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パチ7自由帳・匠
2020.04.10
妄想ぱちんこショートショート(1)大工の源田さん
※以下、空想の物語です。実在のホール・メーカー・機種等とは一切関係ございません。マジで断じてございません。なんかすいません。
折からの大雨で実家の納屋が倒壊した。中に保管していたのは爺さんの代に使っていた古い家具などのガラクタばかりだったので特に問題は無いように思えたけども、それをガラクタだと思うのは、どうやら俺が爺様とほとんど会った事がなかったからだった。親戚にとっては大切な思い出の品も混じっているとの事で雨ざらしのまま放って置くわけにもゆかず、結局それらは処分されることもなく客間のスペースを占領しているらしい。
そろそろ納屋を直さないとねぇ。久々に帰省した際、ため息を吐きながら親戚の誰かが言った。結局、どうせなら若い人間がいる時の方が何かと便利だろうと、俺が居る間にさっさと修理してしまう事になった。親戚の人間たちが各々工具を持って裏庭に集まる。人手だけはたんまりあるから直ぐに済むだろうと思って臨んだその作業は、素人の浅知恵という言葉の本当の意味を思い知るのに充分過ぎるほどの徒労に終わった。餅は餅屋。納屋の修理はやっぱり工務店である。
盆のシーズンで暇を持て余していたらしい工務店の男は、直ぐに大工道具一式を担いで現れた。角刈りに捻じり鉢巻。筋骨隆々とした若者だった。額の汗を拭いながら、ぺこりと頭を下げる。
「オイラ源田と申します。大工です!」
「ゲンダさん……?」
「ハイ! 仲間内からはゲンちゃんって呼ばれてますンで。ひとつ、良くしてやってください」
「ゲンちゃんさん……。分かりました。今日は宜しくお願いします。すいませんねぇ、暑い所」
「大丈夫っす。仕事ッスから! アツいの慣れてンで!」
「はは。そうですか。頼もしいです……」
「現場ァどちらで?」
「はい、こっちの裏庭へ──」
母屋を迂回して竹やぶを抜ける。井戸の横に、もともと納屋だったいくつかの支柱と材木の山がある。見た瞬間、源田と名乗った大工はひゅぅと口笛を吹いた。
「ハハ。こいつァ盛大にやっちまってますねぇ!」
「ね。完全に壊れてます。自分たちでも直そうとしたんですけども、どうにも──」
「へへ。素人さんにはね。そりゃ、てやんでぃです。そんなの」
「……てやんでぃ?」
口笛を吹きながら材木の周囲をまわりつつ、背負子から物差しを取り出して何やら図り始める。耳に挟んだ鉛筆でメモを取って計算したあと、こちらに向き直った。
「こりゃあ旦那さん、職人を頼って正解でしたねェ」
「ああ……やっぱり」
「どうしやす? ちょいとお代はかかっちめェますが、オイラなんかこのぐれぇなら二日も頂きァすっかりピンピンにしつらえちまいますよ」
「では、さっそくお願いしてもいいですか?」
「てやんでぃ! がってんでさァ!」
言いながら掌底の部分で鼻の下をこする仕草をする。おお、自信満々だ。ひとりでこの作業ができるのかどうかちょっと不安だったけども、さすがは本職の大工。感心しながら見守る俺の横で、源田は早速スコップで周りの土を掘り返し始めた。
「へぇ……。まずは周りを掘るんですね」
「ヘイ。さようで。まずはコイツがなきゃ格好がつかねぇンで……。こうやって、あっこの竹やぶンとこまで……」
「竹やぶ……? あっちまで掘るんですか?」
「さようで」
「何のためにですか?」
「あー……。素人さんにはちょっとムツかしいかも知れないんですが、まずコンベアを設置するんですよ」
「コンベア……? ベルトコンベアですか?」
「ヘイ。高速で動くやつを」
「高速で……。それ必要なんですか?」
「ンー。ここは立地的にクレーンが入れねェンで、せめてベアは欲しいとこでさァねェ。あ、ベアってェのはコンベアの業界用語でして……」
「いや文脈からそれは分かるんですが、え、クレーン? クレーン入れようとしてたんですか」
