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  4. はじめてのファンイベント~フリーライターとノーギャラ問題~

パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-

パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-

2021.11.23

はじめてのファンイベント~フリーライターとノーギャラ問題~

ラッシー ラッシー   パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-

――「ファンイベ? ……どんなやつです?」

M氏からその電話を受けたのは、今から10年ほど前の夏のことである。「ファンイベ」という聞き慣れない言葉に、俺は少しだけ身を固くした。

M氏「たまにホテルとかでやる新台発表会あるじゃん」
――「ええ、大手メーカーのデカい機種みたいな?」

M氏「そうそう、芸能人とかゲストで来るやつ」
――「ありますね」

M氏「その“一般ユーザー向け”って感じかな」
――「はぁ……なるほど」

現在では毎年多数のメーカーが開催しているファンイベント。ほんの10年ほど前は、代表格である『ユニバカ×サミフェス』すら始まっておらず、ファンイベという呼称も一般的ではなかった。

――「そんな大勢の人前に立つの慣れてないですが」
M氏「大丈夫大丈夫! 他にも大勢ライター来てるし」

――「そうなんですね?」
M氏「各誌から3人ずつぐらいスター級が出るよ」

いわゆる大手と呼ばれる攻略誌はウチを入れて3誌。その各誌を代表するライターが3人ずつ出演するらしい。
 

「H」の戦略。

M氏「ウチ(攻略誌H)からはIくん、Aくん、Nさん」
――「わわわ、マジでスター級じゃないっスか!」

飛ぶ鳥を落とす勢いでスター街道を駆けあがるA先輩。そしてHの黎明期より活躍するカリスマIさんに、生けるレジェンドN先輩。文句のつけようがないメンバーだ。

――「で、もう3枠埋まってるじゃないですか。そこに俺を?」
M氏「そうなんだよね~」

M氏はそのファンイベに俺も出演させるつもりらしい。

M氏「今回のファンイベは、マジで発表会なんだよ」
――「ああ、冬に出るあの機種の……ですね?」

M氏「そう。そのプロモーションの一環」

とあるメーカーが、冬に大物機種のリリースを控えている。それを一足先に一般プレイヤーへお披露目すべく、このファンイベが企画されたそうな。

――「なるほど、その機種なら俺の出番ってことスね?」
M氏「そうなんだよ~」

その機種は長く続くシリーズモノの最新作。俺は仕事でもプライベートでも同シリーズを打ち込んでおり、Hの誌面において担当ライターも担っている。

M氏「編集部のヤツらがさ~、『ラッシー一択でしょ』ってうるせーんだよ」
――「ははっ、なに部下たちにつめられてんスか」

M氏「俺は『ラッシーなんて要るか?』って言ったんだよ?」
――「おいコラやめろ」

M氏「でも、せっかく『ラッシー=その機種』のイメージが定着してんだから、ラッシーを出すべきだって言うのよ。あいつら生意気に」
――「フハハハ! まあ、ありがたい話です」

編集部が推してくれるのは嬉しい。A先輩のように売れるでもない俺に、どうにかイメージを定着させて売り出したいのだろう。当然、その方針と気持ちには報いなけらばならない。

――「分かりました。来月の〇日ですね?」
M氏「そう。今から番号言うからメモ取れる?」

――「はい、大丈夫です」
M氏「……その番号が運営さんだから、あとはその人とやりとりして」

――「分かりました。失礼しまーす」

攻略誌「H」代表の3枠には入れなかった。まあ、それは仕方がない。俺の上には、まだまだたくさんの先輩がいるのだから。

それでも編集部員が「ラッシーを」と推してくれたことが嬉しかった。粛々とシリーズの担当ライターを務めてきた甲斐があった。そんな小さな感動を覚えつつ、M氏から伝えられた番号をケータイに打ち込んだ―――。

 

