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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2024.01.30
依頼からの新発見~5号機ゲッターマウス①~
――「クゥ~、やっぱダメか~」
AT終了後、逆転パターンが無いことを確認してクレジットを落とした。この日は近所のホールの旧特定日で、俺は朝イチから『バジリスク~甲賀忍法帖~絆』を狙っていた。
腕時計に目をやると、まだ14時前だった。片手で握れる程度の持ち玉をドル箱に入れ、椅子に座ったままパチスロフロアを見渡した。稼働率はかなり高い。数少ない空き台の上には、ヤメられて然りのデータばかりが並んでいる。
勝負あった。
――「……飯食って帰るか」
開店から約5時間で14K負け。AT機を打った割には遊べたとも言える。早めに帰って明日の稼働に備えよう。そう思い立ち上がると、ポケットでスマホが震えていることに気が付いた。すかさず取り出し液晶を確認すると……
――「LINEか…ん?」
LINEを開くと珍しい名前が表示されていた。同じ攻略誌「H」において、動画を中心に活躍している演者Cである。俺はメダルを流してもらい、パチスロフロアの端にあるベンチへと腰掛けた。
演者C『ラッシーさん、いま大丈夫スか?』
――『大丈夫だよ。どうしたの?』
演者C『ちょっとお願いがあるんスけど』
――『なに?』
演者C『ゲッタマについて教えてほしいんス』
――『構わんけど何?』
演者C『左リールのネズミ狙いを教えてほしいんス』
――『知らんな~。なんでネズミ狙いなの?』
演者C『ちょっと長くなるんスけど…』
ゲッタマのラクな打ち方は、あの「赤7チェリー落し」で完成した…と思う。しかし、まだほかの楽しみ方があるのかもしれない。俺はワクワクしながらCからのレスを待った。
Cからの依頼。
Cの話を要約すればこうだ。Cは4号機の初代ゲッタマが好きだったらしい。しかし、当時はパチスロを始めたばかりで、あまり記憶に残っていないそうな。1つだけ覚えているのは、左リールネズミ狙いで打っていたこと。
当時と同じように左リールにネズミを狙って打ちたいが、どの雑誌にもサイトにも載っていない。それで俺を頼ってきたというわけだ。
――『なるほど。興味はあるな』
演者C『余裕があったら調べていただけると』
――『分かった。急ぎ?』
演者C『5日後に収録があるんで、そこで打ちたいなと』
――『猶予5日か』
立ち上がってゲッタマのシマを確認すると、2台だけ空いているのが見えた。当然、負けるリスクはあるものの、まだホールにいられる口実ができたことに少しだけ安堵した。
――『ヒマだから今から調べるよ』
演者C『あざっす! ムリしない程度で』
――『はいよ。まあ、2~3日待ってて』
演者C『お願いします』
演者C『ゲッチュー演出発生時だけ狙う形でもいいんで』
ゲッチュー演出発生時はチェリー成立の可能性がナイため、チェリーが無いところを狙っても構わない。
――「は~い、そこ含め調べときまーす」
演者C『あざす! では!』
LINEを閉じると、すぐさまゲッタマを確保した。
Cは一応後輩にあたるが同い年だ。4号機の初代ゲッタマ世代ではナイが、当時のホールには古い機種がずっと残っていることも珍しくなく、Cの〝行きつけ〟には残っていたのだろう。
なにより興味深いのは「当時、ネズミ狙いで打っていた」という証言だ。あのアクロスのことだ。オールドユーザーをないがしろにしてリメイクすることなど考えられない。ならば、ネズミ狙いも面白いに決まっている。
俺は興奮を抑えつつ、貯玉が入った会員カードをサンドへと流し込んだ。
分かりやすい法則。
左リールのネズミ図柄は1箇所のみ。スマホで検索しても4号機ゲッタマのリール配列は分からなかったが、とりあえず5号機の今作はココを狙う以外にない。 あとはネズミ図柄をどこに狙うかだが……
――「なんだ、中・下段に狙えば普通にチェリー引き込めんじゃん」
〝ゲッチュー演出発生時〟に限定されるとサンプル数が激減し、調べるのにも時間が掛かる。対して常時実践できるとあれば簡単だ。まずはネズミを中・下段に狙ってみることに。すると、ほどなく……
――「ほう、なかなか分かりやすい」
目押しが正確なら、ハズレ目は下段ネズミから形だけ。いたずらにスベったりすることはナイ。そしてスイカ成立時の制御も単純。
スイカが揃う可能性があるのは、スベってスイカが下段に止まった場合のみ。要するに最も頻繁に停止する下段ネズミなら、中段にスイカがあるにもかかわらずスイカを狙う必要がナイ。スイカの目押し頻度は極めて低いと言っていい。
――「なるほど。ネズミ狙いもハナビの小役狙いより目押し頻度低いわけだな」
ラクさは赤7チェリー落しに匹敵しそうだ。となると重要なのは〝面白さ〟だ。〝分かりやすさ〟と言い換えてもいい。赤7チェリー落しでは美しいリーチ目を拝めたし、ネズミBIG確定の1確もあった。ネズミ狙いはどうか?
しばらく順押しとハサミ打ちを繰り返していると……
――「あれ? これハサミ打ちならリーチ目法則簡単じゃない!?」
重要なのは最も出現頻度が高い下段ネズミ停止時だ。その際にハサミ打ちすると、右リールにシンプルな法則があることに気が付いた。
――「右リール中段めっちゃ大事じゃん」
ハズレ時の右リール中段にリプレイが止まることはナイ。同じくオレンジもほとんど止まらないが、上段がネズミの場合、つまりフェイク図柄的な役割であるジローが上段に止まった場合のみオレンジが停止する。
要約すれば以下の通りだ。
右リール中段がリプレイ、もしくは上段がネズミじゃないオレンジなら2確なのでは!? その後、検証を続けると予告音が鳴り…
――「キタ! ゲッチュー演出」
慎重にネズミを中・下段に狙うと、ネズミはビシッと下段に止まり、同時にリール上部のランプではスイカ成立を示すサブローが点灯した!
