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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2022.02.01
地獄に届いた朗報~赤ドン雅~
液晶にデカデカと表示されたART突入画面を目にし、俺はカメラに映らないところでギュッと拳を握った。
まだ解析数値は小役確率程度しか出ていないが、導入から連日打っていれば否が応でも分かる。分かってしまう。「これはいつもの設定ではナイな」と。
実際に強チェリーからのART当選に設定差があるかは不明だが、開店から1時間半も経たずに3度目の初当り。普段“打たされている”設定1とは、似ても似つかない挙動。
これまでの戦績から考えれば、手放しで喜べる状況ではナイ。それでも俺は“この機種”で十分な感触を得ていることに興奮していた。
やっと報われる時が来た―――。
背水の陣。
この日はレギュラーになりつつある「リーグ戦番組」の収録で、対戦相手はパチ7でもお馴染みのマコト先輩だった。当該シーズンにおける同グループの対戦相手は、誌面でも一緒に仕事をする機会が多いHくんとマコト先輩。
俺はこの日を入れて残り2戦で、現在の勝ち点はたったの2pt。対するHくんは13ptで、それをマコトさんが10ptで追っているという絶望的な状況である。
つまり俺は最下位決定戦への出場が濃厚。番組降板の大ピンチに陥っていた。もう背水の陣という言葉ですら生ぬるい。胸元まで水に浸かっている状況だ。
優勝の翌シーズンはグループ内2位に甘んじ、迎えた今シーズンもなにを打っても上手くいかないスランプ状態。最下位決定戦へ出場する覚悟は決めているが、とはいえ見せ場もなく断頭台に上がるつもりはナイ。
どうにか状況を打破する手段はないか……。そんな折、登場したのが“この機種”だった。
5号機「赤ドン雅」(エレコ)
5号機からスタートしたドンちゃんシリーズの第5弾。ボーナス+ART機ではあるものの、そのスペックは少々特徴的。ボーナスはBIGのみで、獲得枚数は416枚とかなり多め。その代償として確率は低く、全設定共通で1/1260.3となっている。
当然BIG連打は望めないため、出玉増加のメインを担うのはART「雅RUSH」だ。ARTは1セット50Gのセット数管理で、純増は約1.8枚/G。もちろんセット数の上乗せもあり、上乗せ特化のART「祇園モード」も搭載。 特筆すべきは出玉率で、設定6なら115.8%とかなり魅力的。設定5でも109.5%と、当時としてはハイスペックの部類に属する。 ちなみに設定1でも98.2%とやや優しめに見えなくないが、ボーナス連打が起こりにくい仕様のため、ARTが当たらないと逃げ場は皆無。数値以上に手痛く負けることも珍しくなかった。 |
もはや最下位決定戦への出場は決定的。守る物などない状況。それでも大量出玉を獲得したうえで対戦相手に勝利すれば、2位に滑り込める可能性もゼロではない。必然、一撃性の高い機種を打つ以外に選択肢は無かった。
攻略誌「H」において、ずっと担当ライターを任せていただいているドンちゃんシリーズだ。もはや同シリーズは、俺にとっての相棒と言っていい。やはり華麗な逆転劇を演じるには、この相棒を置いてほかにない!