急転直下。

男「ハイもしもし~、〇〇(社名)のSです!」

2コールもしない内に繋がった。鼓膜に痛みが走るほど元気な声を受け、思わずケータイの「通話音量下げる」ボタンを連打した。

――「はじめまして、わたしくHのラッシーと申します」
S氏「あー、ラッシーさん! はじめまして、〇〇のSと申します~」

――「Sさん、よろしくお願いします」
S氏「よろしくお願いいたします! それで来月〇日なんですが」

――「はい、空いております」
S氏「では、ご参加いただけるということで?」

――「ええ、ぜひお願いいたします!」
S氏「ありがとうございます! 詳細をお伝えしますと……」

参加する一般ユーザーは300人ほど。新機種の発表がメインだが、ステージでは同メーカーの機種をテーマにしたトークショーなどが行われるらしい。

試打タイムではフロアを回り、写真撮影やサインなどファン対応もしてほしいとのこと。まあ、圧倒的に知名度が低い俺にはあまり関係のない話かもしれないが。

――「はい、概ね分かりました。問題ありません」
S氏「ありがとうございます! いや~、ホント申し訳ありません」

――「いえいえ、こちらこそ」
S氏「まさかノーギャラでご協力いただけ……」

――「ノーギャラ!?」
S氏「ええ、ノーギャラですが?」

ノーギャラ!!!??
 

罪。

――「え? そ、そうなんですか?」
S氏「ええ、もうHさんは3枠埋まってまして」

――「……はぁ」
S氏「もう予算がナイというわけです」

――「……な、なるほど~」

「些細なことでゴチャゴチャと」や「しょせん金かよ」などと思われそうだが、これはそう単純な話ではない。我々フリーランスにとって、極めて重要な話なのである。

たとえばパチ7ユーザー主催のオフ会などは、もちろんノーギャラで構わない。こちらも遊びに行くのだから。しかし、企業が主催・運営する案件はまったく別の話。

もし俺が「全然ノーギャラで構いませんよ!」と快諾すれば、それは実績や事実として残ってしまう。

Hのライターはノーギャラで使える。パチスロライターはノーギャラで動かせる……という事実が残ってしまうのだ。こうなるとフリーランスの同業者にかなり迷惑をかけることになる。

他の誰かが同じ提案を受けた際、「Hのラッシーさんはタダでやってくれましたけどね」と言われてしまうわけだ。

実際この業界で生きていると、この「〇〇さんはタダでやってくれた」や「〇〇(媒体名)は格安でやってくれた」と言われることがある。某メーカーの案件を受け、ノーギャラで半月以上拘束されたという人物にも会ったことがある。

俺より後輩のライターがこれを言われたら、なかなか言い返しにくいだろう。「先輩が通った道だから」と、仕方なく受けてしまう恐れもある。その業界内への影響が怖い。

金額の大小は問題ではナイ。「ノーギャラ」という事実が問題なのだ!

「ノーギャラで受けた」という既成事実を作ることは、フリーの同業者からすれば犯罪に近い。めちゃくちゃ迷惑なのである!!

漫画家やイラストレーターでも同様のケースがよく起こるそうな。「〇〇さんはタダで描いてくれました」といった具合だ。だからこそプロは、その仕事を好きで大切に思えばこそ、タダで、ノーギャラで受けてはいけないのである。

それゆえH編集部では、ごくごく短いコメント1つにも必ずギャラが発生する。20秒で書いたひと言コメントでも、必ずギャラが発生するのである。編集部のように付き合いの長い企業が相手なら、こちらから細かいギャラを断るケースもあるが……。


S氏「ノーギャラでは受けていただけませんか?」
――「非常に困りますね。いや、金額じゃないんですよ?」

俺は先述した「なぜノーギャラではいけないのか」を丁寧に説明した。

S氏「はあ……では参加いただけないということで」
――「ええ? いや、他のライターと同額くれとかじゃなくてですね」

S氏「はぁ」
――「もう金額なんてナンボでもいいんですよ。たとえば終日拘束で8千円とか」

当時、編集部の新人アルバイトの最低日給が8千円だった。

S氏「いや、(8千円)無いですね~」
――「ん~~~、もう最悪500円でも」

S氏「いや~、無いっすね。もう予算が1円も余ってないんですよ」
――「なっ!!?」

あかん。社会人経験が乏しすぎて分からない。集客300人規模のイベントを実施する際、予算をキレイさっぱり使い切ることなどあるのだろうか? 俺が運営なら不測の事態に備え、必ず予備費を残しておくが……。

