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元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~
2022.07.07
『イタリアンかけそば』は求めていないのだ。4号機ジャグ『ハイパージャグラーV』のしくじり物語。
元・店長カタギリ 元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~
シンプル・イズ・ベスト。私の好きな言葉です。自身が30代の頃には魚が右から左へ延々と泳ぎ続けるだけのパチンコ『海物語』を楽しそうに打っている年配の常連客を見て「来る日も来る日も、こんな単純な台を打ち続けられるなあ」と不思議な気持ちで眺めていたものですが、いざ自身が当時の常連さん達に近い年齢となってしまった今ではよくわかりますよ、彼らの気持ちが。
とにかく疲れてしまうのです、昨今の派手な台が。ヘソ入賞と同時にポキューン、変動開始と同時にドギューン、図柄がテンパイしたと同時に役物がドカーン、ボタンを押したらカットインがズキューン。DA PUMPみたいなゴキゲンな展開が3分半ぐらい続いて大当りを確信していたのに、最終カットインが緑で急に雲行きが怪しくなって、最終的に画面上には『434』でフィニッシュ。クラブにパリピが大集合、大盛り上がりの末にラストはお通夜。残ったのは疲労感だけです。
一方でパチスロはパチンコほど酷い煽りこそありませんが、内部仕様がとにかく複雑な台ばかり。思考能力が退化の一途を辿っている私は全くついていけません。そのため最新台に座る機会もグンと減ってしまい、ふと気が付けば座っているのはノーマルタイプばかり。高確とか内部モードなどを深く考えず、ただボーナスを1回でも多く引き当てるために信じるは自身の右手のみ、みたいな台が落ち着くのです。だって年寄りだもの。
ユーザーは自分好みの台を打つためにホールへと足を運び、メーカーはユーザーのニーズに合った台を開発する。とりわけ人気シリーズの台であれば、どうしても過去の台と同じように楽しめる台であることをメーカーに期待してホールに足を運ぶのです。しかしながら、その期待に応えられなかったらどうなってしまうのか。今回はそんなお話です。
★今回のしくじり機種:4号機ジャグシリーズ『ハイパージャグラーV』
▲ハイパージャグラーV / 2002年
1996年に導入された初代から数えて4代目のジャグラーシリーズである本機のホール導入日は2002年の4月。時代はAT機を筆頭に大量獲得機、ストック機、CT機などジャンルも多岐に渡り、ドットや液晶、はたまた大型リールや4thリールを駆使した演出面も進化の一途を辿っていました。
スペックや筐体に大きな変化の無い4代目ジャグラーである本機には過去3作(初代、ジャグV、ゴーゴー)に無い予告音やフラッシュが搭載されておりました。これまでの単純明快な告知タイプとは違う、ボーナスへの期待感を高めるチャンス予告を盛り込んだ新生ジャグラー。本機からは、そんなメーカーのチャレンジ精神が感じ取れますね。
しくじりポイント1.イタリアンかけそばじゃないのよ。
4号機のAタイプでユーザーの圧倒的支持を得たユニバーサル・アルゼ系の大量リーチ目搭載機種。レバーON時に稀に発生する予告音、各リール停止時のバックライト消灯、そして全リール停止後に発生するフラッシュ等、様々な演出と多彩な出目によってボーナスへの期待感を煽るシステムは、多くのパチスロファンを魅了させました。
ヒット機種に倣って予告音やフラッシュを搭載したハイパージャグラーにも、新規ファン獲得の意図が込められていたのでしょう。しかしながら大半のジャグラーファンにとって本シリーズに感じる魅力は「光るか、光らないか」の単純明快さでした。予告音やフラッシュの搭載は、ジャグラーにシンプルなゲーム性を求めているユーザーを困惑させてしまったのです。
例えるなら馴染みの蕎麦屋でいつもの『かけそば』を注文したのに店の大将から「今、こういうのが流行っているから!」と言われてチーズとケチャップを大量にトッピングした『イタリアンかけそば』を突きつけられたら戸惑いますよね? こういうことじゃないのにとガッカリしますよね? ジャグラーは、ユーザーにとっての『かけそば』であり、シンプルであるからこそ万人に支持されていたのです。
小役が揃わずに小役対応のフラッシュが発生すればユーザーは、「目押しミスによる取りこぼしorボーナス」と判断して次ゲームに期待を寄せる瞬間になります。ですが、本機は完全告知機、かつ告知発生タイミングは成立ゲームでの後告知のみ。
つまり小役対応フラッシュが発生して告知ランプ非点灯の場合「小役の取りこぼし」が確定してしまいます。これによって年配層を中心としたユーザーには「光ったのに入ってない、何これ」の不満に、ある程度理解できるユーザーにも「何だ、小役取りこぼし確定か」のストレスにつながります。
そう、予告音やフラッシュはジャグラーを好んで打つユーザーには無駄なトッピングだったのです。せめて成立ゲームでの後告知だけでなく次ゲームでの先告知も搭載していれば、そう思わずにはいられません。かけそばには不要なのです、チーズやケチャップは。
しくじりポイント2.振り切り不足! どうせならフルスイングを!
