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元・ホール店長カタギリのしくじり店長
2016.05.04
しくじり店長・第17回
連チャン性能を失った沖縄スロット。
ツジ店長の指示通りに私がデタラメに札を差す、
典型的ガセイベントの開催。
この2つの出来事によって当店の来店客数は、
無名の地下アイドルの握手会レベルにまで低迷。
稼働回復を図るための次なる一手は、パチンコ店の常套手段。
そう、新装開店である。
それにしても爆裂沖スロと同等の集客が望める新台なんて、
果たして存在するのだろうか…
元ヤンの店長もほとんど店に顔を出さなくなっちゃったし、
ウチの店はこの先、大丈夫なのかな…
そんな仕事の愚痴をこぼす相手が欲しかったけれど、
この当時、私には友達がいなかった。
10代の頃からロクに学校にも通わず、
一人ぼっちでパチ屋に入り浸る日々の繰り返し。
夏休みに友達と一緒に山奥に行って毒ヘビに遭遇したり、
河原で棒に刺した肉を焼いたりという青春の記憶は、
私の中に一切、存在しない。
ハンドルを握って盤面を飛び交う玉の行方を追いかけること。
高速回転するリールを停止させるために、右手でボタンを止めること。
機械的な作業に、友情は必要が無かったからだ。
それでも遊技客の台にメダルを補給して、
休憩時間に狭い部屋でタバコを吸って、
ガセ札を差して翌日を待つ日々の繰り返しの中で、
「ああ、
たまには誰かと、どこかに遊びに行きたいなぁ…」
そんな気持ちを自覚し始めていたのだ。
だが、そこに具体性や計画性は無かった。
だた、そう呟くだけの毎日だった。
ところが。
思わぬキッカケで私は一人の友人を得た。
この当時に流行した、個人運営のパチスロ関連のホームページ。
ほんの暇潰し気分で覗いたつもりの掲示板で私は、
気付けば積極的にパチスロの情報提供をするようになっていたのである。
「○○区には、まだニューペガが打てる店がありますよ!!」
「××駅前の店には、アラジンとコンチⅢがありますね」
「△△駅のスーバニは、今でもたまに打ちに行くんですよ」
といった私の熱心な書き込みに、
「じゃあ、次に俺が上京した際に一緒スーバニに打とうよ」
と、気軽に声をかけてくれた男がいたのである。
顔も本名も知らない相手との、声無き会話。
だからこそ、本音で語り合うこともできる。
遠く離れた場所に住んでいても、互いの心の距離は近い。
そこに「パチンコ・パチスロ」というの共通の話題があるのだから。
彼との対面の日を待ち望む私の心は、弾んでいた。
彼の名はY君。
まるで旧友と再会したかのような初対面の1日は、
夕方まで2人並んでパチスロを打ち、夜は酒を浴びるように飲んで終わった。
その後も月に一度のペースで上京してきたY君。
そのたびに私は彼と一緒にパチスロを打ち、
酒を飲んで馬鹿話をするのが当たり前になっていた。
そして、何度目かも忘れた頃の飲みの席で、
「実は俺、パチスロライターを目指してるんだよ…」
「全国各地でレア台を打って、その記事を人気連載にしたいんだよね」
そんな夢を熱っぽく語ってくれた彼の目を見て、
私は何とか応援しようという気持ちで一杯になった。
大切な友達のために、何かできることは無いのかな…。
そして、偶然が重なった。
Y君からいよいよパチスロライターとしてデビューできそうだ、
という話を聞かされたのは、
私の店の大型新装開店を翌日に控えたタイミングだった。
その日、上京してきた彼と居酒屋で同席したのは、
某・有名攻略雑誌のライター、Hさん。
「Y君と… どちらさんです?
…ああ、パチ屋の店員さんですか」
私と挨拶を交わしたのは、その一言だけ。
Hさんの長々と続く自慢話を、 私は愛想笑いを浮かべながら聞き流した。
「Y君もパチスロライター、頑張りなよ?
今度、Oさん(大御所ライター)も紹介してあげるから。
頑張らないと、パチ屋の店員みたいな仕事しか出来なくなるよ!」
Hさんは、その言葉を最後に店を後にした。
「ありがとうございました、頑張ります!!」
間もなくデビューする新人ライターは、
先輩ライターの後ろ姿に深々と頭を下げて、笑顔で叫んでいた。
居酒屋の支払いは、Y君と私の割り勘だった。
その後、二人で飲み直した居酒屋の席で、
Y君はサイフの中から1枚の紙切れを取り出した。
それは、ウチの店の名前がプリントされている、
明日の新装開店の優先入場券だった。
「ちょ、聞いてねーよ! 先に行ってくれよ!」
いきなり友達が店に来ると知って慌てる私に、
「いや、カタギリをビックリさせようと思ってさ!
