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パチスロワイルドサイド-脇役という生き方-
2023.10.24
遠隔疑惑ぬぐえず!?~サンダーVリボルト③~
▲5号機「サンダーVリボルト」(アクロス)
前回までのあらすじ
ヒラ日(非特定日)でも高設定を使う隠れた優良店で、朝イチからサンダーVリボルトを打つラッシー。しかし、この店は遠隔の噂が流れる〝曰く付き店舗〟だった。序盤はREGに苦しむも、待望のBIG連打が訪れ出玉は一気に4,000枚を突破! が、同じくサンダーVリボルト打っているライバル客は推定7,000枚に到達していた。ヒラ日に2台も高設定を使うとは考えにくい。高設定だから出ているのか、それとも…!? 急失速する恐怖と戦いながら、ライバル越えの万枚突破を目指す!
閉店までの残り時間は約6時間半。万枚ペースとは言えないが、ワンチャンなら十分にある。そう意識したのが悪かったのか、4,000枚を突破した直後からボーナス連打もハマリもないダラダラとした展開が続く。
徐々に遠のく「ノーマルタイプで万枚突破」という偉業。
言わずもがなパチスロを打つ人間に囲まれながら生きているが、知りうる限り、5号機以降のノーマルタイプで万枚を突破した人物は周りにいない。SNSや人づてに見聞きしたことはあるが、俺自身はホールで見かけたことすらない。
それほどの難易度なのだ、ノーマルタイプでの万枚は。
やはり今日も無理なのだろう。そう諦めてしまいそうになるが、不思議とそのたびリーチ目が出現し、何度も何度も「まだイケるのでは?」という気にさせてくる。その気分の浮き沈みで、気が変になりそうだ。
9,000枚でも十分な偉業。
7,000枚だって凄すぎる。
そう割り切ってしまえば気はラクだが、やはりどうしても欲が出てしまう。早くこの停滞を脱しなければ、万枚の芽が潰えてしまう! 焦りに駆られ、データを振り返る余裕もなくフルウエイトでプレイを続けるが…
4,000枚前後での停滞が、いよいよ1時間半ほど続いた頃。ふと、イヤな感覚が脳裏をよぎった。
――「ここテッペンじゃね?」
テッペン。
高設定だと確信したにもかかわらず、どれだけ粘り続けても特定の枚数を突き抜けない。この店でよく見られる挙動だ。俺と後輩ライターのKは、その〝特定の枚数〟を冗談でテッペンと呼んでいた。
「この台3,000枚テッペンだから、もう帰ろうかな」とか、「その台2,000枚テッペンだから、粘ってもムダだよ」といった具合である。
言い換えるなら出玉上限。
越えられない壁。
本来、出玉率が100%を超えていれば、回せば回すほど期待獲得枚数は増えていく。もちろん1戦1戦を切り取れば出玉を減らして実戦終了ということもあるが、長い目で見れば回すほど出玉は増えるハズである。
しかし、この店の高設定と思しきノーマルタイプは、その〝理〟をいとも簡単に崩してくる。俺もKも素人ではナイので、ちょっとやそっと下ブレが続いても気にしないが、この店はそれがあまりにも多すぎる。
「この店の台にはテッペンがあるのでは?」
きっとKと話したプロたちも同じように感じていたのだろう。彼らも膨大な実戦経験を基にクロと判断し、この店を避けるようになったというわけか…。
もちろん〝ナイ〟と信じたいが、俺の台は4,000枚テッペンなのかもしれない。
毒をも喰らう覚悟。
逃げ出したい!
今スグにでも!!
ノーマルタイプで万枚を目指せる機会は極めて稀。俺もついつい躍起になってしまったが、高設定と確信したのち2,000~3,000枚ノマれたことが、これまでにどれだけあったか。
適度に抜いたら欲を出さずに大人しく帰る。一見すると理に反するようだが、それがこの店において最も有効なヤメ時かもしれない。
しかし、俺だってライターの端くれ。こんな高設定挙動の台を捨て、カマなんか掘られてみろ。ネットに晒されバカにされても文句は言えない。
これはプライドの問題だ。仮にここから2,000枚をノマれるとしても、これだけの台を捨てて帰るわけにはいかない! 万が一、この店が〝ヤッてる〟としてもだ。やはり退くわけにはいかない!!
チラリとライバルの台を確認すると、彼も7,000枚前後で足踏みしていた。7,000枚テッペンだろうか? それでも十分羨ましいが。
そもそもヒラ日でこれだけ出玉を積んでいるのだ。仮にこの店の台にテッペンがあるとして、「夢を見させてくれてありがとう」と感謝はしても、恨む気にはなれない。
ただ、願わくば4,000枚テッペンはヤメてほしい。どうせ俺の手は閉店まで止まらない。残り5時間を出玉を減らすだけの作業にはしたくない。どうか4,000枚の壁を越えさせてはくれまいか? そう思っていると…
――「は?」
リプレイ揃い後に筐体全体が消灯し、少し間を置いて赤く点滅を始めるリール。
――「ウソ? そんな…」
わずかな静寂ののち、リールバックライトのフラッシュとともに轟く雷鳴。
――「り、り…リボルトフリーズだーーー!!!」
青春のサウンド。
リボルトフリーズはスイカ+V-BIG、もしくはリプレイ+7-BIGの一部で発生する。その発生率は設定4・5・6で約1/24,000とかなり低い。
――「マジ? リプからの発生は初めてなんだが!!?」
恐る恐る赤7を揃えると大きな雷鳴が鳴り…
台「デロデロン、デンデンデン♪ デロデロン、デンデンデン♪…」
――「クゥ~~~、キタキタキターーー!!」
既述の通りフリーズ恩恵はBIGのみ。爆裂AT機を好むユーザーからすれば物足りない恩恵だろう。そしてサンダーシリーズは言うまでもなくリーチ目マシンだ。リボルトフリーズは、そのゲーム性に反する演出とも言える。
しかし、このフリーズはリボルト打ちにとってまさに憧れ。その理由は…
台「デー、デデーデデー♪ デデーデデー♪ デデーデデーデー♪…」
――「クゥ~~~、神曲すぎんだろがよ」
リボルトフリーズからのBIG中BGMが、あまりにも良すぎるのである!!
