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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2019.10.29
イロモノライター~濃いめの味付け~
微かに「蛍の光」が流れ、店内は静寂に包まれつつあった。カウンター前にできた行列は綺麗に無くなり、今はHくんの姿だけ。フロア業務から解放された店員たちは、各々ゆっくり閉店作業を始めている。カウンターを見守る俺らの視線は、デジタル表示部に釘づけだった。
カウンター嬢「レシート4枚お預かりします」
コクコクと頷くHくん。その様子から興奮が伝わってきた。「ピッ」と電子音が鳴るたび増えていく大・中・小の数字。3度目の電子音が鳴ると、大の表示は大台である80枚を超えた。
A先輩「おおっ!」
――「っしゃ!!」
興奮を抑えきれず声が漏れ、俺は隣に立つA先輩と握手を交わした。
王道ルート。
はじまりは2週間ほど前に遡る。自宅で書き仕事をしていると編集部から着信があった。声の主は編集部の先輩であり、とある雑誌の進行役を務めるU氏だった。次期編集長とも噂される敏腕編集である。
U氏「おーす、いま大丈夫?」
――「大丈夫です。どうしました?」
U氏「Mって誌面企画知ってる?」
――「もちろん。AさんとHくんの企画すね」
Aさんは俺の動画デビュー時に共演してくれた先輩で、年は俺の2つ上。一方のHくんは俺と同い年だが、ライターデビューは俺より1年半ほど早い。2人とも同世代の先輩ということになる。
U氏「そう。あの企画、少し変えようと思ってな」
――「はぁ…」
U氏「で、ラッシーも加わって3人でどうかな?」
――「えっ? ホントすか!?」
U氏「今はNが担当編集なんだけど、次号から俺が担当になるから」
――「マジすか? やりますやります!!」
U氏「企画内容は大きく変わらないけどね」
――「是非やらせてください!」
誌面企画「M」
当時はホールからのメール配信が盛んな時期で、中には高設定に直結する過激なメールも。しかし、そんな時勢に便乗しガセイベントのメールも横行していた。数あるメールの中から「本当に勝てるメール」を選別し、その内容を頼りに実際に立ち回り勝利を目指す…という内容。ちなみに出演ライターの収支はノリ打ちだった。 |
U氏「たいしたギャラにはならないけど、顔を売るには良いかなと思ってね」
――「ありがとうございます!」
U氏「じゃあ、AさんHくんと話し合って実戦日と実戦店決めておいて」
――「了解しました!」
かくして誌面企画へのレギュラー出演が決定。3ページの誌面企画に3人のライターだ。ギャラなんて知れているが、デビューから1年も経たない俺にとって、これは大きなチャンスだった。
新人ライターにとって最も大事なのは露出機会。初めは人気がなく誹謗中傷を受けようとも、長く続ければ読んでくれる人は増える。「継続は力なり」という言葉は、出版の世界でも変わらない。現代の動画時代においても変わらないのだ。とにかくギャラなんて二の次。露出し続けることに意味がある。他誌で連載していた「みなし機お別れ企画」はすでに終了していたため、レギュラーがない俺にとっては飛びつきたくなる話だった。
Uさんとの通話を切るや、すぐにA先輩とHくんに連絡。話し合いの結果、次号は狙うメールの内容から立ち回りの一切まで全て俺が決めることとなった。要するに「初登場回で実力を示してみろ」ということだろう。
まずは我々3人のライターと編集U氏の都合から実戦日を決定。その前日に多数のホールのメールをチェックし、どこでどう立ち回るかを決めることに。
誌面企画への露出は、まさに新人ライターにとって王道ルートだ。数々の有名ライターが誌面企画からスターになっている。この初回だけはコケてはならない。強烈なインパクトを残す必要がある!
