パチスロライターに“なってしまう”まで。episode.7（次のホームも身近な距離）

佐々木真パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

時は1998年秋。居心地も良いコミュニティで甘い機種を打て、何よりも最寄りのホールであったA店を失ったダメージは大きいものでした。収支的には問題ありません。精神的にです。“自分が勝ったところで何になるんだろう”パチスロ生活を送っていた人なら誰もが通る葛藤に、ここでぶち当たったのです。

パチンコ屋の前すら通りたくない。そんな気分ではありましたが、履歴書にも穴が空いていますし、何よりも普通の勤め人として働く心身でもなし。時間だけが過ぎていきました。

実家暮らしということもあり、生活には困っておりませんでした。勝った蓄えもあったので、お小遣いにも苦労はしていません。ただ、勝たなければ出ていく一方の身。種銭が減ることは、そのままパンクするリスクが増えることを意味します。高設定台をツモっても初期投資で軍資金が尽きたら終わりなんですから。

“今日勝たなければ終わり”なんて切羽詰まった状況で勝てるようなら、そもそも切羽詰まった状況まで追い込まれないわけです。やってみて気が付きましたが、パチスロ生活とは、うっすらとでも種銭を増やしていく以外に続けられないものなのです。追い込まれる前に打って勝つしか、このモラトリアムを続けていく方法はない。それでも打てないのであれば、いますぐ就職活動でも始めなければなりません。

楽しくパチスロを打ち続けるためには軍資金が必要で、それを稼ぐのに私にはパチスロしかないという状況でした。楽しいパチスロと勝つパチスロ。勝てるから楽しいという側面もあるので簡単には割り切れませんが、楽しんでタネ銭を減らさないスタイルがもっとも私に合っているかも。

そう吹っ切れたところから、再びホールへ足を踏み入れられる気分になっていきました。2ヶ月くらいですかね。いまだに答えは出せていない永遠の課題のようなものですが、いろいろ考えたこの時間は自分にとって貴重だったと思わされます。

ほんといろいろ考えました。パチスロの依存症なんじゃないかとか。“ゆる調”などでも依存問題を関心持って書いていたりするのは、自分も知識や勉強する場がなくて悩んだ経験からなのです。

★次なるホーム？

種銭を減らさないためにも打ち続けるしかない。そうは思っても、この当時はP-WORLDの登録店舗も少なかったですし、足で稼ぐしかありません。毎日の状況を知って狙い台を作るには、毎日のように自分で通うしかありません。必然的に無理なく通える範囲……ということになってきます。ここで発揮されたのが持ち前の出不精な性格でした（笑）。

次に選んだのは、A店の隣駅のM店でした。歩いて行けるので、無理なく状況をチェックできます。ここで勝てるなら、そんなラクな話はありません。なら負けないように、種銭を減らさないように打つだけです。ホールを選ばずに結果を出す。それには洞察力と技術と知識を磨き続けるしかありません。それでダメなら諦めもつきます。知識は、インターネットで出会った猛者たちから学べますし。

・クランキーコンドル
・バーサス
・ゲッターマウス
・タコスロ
・ハナビ

M店のラインナップはこうなっていました。ノーマルA-400は、A店と大差はありません。問題は、A店が6枚交換だったのに対して、M店は7枚交換だったということ。ただその分、設定は入っているようです。

なぜこのようなホールをノーマークにしていたか。実は、営業形態を変更して“普通の7枚交換”になったのです。それ以前は、BIG終了時に台上のカウンタに出る数字が抽選されて「F」が止まれば終日無制限。「7」が止まれば次回だけ持ち玉遊技可能。それ以外は流して交換（現金投資での続行はできる）となるラッキーナンバー制を採用していたのです。

当時は珍しくありませんでしたね。特に当たり図柄を選べないパチンコでは。「3・7・キャラ図柄3種類」のみ無制限。それ以外は交換というラッキーナンバーが多くありました。朝11時までの当選は、無制限とか。基本は無制限だけど、偶数揃いとなったら交換……など。ホールによってハウスルールはさまざまでした。

こういう時に計算が活きるんですね。設定6で1/240のBIGであれば、ベース30として8000円。7枚交換で8000円となるにはメダル560枚が必要となります。勝てませんがな（実際はREGとかも含めてもう少し詳しく計算します）。ということでスルーしていたのでした。

しかし、営業形態の変更とともに“見せ方”も変わっていました。片隅には前日の上位5台の出玉と設定が張り出されています。初見では嘘をついているかまでは分かりません。ただ、確認してみるのも悪くないでしょう。なんせ、歩いて通える距離にありますし。

『ゲッターマウス』の設定5（設定判別で確定）に座れた翌日、設定6ではなく設定5として発表されました。その中に混じって設定1で噴いてしまった台も発表されていました。このホールは正直かも。設定もそれなりに入っているかも。地元で打つのは月の半数程度。それには十分なホールでしょう。

A店もM店も。近所のホールが良かったからパチスロにハマったのね。そう思われるかもしれませんが、当時は設定を入れられる、入れないと閑古鳥が鳴く低交換率が主流でした。ホールの数も今の倍以上ありましたし、東京ならば近くにホールがあるのは当たり前。ホール同士の競争も多くありました。他の地域にも似たような通えそうなホールは普通にあったので、そんな特別とも思っておりませぬ。

★2年遅れで『タコスロ』と出会う。

▲1996年登場の『タコスロ』（瑞穂製作所）

このホールで主戦にしたのが『タコスロ』でした。今となっては名機揃いのラインナップではありますが、その中でも設定1の出玉率が約106％と最優秀。それもありましたが、そのインターネットのパチスロフォーラムでも好きな人が多く、師匠もその一人でいろいろと話を聞かされていたからです。単純に打ってみたい……と。

『クランキーコンドル』は2コマ目押しでスペックを引き出せましたが、『タコスロ』は毎ゲームのようにビタ押しが必要になってきます。

「白7・チェリ―・BAR」のBARを上段に押して、4コマスベリで下段白7となればBIGorスイカですが、1コマ早く押してしまうと、BIGのリーチ目が出にくくボーナス察知が遅れます。また、1コマ遅く押すとその時点でメイン小役のプラムを取りこぼします。ビタ押しができる人には甘いですが、1コマ目押しを練習中の人には厳しい台といえるでしょう。

目押し技術的にはハードな機種なので、ライバルが少ないのもありました。

月の半分は7枚の『タコスロ』で自主トレ。残りの半分は師匠に連れられて勉強。飲みに行きつつ『タコスロ』の質問をする。そんな日々でしたね。今から思えば『クランキーコンドル』→『サンダーV』→『タコスロ』の順番で勉強できたのはラッキーだったかと。

『クランキーコンドル』は、割とかっちりしたテーブル制御の大量リーチ目タイプで2コマ目押し。いわば基本形です。『サンダーV』もかっちりしたリール制御ですが、成立役を引き込まない意地悪制御も強く、1コマ目押しが必須の上級編。『タコスロ』は、スベリがメインで綺麗なリーチ目とならないことも多々。「テーブル制御＝出目がかっちりしている」という先入観を壊してくれるほど、臨機応変というかファジーというか。超上級編と言えるでしょう。

『クランキーコンドル』と『サンダーV』では、ほぼボーナス成立ゲームを見逃すことはなかったんですが『タコスロ』は無理。1日打つと最低でも1回は成立後のリプレイや小役揃いを拝むこととなりました。「今のは何で当たったんだろう？」順序だって学習できたので、突き詰めて考えたくなったのです。『タコスロ』を打っていた時に探っていたことはまた次回。

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佐々木真: 代表作：パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。