「へえ。クレーンがあるとアツさが違うんで……」
「クレーンは要らないでしょう流石に。納屋ですよコレ。そしてコンベア……。いや、ちょっとすいません、これ、コンベア設置したらどのくらい掛かるんですか?」
「費用ですか? 三百万くらいですかね」
「たかッ! いやいやいや! 高ェよ。無理。納屋ですよコレ」
「えー……。ベアもナシですか……。クレーンも、ベアも無いとなると……こりァ、てやんでぃですよ……」
「ンだよてやんでぃって……」
渋々といった様子で作業を始める源田。まずは幸いにして残ったままの基礎部分と支柱に近づく。指でコンコンと弾いたり握って揺すったり。古い支柱だったが建て付け自体はしっかりしているのでびくともしない。建築に関しては日曜大工程度の知識しな無いが、それでもこの支柱さえあれば作業期間が大幅に短縮できるのは分かった。どうやらそれは源田にとっても同じらしく、満足そうにフンと頷く。彼はそのまま背負子から巨大な木槌を取り出した。
「ちと旦那、危ねぇから離れていてくだせェ。……いくぜッ」
言うが早いか木槌を横に横にスイングさせて支柱を叩く。叩く。叩く。慌てて止めた。
「ちょォい! 何やってんの! 支柱倒れるよ!」
「だるまおとしリーチッ!」
「うるせぇ! やめろッ! ストップ!」
「え、これも駄目ッスか?」
「駄目に決まってんだろ! なんで壊そうとした今! で何、え? だるま? 何て言ったさっき」
「えー……。木槌も駄目……。ムツかしい事おっしゃいますねェ旦那……。ベアも駄目で、クレーンも使えねぇ。頼みの綱の木槌も駄目と来たもんだ。こいつァてやんでぃだなぁ……」
「それ、てやんでぃの使い方絶対違うからな……?」
スマホが震えた。会社からの着信だ。横目で源田を牽制しながら応答する。どうやら東京に残してきた仕事にトラブルがあったらしい。舌打ちしてスマホの受話部分を胸にあてる。
「チッ。ちょっと俺は席を外さなきゃいけないから」
「へい!」
「何って言ったっけ……。源田……」
「源田淳二でさぁ!」
「濁点多いなぁ……。源田淳二さん。とりあえず上手い事やっといてくださいよ。お願いしますね」
「がってんでさァ!」
「その、掌底で鼻の下こするのも腹立つから辞めて貰っていい……? とにかくお願いね」
簡単に済むかと思われた仕事上のトラブルは、俺自身が遠く離れた所にいた影響もあって解決までに半日が掛かった。母屋でノートPCを開き、資料を確認して電話で指示を出す。報告を受けてまた確認。細かい修正と調整をする。その間にも時折竹やぶの向こうからカンカンと釘を打つ音が聞こえてきていた。ようやく作業が一段落した所で納屋の修繕の進捗を確認しにいった。
「源田さァん……? 調子はどうで……おお! すごい!」
「へへ。旦那。もうすぐ終わりでさァ」
なんと、そこには文字通り「ピンピンにしつらえられた」真新しい頑丈そうな納屋が出来上がりつつあった。観音開きの戸の上部。細かく細工が施された欄間まで付けられてる。それはまさしく職人芸と言って良かった。
「流石はプロだなぁ……! いやいや。おみそれしました」
「へへ! やったぜ! あとはその──細けェ所をちゃっと仕上げりゃもう仕舞いなンで。晩酌までには終わりまさァ……。ほんじゃァちゃちゃっと、やっちまいやしょうかね!」
「はい、お願いします!」
脚立に登り、屋根の部分に金槌を振るい始める源田。安心して見守る俺の鼻が、焦げ付くような刺激臭をキャッチした。みると、少し離れた所においてあるドラム缶から煙が立っているのが分かった。ちろちろと橙色の炎も見える。
「これ、ドラム缶焚いてるんですか?」
「へい。余った端材をモしてるんでさァ」
「へぇ……。大丈夫です? 火事なんない?」
「大丈夫大丈夫……。端材なんかモした所で。へへ。てやんでぃですよ」
「そうか。てやんでぃですね……。はは」
その時、炎が少し大きくなった気がした。煙が黒くなる。夕刻の空をトカゲの舌のような朱が舐める。離れたところからでも熱が伝わる感覚がした。