ちなみに俺、この記事でライターデビューするから!」
そう言って自信満々の表情を見せるY君。
「…マジかよ!! 頑張れよ!? ウチの新装だったら4万枚は狙えるかもよ!?」
その時の私の返事は、もちろん半分は冗談のつもりだったのだが…
そして迎えた翌日、新台入替初日。
それは記念すべき、Y君のライターデビューの日。
今は、そうであって欲しかった日と呼ぶべきだろうか。
この日、遅番で出勤してきた私の目に最初に飛び込んできたのは、
カド台に座ったY君の後ろ姿と、彼の背後に何段も積み重ねられた千両箱。
その驚きの事実をホールコンピューターで確認したところ、
午後2時半で既に差枚数、なんと16,000枚オーバー。
右肩上がりに伸び続けているスランプグラフに、
私は即座にピンときた。
「これ、40,000枚基盤だ…!!」
正式名称は知らないが、私はそう呼んでいた。
もちろん最高設定といえど、正規の台がそのような出方をする訳が無い。
しかも今回の新台は差枚数で5,000枚も出れば恩の字の、
ごくフツーのAタイプのハズだった。
にもかかわらず、開店から4時間ちょっとで16,000枚。
時速4,000枚ペースでメダルを吐き続けているのだ。
その正体がいわゆる「開店基盤」である。
新装開店を盛り上げるための非合法兵器。
その中でもおそらくは、日本で最強の破壊力を持つ代物だ。
打ち続けさえすれば、閉店時にはプログラム通りに、
キッチリと40,000枚のメダルを吐きだしてくれるお祭り仕様。
そして、
そんな台を友達のY君が打っているのだ。
40,000枚達成男の看板をブラ下げての、パチスロライターデビュー。
偶然とはいえ、友人に最高の舞台を提供できた嬉しさで胸が一杯だった。
飲み会の席で魅せる屈託の無い彼の笑顔が、
誌面でもきっと見られるに違いない。
いつも掲示板に書いているような、 トリッキーな文章で腹を抱えて笑わせてもらおうか。
Y君がデビューした記念号は、5冊ぐらいは買ってやろう。
…とはいえ、
まさか「キミの打ってる台、40,000枚マジで出るから」
と教える訳にもいかない。
しかし、彼の記事にも何とか華を添えてあげたい。
様々な想いが駆け巡る中で、 私は彼にメールを送信した。
「その台、当りで間違いないから閉店まで粘って!!」
…このメールに、彼からの返信は無かった。
そして彼は途中で何度もケータイを見たり離席したりと、
落ち着かない様子で遊技しながら、
なんと、午後7時頃にヤメてしまったのである…。
流した枚数は28,000枚オーバー。
ブン回せばあと1万枚以上は確実に出たであろう台を捨てて、
まさかの途中退店。
いったいどうしたのだろう?
「今日はお疲れ!!
この後って、何か用事があったの?」
…このメールでの問いかけにも、やはり返事が無かった。
その後、彼と全く連絡が取れなくなってしまった。
掲示板への書き込みもパッタリと途絶え、
楽しみに待っていた彼のライターデビューの行方もわからない。
そして、その約一ヶ月後。
28,000枚を出したこの台の記事は、
有名ライター・Hさんの連載ページにひっそりと掲載された。
当然ながらその記事にY君の名前はどこにも無く、
「とある場所からの投稿」として扱われていただけだった。
「カタギリさ、もうすぐ出るパチスロ北斗の拳ってどう思う?」
「う~ん、パチンコの北斗がイマイチだったから、ダメじゃない?」
大好きな相手と酒を飲みながら、大好きなパチスロの話をする。
ふと気が付けばアッと言う間に時が流れていた、かけがえの無い時間。
他愛の無い話で、心から笑い合える友達の存在。
彼とは、それっきりになってしまいました。
それはまるで最後の一片が見つからないジグソーパズルのように、
不完全な物語として私の中で燻り続けているのである。
彼はまだ、パチスロを打っているのだろうか?
もしそうだったら、私は嬉しい。
そしていつかまた、 君と一緒にパチスロを打てる日の事を夢に見ているのです。
カタギリ・今週の1枚
宵越し天井狙いで久々に座ったハーデス様で、
神降臨からのループストック3発目に、
自身初のV揃いが炸裂。
その後も2回ほど神が降臨して、
ハーデスステージでなんと「タッチ」が流れ始めました…
パチスロだけはいつまでも、私の大切な友達ですな。
編集長の一言
明らかに非合法な台を打っちゃったから記事に出来なかったのかと思ったら、そういうことでしたか…。どこにでもいるよね、クソみたいな人間って。
でも、まぁ何があったかは知らないが、それでライター辞めちゃうくらいだからY君の情熱も、そんなもんだったのかもしれないね、という人の想い出を勝手に汚していくスタイルもやれちゃう編集長。
しかし開店基盤の存在は知ってはいたものの、4万枚基盤なんて恐ろしいものは見たことも体験したこともないなぁ。…それにしてもAタイプで4万枚って(笑)
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- 元・店長カタギリ
- 代表作:しくじり店長
シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。
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パチスロ
4号機の頃はノーマルでも狂った台はいろいろとありましたからねw
さすがにノーマルで4万枚も出たら、店長は真っ青になりますわw
ライター志望のY君の代わりに自分が今、
こうしてサイトで記事を書いているのが不思議な気持ちになりますね~。
で、
何で私の顔を思い出すと真顔に戻るんスかw
それに匹敵する凄まじさがありましたねw
今なら一瞬で営業停止モンですよねw
4万枚基盤台は誰が座っても出っ放しの、恐ろしい代物ですからね…
延々とメダル補給するスタッフがとにかく大変ですよw
元気でいるといいですね。
40000枚基盤なんてあったんですね!知らなかった…
みこしとマネーなんちゃらは1日出っぱなしってあったような…
でもかたぎりさんの顔を思い出すと( ・_・)ってなれたほどいいお話しでした❗
コンプライアンスの意識が低い&SNSの普及が無い時代だからこその開店基盤ですよね。
今の時代だと出なさ過ぎで叩かれ、出過ぎでも叩かれ…
そして4万枚基盤・・・万枚すら未経験な自分にはなんか聞いてるだけで恐ろしいですね、それでも当時だったら今の2万枚レベルくらいだったりするんですかね
4号機の北斗の前となると北斗の拳Sですよね・・・さすがにあれは触ったことないですね