最高の立ち上がり。
開店からの流れは完璧だった。理想を言えば導入2日目の「パチスロ北斗の拳~世紀末救世主伝説~」を打つのがベストだが、それはマコト先輩から「NG機種」に指定されたため叶わない。
次いで候補に挙げたのが、これまた導入から間もない「赤ドン雅」。この頃は北斗の拳・押忍!番長2・赤ドン雅の3つが、しばらくホールの看板機種なると予想されていた。
導入初日から連日「赤ドン雅」を打ち込んでいる俺は、なんとなく初代・赤ドンや緑ドンVIVAに比べ物足りなさのようなものを感じていたが、なにかの気のせいなのかもしれない。
きっと俺がこの機種のスペックをフルに引き出せていないだけなのだろう。そして、引き出すならば今日だ―――。
5番入場で赤ドン雅のシマに入ると、すでに先客の姿があった。要するに「死にジマ」ではないらしい。俺はデータ表示器を参考に、前日シマ内で2番目に稼働が少なかった台を選んだ。当然「上げ」を狙ったわけである。
すると朝イチ1G目から高確示唆演出が発生し、2G目で高確以上濃厚となる「Wナビの右小役入賞」を確認。同シリーズだけでなく、多くのパチスロで共通のチャンスパターンだ。
――「よしっ! 前日閉店時が高確の恐れもあるけど、おそらく変更ですね」
設定変更時に状態移行抽選が行われることは分かっている。その高確移行率に設定差があるか否かは分かっていないが、変更さえ分かれば十分だ。前日動いてない台の変更挙動。狙い通り「上げ」を期待できる状況である。
すると、朝イチから3,000円を入れたところでチャンス目が出現し、前兆ステージにあたる「神社ステージ」へ。演出傾向はやや弱めながらも、終盤で葉月セリフ赤文字を確認して一気に期待が高まった。
――「こんな低投資で喰いついたらラクなんだけど…」
神社ステージのラストで発展したのは「文字焼き花火」。具体的な期待度は不明ながら、連続演出の中では2番目にアツい。固唾を呑んで液晶を見守ると、最終ゲームで松明役モノが落下し………
――「っしゃ! たった3KでARTです!!」
この初当りは2セットで終了したものの、ART終了から約40Gで引いたチャンス目から再びARTに突入! これも3セットで終わったが、今は目先の出玉に一喜一憂している場合ではない。
まずはツモっていれば、それでいい―――
ヒーロー論。
当該シーズンにおいて、俺の現状は最悪だ。番組のバランスをブチ壊すほどの戦績。視聴者をはじめ、スタッフ・共演者の誰もが「ラッシーは最下位“確定”」と確信している。
かく言う俺だってそうだ。
普通に考えれば、まず最下位決定戦は免れない。そう、“普通に考えれば”だ。視聴者もディレクターも「まず間違いはナイ」と思いつつも、心の奥底では大波乱を期待している。言わずもがな俺も………。
そこを通す!!
子どもの頃に憧れたヒーローは、逆境を乗り越えてこそヒーローたり得た。当番組で活躍中のU先輩やA先輩も、こういった窮地を幾度も脱し、超人気ライターへと上り詰めた。
言うなれば試練。この試練を切り抜ければ、演者として一皮剥けるかもしれない。さすがに逆転優勝などと大それたことは言えないが、2位に滑り込むだけでも与えるインパクトは強烈だ。
設定6の出玉率は115.8%。実戦時間は19時までたっぷりある。
イケる! 設定6なら言うまでもないが、設定5でも「祇園モード(特化ゾーン)」にブチ込んで間違いが起これば大量出玉を期待できる! あとは信じて回すのみ!!
その後、CZ的な存在である「ドンめくりチャンス」をスルーするも、直後に引いた強チェリーから3度目のART初当り。そして、その1セット目に―――
台の音声「予告!」
――「き……キタ!!」
機、熟す。
いわゆる次回予告に相当するART中の「予告」は、実戦上、祇園モード or BIG濃厚。BIGなら一気に416枚を獲得できるし、祇園モードならセット数の大量上乗せを期待できる。恐る恐るリールを止めると……
――「なっ!? 斜めリプ?」
地味にリプレイが斜めに揃い、次回祇園モード突入が確定! 次セットの50Gが丸ごと特化ゾーン「祇園モード」になる。
――「いただきましたね」
正直に告白すると、祇園モードは連日のデータ採りで何度も経験している。しかし、事故った経験は1度もナイ! ただの1度もだ!!
しかし収録とは不思議なもので、時に演者本人も予想できないほどの展開が訪れたりするのである。普段ならまったく伸びない特化ゾーンでも、閉店まで続くような爆乗せが起こることもしばしば。
そう、カメラ前では不思議と事故が起こりやすいのである!
――「可哀想ですが、マコトさんには泣いてもらいましょう」
これまでの祇園モードがショボかったのは、きっとこの日のため。カメラ前で起こる大事故への前フリだったのだろう。
――「いっくぞオラァ!!」
祇園モード
セット数上乗せの特化ゾーン。ARTの1セットが丸ごと祇園モードとなり、消化中はセット数ストック+1個以上のドン揃い確率が1/20まで大幅にアップする。 なお、この祇園モードには連続性もあるが、その継続システムを説明すると少し長くなるため割愛させていただこう。無論、継続を勝ち獲れば大量上乗せが期待できる。 |
祇園モードが始まるや否や、スグに「ドンを狙え!」のカットインが発生!
