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元・ホール店長カタギリのしくじり店長
2016.04.06
しくじり店長・第15回
時は2000年代、初頭。
当時のパチスロシーンを回顧して一言で述べるならば、
私は「狂気の時代だった…」と皆様にお伝えしたい。
8192分の1の確率を引き当てて「神」が降臨すれば、
液晶画面に浮かび上がった500ゲーム間に約5,000枚を吐き出す「ミリオンゴッド」や、
時速5,000枚という謳い文句が攻略誌の広告欄を賑わせた「サラリーマン金太郎」、
そして最大期待獲得枚数は約65,000枚という夢のAT、 スーパーアラチャンを引っ提げて登場した「アラジンA」等々…。
後に検定取り消しによる強制撤去という形で、
表舞台から姿を消したこれらの爆裂マシンが当たり前のように設置され、
遊技客が血眼になってサンドに千円札を突っ込んでいた新世紀の幕開け。
正気の沙汰とは思えぬメーカー、そしてファンに対する記憶が、
閉店後に数えた膨大な量の紙幣と共に、脳裏に生々しく再生される。
そんな時代だったのだ。
もちろん、狂っていたのはホールとて例に漏れない。
「来店スタンプを貯めたお客様には、確認OKの設定⑥を朝イチから開放」、
「ボーナスを5回引いたお客様は、先着順でその場で設定⑥に変更」、
「台の中から赤いメダルが出てきたら、お好きな機種の設定⑥が打てます」、
そういった著しく射幸心を煽った撒き餌で遊技客を釣ろうと画策する店舗が、
あちらこちらで誘惑の扉を開いて待ち構えていたのである。
そう、
パチンコ店もまた常軌を逸した過激なイベントを平然と行っていたのだ。
では、班長に昇格した私の働くお店はどうだったのかと言うと、
「その当時、イベントらしいことは何も行っていなかった」のである。
以前にも書いた通り、自店のメイン機種は沖縄スロット。
しかも「何故か32ゲーム以内によく告知ランプが光る気がする」という、
ミステリアスなデカコイン台に人気が集中していたせいもあって、
わざわざイベントを開催して集客する必要は無い客層だと判断していたのだろう。
もちろん責任者であった万年昼寝野郎のタケハシ店長の脳内に、
営業努力という単語は存在しなかったハズである。
もしも彼の頭の中を真っぷたつに割ってみたら、
中から出てくるのは「キャバ嬢」の文字ぐらいだったに違いない。
台さえ置いていればお客さんが勝手に打ってくれるだろう、
おそらくその程度の意識に留まっていたのだと思う。
そこでカタギリ班長、考えました。
「ウチの店の沖スロもイベントを開催すれば、もっと稼働が上がるんじゃない?」と。
そして動き出しました。
ビリヤードの球と女の尻を突くのが大好き、でおなじみのサガワ課長に、
「今度、ウチの沖スロでイベントをやりたいのですが、いかがでしょうか…」
と越後屋のような気持ちで恐る恐る打診してみたところ、
暗殺者みたいな眼つきとは裏腹の軽い口調で、
「うん、いいんじゃない?」
という二つ返事でアッサリと快諾。
私は翌日にさっそく企画書を課長に提出、
同時にイベント用のポスターを制作部に発注したのである。
その当時、会社では制作部が立ち上がったばかり。
コスト削減のために新台入替のチラシ作りを自社で行うようになった部署で、
せっかくのデザイナーとしての才能を無駄遣いしていた担当者に、
「チラシよりも、面白いポスターを作ってみませんか?」
という口説き文句と共に発注書を提出。
「いいッスね、これは面白そうですね!!」
と、ノリノリになった彼がものの数時間で作成してくれたポスターを手渡された瞬間に私は、
その完璧な仕上がりにイベントの成功を確信したのです。
沖スロのメダルがザクザクと詰まった千両箱が積み上げられ、
大量メダルの頂上を羨ましそうに見上げている私の似顔絵。
そしてポスターの中央にデカデカと踊っていたのは、
「沖スロ10000枚争奪・爆裂強化月間」
という、
スピードガンもブッ壊れそうな超剛速球ストレートなイベントタイトル。