より信頼度が高く、高確率で高設定を絞れるメールはどれか。俺は実戦日を迎えるまでの間、各ホールのメールを精査していった。
緊張の初陣。
前夜のメールを基に選んだのは、都心から少し離れた小さなホール。過去に何度か行ったことがある店である。この店は滅多にメールを配信しないが、そのぶん配信した際の信頼度は極めて高い。それでいてライバルが少ないため高確率で高設定にありつける。3人もいれば2人くらいはツモれる算段だ。
明確には覚えていないが、メールは「各機種に高設定投入」というようなシンプルな内容だったと思う。高設定の定義はホールによって様々だが、この店の場合「上2つ」と思っていい。各機種に高設定ということならば、台数が少ない機種を狙うのが得策だ。
並び時間の少し前に集合し、まずはメールに記載されていたイベント内容を共有。次いで実戦店のイベント時のクセ「角・角2狙い」も2人に伝えた。そして、いよいよ実戦がスタート! メール配信のせいか、朝イチの稼働はやや高め。それでも各々好きな機種の角・角2を確保できた。俺が選んだのは設定推測の熟練度が極限まで高まっている「青ドン」。スペックは特別高くないが、5千枚超も何度か経験している。この大好きな機種で伝説を創るんだ――!!
4時間後――
「祭り花火に願いを込めて~ パッと咲かせるぜ~ぃいぇ~い」
ドンちゃんの歌声が青ドンのシマに響き渡る。狙いは正解だったらしく、設定Hとは確信はできていないものの、設定6以上はまず間違いないだろうという状況(※)。出玉は1500枚に届いたところだ。
※青ドンは1・4・6・Hの4段階設定
そしてA先輩も別のシマで高設定をツモり、順調に出玉を伸ばしていた。この2台を閉店までブン回せば、出玉は合計で5千枚を超えるハズ。読者にインパクトを与えるためには、5千枚を超えておきたい!
しかし、順調そうに見える中にも気掛かりが2つあった。1つは高設定をツモり逃したHくんである。1台目を低設定と見切り、その後しばらく店内を回遊しているが、高設定と思しき台は全て稼働しているらしい。そりゃそうだ。
もう1つは俺の左隣の台。その青ドンも、お手本のような高設定挙動なのである。しかしながら、これまで2台並びでの高設定は見たことがない。どちらか一方は「らしい挙動」を示しているだけかもしれない。もしそれが俺の台なら…。
そこから2時間が経過しても、隣の台の勢いは衰えない。むしろ高設定期待度はどんどん上昇していく。対する俺の台も全く同じで、あとは三連ドン花火が上がるのを待つばかりといった状況。出玉は2千枚を超えている。Hくんが打てそうな台は、まだ1つも空かない。そろそろ待たせるのも限界か。そう思ったのだが…
隣の台のプレイヤーが唐突に精算ボタンを押し、ドル箱を2つ抱えヤメていった! 言わずもがな即座に確保しHくんを呼び寄せた。
Hくん「たしかに出てるな」
――「挙動も見てたけど間違いないよ」
Hくん「でもラッシーの台も上っぽいんでしょ?」
――「うん、こっちも間違いないと思う」
Hくん「2台並びで入る? 青ドン4台なのに」
――「信じ難いけど、たしかに2台並びっぽいんだもん」
Hくん「青ドンって当たり重いんだよなぁ…」
――「そうだけど、負けたら俺のせいにしていいから」
Hくん「…分かったよ。下だと思ったらすぐヤメるからね」
――「了解。俺も見ておくから」
3時間後――
Hくん「コレ絶対あるじゃん!」
――「だから言ったでしょ」
Hくん「これまで打った青ドンとまるで挙動が違う」
――「めっちゃ七BIG引いてるもんね」
Hくんの頭上にはおよそ2箱。すでに2千枚を超えている。そして俺らのプレイをさらに加速する出来事が…。
――「あ、店からメール来た!」
Hくん「マジ? どれどれ」
複数台投入機種も多数!
好調台の隣の空き台も要注目!!
――「これって…」
Hくん「並びで(高設定)入れてるってことじゃね?」
――「まさにコレじゃん!」
Hくん「うおぉぉ~、マジか! こんなウマい話が!!」
トイレついでにA先輩の様子を見に行くと、順調に出玉を伸ばし3箱目が完成したところだった。そしてその隣の台も2箱をカチ盛っている! この日のイベントは想像を遥かに超える大盤振る舞いだった。
祝宴。
景品交換所から出て来たHくんは札束をポケットに捻じ込むと、おもむろに駅へ向かって走り出した。それを笑いながら追いかけるA先輩と俺。
A先輩「待てオラァ~!」
――「盗賊ゴルァ~!!」
Hくん「ふはは! 1度やってみたかった」
A先輩「ほら、もう飲み行こ!」
――「いくらになったの?」
Hくん「20万ちょっとだね」
結果、全員が高設定らしき台を粘り倒し合わせ万枚を達成!
