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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2020.06.09
徒労は宿命!? パチスロ誌の攻略競争~アカギ・永続の闘牌~
大きな警告音が鳴り、イスと同化して久しい腰をゆっくりと上げた。呼び出しボタンを押したのち、サンドのカード残高に目を移す。
「1.000」
使ったのは29,000円か、それとも39,000円か。もはや、それすらも曖昧だ。
店員「失礼しまーす」
半歩横にずれ、エラーが解除されるのを待った。コードを見るまでもなく、何のエラーかは察しがつく。遊技台のドアが開けられると、案の定、十数枚のメダルが勢いよくこぼれ落ちた。
店員「わわっ、少々お待ちください」
これは長くなりそうだ。その間に正確な投資額を計算しよう。そう思い財布の中を確認すると、グニャリと視界が歪み、思わずイスの背もたれを掴んだ。
開店時の財布には、1万円札がジャスト9枚入っていた。それが今は4枚だ。サンドに千円が残っているから、投資は49,000円ということになる。腕時計に目をやると、まだ正午を過ぎたばかり。時計が止まっているのだろう。そう思い秒針を見つめたが、1秒1秒を正確に刻んでいる。
血の気が引いた。
開店からわずか3時間強で-49,000円。ARTには1度入ったものの、100枚すら獲得できずに即終了。
――「なんでこんな目に…」。
俺はすっかり焦点が合わなくなった目で、大量のメダルがホッパーから掻き出されるのを眺めていた。
ニッチなマシン。
日を改めて出直すのは簡単だ。しかし、出直したとて良い台に巡り会えるとは限らない。なにより俺には時間がなかった――。
それは前日のことである。 俺が担当のこの機種を、次の誌面で何ページ扱うか編集部に確認すると……まさかのゼロ。導入から1ヵ月ほどで、早くもページが無くなったのである!
しかし俺は、この機種にヒットの臭いを感じていた。爆発的なヒットは難しいだろうが、コアなファンはきっと付くハズ。
▲5号機「パチスロ アカギ~永続の闘牌~」(藤商事)
2008年の秋に藤商事から登場した、あの人気漫画「アカギ」とのタイアップマシン。厳密に言えばボーナス+ART機だが、実質的にはARTのみで出玉を増やすタイプだ。
ボーナスはREGのみで、その成立時にART「鷲巣ボーナス」抽選が行われる。REGの確率は約1/39~1/36.4とかなり高いが、獲得枚数は平均10枚と少ないため、REGの連打で出玉を増やすことは不可能に近い。REGはあくまでART突入のきっかけにすぎない。 REG成立後はリプレイ確率が大幅にアップし、REGを揃えず持ち越している状態がARTとなるわけだ。基本システムはJPSの名機「2027」と同じと捉えれば分かりやすい。 |
ARTは1セット20G構成の継続率管理で、実質的な継続率は50~90%超。書き方が曖昧なのは、内部的なシステムが少々複雑なためだ。
内部的な継続システム
■1セットは20~100Gの20G刻み ■継続率は12.5~80%の4段階 ■非継続時の復活回数振り分けアリ |
見た目上は1セット20Gだが、内部的な1セットは20~100Gとなっており、それを20G区切りで複数セット継続しているように見せるケースもある。また、継続に漏れた際に復活する回数を振り分ける抽選も存在。それらを要約すると「1セット20Gで実質継続率は50~90%超」となるわけだ。ちなみに純増は+1.5枚/Gで、当時としてはそこそこ早いほうだった。
ソソるART。
エラー解除までに5分ほどかかった。その後も打ち続けるが、ART「鷲巣ボーナス」には入らずREG回数だけが増えていく。
店員「〇番台のお客さま、ボーナスゲームスタ~トゥ! はりきってどうぞゥ!!」
――「………」
REGを揃えるのはART非当選時かART終了時だ。ニーマル同様、データ表示器上のREG出現率が高いほど負けていることになる。煽られているようにも感じるが、この店員は知らないのだからイラついても仕方がない。
そんな精神攻撃に耐えてでも探りたかったのが「ART中の演出法則」。ART「鷲巣ボーナス」中は、文字通り鷲巣と赤木の麻雀対決(闘牌)が繰り広げられる。1セット=一局で、開始から17Gで手役(テヤク)を育てていく。そしてラスト3Gで勝敗が決し、勝利すれば赤木の血液が増加する。逆に敗北すると血液が抜かれるというわけだ。赤木の血液が全て無くなればART終了となる。
その一局一局の闘牌(トウハイ)が面白い。配牌(ハイパイ)から手役が育っていく過程はもちろん、味方の仰木や鷲巣のリアクションも勝利期待度を示唆している。
そして投資が6万円を超えた頃、ようやくこの日2度目となるARTに突入! スグさまメモ帳を取り出し、配牌から一打一打の流れを記録していく。1セット目は難なく継続。続く2セット目は、さっきと異なる配牌。なかなかデカい手に育ったが、実際の麻雀同様、アガらなければ意味がナイ。そして最終ゲーム……
鷲巣「ロン…」
――「ぐあぁ~、血ィ足りるか?」
安岡「ロン、頭ハネです」
――「くぅ~、安岡助かるぅ~~~!!」
味方の頭ハネで窮地を潜り抜ける! このスリリングな逆転パターンも堪らない。
――「なるほど、この配牌なら頭ハネの逆転パターンがあるわけか」
メモ帳に赤ペンで印を付け、さらに頭ハネと書き加える。
その後4セット、5セットと継続を重ねるが、赤木の振り込みや鷲巣のツモアガりで徐々に血液が削られていく。次の一局を落とせば、さすがにARTは終了するだろう。そう思ったのだが……
――「こ、この配牌は…」
さきほど覚えたばかりの「頭ハネ配牌」である! なるほど、この一局は安心ということか。しかし、8Gほど消化したところで気付く。さっきとまるで違う方向に育っているのだ!
