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元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~
2022.04.04
『カリブショック』とは何だったのか? 期待されすぎた『ハイパー海物語inカリブ』のしくじり物語。
元・店長カタギリ 元店長カタギリのしくじり機種~歴代パチンコパチスロ事件簿~
皆様、『トゥンカロン』ってご存知ですか?
私は数週間前に職場の映え系SNS大好き娘(20歳・女子)の口から飛び出した新種のポケモンみたいなその名称に全く反応ができず、アンタはそんなことも知らんのかと酷くバカにされました。 彼女いわくトゥンカロンは大きなマカロンみたいなお菓子で、若い人なら誰でも知っているとのこと。事実、私が数日後に近所のコンビニのスイーツコーナーに老刑事のような視線を向けてみるとズラリと並んでいたのですよ、トゥンカロンが。
いや、ビックリしましたよ。つい先日まで名前すら知らなかったお菓子が有名なコンビニでガッツリ販売していたのですから。私もマカロンは好物なので試しに買ってみましたよ、モビルスーツみたいな名前のお菓子を。
ところが確かに見た目はマカロンに似ていますが肝心の味が何とも繊細さに欠けるというか、甘ったるい感じで全力中年な私の口には合いませんでした。もちろん不味い訳ではないのですが、マカロンの進化系ならもっと美味いだろうという期待が大き過ぎました。
とはいえ、トゥンカロンが若者にウケているのは事実。新商品の開発は常に流行に敏感で、なおかつ商品自体のクオリティを向上させていくのが大切なのですね。そんなことを考えながら色鮮やかな丸々とした菓子を頬張りながら考えていました。ま、トゥンカロン自体は私みたいなオッさんをターゲットにしていないであろう新商品としては大成功なのでしょう。
さて前置きがすっかり長くなりましたので、さっさと始めましょう。今回は数多のパチンコ業界人を震え上がらせた「黄色いヤツ」のご紹介です。
★絶対王者海シリーズ『ハイパー海物語inカリブ』
▲ハイパー海物語inカリブ/2007年
ホール導入日は2007年の10月。誰もが大ヒットを疑うことの無かった海物語シリーズの全盛期に、いわゆる『カリブショック』で当時の業界関係者を震撼させた悪い意味での伝説のマシンです。今回はこのカリブショックの原因について語って参ります。
……と、その前に『カリブショック』って何かしらと首を傾げる皆様のために簡単にご説明いたします。まず初代の海物語の導入は1999年。その中でも『CR海物語3R』が超メガヒット。全国のホール、どこへ行っても海物語が設置されている時代の幕開けです。
その後も2002年リリースの新海物語シリーズは総販売台数160万台、2005年の大海物語シリーズが70万台、2006年には『沖海』を含むスーパー海物語シリーズが65万台と、いずれも全国のパチンコ店にガッツリ導入されて圧倒的な稼働と知名度を誇る看板シリーズとなったのです。
そんな中で2007年にリリースされた『CRハイパー海物語INカリブ』の販売台数は37万台。
ユーザーはもちろん、ホールも海物語シリーズの最新作に大きな期待を寄せていたものの、いざ導入されてみたら炎上系ユーチューバーのような低評価の嵐。 当然、満稼働になるだろうと予想していたカリブのシマが、ガラガラになっている様子を見て、機械代金をガッツリ投資したホールのオーナーさん・高稼働を目論んで予算計画を行った店長さん、ホールからの苦情を一身に受けるメーカーの営業マンの顔がそれぞれ真っ青になった出来事、これがカリブショックです。
以降、人気シリーズの最新作が大コケした際に「カリブショックの再来だ!」と叫ぶホール関係者が続出しましたが、現在も叫んでいたら若手業界人に嫌な顔をされるので要注意です。 ま、競馬に例えるなら圧倒的な一番人気の本命馬が、まさかの大敗を喫したようなものですから騒然となりますよね。期待していた長期稼働・安定した利益貢献が得られなくなったホールが大多数ですから、しわ寄せは当然、ユーザーに跳ね返ってくる訳ですよ。ああ、困ったものですね……。
では何故カリブショックは起きてしまったのでしょう。ズバリ、大きな理由は2つです。
じくじりポイント:様々な変化に古くからのファンが困惑!