――「い、1確ぅ!! ぎ、ぎんもじいい~」
記述の通りスイカ成立時は必ずネズミが枠外までスベり、スイカが下段に停止する。それを否定したネズミ下段停止は、演出絡みで1確になるというわけだ。が、ここで喜んではいけない。呼吸を整え右リールを止めると…
――「やっぱり!!」
右リール中段にリプレイが停止しているではナイか!! ハズレ目では絶対に止まらなかった右リール中段リプレイが、このボーナスが確定している状況で止まった。やはりリーチ目で間違いないらしい。
――「なんて美しい法則なんだ」
くっ…さすがはアクロス! 4号機の初代ゲッタマは分からないけど、しっかりネズミ周りにも美しい法則を敷き詰めていやがる。Cからの依頼がなかったら、発見が遅くなっていたかもしれない。
Cに感謝しつつ中リールを止めると…
――「ま、マジか!!」
中段ラインでスイカ・リプレイ・リプレイの1枚役が入賞したではないか!!
――「はぁ~、なるほど! 1枚役であのリーチ目を形成したわけね」
素晴らしい! 素晴らしいではないかネズミ狙い!! これは探り甲斐がある。俺は負けていることもすっかり忘れ、新たな発見に高揚していた。
衝撃の裏切り。
数時間後―――
――「はぁはぁ…ヤベエ、ネズミ狙いめっちゃオモロい!」
俺はすっかりネズミ狙いの虜になっていた。なにより気に入ったのは〝2確の気持ちよさ〟だ。ハサミ打ちをしていると、先述した左リール下段ネズミ⇒右リール中段リプレイ or 上段ジロー以外の中段オレンジという2確目が頻出するのである!
ゲッチュー演出発生時だけでなく、演出ナシでいきなり2確目が降臨することも珍しくない。その瞬間が堪らない! また、2確目出現が1枚役入賞時とも限らない。払い出しナシでも本当にポロリと突然現れるのである。
――「ここはハサミ打ちでキマりだな」
きっとCも喜んでくれるハズだ。もちろん編集部にも共有し、さっそく誌面とケータイサイトにも共有しよう。そんなことを考えていると……
――「おわっ! なんだコレ!?」
ネズミ下段からオレンジが小Vの形になって8枚の払い出し! いや待て! 入賞ラインはプレーンな5ラインのハズ。小Vなど入賞ラインに無いハズだが?
――「あ~、なるほど!」
ネズミ・オレンジ・オレンジの一直線揃いで8枚らしい。これはボーナス成立時(もしくは成立後)のみ制御が変わるオレンジBということか。リーチ目の見逃がしはナイはずなので、おそらくオレンジB同時当選なのだろう。
――「ってことはつまり…」
1枚掛けし、あえてボーナス判別を行わず全リールにネズミを狙った。
――「オレンジ同時当選はネズミBIG確定だもんね」
ほかの箇所を狙っていれば、チェリーとオレンジの複合入賞のような形で察知できるオレンジB同時当選。それもそれで気持ちイイが、このネズミ・オレンジ・オレンジ一直線の意外性もまた気持ちイイ。
――「サイコーじゃんか、ネズミ狙い」
早く帰宅して、このネズミ狙いをエクセルにまとめたい。けれど、もう手を止められない! どこからどう見ても高設定ではナイのだが、もう手を止めることなど不可能だった。
――「反復だから。あとは間違いがないか反復を繰り返す」
そう自分に言い聞かせてプレイを続け、6時間ほどが経過した頃――
――「えっ???」
ネズミが枠下までスベり、下段スイカの形から中段にオレンジが揃った! 通常、オレンジはネズミ下段かBAR上段の形から揃う。
――「ちょ、ちょっと待って。どういうこと?」
記述の通り、オレンジ同時当選はネズミBIG確定だ。なのに、ネズミは枠外へと蹴られている。REGもネズミ・ネズミ・BARで揃えられるため、普通に考えれば左リールにネズミを残すハズだ。
つまり赤7BIGの可能性が高い。
これまでネズミBIG成立時(もしくは成立後)のオレンジBでだけ制御が変わると思っていたが、その認識は誤りだったのかもしれない。赤7BIG成立後のオレンジBでも制御が変わるということか!
認めたくはナイが、赤7BIGの成立ゲームを見落としたのだろう。まだ知らないリーチ目を見逃がし、このゲームでオレンジBを引いた。ゆえに成立後の制御をとった。そう考えるしかあるまい。
――「はぁ~、勉強になるな~」
まだまだ奥が深そうだ。そう思いながら1枚掛けでボーナス判別を行うと…
――「は? はあぁぁぁあ???」
左リールの赤7がズルっとスベって逃げていき、中段にネズミ図柄が停止。つまりネズミBIG確定!!
――「ちょ、どどど…どういうこと?」
▲このネズミ・オレンジ・オレンジの形なら理解できる。左リールでネズミを枠内に残しつつオレンジが揃っているのだから。
しかし、これは話が違う! ネズミを枠外に蹴ってオレンジが揃ったのにネズミBIGなんて! 当然、目押しミスも疑ったが、ミスした感触は無かった。確実に中・下段にネズミを押した自信がある。
――「いや、これってたしか……」
瞬時に脳が回転率を上げたのが分かった。
リール制御が単純になって久しい5号機時代。すっかり使われなくなり忘れかけていた〝リール制御のとあるルール〟が1つ浮かんだ。
つづく
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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