――「ここで逆押しすると気持ちイイんスよ」
右リールにドンを狙うと下段に停止。
――「あっ……この下段停止はガセ1確」
気を取り直し、毎ゲームのレバーにチカラを込める! が………
――「ちょ、マジかよ」
――「いやいや、ウソでしょ?」
3連続で下段停止のガセ1確。やはり祇園モードはこの程度なのか………
――「っしゃ! 上段に止まりました! これがドン揃い1確!!」
どうにか1セットをもぎ取ると、その後はたて続けにドンが揃って3セットの上乗せに成功! あとは継続を射止められれば―――
しかし、無情にも最終ゲームで終了告知が発生。祇園モードでの上乗せは3セットにとどまり、このARTは7連・800枚強の獲得で終了を迎えることに。
大量獲得へのチャンスは逃したが、まだまだ実戦は序盤の序盤。初当りが軽いうえに、設定差が判明している弱チェリー出現率も設定6のソレを上回っている。
祇園モードへの突入は、そこまで珍しい事象ではない。このまま打ち続ければ、あと1~2回は入るハズ。そこでデカく乗せればいいだけの話。それを信じ、あとは淡々と回すだけだ―――!!
地獄行。
お昼をまたいで後半に入っても、ART初当りのペースに衰えはナイ。打ち慣れている設定1とは明らかに異なる挙動。「上だ」と確信してブン回していると……
258 ART 単発
51 ART 単発
330 BIG
115 BIG
36 ART 単発
170 ART 2連
――「ちょ~、どうなってんだよ~」
ARTは単発ばかりで、よくても2連という目も当てられない状況に! 無論、ARTが続かなければ、祇園モード突入の機会も少なくなる(ART中の抽選が突入のメイン)。
マコト先輩の状況は分からない。すでに自分の台は「上」と確信しているため、覗きにいっても俺がやるべきことに変わりはない。
台移動など選択肢にナイ!
ライターになってからずっと共に歩んできた相棒・ドンちゃん。今はただその相棒を信じ、レバーを叩き続けるのみだ―――!!
そして前回ARTから300Gを過ぎた頃、CZ的な役割の「ドンめくりチャンス」へ。これはスルーしたものの、直後の高確と思しき状況でチャンス目を引きARTに突入! ちなみに高確中のチャンス目はART濃厚だ。
――「残り時間も少ないんで、そろそろデカい一発が欲しいですね」
カメラに語りかけながらプレイを続けたが、1セット目開始画面で手が止まった。
――「キタ! 金閣寺だっ!!」
ART中のステージ
各セットのステージは、残りストックの有無や上乗せ期待度を示唆している。1度決まったステージはセット終了まで変わらない。 |
――「金閣寺は複数セット持ってのスタートです! つまり単発回避!!」
遂に訪れた好機! ちなみに隣の台は、すでに9,500枚を超えている。俺も大きくハネるならココだろう。待ちに待ち、耐えに耐え、遂にその時を迎えたのだ!
――「さあ、逆転だっ!!!」
地獄の底。
チャンスは十分すぎるほどあった。これだけ舞台を整えて出せなければ……
間違いなく三流!
救いなき脇役!!
これからは娘と歩む人生だ。これまでとは時間の重みが違う。一刻一刻が大事。それは分かっている。が、貴重な俺の寿命を1時間削られてもいい! いや、ここでハネるなら1日をくれてやってもいい!!