訊けば出演するライターは総勢十数名(3誌×3人+司会者など)。その中で、唯一俺だけがノーギャラらしい。つまりはこういうことだろう。

「無名ライターに払う金など1円も無い」
 

腹の内。

「屈辱的か?」と問われれば否定はできない。しかし、俺にそういった「演者としての価値」が無いことは自覚している。

それは飲み込もう。
認めざる得ない事実として。

運営サイドからすれば、ラッシーなど参加してもしなくても構わない。イベントの進行に支障はナイのだ。

いや、むしろ「不参加」のほうが都合がいい。俺が参加することで、準備していた進行表、立ち位置の図、台本などを書き換える必要が生じる。

S氏はむしろ、俺の参加を望んでいない―――!?

重苦しい静寂が続く中、俺の脳内は高速で回転している。受けるor受けないによる影響はなんだ? ベストアンサーはなんだ―――?

正直、我が攻略氏「H」のM氏は、俺の参加・不参加などどうでも良いと思っているだろう。先輩3人を参加させ、その対価を得た時点で仕事は完結している。しかし、俺を推してくれた編集部員はどうか―――。

「少しでも表に出て顔を売ってこい」。

ここで不参加を決めれば、その期待に応えられない。ついでにS氏の思惑通りに事が進むのも悔しい。屈辱を受けたうえ、一矢も報えず引き下がっていいものか……。

このナメくさった運営に、少しでもストレスを与えてやるべきか。そんな性悪な考えも脳裏を掠めた。

そもそも編集部(というかM氏)がもう少し慎重に出演者を決めていれば、こんな事態にならなかったのだ。運営サイドばかりを攻めるわけにもいかない。

M氏も部下である編集部員に責められた末、「ラッシーがノーギャラで受けたらラッキー」程度で提案したのだろう。全員の顔を立てつつ、同業者に迷惑をかけない解決策は―――
 

約束。

――「では、こうしましょう」
S氏「はい」

――「ノーギャラでお受けします」
S氏「ホントですか! ありがとうございます!!」

声は弾んでいるように聞こえたが、腹の内は分からない。台本などの再調整は面倒だが、シンプルにタダで出演者が増えたことを喜んだのかもしれない。

――「ですが、1つ条件がございます」
S氏「条件……ですか? なんでしょう?」

――「条件というか、約束してほしいんです」
S氏「はぁ」

――「今回は編集部の都合によりご迷惑をお掛けしましたので、ノーギャラでお受けします。お手数をお掛けしてすみませんでした」
S氏「いえいえ、そんな……」

――「御社は今後も、こういったイベントを開催するおつもりですか?」
S氏「おそらく、そうなるかと思います」

――「でしたら、出演者のノーギャラ発注は今回で最後にしてください
S氏「はい?」

――「Hの後輩……いや、媒体関係なくどこの誰であっても、ノーギャラでの出演をお願いしないであげてください」
S氏「はあ……」

――「ギャラは安くてもいいんです。5千円でも3千円でも。受ける受けないは本人が決めるので」
S氏「……なるほど」

――「新人だと、やっぱりノーギャラでも断れないと思うんですよね。そうなると『誰誰さんは受けてくれた』って広まって、出演者ギャラの価格破壊起きちゃうんで」
S氏「たしかに、そうですね」