ゲージ(パチンコ台における釘の配列)が左右非対称の機種が増えてきたのが2004年、いわゆるゼロヨン基準機が登場してきた時期からだったと記憶しております。それまでのパチンコ機種は左右対称ゲージが基本だったのですが、2004年に大ヤマトや初代エヴァのような液晶画面および役物の左側にのみ釘が配列された機種が導入されて以降、ホールの新台入替前夜のシークレット業務が随分と楽になりました。釘の本数、大幅に減りましたから。
が、それは長らく続いたパチンコ台の伝統を大きく崩しました。確かに大ヤマトやエヴァといった新機種・新シリーズのパチンコであれば新鮮かつ斬新な見た目のニューフェイスとしてユーザーは受け入れるでしょう。
ところが既に人気を確立していた海物語シリーズの見た目が変化したら、さてどうでしょう。
行きつけの小料理屋の着物の似合う女将がある日突然、映画『クローズド・ノート』の初日舞台挨拶における沢尻エリカのようなファッションで厨房に立っている姿を想像してみてください。わからない、もしくは忘れたという方は『はじめ人間ギャートルズ』とか『CRデンデンデン』みたいな原始人ファッションを想像してください。とにかく「そうじゃないだろ、どうした女将!?」と心の中で叫びたくなるでしょうよ。
盤面右側に構えられた船型の役物によって左右非対称へと変更されたゲージ構成や、さらに海物語シリーズでは初となる『ゴールドウェーブ』と名付けられた新枠によってカリブのルックスは「新しい海」としてではなく、これまでのシリーズとは毛色の違う「海っぽいけど何かが違う」機種としてファンの目に映ったのではないでしょうか。つまり、イメチェンの失敗がしくじった原因のひとつだと思います。パチンコ台も人間も見た目は非常に重要なのです。
さらにもうひとつ。今でこそ青髪のエロ担当やピンク髪のロリ担当が存在するものの、当時の海物語に登場するキャラクターといえば、誠意の無い謝罪を行う金髪ポニーテール女と緑髪の筋肉芸人のみ。あとは軟体動物や甲殻類・熱帯魚あたりが右から左に遊泳していれば成立したのが海物語という伝統芸能みたいなパチンコでした。
変わらないからこそ年配層が安心して打てる。いつもと同じだからこそ自分の居場所だと感じられて落ち着ける。海物語コーナーは変化の必要が無い存在であり、安定した立ち位置をユーザー・ホール双方から求められていたのです。
ところが、平穏な海の突如として変な人達が登場します。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』のジョニデ兄さんを想起させる敵役のキャラクター、ビートというヒゲ面の海賊、そして青髪エロ担当ことワリン姉さんが登場。自分の娘がいきなり売れないパンクバンドのベースを担当している彼氏を、あるいは自分の息子が巻髪のド派手メイクのキャバ嬢を自宅に連れてきたような衝撃を中高年の海物語ファンに与えます。
さらに言えば今作では海物語シリーズの代名詞である黄髪の謝罪娘・マリンちゃんの髪がピンクに変色、かつ往年の武田久美子を連想させる貝殻ビキニで登場するリーチもある等、今までの海シリーズの世界感を大きく変化させてしまいました。
例えるなら生クリームたっぷりのケーキに大粒のイチゴが乗った定番のショートケーキ。それにはシンプルだけども安定、かつ抜群の美味しさを期待しますよね。ところがショートケーキと銘打った商品にイチゴの他にパイナップルやキウイが乗ってしまったらどうでしょう? 例え味が良くても「何か違うな」とか「これはショートケーキじゃないね」という評価になりますよ、それは。
はい、ダラダラ長いのでひとことでまとめます。「いろいろと変え過ぎて往年の海物語シリーズのファンがついていけなかった」、以上です。
じくじりポイント:高過ぎたホールからの期待。
実はカリブの稼働貢献週(パチンコ全体の平均稼働を上回った週)は、なんと40週。この数字はユーザーの皆様にはピンとこないかもしれませんが、パチンコ業界人、特に若手の幹部社員さんあたりが見るとしくじり機種どころか「え、驚異的なヒット機種じゃないですか」とイメージになるでしょうね。
