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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2018.07.24
『キズネタ』~師匠・ハマの虎~
安物の腕時計に視線を落とすと、13時を少し回ったところだった。大きなテーブルの上には資料や雑誌が散乱しており、それらを男たちが囲んでいる。
編集長「じゃあ、文句ないならコレで終わるよ?」
編集A「大丈夫です」
編集B「さて、また今月も頑張りますか」
編集C「まずはデータ採りだな」
――「………」
この日の日程は送本作業と台割会議で、今まさに台割会議が終了したところだ。
送本作業 …完成した雑誌をライターや取材協力ホールに送る作業。
台割会議 …主にページの割り振りを決める会議。
台割会議では機種・企画のページ数や掲載位置、執筆するライターなどを決定する。 俺は入社から2冊を作り、3か月目に入ろうとしていた。
そんな半人前の俺に与えられた新たな担当機種が――
▲4号機「ダンスナイト」(IGT)
2004年の春にIGTが放ったA+AR機。現代風の言いかたをすればボーナス+ART機だ。
ボーナスはBIG2種類とREGの計3種類で、ARTも性能の異なる2種類を搭載。基本のART「ゴージャスタイム(GT)」中は5枚ベルの押し順を、上位ART「スーパーゴージャスタイム(SGT)」中は15枚ベルの押し順をナビしてくれる。1Gあたりの純増はGTが+1.1枚で、SGTが+6.2枚だ。GTへは主にボーナス終了時の抽選により突入。そしてGT中にボーナスを引くと、残りGTゲーム数+50GがSGTへと昇格する |
ボーナスとGTが絡めば強力な瞬発力を発揮するマシンだった。
しかし、カラー液晶が当たり前の時代なのに、搭載していたのはモノクロ液晶。さらに液晶演出はバブル時代がモチーフで、ジュリ扇を持った女の子が主人公である。盛大にスベったことは言うまでもない。
俺は頭を抱えた。
編集部に入り、少しずつ立ち回りが上手くなっている実感はある。しかしながら、それは「パチスロ北斗の拳」や「吉宗」といったメイン機種や、「サンダーバード3」といった甘い機種を打っているからにすぎない。それらで勝てるホールなら山ほどあるが、「ダンスナイトで勝てそうなホール」となると心当たりはなかった。当時は今よりもマイナー機に対する風当たりが厳しかったように思う。
そこで俺は思いついた。
「そうだ! 虎さんに相談しよう!」
★編集部最強の男
虎さんは、同じ班の先輩にあたる。肩書きはデスクで「進行」を任されている。進行とは「どのページをいつまでに作るか」といった、誌面作りのスケジュール管理者のこと。歳は俺より6つほど上だ。
――「虎さ~ん、ちょっと相談が…」
虎さん「はい…はい、で3折の入稿が28日。ええ、大丈夫です…」
――「…(デザイン会社に電話中だったか)」
虎さん「2折は解析が入ってくるので、限界まで引っ張りたいんです…ええ」
――「…(電話が終わるまで待とう)」
虎さん「ラッシー、どうした?」
――「え?」
虎さん「今、俺に話しかけなかった?」
――「え? え?」
俺は困惑した。たしかに話しかけたが…
――「ええ。でも電話中ですよね?」
虎さん「大丈夫。誰とも電話してないから」
――「??? 今、電話してましたよね?」
虎さん「ああ、デザイン会社への電話のシミュレーションしてた」
――「!? (…何じゃそら!!)」
虎さんはデザイン会社に電話する前、必ずシミュレーションをするのである! あたかも本当に電話しているかのように。忠実に、正確に――。
そう、虎さんは天然だった。それがよく分かる逸話もたくさんあるが、長くなるので別の機会に語るとしよう。
されどパチスロの腕は確かで、攻略誌「H」の歴史の中でも1・2を争うほどの勝ち組だった。編集部員として働きつつ、パチスロでも毎月50万以上をコンスタントに稼ぐ。月間収支が+100万を超えることも少なくない。ちなみに虎さんとパチスロの腕で1・2を争ったもう1人の人物は、虎さんが師と仰ぐEさんである。俺が編集部に入ったとき、すでにEさんは編集を辞めていたので、現役の編集では虎さんが1番の勝ち組だった。
――「いやあの…ダンスナイトに設定を使いそうな店、どこかないかなと思いまして」
虎さん「う~ん、マイナー機にも使う店か…とりあえず設置店を検索してみて」
――「分かりました」
ネットで行ける範囲の設置店をピックアップし、虎さんに見せると……
虎さん「お、M店あるじゃん!」
――「良い店なんですか?」
虎さん「新台のデータ採りでたまに行くよ。新台にも割と使ってくれるんだ」
――「ありがとうございます! さっそく明日行ってきます」
虎さん「明日? じゃあ俺も付き合うわ」
――「えっ!? 一緒にダンスナイトを?」
虎さん「これから1週間くらいは会社来ないで稼動する予定だったけど、明日は特にイベントもないし」
――「いや~、付き合わせるのは申し訳ないですから…」
虎さん「いやほら、新台が出たら1度は打っておきたいじゃん?」
――「まあ、そうですけど」
虎さん「明日なら、まだ新装2日目だから設定入りそうだし」
――「マジすか…甘えちゃっていいんですか?」
虎さん「いいよ! じゃあ並び順入場だし、9時にS駅集合にしよう」
――「ありがとうございます! よろしくお願いします!!」
★キズネタ発覚!