ちなみに赤木のツモは4Gに1回。基本的には1セット(一局)で4回ツモるとテンパイし、勝敗を決するラスト3Gへと移行する。
そのラスト3G。赤木は三面張(サンメンチャン)だが…ツモれず! 次ぐ鷲巣…嵌張(カンチャン)待ちにずっぽりハマる会心のツモで跳満(ハネマン)!!
――「ズリィ~よ! 三面張で嵌張待ちに負けるとは…」
渋々REGを揃えてART終了。獲得枚数は約200枚とかなりイタいが、同じ配牌から手役が分岐する瞬間に気付けたのは大きな進歩だ。この調子でサンプルを採っていけば「この配牌なら〇回目のツモで何を引けばアツい」という法則が見えるかもしれない――。
この日は台移動を繰り返し、結局20時過ぎまでサンプルを集め続けた。収支は-72,000円と散々だったが、収穫がなかったわけではない。やはり同じ配牌でも最終的なテンパイ形は複数あり、ツモった牌から最終的なテンパイ形を予想できるというところまでは分かった。しかし――
圧倒的にサンプルが足りない!!
各配牌からのアツい流れ・サムい流れはほんのり把握できたが、それらに分岐する割合を算出するには膨大なサンプルが必要になる。実際のホールで低設定を打ち、サンプルを集めるには限界がある。 こうなったらヤルことは1つだ――。
執念の売り込み。
翌日――
俺は編集長を説得するため編集部に向かった。
――「アカギは誌面から消えるような機種じゃないですって!」
編集長「でもなぁ。設置台数も少なめだし、人気も…」
――「まだ面白さに気付けていないだけだと思うんです」
編集長「面白さね…具体的には?」
――「これが昨日採ったサンプルなんですけど…」
編集長「あー、ART中の闘牌パターンね」
――「そうです。途中の分岐から最終的なテンパイ形が予想できるので、テンパイより前に継続期待度を推し測れると思うんです」
編集長「なるほどなぁ…」
すると、話を聞いていた後輩編集のYが割って入って来た。Yは編集部きっての麻雀好きでもある。
編集Y「あのART中の闘牌、面白いっすよね! 赤木や鷲巣のセリフも、内容や発生タイミングで継続期待度示唆してるっぽいし」
――「そう! ただ営業中のホールだと実戦値を固められるほどサンプルが採れなくて」
編集長「つまり深夜実戦でサンプル集めて実戦値を出したいと?」
――「そうです! 各配牌からの分岐とセリフのパターン別継続期待度を掲載すれば、いいページになるハズです」
編集Y「僕も興味ありますね」
編集長「Yくんまでそんなに言うなら…」
――「マジすか! じゃあページ復活ってことで?」
編集長「でも最大4P、平凡な結果なら2Pかな」
――「よっしゃ、ありがとうございます!」
編集Y「じゃあ僕が深夜実戦付き合いますよ」
――「マジで!? ありがとう!」
編集Y「店舗も手配しておきます」
こうして編集長を口説き落とし、編集Yという心強い味方まで獲得! 雑誌の売り上げを大きく左右するほどの機種ではナイが、一部読者には猛烈に響くハズ。いや、楽しみ方をしっかりと明示できれば、ニーマルにも負けないロングヒット機種に化ける可能性も……。
間の天才。
数日後の深夜――
後輩Y「あ、2順目で分岐した! さっきと同じパターンです」
――「さっきはコレで萬子(ワンズ)の両面待ちだったような」
後輩Y「そうです。で、七萬引いて…」
――「ホントだ! 2順目の二萬引きはアツいんじゃね?」
後輩Y「ぽいっすね! これ実戦値出せたら面白くなるなぁ」
――「だね! あ…これは…」
俺はテンパイ後のラスト3G中。索子(ソーズ)の両面待ちだが……
後輩Y「それ、さっきロンされて負けてますね」
――「覚えてるよ…うわ~、切るのヤだな~」
必ず負けるわけではないだろうが、期待度は低そうだ。予想通り鷲巣のツモは回避。さっきと同じであれば、次ゲームで鷲巣からロンされるハズだ。この放銃の恐怖。まさに麻雀らしい緊張感だ。
――「う~ん、いったらぁ!」
思い切って第3停止まで止めたが、液晶を見る勇気が出ずに顔を逸らした。放銃ならば、スグに鷲巣の「ロン」が聞こえてくるハズ――。
………ん!?