人気を博した4号機Aタイプ、演出面以外のもうひとつの魅力は「ユーザーの技術介入度の高さ」にありました。
小役を取りこぼさずに打てば千円あたりの消化ゲーム数が増える、ビッグボーナス中に変則押しを駆使する(リプレイハズシ)ことで平均獲得枚数を増加させる等、4号機には5号機や6号機と異なり、ユーザーの目押しの技量によって勝率が大幅に変化する機種もありました。 フラッシュや予告音を取り入れて新たなユーザー層を取り込もうとするのであれば、いっそのことリプレイハズシの効果を絶大にする、ボーナス中のメイン小役を15枚役にして一撃大量獲得も狙えるようにする等、もっと振り切った仕様でリリースしていれば結果は違ったのかもしれません。
ナポリタンかけそばを名乗るならケチャップとチーズだけでなく麵や具材、そしてスープまでしっかりとこだわるべきでしたね。ま、それなら大半の人は普通にナポリタンを注文すると思いますけど……。
★元店長カタギリとハイパージャグラーV
私がハイパージャグラーと戯れていたホールは2022年現在でも何かと話題の『池袋北口・パーラー富士』です。
20年前は正面入り口の右側の壁ジマがパチスロコーナーで、パイパーちゃんは入店して2秒で座れる看板機種のような立ち位置でした。そう、なんだかんだとケチをつけながらも、私、大好きだったのです。似合わない流行りの化粧をして、若作りさせられている妙齢のキャバ嬢みたいなハイパージャグラーちゃんが。思わせぶりな予告音や遅れで期待させておいて、フラッシュさせつつ問答無用で取りこぼしを告げる性悪娘が。
そんなハイパージャグラーちゃんで、どうしても聞きたかったのが『無音』でした。無音を聞きたい、何ともおかしな表現ですがレバーONで始動音が鳴らない、絶句かつ悶絶の問答無用でビッグ確定となる『無音』を体感したかったのが、ハイパージャグラーを打っていた最大の動機だったのです。 無音よ、鳴れ。無音を聞かせろ。そう念じている間はやってこない。存在を忘れた頃に、ふと気を抜いた瞬間に、それは突然に訪れる。左手に確かに残るレバーONの感触。しかしながら共に常にあるべき始動音は無い。強烈な違和感が刹那、全身を駆け巡る快感へと昇華。ようやく無音を聞けた無常の喜びのあまり、私はパーラー富士の天井を見上げてパチスロの神様に感謝したのです。ああ、無上の喜びをありがとう、と。
ま、要するに私は20年前も今もやっていることは全く変わっていませんよ、というお話です。そしてパーラー富士さんも当時から現在まで一貫して『低交換率ホール』の姿勢を崩していません。他店舗より交換率が低いからこそ、遊技台を甘く運用できる。己のスタイルを崩さず、信じた道をひたすら進む。だからこそユーザーからの安心があり、信頼を得て長く営業を続けられているのでしょうね。
★まとめ ~ハイパージャグラーVの『挑戦』と『結果』~
1996年の初代リリースから四半世紀以上の年月を経た今なお、ジャグラーシリーズは一貫した完全告知機として、ホールとユーザーからの盤石の支持を得ています。
今やホールには無くてはならない台として、年配層のみならず若年層からも愛されるメイン機種としての地位を築き上げました。そこに至るまでには今回のハイパージャグラーのような『しくじり』も経てはいるのですが、それも全てはより多くのユーザーの支持を得るためにメーカーが努力した結果。決して無意味な、無駄な失敗ではありません。成長するための『変化しようする努力』と、人気を維持するために『変化させてはいけない要素の見極め』は、ヒット機種を輩出し続ける上でメーカーが強く意識すべき命題とも言えるのではないでしょうか。
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- 元・店長カタギリ
- 代表作:しくじり店長
シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。
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