2016年なら確実にネット大炎上から営業停止処分、待ったなしの内容でも、
この時代なら何でもアリのやったモン勝ち。
刷り上がった激アツポスターを店内の至るところに貼り出して、
「来月から、今まで以上に期待してくださいよっ!!」
そう常連客に笑顔で話かけていた私もまた、狂った人種に属していたのだろう。
そして待ちに待った翌月。
開店前のホールは、年齢・職業・国籍・病歴・逮捕歴一切不問といった風体の、
香ばしいお客様による長蛇の列で取り囲まれていた。
「おいカタギリ、
これでガセイベントだったらお前、タダじゃ済まねぇぞ!?」
「今日という今日はちゃんと出るんだよな、兄ちゃんよぉ~?」
可愛い犬のスマイルが背中にプリントされたジャージを着た土建屋の社長さんや、
二の腕に頭蓋骨のイラストが描かれた(シールかな?)お兄様たちから、
脅迫めいた野次を次々と浴びせられながら入場整理に追われる私。
「このイベントが失敗したら、アフリカに亡命しよう」
そう固く決意する中で、午前10時の開店時間。
運命の扉が開くと、猛者たちは一斉に店内へと流れていった。
が、
アフリカ行きの覚悟を決めた私の背後には、あの男が立っていた。
タケハシ店長亡き後にホールの営業面を担っていたのは、
企画書にハンコを押してくれたサガワ課長、ズバリその人だったのだ。
開店から数時間と経たないうちに、偉大なる上司の手による入魂の調整が本領を発揮。
いかつい顔のお客様の表情もたちまち笑顔へとランクアップ、
納得の出玉がシマのあちらこちらから炸裂。
ポスターに描かれていた千両箱も早々に積み上げられて、
スロットファンにとっては夢のような光景が現実のものとなっていったのである。
ならば私も、ここで男を見せるしかないだろう。
「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ、ありがとうございます!!
さあ、本日から沖スロコーナーは万枚の争奪月間ッ!!
優秀台から早くも5000枚突破のビッグボーナス、スタート!!
追いかけましてはお隣さんからも連続連チャン、ボーナスゲームスタート!!
どちらのお客様もお時間の許します限りィ、
また最終最後のお時間が参りますまでェ、
しっかりとガッチリと、ジャンジャンバリバリとお出し、
お取りくださいませええええええっっっっっっ!!!!!!」
力強く握ったマイクに噛り付かんばかりに、声が枯れるまで店内で吠えていた。
開店前に浮かんでいたであろう額の冷や汗は、
いつの間にか熱を帯びて全身に流れ落ちた。
ビッショリと濡れたYシャツも、度重なるメダル補給で曲がったネクタイも、
キッチリ整えていたハズのオールバックが乱れた髪型にも、
気が付いたのは営業時間を終えてからだった。
イベントは数字から見ても大成功。
その勢いは衰えるどころか留まることを知らず、
翌日以降の稼働も、前月とは比較にならない数字が続いたのだ。
そして数か月後。
私は異例のスピードで班長から主任へと昇格を果たした。
日々の仕事ぶりが誰かに褒められた訳でも、
また労いの言葉をかけられたことも無かったが、
その努力は役職と報酬という形で報われたのである。
それは暗い部屋に閉じこもってゲームばかりやっていた1年間や、
日々、人との会話を拒絶してパチンコ台と向き合ってばかりいた数年前では、
決して味わうことのできない、得難い感情となって私を奮わせたのである。
…だが、
まだまだ私に責任者という立場を与えるには早すぎる、という判断。
そしてサガワ課長も1店舗の現場だけを見ている訳にはいかない、という現実。
おそらくはその2つの理由によって、
イベントで上り調子の店舗に、新たな店長が就任することになったのである。
そして、 この男の登場によって運命の歯車は、時の流れと並行して静かに狂い始めたのであった…。
カタギリ・今週の1枚
先日、パチ7編集部のカモ原さんと某ホールでバッタリ出くわしました。
その際に彼から差し入れして頂いたドリンクがコチラ。
口内炎に悩む私のことを、気にかけて下さったのでしょうか?
