプレッシャーを与えるのである。
Kは非常にクレバーだ。俺に悟られないよう物陰から出玉状況を把握し、逆転に必要な立ち回りを脳内で正確に計算しているに違いない。
リスタート。
――「このARTが閉店まで続くといいな」
そんな子どもじみたコメントを吐くと、直後の継続バトルでラオウが剛掌波を放った。さも当然のように喰らうケンシロウ。
――「クゥ~、頼むよ~」
リザルト画面には11連、1,417枚とある。まだまだ続いてほしい! 祈るようにレバーを叩いた。
台「ビシューーー!!」
――「あ~~~、終わった~」
高継続率を示唆する演出が頻発していたため、たしかに高継続率だったとは思う。しかし最高継続率の89%でもない限り、上乗せに恵まれないとこんなところだろう。
――「さて、ここからどうしましょうかね」
あたりを見回している俺のもとへ、スグにKが寄ってきた。予想通り、俺の様子をチェックしていたらしい。
K「終わっちゃったんですか?」
――「まあね」
K「ヨシ! ロンフリからの89%継続が終わったのはデカい!!」
――「えっ!? ロンフリ?」
K「ええ……ロンフリからのARTですよね? さっきの」
――「えええ!?」
俺は引き継ぎタイムでメモに集中するあまり、肝心なところを聞き逃していたのである。終わらせてしまったARTは、ロンフリを伴った北斗揃いスタートの89%継続だったのだ!
ちなみにZ先輩は午前中だけで拳王乱舞(強力な上乗せ特化ゾーン)を2回引いており、さらに台移動してスグにロングフリーズという離れ業を披露していた。これものちに知ることになる。
――「くぅぅ~、なんてことをしてしまったんだ!」
しかし89%継続だと知りながら消化したとして、結果に影響はなかったハズだ。問題はここから。この大きなリードを守り抜く必要がある。
――「とりあえず設定推測続けるか」
K「頑張ってくださいね」
――「……イヤミにしか聞こえない!!」
ちなみにKはモンキーのART中で、200Gを上乗せた直後らしい。うかうかしているヒマはない。
しばらく北斗を追ってみたが、設定差があるレア役の落ちがあまりにヒドい。設定1の値にすら届かない。ART中を含め1,000Gほど消化したところで、堪らず席を立った。
唯一打てそうなマイジャグ(初代)も、ボーナス合算は設定4と5の間。リードを守るだけなら悪くない選択だが、こうしている間にもKのモンキーは伸び続けている。マイジャグの設定4でそれに付いて行くのは不可能だ。
となると、やはり俺もART機で戦うしかない。そう思い、Kがいるモンキーのシマへ行くと……
――「な、なんだこれ!?」
遊技履歴を見て驚いた。初当り11回で、最大ハマリ306Gの台が空いているではないか!! ART当選契機は分からないが、384Gを抜けていないところから偶数設定高めと予想できる。
仮に超抜(CZ)からの当りが多いとしても、それはそれで設定5の可能性が高まる。いずれにせよ、これだけ初当りを引きながら大きくハマっていないのはデカい。十分打つ根拠になる。
――「これにします!」
後輩無双。
Z先輩から引き継いだ出玉を持って件のモンキーへ。そして打ち始めると……
――「ちょ、なんで?」
いきなり384Gのゾーンを抜けてしまう。ただの1度も抜けていなかった台が、俺が座った途端に抜けたのである!!
――「エスパーヤメか……あるある過ぎる」
これは深いところまで連れて行かれるかもしれない。そう落ち込んでいると……
「見せてやる…俺の最高のターンをっ!!」
――「え!?」
遠くからかすかに聞こえてきた声。
「究極Vモンキーぃぃぃ~!! ぴゅぴゅい~~~ん」
――「まさか……ウソだろ…」
慌ててKのほうを振り向くと、Kが拳を握っているではないか!! 様子を見に行くと、液晶には+150Gの文字が!! フリーズを引いたのだ!
――「ヤルなあ! 手加減しなさいよ」
K「いや、モンキーに関しては負けたくないんで」
これでますます危うくなった。KのARTはまだまだ伸びるだろう。対する俺は、まだ初当りすら見えない。早足で席に戻り、焦りを抑えつつ初当りを目指した。が……
「見せてやる…俺の最高のターンをっ!!」
――「は? いやいや、まさか……」
もうモンキーのシマには俺とKしかいない。ということは……
「究極Vモンキーぃぃぃ~!! ぴゅぴゅい~~~ん」
――「マジかよ」
再び席を立ちKの台へ向かうと……液晶には「+300G」の文字が!!! 驚愕の〝フリーズおかわり〟である。
――「お客さん、事務所までいいっスか?」
K「なにもやってませんて!」
圧倒的な上乗せを見せつける後輩。対してART初当りすら見えない俺。Z先輩に89%継続のARTを用意してもらったにもかかわらず、このまま負けてしまうのだろうか……。
なにより、同じ機種を打ちながらこの差である。やはり誌上プロには敵わないのか。
――「くっ……モンキーなんか打つんじゃなかった」
それでも俺は、まだヤレるような気がしていた―――。
つづく
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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