翌日――
虎さん「おうラッシー、こっちこっち」
――「おはようございます!」
約束の10分前だが、虎さんのほうが先に着いていた。ややたれ目で、いつも少しニコニしている。のんびり屋に見えるが、めったに遅刻をせず、きっちりと時間通りに仕事をこなす。出会ったばかりの虎さんの印象は、まさにこんな感じだった。
虎さん「お、5人並んでるな」
――「え!? ダンスナイト4台ですよね?」
虎さん「大丈夫だよ。仮に取られても1台くらいでしょ。あとの客は北斗狙いだ」
――「まだ解析が出ていないマイナー機なんて、誰も狙わないか」
虎さん「おそらく連中も新台に設定を使うってのは知ってるけど、それでも北斗を打ちたいハズ」
――「ホントにどこの店も北斗、北斗ですね」
虎さん「まあ、おかげでゆっくり新台が打てるから」
1時間後、いざ開店――
早歩きでダンスナイトのシマへ向かうと、虎さんの言う通り先客は1人だけだった。ほかの客は北斗・吉宗に流れたらしい。
虎さん「よし、並びで無事に取れたな」
――「ほんと無理しないでくださいよ」
虎さん「大丈夫だよ、何年この仕事してると思ってんだよ」
――「すみません」
虎さん「とりあえず目標は5000Gだ」
――「はい!」
5000G未満は実戦データとして認めない。前にも書いたが、当時の編集部はそういうルールだった。
虎さん「それに初打ちってワクワクするじゃん。どんな台でもね」
――「そう言っていただけると救われます」
虎さん「さて、はじめるとするか」
――「俺は取材で1度触ってますが、何か知りたいことあります?」
虎さん「いや、大丈夫。打ちながら探っていくから」
虎さんの目はキラキラと輝いていた。対峙しているのがマイナー機「ダンスナイト」であるにもかかわらず。
15分後――
ふと気付くと、虎さんがしきりに首を傾げていた。
――「どうかしました?」
虎さん「いやな、やたら無意味に左リールがスベるんだよ」
――「そうですね。でも小役が揃うわけでもなく」
虎さん「まあ、たまたま押し順ベルのこぼしでスベるテーブルが選ばれてるだけの可能性はあるけど」
――「ええ、押す位置によって1コマ単位で制御が違う可能性もありますし」
虎さん「ちょっとさ、スベったときにハサミ打ちしてみ?」
――「え?」
虎さん「一応、扇(スイカ)の可能性もあるから右リール青7狙いで」
――「は、はぁ…」
スベるたび順押しで扇を狙っているが、扇はたまにしか揃わない。ほとんど何の小役も揃わないのだ。この機種は高確率で押し順ベル(5枚or15枚)成立しているため、そのこぼしの一部でスベっていると予想できるが……。
左リールに青7・チェリー・青7を狙っていると、ほどなく青7が下段に落ち、扇が上段までスベってきた。
――「これですね」
虎さん「そう、そこで右リールに青7を狙って」
――「扇がテンパイしたら、中リール扇狙いですね」
虎さん「そう。扇非テンパイなら、中リール適当打ちね」
言われた通りに実践すると、ベル-ベル-チェリーが一直線に揃った。SGT中にナビされる15枚ベルが入賞したのである。
虎さん「やっぱり」
――「ん? どうしたんですか?」
虎さん「まだ確証がないから、そのままその手順続けて」
――「はぁ…」
すると、次のスベリ時も15枚ベルが入賞。その次はベル-ベル-ベルが揃って5枚の払い出し。その次も15枚ベルが入賞し……
――「え!? コレって…」
虎さん「だよな、スベったときにハサミ打ちすると5枚か15枚取れるよな?」
――「いや、そんなバカな!」
虎さん「これ、マジならかなりの攻略ネタになるぞ」
――「コイン持ち跳ね上がるじゃないですか!」