では何故、37万台も売れた機械が長きに渡って稼働貢献したにも関わらず、大コケした「カリブショック」などという不名誉な呼び方をされたのか。それは単純に初代から新海、大海、スーパーと続いてきた歴代の新シリーズとして『ハイパー』の名を冠したタイトルだったからです。
私も当時「大海やスーパーをさらに超えたハイパーか、凄そうだな」とドキドキした記憶があります。 そう、ここでも出ました大コケ機種定番の過度の期待が。でも仕方ありません、ハイパーという名前なら大海やスーパーと同レベルではダメ。確実に前作・前々作の面白さを上回るべき使命を背負ってホールに導入されるのですから。 さらに言うと2007年当時はパチンコのメガヒットコンテンツがまだ少なかった時代です。
この年にリリースされたパチンコの人気シリーズといえば2月に『CRエヴァンゲリオン・奇跡の価値は』や同年4月に『必殺仕事人Ⅲ』が導入されているものの、同年3月の『リング』や6月の『花の慶次』はいずれも初代。北斗シリーズで人気を博したケンシロウ・ラオウバージョンや初代牙狼の登場は、こちらも翌年の2008年です。そう、パチンコファンやホールから注目される人気シリーズが今より少なかった時代でもあったのです。
数少ない鉄板の人気シリーズ。寄せられる期待は今の時代より遥かに大きく、海物語であれば信頼も絶対かつ絶大。さて、どんな機械だったらこの期待に応えられたのでしょう。少なくとも、カリブのポテンシャルではその高過ぎるハードルを越えるには厳しかったというわけですね。
しくじり店長とカリブショック
カリブが導入された2007年10月といえば、まさに私が現在所属する会社に転職したタイミング。初期の5号機がズラリと並んでいたパチスロコーナーの稼働状況は厳しいものの、パチンココーナーは多くのお客様で賑わう地域の人気店でした。
新天地で初めて経験した新台入替が、そして導入直後に味わった圧倒的な客飛びに驚かされたのがカリブだったのです。そう、私もまさに『カリブショック』を間近で体感した業界人だったのです。
入社直後に嫌な予感がありましたが事実、私自身もその後に店を潰す男をしてのホール人生を歩むことになるのです。……いや、さすがに私の失敗をカリブのせいにしてはいけませんよね!
★まとめ~カリブの失敗と転機~
冒頭でお話した『トゥンカロン』は、マカロン好きの私の期待には応えられませんでしたが、若者に受けているのもまた事実。
私は「トゥンカロンはマカロンより美味しいに違いない」という勝手なイメージがあったため低評価となりましたが、「トゥンカロンという珍しいお菓子だよ」と言われて手渡されていたならば、もしかすると高評価を下していたかもしれません。
『カリブ』の場合も同様に「海物語の新シリーズだから前作より面白いだろう」という大ヒットシリーズゆえの期待に応えられませんでしたが、パチンコ台そのものとしては決して「つまらない台」ではありません。海物語シリーズとしてはホールの期待した結果を出せなかったものの、前述の通りパチンコの最新台としては十分に稼働に貢献しているのですから。
確かに『カリブ』の失敗はホールにとって大きな痛手となりましたが、メーカーにとっては決して開発の手を緩めるほどの失策ではありませんでした。海物語シリーズに対するホールの「無敗の絶対王者」のイメージこそ2007年に崩れ去りましたが、2022年現在でも海物語シリーズは多くのホールで看板機種として稼働しています。
それはメーカーが大失敗にめげることなく、時流を見誤らずに新たな挑戦を続けて新規ファンを獲得し、かつ海物語の伝統も守り続けて古くからのファンも囲い続けている結果が今につながっているからなのでしょうね。
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- 元・店長カタギリ
- 代表作:しくじり店長
シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。
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