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元・ホール店長カタギリのしくじり店長
2016.04.20
しくじり店長・第16回
「今日から俺がココの店長だから、夜露死苦!!」
ヤニで汚れた歯をムキ出しにしながら、力強く宣言した筋肉質の男。
狭い事務所の中で元ヤンのオーラ(単発濃厚)を放つ彼こそが、
私の新しい上司となったツジ店長その人である。
オイルマッサージの最中に逃亡してきたかのような、脂っこい顔面。
毛先をジェルで固めてツンツンに立たせた、
メジャーデビューに失敗したパンクロッカー風の髪型。
地方の寂れた飲み屋で営業をやっている三流マジシャンの衣装みたいな、
紫色のダブルのスーツにウコン色のネクタイ。
トドメは半径500メートル以内の子犬たちが一匹残らず気絶確定、
という安物の香水による強烈な悪臭。
「よ… よろしくオネショします…」
私は口で息をしながら、そう答えるのが精一杯だった。
この逆・ファッションリーダーが新店長に就任して以来、
ホールはドンヨリとした空気に包まれ始めた。
まずは稼働が好調だった「妙に連チャンする沖縄スロット」が、
全くもって連チャンしなくなってしまったのだ。
この件については事前にサガワ課長から神妙な面持ちで、
「カタギリ、明日から沖スロのお客さんに何を言われても、 お前は何も答えなくていいから」
というミステリアスな指示を受けていたために、
ある程度の察しはついていた。
そして課長の予言通り、
「おいっ!! これ戻しただろっ!!」
という常連客の怒号がホールに響いた瞬間に全てを理解。
その日の夕方には、既に片手で数えられる程の人数になった沖スロのシマ。
そこに立ち尽くす私に、マイクパフォーマンスをする元気は残されておらず、
ただ終演の幕が降ろされた光景に、狂乱の時代の終焉を感じていたのである。
が、
この件に関しては新時代のバトンを受け渡されただけの新店長、
彼を責める理由は無い。
問題は、この男が事務所に持ち込んだダンボール箱の中身だ。
そこには何種類ものカラフルな札がギッシリと詰め込まれていた。
プレートのそれぞれには「偶数設定台」や「設定3or5」、
あるいは「爆発予想台」という射幸心を煽る文言が書き記されており、
果てには「?」という思わせぶりなマークが描かれたものまで用意されていた。
それを見た私は、
「なるほど、札を使ったイベントでお客さんを集めるのか…」
そう感心したものだったが、それも束の間の話。
設定変更作業を終えた悪臭ヤンキー店長は私に向かって一言、
「ここにあるフダ、お前がテキトーに差しといて」
という信じがたい指示を繰り出してきたのである…
「いや店長、さすがにそれは無いッスよね!?」
真顔で事務所に戻ろうとしていた店長に、堪え切れずに声をかけた。
考えてみて欲しい。
私はこの日、はじめてツジ店長と一緒に仕事をし始めたばかりである。
お互いのことなど、何も知らない。
これから共に信頼関係を築き上げていかなければならない状況下において、
部下に任せる仕事の内容としては最悪だ。
冗談と香水の臭いがキツいわ、という私の思いとは裏腹に、
果たして元ヤン店長は表情ひとつ変えずに、こう返してきたのだ。
「お前、イベント考えるのが得意らしいじゃん?
今までも客を騙してナンボの仕事してきて、今さら何が言いたいの?」
この生涯忘れられぬ一言に、私は返す言葉が見つからなかった。
パチンコ業界という人生の選択肢。
その道を歩むためには、遊技客が店に落としたお金で飯を食う決意、
そして騙し騙されの世界で生き抜く覚悟が必要なのだ。
これまでは何となく頭の中で理解して、行動に移してきたつもりだった。
だが、ここまで明確な言葉で胸を突き刺されたことは、
その瞬間まで、ただの一度も経験していなかったのである。
茫然自失でホールに設置された全ての台に、
用意されたフダを適当に差して、
言われたままの仕事をこなして当日の業務は終了となった。
店長とは、お互いに終始無言のままだった。
言うまでも無く、その後の稼働状況はさらに悲惨なものとなった。
設定③以上確定と書かれた札の付いた台すら見向きもされない、
そんな状況の中でツジ店長は項垂れた私の顔を見つめながら、
「お前、フダの付け方がホントにヘタクソだよな…」
そう言い放ってまた、ニヤリと笑うだけだったのである。
「そういえば、どうしてこの業界に飛び込んだんだっけ?」
黒いスーツを着た呼び込みの兄さん達の姿がすっかり消え失せた、
人通りもまばらな繁華街を歩きながら、そんなことを考えていた。
「ボクは勉強がとにかく嫌いで、学校にもロクに通わなかったんですけど、
パチンコだけは大好きなんです!!」
そう熱く語った私の目を真顔で見つめていたのは、
私が最初に勤めたホールの責任者、ヒロタ店長だった。
そして思い出すのは、この偉大なる上司の言葉ばかりだった。
「カタギリ。 オマエは、まだ何も背負っとらんのじゃ。
今は気持ちだけありゃええんじゃ。
後ろでも、下でもありゃせん。
しっかり前だけ見て仕事せい。
言いたいことがあるなら、ワシがしっかり聞いちゃるけえ。」
「カタギリ、お前はまだ若いのに難しい顔ばっかりしよるのう。
人と話をする時には、眉間にシワを寄せとったらダメじゃ。
パチンコ屋っちゅうんは、勝った負けただけの場所じゃないんぞ?