5枚ベル・15枚ベルの左→右→中が成立した際は、左リールがスベリやすい!? いやいや、常識的に考えてあり得ない。そんなバカな作りなら、誰だって簡単にコイン持ちを大幅にアップさせられる。
虎さん「ダンスナイトの担当ライターって誰?」
――「Hさんです。今日、地元のホールで打ってるハズです」
虎さん「スグに電話して確認させて」
――「は、はい!」
俺はスグにホールを飛び出し、担当ライターのH氏に電話した。
H氏「もしもし?」
――「五十嵐です。今、ダンスナイト打ってます?」
H氏「無事に取れて打ってるよ。昨日も打ってたし」
――「あ、じゃあハサミ打ちご存知ですよね?」
H氏「は? ハサミ打ち? 何それ?」
――「えっ…!? 通常時のチェリー落とし小役狙いをしてると、左リールが頻繁にスベるじゃないですか」
H氏「お、おう。スベるね」
――「そのスベったときにハサミ打ちすると、ほぼ5枚か15枚のベルが揃うんです」
H氏「は? んなバカな。そんなことあるわけ…」
――「いま虎さんと並びで打ってまして、間違いなさそうなんですが」
H氏「虎さんと? じゃ、じゃあ試してみるよ」
――「お願いします」
電話を切り、ダンスナイトのシマへ戻ると…。
虎さん「おい、ラッシー! ヤベーぞ! これマジでキズネタだわ!」
虎さんは俺が電話している間も検証を続けていたらしく、すでにキズネタと確信している様子だ。
――「マジすか!? Hさんまだ気付いてませんでしたよ」
虎さん「ったく、だからダメなんだよHは」
――「とりあえずHさんにも検証してもらってます」
虎さん「おう! あと逆にスベらないときは順押しのほうがいいな」
――「ハサミの押し順のときにスベりやすいと仮定すれば…」
虎さん「逆にスベらないとハサミ以外の押し順の可能性が高い」
――「なるほどっスね!」
虎さん「あとは店から対策される前にブッこ抜こうぜ!」
――「はい! いっぱい勝ちましょう!!」
結局、この日の収支は虎さんが+4万円。俺は-2万円だった。
虎さん「まあ、コイン持ちがアップするだけで増えるわけじゃないからな」
――「せっかくネタ見つけたのに…」
虎さん「ボーナス引かないとARにも入らないからな」
――「俺の台、完全に設定1でしたもんね」
虎さん「だから途中で台移動しろって言ったのに」
――「ネタ発覚で、つい舞い上がっちゃいまして」
虎さん「はは、今日は奢るから何でも好きなもん食えよ」
――「うう…データ採りに付き合わせたうえにネタまで見つけていただいて、さらにご飯まで奢っていただけるとは」
虎さん「いいんだよ、俺も久々にこんなネタ見つけて楽しかったから」
――「ありがとうございます!!」
その後の解析により左→右→中の押し順5枚ベル・15枚ベル成立時は、左リールがスベりやすいと立証された。
その攻略効果は…
1000円(50枚)あたりのゲーム数
★適当打ち…28.0G
★小役狙い…28.7G
★攻略打ち…32.4G
小役狙いと比べても+4.4Gの効果!
たった千円でもこれだけの差が生じるのだ。終日実践した際の恩恵は、誰しも容易に想像できるだろう。かくして虎さんが見つけたこのネタは、俺が作ったページによって一気に知られることとなった。
ダンスナイトは決して歴史に残るような機種ではない。しかしこのキズネタ発覚で、俺にとっては忘れ難い機種となった。
これ以降、俺はプライベートでも虎さんと行動をともにするようになる。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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