「……ちょっと火ィ大きくないですか?」
「へへ。大丈夫大丈夫。こんなもん……。てやんでぃですよ」
「てやんでぃかなぁこれ……。なんか入れた? ドラム缶」
「灯油入れました」
「灯油……。大丈夫?」
「まあ、ていやんでぃだと思いますけど……」
「じゃあまあ、プロが言うなら……ウォフッ!?」
ドラム缶の中の端材が爆ぜ、火の粉が舞う。南風に乗って舞い上がる鱗粉のような熱がひとつ、真新しい納屋の屋根に落ちた。動けずに見守る俺。そして源田。すぐに屋根から煙が立ち上り始めた。
「ちょ! 燃え移ってる!」
「旦那! 水ありませんか! 水!」
「用意してねぇのかよ! ……あ! 井戸あるよ!」
慌てて井戸端に向かい、丸口に掛けられたトタンの蓋を剥がす。既に使われなくなって久しい井戸は、とっくに埋められたあとだった。
「だめだ! 井戸駄目!」
「ウオォォォッ!」
雄叫びを上げながら源田は脚立を降りる。乾燥した真新しい木材。恐るべき速度で燃え広がる炎をバックに、どうして良いのか分からなくなったのか無駄に右往左往しはじめた。やがて、倒壊時に何かから漏れたのであろう廃汁に足を取られて盛大に滑った。なんとか体制を建て直すと、彼はいよいよ握りこぶしを作って顔をしかめ、そしてうなり始める。
「ちょっと! 何やってんの!」
「ウォォオォォォッ! いくぜ!」
「ねぇ! 源田くん! ゲンちゃん!?」
「……スべりからの炎リーチッ!」
「うるせぇ! 火ィ消せゲン!」
「炎のリーチ目サンゲンゲン!!」
「クッ……。もういいよ! 消防! 消防……ッ!」
……結果。五分後に消防が到着した頃には源田が作った納屋は完全に消失していた。またすべてイチからやり直しである。その日の夜。座敷に集まった親戚の前で正座する源田。幸いにして他に燃えたのが何も無かったとはいえ、一歩間違えばド偉いことになっていた事には変わらず。散々に罵倒されていた。たっぷり二時間ほどお説教されてフラフラになりながら帰っていく源田。
「旦那、すいやせん今日は……。本当にあの……てやんでぃな事をしてしまい……」
「いや、まあ……。うん……。元気だしてね……」
「はい……。ありがとうございます」
だいぶ精神的にやられたのだろう。前後不覚の状態で石段を降りていく源田。玄関先で見送りながら、ちょっと可哀想になった。思わずまた声を掛ける。
「おい……! 源田さん」
「……はい」
「また……また明日来いよ」
「……え?」
「まあなんだ……その……悪くなかったよ。途中まで。火はまあしょうがないけどさ。俺は源田さんが作った納屋を……。完成した納屋を見てみたいなって。そう思ったんだ」
「旦那さん……! いいんですかい……!?」
「へへ……なんだか照れるな」
「旦那さん…………!! ああちくしょう。なんだこれ……。目に汗が入っちまって……へへ……」
「大丈夫だよ。一回の失敗くらいなんだよ。次があるよ、なぁ源田さん」
目を潤ませて鼻をすする源田。感極まったように鼻の下を掌底で擦ってそれからこう言ったのだった。
「やったぜ! 確変2回ループタイプ!」
「……あーごめん。やっぱり来なくていいや」
「え、そんな。シドいですよ旦那……!」
「うるせえこのインチキ江戸弁が……! 帰れッ! クソッ! クソッ!」
「オゴフッ!?」
──みぞおちに膝蹴りをして追い返したら、多少スッキリした。
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- あしの
- 代表作:インタビュー・ウィズ・スロッター(稀にパチンカー)
あしのマスクの中の人。インタビューウィズスロッター連載中。元『セブンラッシュ』『ニコナナ』『ギャンブルジャーナル』ライター。今は『ナナテイ』『ななプレス』でも書いてます。
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