A先輩「企画リニューアル後1発目で合わせ万枚とは!」
――「まさか全員がツモれるとは」
Hくん「まず飲み行こう。もう腹減ったから」
――「いや、あなたたち終電なくなるでしょ?」
Hくん「終電? なにそれ知らね~」
A先輩「ラッシー、ビデボがない街なんてないさ」
――「いやいや、キメ顔で名言っぽく言わないでください」
A先輩「今日はラッシーのお陰だから、なんでも奢るよ」
――「帰る気ゼロじゃないっすか! ありがとうございます」
仲間として認められた気がして、それが嬉しかった。そして流れるようにホール近くの居酒屋へ。
U氏「シラフの内にページの構成決めておきたいんだけど」
Hくん「あ~、もう俺がテキトーにやっとくから!」
U氏「浮かれやがって! まず今回から加入したラッシーに説明すっから」
――「俺っすか? はい」
U氏「会話文はHくんが書くから。ラッシーとAさんはその周りのキャプションだけね」
――「了解です」
U氏「メールや機種を選んだ理由とか、実戦中に思ったこと・気付いたことを書いて」
――「分かりました」
U氏「ギャラは3ページ分を3人で分け合うことになるけど、会話文をたくさん書くHくんの取り分が多めになるね」
――「もちろん構いません」
終日実戦+執筆なので、拘束時間は1.5日~2日ほど。ギャラは大人の日給にも満たないが、どうせ仕事でなくてもパチスロは打つのだ。「誌面に露出できる」という事実さえあれば、ギャラなんていくらでもいい。
U氏「Hくんは会話文のイメージできてんの?」
Hくん「もちろん。もう構想はバッチリ」
実戦モノの企画なので、会話文は事実に沿って書けばいい。しかし、多少の味付けは必要だ。淡々と事実だけを文章にしてもつまらない。その味付け・アレンジに書き手のセンスが必要となる。Hくんはそのセンスがズバ抜けており、今なお攻略誌「H」において「会話文といえばHくん」と言われている。おそらく漫才やコントの台本を書かせても上手いだろう。
Hくん「まあ、任せてよ。鮮烈なデビューにしてやるから」
――「お…うん、ありがとう」
A先輩「さあ、早く食ってキャバクラ行きましょ!」
――「いやアンタ、帰る気微塵もないな!」
A先輩「知らない街で知らない(夜の)蝶を獲る。一期一会だよ、ラッシー」
――「出た、蝶々収集家!!」
こうして宴は朝方まで続き、勝ち分の大半が夜の街に溶けていった。ほぼAさんの奢りだけど…。
衝撃的なキャラ変。
2週間後――
心待ちにしていた大きな茶封筒が届いた。我々ライター陣には、こうして発売直前の雑誌が送られてくる。この上ない結果を叩き出した誌面企画「M」。さて、Hくんの手でどんな風にアレンジされているだろう。俺はワクワクしながらページを捲った。
ラッシー「YO,YO! 俺は山形生まれ スモモ農家育ち、悪そうなスモモはだいたいジャムに…」
――「は???」
ゴリッゴリのラッパーキャラになってるぅぅぅ~!!!
当時の私はたしかにB-BOYだった。18の頃からHIPHOPやR&Bにかぶれ、たまにDJもしていたが…
ラップなんてやったことねえ!!
要するに企画ページの登場人物としてキャラが薄すぎたのだろう。そしてHくんなりにアレンジした結果、ラッパーキャラになったと…。
しかし…悔しいかなちょっと面白い。
少々不本意ではあるものの、まあ自分で書くわけではないし。ラッパーキャラはこの企画の中だけだから、放置しても問題はないだろう。
そう思ったんだ、このときは――。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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