笑顔じゃ、笑顔で人と話せ。
お前が笑うとったら、相手も笑うんじゃ。
そうやって、お前をもっと好きになってもらうんじゃ。」
「カタギリ、今日からお前にカギを持たせる。
カギを渡されるっちゅうことは、責任を持たされるっちゅうことじゃ。
そのカギの重さがお前にわかるか?
カギの数がもっと増えて、責任の重さを感じられるようになったら、
お前は一人前じゃ。
その手を開いて、中にあるカギをよう見てみい。
それが、ワシが今のお前に対する信頼のカタチじゃ。」
いい加減な札を、適当に差し続ける毎日。
ふと我に返ったあの時、私はどんな顔をしていたのだろうか。
ネオンの灯りの落ちた薄暗い街角で己の握り拳をゆっくりと開いてみたが、
当然のように、形あるものは何ひとつ掴めていなかった。
逃げ出してきた場所の厳しさとぬくもり。
失った信頼の重さ、そのかけがえの無いありがたみ。
いつの間にか、大切なものは全て掌から、
いや、記憶の中からさえもこぼれ落ちてしまっていたようで、
私は悄然と立ち尽くしてしまったのである。
今の私の姿を見たら、ヒロタ店長はどんな顔をするのだろうか。
そして、どんな声をかけてくれるのだろうか。
それとも、もはや何も教えてはもらえないのだろうか…
それでも、前に進むしか無い。
寄る辺なく歩いて辿り着いた大通りにも、酔客の姿すら見当たらない。
吐き捨てられたガムの残骸が貼り付いたアスファルトの上で、
ため息と共にマルボロの煙を吐いた私には明日もまた、
自らの手によって差したフダで遊技客の財布を軽くする仕事が待っているのだろう。
誰を仰ごうとも今はもう、主任という役職を背負っている。
腰からブラ下げた鍵束の意味、その責任も理解している。
ただ、
そこに誰かの信頼があるのだろうか?
また、信頼を得られるだけの仕事をしているのだろうか?
その答えを求めて見上げた空には、星の輝き一つさえも見当たらなかった。
カタギリ・今週の1枚
ゲッターマウスが面白過ぎて、今この瞬間にも気が狂いそうになります…。
オレンジ&スイカのWナビからの、トリプルテンパイハズレ。
美しいリーチ目が見たくてパチ屋に通っていた若き日の情熱が、
いま再び激しく燃えたぎっております。
編集長の一言
差すのかよ(笑) 適当に差しちゃうのかよ!
でも裏返っているものが無くなって、ガセイベントに走る、というのは結構ありがちな話なんでしょうな。
それはさておき、ヒロタ店長。あんたぁ、良い漢だねぇ。ファンになりそうだ。
良い上司、同僚、友人との出会いってのは、運でもあるとは思うけど、良い漢には良いヤツが集まってくるからね。そういうことなんだよ。
カタギリさん、あんたも良い男なんだよ。
不思議な店長が続々と現れるのは、ヒロタ店長を裏切った反動なんだよね。きっとさ。
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- 元・店長カタギリ
- 代表作:しくじり店長
シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。
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当時よく見かけた「イケイケの店長さん」は、
営業は気合いで何とかなると思っていた人が多かったんスよねw
ツジ店長は正にそんなタイプだったので気苦労が絶えませんでしたよ・・・。
あれ、ミッ〇ーなのかな?
私はトム&ジェリーを連想しましたw
一時の利益確保によって信頼を落とす、
まさに典型的なダメ営業なのですが…ね。
とても苦い記憶ですね…。
それにしてもゲッタマ、面白い!!
こればかり打ってますよ最近はw
当時は私もあちこちの店で「ガセ札」に騙されましたからねぇ…
調整担当者とフダ付け担当者が違っていたという今回の話、
他のホールでも結構あったのかなぁ…?
このあたり、同業者に聞いてみたいなぁ。
現役ホール店長さんだと話しにくいでしょうけどw
信頼できる店とできない店の差は歴然でした。
店長の方針でやりたいことができない無力感。
ひしひし伝わってきます。
カタギリさんファイト!
ゲッタマのリプレイってミッ◯ーですよね!?
あの頃の札はまぁほんと…
打つ方も差す方もシラケちゃってた感がありましたね。
僕もゲッタマしか見えないっ‼︎
「入ってなくて当たり前」くらいに
思ってたんで
カタギリさんのコラムで
「あぁやっぱり」という
確信に変わりました。
昔は6確定!とか当たり前に刺さってましたからねぇ。
今じゃ考えられないけど(笑)