俺がリメイク機に求めるのは「忠実な再現」。余計な新要素や新規演出・新規BGMは望んでいない。上から目線で申し訳ないが、BGMを少し変えられただけでも「なんで余計なことすんの?」と思ってしまう。
しかし、このリボルトフリーズからのBIG中BGMだけは違う! 新規BGMではあるし、サウンドも現代らしくキレイなのだが、ちゃんと〝4号機のあの頃の雰囲気〟を纏っているのである!!
「青春のアルゼサウンド」
ひと言でいうならそんな感じだ!
恩恵の大小などどうでもいい。そう思わせてくれるほどのBGMなのである。出玉の停滞により一度はひいていったアドレナリンが、再び全身を駆け巡るのが分かった。
ライバルの到達点。
リボルトフリーズからのBIG後は250GほどハマってREG。またツラい時間が始まるのかと身構えたが…
49 V-BIG
64 7-BIG
131 7-BIG
16 V-BIG
19 REG
88 V-BIG
94 V-BIG
14 V-BIG
18 REG
67 V-BIG…
再び猛烈なボーナス連打が訪れ出玉が急増! あれだけ4,000枚の壁から抜け出せずに苦しんでいたが、いとも簡単に6,000枚を突破!! リボルトでこれだけ積んだのは初めてだ。
対するライバルは、未だ7,000枚前後で足踏みを続けている。あんなに遠いと思っていた背中が、もう手の届くところまで近づいた。
いや、もう他の台と比べるのはヤメよう。やはり4,000枚テッペンなど存在せず、無事に突き抜けたのだ。ここからは自分との勝負! 万枚突破は叶わなくとも、8,000枚くらいなら到達できるハズだ。
改めて姿勢を正し、しばらく打ち続けると…
――「………(ま、マジか!?)」
突如、帰り支度を始める角台のライバル! ここまで粘ったことから、相応の根拠があったハズだ。まだ閉店までも時間があるため、展開によっては万枚到達も十分可能。それなのにヤメられるとは! その潔さが羨ましい。
もしや彼もテッペン論者で、7,000枚の壁は越えられないと判断したのでは!?
俺は越えてみせる!
俺の台こそ真正の高設定なのだから!!
怪しき魅力。
小さくため息を吐き車窓に目をやると、夜景は少しだけ滲んで見えた。
出玉は一時7,000枚に迫ったが、再びREGに偏ったり、500Gハマリを喰らったりして急激に失速。5,000枚まで落ち込みそうになった頃、小役回りの設定推測要素も軒並み中間設定以下まで低下した。
閉店までは1時間ほどあったが、欲を出さず5,000枚を下回る手前で撤退することを決めた。流した枚数は5,291枚。万枚どころか、その半分をギリギリ超えた程度とは情けない。
設定はあったと思う。
あったとは思うが…。
あの急速な吸い込みっぷりには、やはり恐怖を覚えざる得ない。ライバル視していた角台がパタリと当たらなくなったのも、俺をヤメさせた一因だった。
2台のスランプが同時に急激な下降線を描き、ついに揺らいでしまったのである。「これは本当に高設定なのか? 謎のチカラで出ていたのではないか?」と。
「2,000枚ノマれた程度でビビって草」とか思われそうだが、あの店のノーマルタイプは本当にスイッチが切り替わったように吸い込む。ジワジワ削られるなら分かる。しかし、急激に削りに来るのだ。まるで殺意を持っているかのように。それが本当に怖い。
あの店でノーマルタイプを攻め続けるのは、なかなか精神が削られる。これを毎日続けていたら、たしかに気が変になりそうだ。プロが避けるのもうなずける。
名の知れたチェーン店だ。ヤッているわけがない。そうは理解していても…。
疑惑は残ったままだが、一時7,000枚に迫る出玉を得たのも事実。やはりあの店のノーマルタイプには、どうしても惹かれてしまう。
――「はぁ~、万枚出したかった~」
ウィスパーは電車の走行音にかき消された。
次はいつあの店に行こうか。脳内で自然とそう考えていた。たとえグレーでも、ここまで楽しませてくれる店はほかにない。俺の〝あの店通い〟は、このあとも数年続くことになる。
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- ラッシー
- 代表作:パチスロワイルドサイド -脇役という生き方-
山形県出身。アルバイトでCSのパチンコ・パチスロ番組スタッフを経験し、その後、パチスロ攻略誌編集部へ。2年半ほど編集部員としての下積みを経て、23歳でライターに転身。現在は「パチスロ必勝本&DX」や「パチスロ極&Z」を中心に執筆。DVD・CS番組・無料動画などに出演しつつ、動画のディレクションや編集も担当。好きなパチスロはハナビシリーズ・ドンちゃんシリーズ、他多数。
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