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元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~
2024.12.12
クソ台じゃないよ! ちょっとしくじっただけ! 元ホール店長が語る「パイレーツワールド(大都技研)」のしくじり物語。
元・店長カタギリ 元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~
検索サイトで『演出』と入力すると「物事を表現するときに、それを効果的に見せること。機械などの動作の装飾的な動きも演出と呼ばれる」と書かれております。
なるほど、確かにパチンコは液晶画面だけでなく役モノの発光や落下、振動、効果音、エアーの噴出など盛りだくさん。パチスロもパチンコ程ではないにせよ実に様々な演出効果が用いられていますね。実際のところ、機種の評価はこの演出の出来栄えによって大きく左右っされております。
私の好きな演出はパチスロの通常時だと筐体振動やリールロックです。それらがキッチリ信頼度アップする激アツ演出として搭載されている機種であれば文句無し。液晶非搭載のノーマル機だと違和感演出や特殊スタート音が大好物。それらがほぼボーナス確定のレア演出であれば文句なし、といった感じです。
今回ご紹介する『しくじり機種』には評価されるべき点を多く含みつつも、それらを上回る演出面での致命的なマイナスポイントを抱えた結果、多くのユーザーから早々に見切られてしまった非常にもったいない台のご紹介となります。
★今回のしくじり機種は『パイレーツワールド(大都技研)』
▲パイレーツワールド(大都技研)
本機の導入は2012年6月。前年に『秘宝伝~封じられた女神~』と『押忍! 番長2』をリリース、いずれもヒット機種となった大都技研さんが放った新シリーズです。海賊団の船長である主人公のアークとその仲間達、そして伝説の海の死神ジョリー・ロジャーの描かれたパネルからは番長や秘宝伝に並ぶメーカーの代名詞となり得る期待を感じさせられますね。各キャラクターに起用された声優陣も非常に豪華で、大ヒットを予感させる第一印象ではあったのですが……。
しくじり.1:ストレス度の高い通常時
パイレーツさんのゲーム性は通常時のレア役で内部状態の移行、ボーナス、ARTをそれぞれ抽選する仕組みですが、ボーナスは最低設定だと約800分の1とかなり重め。そのため初当りのメインとなるARTでどこまでセットストック獲得できるか、そして継続抽選を突破できるかが出玉を伸ばす鍵となります。
さて、それではそこに至る経緯である通常時の演出の出来映えやいかに。
……結論から言うと、この通常時が非常によろしくありません。液晶画面左下に表示される『コンパス』の回転速度や光の強さでユーザーのARTへの期待感を煽ってくるのですが、いかにもアツそうな回転がアッサリとハズれるなんてことは序の口。
キャラクターが激アツと喋ったのにハズレ、初見ではどう考えてもアツそうなデンジャー柄もガセ前兆でも当たり前のように出現、挙句の果てには中段チェリーが出現してもボーナスもARTも非当選など、期待させるだけさせておいてハイ残念、みたいなケースが頻発してしまうのです。
パチンコ・パチスロの演出においてはメーカー毎の違いはあるにせよ、概ね当選期待度の高低差に暗黙のルールが存在しますが、パイレーツさんはそんな秩序にドロップキック。通常時に期待感を持たせようとして中身の伴わない激アツ演出を頻出させた結果、ストレス増産マシンに仕上がってしまいました。
通常時に何も起こらない台は低評価となりますが、何かが起こり過ぎても逆効果。パイレーツさんがリリースされてから12年以上の時が流れていますが、今なおパチンコ・パチスロが抱える『通常時の演出バランス』における代表的な問題提起マシンとなったのです。
しくじり.2:結局、番長2で良いじゃない
ホールでの使用頻度が最も高い最低設定におけるパイレーツさんの出玉率は96.7%です。
この数値は番長2の97.4%や、本機リリースの前月に導入された『コードギアス反逆のルルーシュ』の97.0%、さらにはその年の3月にリリースされ、ホール導入後に非常に辛いと評価された初代モンハンの96.8%をも下回る激辛仕様でした。
そう、激アツがハズれまくる台と評価されたパイレーツさんのもう一つの顔は激辛マシンだったのです。
通常時に溜まるストレスのもう一つの理由は実にシンプルなキツいスペックだったからなのですから、そりゃ人気も伸びませんわ。そもそも番長2がまだまだ人気を博していたタイミングでのリリース、さらには40,000台以上の強気な販売台数ではホールも力を入れる理由も余力も乏しい状況。
お付き合いで多台数を購入したホールが、回収を急いで激辛マシンにも関わらず低設定運用フェスティバルを開催したのも、本機が短命に終わった要因のひとつでしょうね。
★元店長カタギリとパイレーツワールド
「パイレーツワールドを再導入してください」
事務所のデスクに置かれたアンケート用紙にボールペンで殴り書きされたメッセージを目にした私は、この文章を書いた人物がアンケート回収箱に入れた時の表情を想像していました。半笑いか、それとも爆笑か。いずれにしてもギャグセンスはある奴だなと感心しておりました。
既に撤去されて2年近くの時が流れ「ああ、そんな台もあったよね」と誰もが中島みゆきの時代みたいな気持ちになっていた頃の出来事です。
ところがこの紙をデスクに置いた張本人の系列店主任の表情はいたって大真面目。営業部長に向かって「お客様のリクエストにお応えしたいです、もういちどパイレーツワールドを入れましょう!」と、無所属代表みたいなテンションでシャウトしたのです。
もちろん私の心の中では「回る時代、繰り返す悲しみ、稼働なし」と中島みゆきが時代のパチスロアレンジラップバージョンを熱唱しておりました。しかしながら営業部長は「まあ良いよ、安いから」と大統領のような表情を浮かべつつ、主任およびギャグセンス満点客からのリクエストを快諾。
こうしてパイレーツちゃんは系列店にまさかの出戻りが確定してしまったのです。さあ皆さん、もうオチは読めましたね?
再導入から1週間。お客様からのリクエスト台、と書かれた魅力に欠けるメッセージの書かれた黄色いフダのついたパイレーツさんは、導入から7日間連続稼働ゼロの偉業を達成。私は系列店の主任に「リクエストした人物は速やかに名乗り出るよう手配書を作成しようか?」と真心を込めて提案しましたが、石みたいな顔色をした主任からは何の返答もありませんでした。
お客様からのリクエスト導入、という表向きの理由で実際は担当者が適当な中古台を導入するのはよくある話。それでも本当にリクエスト導入して過ちを繰り返す店もあるんだよ、という素晴らしいお話でした。めでたし、めでたし。
★まとめ~パイレーツさんから得た教訓~
通常時の演出が面白ければ稼働も上がる。稼働が上がれば店も調整を頑張ってユーザーは高設定を打てるチャンスも増える。高設定が入るとより多くのユーザーが遊技するようになる。
だからこそパチスロの通常時、すなわちゲームフローにおける「メダルが減少する時間」をどれだけ楽しませるかが大事なのです。メーカーの開発の皆さんも当然、その点に注力されているはず。それでも演出バランスが評価されない機種がリリースされるということは、通常時の作り込みの難易度がいかに高いかを思い知らされます。
高信頼度に見える演出がアッサリとハズれる台は駄作に終わる。その事実から演出バランスの重要性を証明してくれたパイレーツワールド。一部のマニアには愛された点も含めて『愛すべき偉大なしくじり機種』と私は秘かに心のアンケート用紙にボールペンで殴り書きしておきます。
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- 元・店長カタギリ
- 代表作:しくじり店長
シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。
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