ロンの声が聞こえない? しかし、赤木の「ツモ」も聞こえない。海底(ハイテイ)までもつれたか? 恐る恐る顔を上げると……まだ赤木の指が牌を押さえているではないか!
――「あれ? 指が…」
後輩Y「どうかしましたか?」
――「いや…液晶の赤木の指って第3停止ボタンとリンクしてるの?」
後輩Y「え? どういうことです?」
――「第3停止ボタンを離した瞬間、液晶の赤木も牌から指離すんじゃない?」
後輩Y「ええ? 気にしたことなかった」
――「いや、俺も今初めて意識したけど。いい? 離すよ?」
第3停止ボタンから指を離すと、予想通り液晶の赤木も牌から指を離し…
赤木「ツモ…」
――「ふえ~~~! かっけえ!!」
後輩Y「たしかにリンクしてますね!」
そう、プレイヤーが第3停止から指を離す瞬間と、液晶の赤木が牌から指を離す瞬間がリンクしていたのである! 「ふ~ん、で?」と言われればそれまでだが、このひと工夫が実際に麻雀を打っているような緊張感を演出しているのではなかろうか。
――「天才だ…『間』の天才がおる!」
後輩Y「なんですって?」
――「いやね、ただの偏見だけどパチンコメーカーってレバー叩いた瞬間『ツモ~~~!』とかやりそうでしょ?」
後輩Y「まあ、麻雀系のパチスロで萎えるのはソコですね」
――「なのにプレイヤーと赤木の指がリンクしてんだよ?」
後輩Y「たしかに。今のツモは気持ち良さげでしたね」
――「メッチャ気持ち良かった! ツモったった感スゴい!!」
後輩Y「そんな顔してましたね」
――「もう俺が赤木で、赤木が俺だった」
後輩Y「分かりましたって!」
――「藤商事ヤベえ! 天才がおる。間の天才がおるぞ!!」
後輩Y「分かりましたからサンプル増やしてください」
こんな調子で後輩Yと楽しみながら朝までサンプルを採り続けた。深夜実戦後は一旦帰宅し、実戦値の算出は夕方から編集部で行うことにした。
まさかの完敗。
着信音で目が覚めた。寝坊かと思い飛び起きたが、時計を確認するとまだ昼の12時半。床に就いてから3時間しか経っていない。
――「はい、もしもし?」
不機嫌さを隠さず電話に出た。
編集長「お疲れ、寝てた?」
――「お疲れさまです。もちろん寝てました」
編集長「起こしてゴメンね。今日発売の『M』見た?」
――「ああ、今日発売っすね。まだです」
MはウチのHより長い歴史を持つライバル誌だ。
編集長「編集部に来る前に、必ずコンビニ寄って見なよ」
――「はぁ、一体何が…」
編集長「アカギのサブ解析が載ってる」
――「エッ?」
頭が真っ白になった。
――「サブ解析? 内容は…」
編集長「まさにラッシーが今回やろうとしてたことだよ」
――「ま…マジかー!! ART中の演出ですね?」
編集長「そう、全部出てる」
――「ということは、アカギのページは…」
編集長「無くなったよ。さすがに解析に実戦値じゃ太刀打ちできない」
――「ですよね…」
編集長「また次の機種で頑張ってよ」
――「…はい、頑張ります」
かくしてサンプル集めに使った投資額や、深夜実戦の苦労が全て水の泡に……。さすがは昔から解析に定評のあるMだ。このスピードでサブ解析を上げてくるとは!
もちろん我が攻略誌HがMより先に解析をスッパ抜くケースもあった。パチスロ攻略誌は長きに亘り、そうやってしのぎを削り合っているのである。
現在は皆さんもご存じの通り解析サイトの争いが激化。私も何度かパチ7のために用意したネタがボツになったり……。この徒労もまた、攻略ライターの宿命なのです。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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