佐々木真がパチスロライターに“なってしまう”まで。episode.0（パチスロとの再会）

佐々木真パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

1996年4月。大学を卒業し、普通の企業に就職した一人のどこにでもいる若者。それが私でした。その当時の自分に「25年後、パチスロ関係の文章を書いている」と言っても信じてもらえないことは間違いありません。

特殊なことは否定しませんが、選ばれし者の特別な職業ではないと思っています。そもそも18歳未満が遊ぶことのできない趣味。子供の頃にパチスロライターといった存在など知るわけもなく、将来なりたい仕事に選ばれることは絶対にありません。誰しも、思ってもみなかった未来となり、結果的に「なったもの」だと思っています。私がまさにそうです。「どこにでもいる人であり続けたかった」それが本音かもしれません。

ブラック企業だのパワハラだの。そんな働き手を守ってくれる素敵なワードがなかった時代。配属早々、自社の商品を大量に買えとか、取引先から車を買えなどと圧を受け続け。事務的な作業も、2なのか5なのか8なのか9なのか。判読できない数字で書く代理店の帳簿を深夜まで合わせられる始末。合うわけがございません。というか、こんな代理店ばかりを私に押し付けた先輩たちは今まで何をしていた（笑）。

おまけに就職氷河期で支店に入った新人は私のみ。雑用も全部回ってきます。深夜3時くらいまで会社にいて、朝7時半には会社にいたな。アッという間に心身を持ち崩し。休職（ほどなく退職）することに。引きこもりという言葉もなかった時代。そんな流行は先取りしたくなかったですが、ほぼ家から出られなくなってしまいました。

暗い話で申し訳ないです。書いたのはほんの一部。心の傷が大きすぎて、今でも笑い話に仕上げられないのです。普通に嫌われての仕打ちなら「そういうこともある」と割り切れるんですけどね。直の上司が「モノにするためスパルタ」という超体育会系で悪気はなかったかと。なので、むしろそれに応えようと頑張りすぎてオーバーヒートした感じでしたかね。ちょっと丸い目線にすれば。

兎にも角にも引きこもりとなった私。幸いにも……というべきか。当時は実家暮らし。部屋に籠り続けることを心配した母親がお小遣いを渡しながらこう言います。「受験勉強をサボってまで行っていたパチンコ屋まででも散歩して来い」と。いろいろなアレで電車に乗れなくなっており、必然的に歩いて行ける最寄りのホールへ行くしかありません。これが運命だったのでしょうか。

片隅に25台ほどあったパチスロと合わせ、総設置台数は250台程度の小規模店舗。当時はどこにでもあった、住宅街にある私鉄沿線の小さなホールでした。このA店が序盤の舞台となります。。入ってみると知ったパチスロ機はなし。1996年といえば4号機時代になって3年以上が経過しており、このホールに設置されていたのも4号機のみだったのです。「なんだ、連チャンしない4号機しかないのか、ガッカリ」が率直な感想。

▲大学時代に好きだったのは『ミスターマジック』（3号機）。なお、裏モノとメーカーは関係ありません。

地元のホールなら少しは知っていろよと思われそうですが、就職の直前に実家自体が引越をし、会社でそんなことになっていたのでま〜ったく知らなかったんですわ。パチスロ自体もそう。大学では活動を忙しくしていたこともあり、数年間はチョロっと打つ程度。予備校生時代に通い詰めた新宿グリンピース本店が通学路から外れてしまったのもありますね。

その中でも、引越をする前の街にあった、長らく3号機以前（パキパキの裏モノ）の機種を残していたホールがお気に入り。4号機はリプレイがウザったいし、連チャンもしないので好きではありませんでした。正直。裏モノだなんて用語はまだ知りません。パチスロは連チャンするから面白い。そうとしか思えない育ち方をしてしまっていたのです。

かといって打たないという選択肢はありません。お小遣いまでもらっています。すぐに帰宅するのも申し訳ない。そう思って見てみると「遊べはするのかな」という感想に。なぜなら1台おきに出ているように見えるのです。そして、出そうな場所の台が空いているではないですか。