――「だから『ラッシーさんはノーギャラで受けてくれました』も、絶対言わないでください。それだけはホント、俺とSさんの約束とさせてください」
S氏「はい」

――「それを守っていただけるなら、参加させてください」
S氏「分かりました。では、ぜひよろしくお願いします!」

――「それでは、またのご連絡お待ちしております」
S氏「宜しくお願いいたします。失礼します」

電話を切ると、左肘はしびれたように痛かった。ケータイをPCデスクに放り、イスの背もたれに体重を預けた。

やはり襲ってくる同業者に対する罪悪感。

それでも、ギリギリの妥協点を見つけたつもりだ。S氏が約束を守ってくれれば……だが。

会社員のS氏には、なぜ俺がここまで熱くなっていたか理解できていなかったかもしれない。いや、今はきっと伝わったと信じるしかない。
 

果てに得たもの。

イベント当日――
イベントは笑いに包まれながら滞りなく進行した。オマケで捻じ込まれた俺には、案の定、出番らしい出番などなかった――

と言いたいところだが、他のレジェンドライターとまったく変わらなかった。トークショーでも先輩たちと一緒にひな壇に座り、4号機の思い出を語らせていただいた。

一般ユーザーも共演者も、まさか俺だけノーギャラで出演しているとは思わなかったハズだ。

俺にとっての収穫は、ライバル他誌の大御所ライター陣に挨拶できたことだろうか。言うなれば「敵」でもあるが、ずっとパチスロ雑誌を買い、CS番組を観ていた俺からすれば、まぎれもなく英雄なのである。

ギャラは無いなら、せめて経験だけでも積ませてもらおう。そんな気持ちでトークショーの時間を過ごした。途中、他誌のレジェンドライターと某機種の打ち方を巡りほんのり言い合いになったのには焦ったが……。

そしてイベントも終盤になり、いよいよ一般ユーザーの試打タイムがスタート。予定通り、俺は試打フロアを歩き回る。すると……

「ラッシーさん、サインください」
――「ええ、俺っスか!? もちろん!」

この日、人生で初めて両手で数えられないほどのサインを書いた。このシリーズを担当しているからか、リーグ戦番組で優勝したお陰かは分からないが、少しは顔を覚えてもらえているらしい。

A先輩やカリスマであるIさんのところには、ゴールデンウィークのUSJバリの列ができているのだが。

俺が慣れないサインに慌てていると、その様子をM氏が笑いながら眺めていた。数十人の編集部員を束ね、編集長のさらに上に立つ人物だ。すべて見据えていたのだろう。

俺に自信を持たせ、人前に出る経験を積ませる機会になれば。そんな風に考えていたのかもしれない。

そんな俺のもとに、1組の夫婦がやって来た。奥さんのお腹は大きく膨らんでいる。生まれた子は、きっとウチの子と同学年になるだろう。

奥さん「ラッシーさん、お腹さすってください」
――「ええ!? パチスロばっか打ってる手ですが?」

奥さん「リーグ戦番組、観てたんですよ~」
旦那さん「この子にあのヒキを分けてほしくて」

――「ははは、では失礼して」

正直に言えば、ファンイベの参加は少し怖くもあった。俺なんかが参加して、逆に場を冷ましてしまうのではないかと。

でも、こうして少なからず喜んでくれる人がいる。その存在を身近に感じられたことこそ、最大の収穫だったと気が付いた。

悔しい。

悔しいが、たしかにいい経験になった。また機会があれば、ちゃんとギャラありで呼んでもらえるよう頑張ろう。Hが運営サイドに提案する3枠に入れるように。

その後、S氏が約束を守ってくれたか否かは定かでないが、そういった苦情は1件もないので、きっと守ってくれたのだろう。

この数年はどんな仕事でもギャラの価格破壊が著しいので、あそこで俺が戦おうが戦うまいが、結果は変わらなかったかもしれないけれど。

これからのライター・演者に言いたいのは、ギャラが安いのは仕方ない。無理だと思えば断ってもいい。この話のように、いい経験になることもある。ただ、ムダに安売りする必要もない。

なにかと叩かれバカにされる職業だけど、それでも立派な仕事なんだ。とにかくノーギャラだけはダメ! 仲間のためにも、そこは強い意志で守りましょう。おじさんは、やっぱり今も少し反省していますから。



いや、いくらなんでも500円はあるだろ?

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ラッシー
代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-

山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。

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