ここだけは譲れない! この初当りだけはっ!! 上乗せを意識し、一打一打に魂を込め消化していく。上乗せ告知はまだない。まだない、まだない、まだない………。
結果、上乗せ告知が1度もないまま最終ゲームへ。そして、全リールを止めると………
――「あっ?」
俺は手に握ったメダルを力なく下皿に落とし、呆然と液晶を見た。
――「ウソ……だろ?」
表示された獲得枚数は「3枚」。ARTを50G消化し、獲得したのはたったの3枚である。上乗せ告知ばかりに気を取られ、枚数が少ないことにまったく気が付かなかった。
――「ちょ…なんで!? なんだよ3枚って!」
これでは単発も2連も変わらないじゃないか! いや、チャンスの量はまるで違う!! 単発なら終わりだが、2連ならもう1セットぶん上乗せ抽選や祇園モード抽選が受けられる。
獲得3枚は屈辱的だが、俺にはもう1セットがある! まだ死んじゃいねえ!! 気持ちを切り替えて上乗せを狙うんだっ!!
力を振り絞りレバーを叩くと―――まさかの通常画面。なるほど。一旦通常画面に戻り、復活で継続するパターンらしい。粋な演出するじゃねーか。そう思いレバーを叩くと……
――「えっ………」
何事もなく通常時の演出が発生しているではないか!!!
――「ちょ、待っ………え?」
のちに解析から「金閣寺ステージはストックあり濃厚で、確定ではナイ」と判明。導入前の取材段階はもちろん、導入後の実戦でもすべてストックありだったため、完全に複数ストックスタートだと思い込んでいた。
――「み、み、みなさん。金閣寺でも単発ありますから気を付けてくださいね」
ちょうどこの瞬間、隣の台の獲得枚数が一撃万枚を突破。それを目視で確認すると、ハッキリと聞こえた。心が「ポキリ」と折れた音だった。
地獄に届いた朗報。
マコトさん「じゃあ、最下位決定戦頑張ってね」
――「いやまだ1戦残ってるわい!!」
差枚数がプラスのまま実戦を終えたが、この日の勝負はマコトさんの圧勝だった。マコトさんは北斗で出玉を確保したあと、ハマリ台狙いで番長2へ。すると投資1,000円で弁当解除→青BB。さらにBB後のゾーン中に通常頂(ART)も引いたそうな。
チートがすぎる。
マコトさん「では、次回をお楽しみに! サヨナラ~」
――「さよなら~」
ディレクター「はいオッケェ! お疲れさま~」
――「……お疲れっした」
マコトさん「元気ないね?」
――「あるか! 単発ばっかですもん」
そう言いながら何気なくケータイを取り出すと、着信履歴に懐かしい名前が浮かんでいた。学生時代の親友・Yである。
――「ごめんなさい、ちょっと電話していいっスか?」
マコトさん「どうぞどうぞ」
撤収作業には、あと10分ほどかかるハズ。俺は娘が生まれた報告を未だしていないことを思い出し、少し焦りつつ通話ボタンを押した。
Y「おー、もしもし? 久しぶり」
――「お~、久しぶり! 元気しった?」
Y「元気しったよ。んで報告があります!」
――「報告?」
Y「んだ。先日、子どもが生まれました」
――「えっ? ウソ……ごめん、報告忘れてたけどウチもなんだ」
Y「ええ? んだの? 女の子?」
――「んだ。Yんどごは?」
Y「女の子だ。この前の〇月〇日に生まれだんだ」
――「は? うっそ……ウチと同じ日だ!」
驚いたことに学生時代の親友Yと俺は、同じまったく同じ日に父になっていたのである!!
Y「こんな偶然あんだね?」
――「いや、聞いたことない! とにかくおめでとう!!」
Y「ありがとう! そっちもおめでとう!」
――「今から移動だから、また帰ったら電話するよ」
Y「おー、楽しみにしてるちゃ~」
ヒドい実戦の終わりかたですっかり心が荒んでいたが、まさかこんなにめでたい報告を聞くことになるとは!!
Yと共に過ごした学生時代から、もう12年が過ぎようとしている。パチスロは相変わらず難しく、まだ振り回されてばっかりだ。
なにも変わっていないようで、着実に大人に近づいている。守るものもできた。まだこの番組から去るのは早すぎる。
先輩方のようにはなれなくても、まだまだ居座り名前を売る必要がある。少しでも仕事を増やし、娘が誇りに思ってくれるような父親にならなければ。
最下位決定戦は、誰が相手でも絶対に落とさない。たとえ制作陣や視聴者に恨まれたとしても―――。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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