後からは、それなりの設定はあったと推測できます。私が打った台は分からずとも、シマの平均設定は高かったはず。1996年当時、パチンコの設置台数390万台に対して、パチスロは76万台。パチンコで利益が出せていたので、パチスロは遊ばせておけばいい。そんなホールが大半だったのです。しかも、設定を入れられる低い交換率が主流でした。このホールも然り。

そんなこんなで座ることとなった初代『ニューパルサー』から、私の時計の針が動き出したのかもしれません。確実に動いたという分かりやすいものではなく微かに……ですが。正直この日に、出たか出なかったかは覚えておりません。長い勝負でもなし、そんなものは時の運でしょう。ただ「たまに遊ぶのも悪くないかな」という感想になったのは事実です。仕事もしていない身分で「たまに遊ぶ」とか言うなって話ですが。

ここからいきなり覚醒したわけではありません。何をするにも、心と体を前に動かせない。そんな状況でした。お小遣いを渡されて「気分転換に出かけろ」と言われたら、時間潰しのためこのホールに行く。そのような感じが続きましたかね。自分のお金で打てないのかって？会社時代、朝3時に帰るためのタクシー代で貯蓄なくなったわ！

そんな暮れのある日。猛烈にこのホールへ行きたくなる日がありました。新装開店です。当時の新装開店といえば年に何度もあるわけではありません。文字通りのお祭りが期待できたのです。勝てるかも。

▲ゲッターマウス・フローズンナイツ

導入されたのは『ゲッターマウス』と『フローズンナイツ』。パチスロコーナーが一気に45台程度へと増設されることとなりました。引きこもりに巡ってきた幸運か？それとも破滅の罠か？

★必然だった『ニューパルサー』への着席。

▲初代『ニューパルサー』（山佐：1993年）

最寄りにあるパチンコ屋さん。そんな無作為なホール選びで『ニューパルサー』に座ることになったのは、偶然ではなく必然のことだったでしょう。パチスロの総設置台数が約70万台の時代に約23万台ものセールスを記録。パチスロ設置店ならば、ほぼどのホールにもあったのです。

当時の私は機種のスペックを引き出す技を知りません。頭の中が3号機で止まっているのです。特別な人ではありません。香ばしい時代にあった派手な攻略法などとも無縁。むしろ、帰りの電車賃まで負けることもある普通の青年でした。技術介入、何それ？適当にブンブン打って、7でもテンパイしたら目押しする。それくらい。なので『ニューパルサー』で良かったのかなとも思います。赤7を狙っているだけでチェリー狙いになってくれましたから。

ご存知の通り、5号機と6号機の遊技機規則に（数字以外の）大差がなく。お届けしたいテーマの多くを書き切っている状況です。何か語りたい出来事がございましたら、通常運転に戻します。そこまで老兵の昔話にしばしお付き合くださいませ。

こんな時代に戻ることは、あり得ません。しかし、経験した人物でないと書けないことなのも事実。昔を知る人は、自分と重ね合わせるも良し。知らない世代の方は、平坦でも反面教師でも、想い想いの絵を描いていただければ幸いです。

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この記事へのコメント（2 件）

FLEA: 投稿日：2021/10/05; 時としてはほぼ同時期‥‥私の場合は高校生ですが、自分も『技術介入』から遥か遠いとこにいたプレイヤーでした。次回が楽しみです！

ししょー: 投稿日：2021/10/05; 私鉄沿線の小規模店。軍艦マーチが流れてマイクパフォーマンスが歩いてる人を振りかえさせる。マイク越しに聞こえるチンジャラの音。何番台大当たりですの音声案内。
もう当時の風景が浮かんできますね。
でも96年だと軍艦マーチじゃなくてトゥルースとかが流れてたころかな？
ちなみに自分は既に結婚して子供もいて、平日夜のひと勝負してたころだ。おっさんの独り言でした

佐々木真: 代表作：パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。