ちなみにカモ原さんが打っていたのは「サイレンと昼(仮名)」。
ホラーゲームを題材にしたパチスロ台を打つ彼の姿は、
まるで地縛霊のようでした…。
編集長の一言
順調だね。順風満帆マンだね。いわゆるエンペラータイムってやつだ。
うん、あの時代のイベントは狂ってましたね。来店したコンパニオンが営業中にパチンコ盤面開けて「えいっ♪」なんつって釘をぶっ叩いたり(素人だから逆効果になる場合が多々)、サイコロ振って出た目の設定に変更するとか、ほんと無茶苦茶でしたね。
無茶苦茶だったけど、楽しかったなぁ。ホールも努力するし、お客さんも楽しい。ただ、それ以上にガセイベントをやるところが増えちゃったからねぇ。
ガセやるところが少なければ、今の規制も少しは違ったものになったと思うよ。
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- 元・店長カタギリ
- 代表作:しくじり店長
シルバ〇アファミリーみたいに小さなパチンコ店の責任者から一転、 雑巾がけがメインの業務となってしまった事務員へとグレードダウン。 そんな設定①のスランプグラフのような半生を、隔週水曜日に連載させて頂いております。 タイトルは「しくじり店長」。 パチ屋の店長が平社員へと降格していく逆サクセスストーリーを、 海物語シリーズの泡リーチを見つめるような気分でお読みください。
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都内有数の繁華街にポツリと建っていたホールだったので、
客層の濃さは半端なかったッスねw
本筋から離れたお客さんとのエピソード、
あり過ぎて困りますわw
カタギリさんの滑らかな文章に彩られて当時の映像がありありと蘇ってきました
しかし、次回から不穏な空気…!
おそろしいッ
<開店前のホールは、年齢・職業・国籍・病歴・逮捕歴一切不問といった風体の、
ワロタwwwwさすがですカタギリさん!
おっしゃる通り、営業努力を怠ったお店は4号機の終焉を境に続々と消えていきましたからねぇ…。
5号機の中にも面白い機種はたくさんあるのですが、
やはり4号機と比べてしまうとスペック面で劣る分だけ魅力に乏しいですな。
北斗の拳や吉宗の全盛期にようやっと打ち始めたので( ・∇・)
昔を知っていると今の5号機は、笑えない位出ないですね。
今はお店の経営力が本当に大切な時代になりましたね(´・ω・`)
ワックスでテッカテカになってる板張りの床は、
「う~ん、これぞパチ屋!!」という気分になりますなぁw
私が若い頃に通っていたホールのオッチャン店員は、
ホッパーのメダル補給に来るのに平均5分は待たされる、
という超マイペースな方だったので、
メダルが切れたらトイレに行ってジュース買いに行って、
外に出て一服するのがお約束でした。
たまに、それでもまだエラー解除されていなかったりw
お互いに、まだまだ血気盛んな時代の話ですからねぇ~w
コンドルやタコのハズシを経て、
ヒリつきながらAT機にゼニをブチ込んでいたこのあたりの時代を経たからこそ、
今でもゲッタマの中押しにアツくなれるんじゃないでしょうか、我々はw
当時の機械の設定⑥は破壊力が違いましたからね。
グループでイベント攻めて、一人が⑥ツモったら残りのメンバーはゲーセン待機、
みたいな攻め方が流行しましたね。
機械もホールも狂ってました、ホントに…
当時はユルユルの店が多かったですからねw
文中にあった「ホッパーの中から赤メダルが出たら設定⑥」のイベントを開催していたホールは、
「朝イチにメダル投入⇒返却ボタンを押す⇒赤メダル出現」
という攻略法(笑)によって数日で終了していましたねw
32回転熱かった。
床は板張り。店員はおじちゃん、おばちゃん。手補給。
次も楽しみにしてます。
読んでいてノスタルジックな気持ちになるというよりは、襟足がチリチリとひりつく感覚を思い出しましたww
マイクパフォーマンスはさすがのひと言。
動画付きでリアルに脳内再生されました!
次回更新も楽しみです!