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2020.04.11

心の名機追想記シリーズvol.2『十字架』書き手:あしの

あしの あしの   パチ7自由帳・匠

▲心の名機追想記vol.2『十字架』(2004年・ネット)

萌えいづる春になりにけるかも。

大学の頃に知り合った友達にSさんという人が居た。学年は一緒だったけど彼は高校の頃に一年ダブリ、そして卒業後に一年留年していたので同学年なのに年齢が2つ上だった。見た目はやせ細った平井堅といった所で、とにかくヒゲがキウイの表面かと思うくらい濃いのも特徴だったけども、まあ彼を語る上ではその外見よりも内面の方が重要だろう。

彼はオイラが生涯でいちばん最初に出会った「ガチのオタク」だった。

今でこそ「オタク」というのは市民権を得た立派な個性のひとつになってるし全然恥ずかしいもんじゃない。むしろ好きなことに一途に打ち込むその姿は職人気質的であるとも言えるし、ひとが何かしら夢中になれるモノに集中する姿というのは、ある意味で美しくすらある。だが、ミレニアム前後の当時……しかも九州の片田舎に於いては、世間のオタクに対する風当たりは、まさしくフェーン現象によってもたらされる六甲おろしばりに強烈だった。

ある日の事だ。当時バイトしていた携帯ショップの先輩から「合コンに来ないか」と誘われた。当日になって欠員が出たため急遽男子を探しているらしい。二つ返事で「行きます」と返事をするも、どうやら探している男子は「2名」であるとの事。あと一人連れて来られないか尋ねられたのだけども、時間もまあまあ急だったしそもそもオイラにはそんなに友達が居ない。そこで考えあぐねた末に声をかけたのが前述のSさんだ。年も近いしヒマそうだし、何より間違いなく彼女はいないだろうから食いついて来るはず。

「とうわけで、行きますかSさん」
「合コン……。えー……。合コン? イッイッイッイッ」
「どうします?」
「イッイッイッイッ……。どこでやるの?」
「あのー……。京町ンところの居酒屋なんですけども……」
「イッイッイッイッ……。マジで。行こうかな……」

Sさんは笑い方が大変にキモかった。ちょっとうまく表現できないんだけども、低い引き笑いみたいな感じ。普通引き笑いって高いはずなんだけども、Sさんのそれは低いのだ。あとどんなときでも無意味にその引き笑いを挟んでくるので会話してるとイラっとさせられる事も多かったんだけども、酒飲んでるとそれがツボって無性に笑えてくるので、実際の所そんなに嫌いじゃなかった。正直にいうとういう部分の爆発力に期待して合コンに誘ったというのもある。

「イッイッイッイッ……」
「行きます?」
「いいのかな……俺行っても……イッイッイッイッ」
「ひと足りねぇっつってたし、大丈夫だと思いますよ」
「イッイッイッイッ……」
「行きます?」
「イッイッイッイッ……。わかった……」

斯くして、オイラはSさんを連れて約束の地へと向かった。薄暗い個室居酒屋だ。3vs3の無差別級デスマッチ。対戦カードは「チーム歯科衛生士」対「携帯ショッパーズ+引き笑い連合軍」。あちらさんの顔面偏差値が想定よりはるかに高く、彼我の戦力に差があるのが一瞬で分かった。これはかなり厳しい戦いになるのが予想される。だがオイラには歯科衛生士相手にのみ通じる鉄板の持ちネタがあった。初っ端からブッ放す。

「これビールのアワ多くなーい? ビールのアワ多くなーい? ねぇねぇちょっとあれやって。こうやってジュババッて。施術中にやってるやつ。バキューム? へへへ!」

これはみんなも使っていい。100パーで大爆笑が起きる。アワ多くなーい? がミソだ。実際にはアワが少なくても構わん。これを序盤に一回。そして忘れた頃にもう一回やればだいたいの不利は覆せる。実際その時もオイラの先制攻撃で場が和み、だいぶ良い感じの雰囲気になった。そのままの流れで自己紹介に入る。まずは男性陣の紹介。そして女性陣。今となっては全然覚えてないけども、3人目の名前だけははっきりと覚えている。事件が起きたからだ。彼女の名前は「マミ」だ。名前を告げるや否や、Sさんが暴発した。

「マミ! イッイッイッイッ……! マミてェ!」
「ど、どうしたのSさん」
「イッイッイッイッ……。マミ……。クリィミー。イッイッイッイッ……」

どうやら「マミ」という名前で「魔法の天使クリィミーマミ」を想起したらしい。なんか知らんがツボに入ってもんどりうつSさん。困惑するオイラと先輩。そして女性陣。最初は「奇天烈な人だな」くらいに思われたであろうSさんも、その後彼女たちが「マミ」と名前をクチにする度に腹筋崩壊を起こすにつれ、だんだんムカつかれ始めていた。これはイカンと鉄板の「アワ多くなーい」を唱えるもスベるオイラ。だんだん地獄みたいな雰囲気になってきた。

合コンは、失敗だった。敗因はSさんが一番愛するアニメのタイトルと同じ名前の女の子がいた事だけども、そもそも彼を呼んだオイラが悪かったんだと思う。采配からして負け戦であった。

 

パチスロは打つ人だった

んでそのSさんであるが、彼はパチスロを打つ人だった。学校から一番近いホールでたまたま見かけて以来よく一緒に打つようになったのだけども、彼は打ってる時も何が面白いのか分からんが定期的にイッイッイッイッと笑っていた。勝ってる時だと「もー、やめてよーそれー」みたいな感じになるんだけども、ガチでクソみたいに負けてる時はこの笑いがすげー腹たった。

ある時の事。「十字架」(※ネット/2004年)がホールデビューしたばかりの頃だ。この時分になるとふたりとも大学を卒業してぶらぶらしており顔を合わせる事もかなり少なくなってはいたのだけども、なんせ狭い街だし行きつけのホールがカブってたんでちょいちょい顔を合わせていた。

「あー……。Sさん。久しぶり」
「イッイッイッイッ……」
「十字架かァ……。これ面白いの?」
「イッイッイッイッ……!」
「そうかぁ。面白いかぁ。じゃあ並んで打とうかなぁ……」

十字架。2004年のネットの台だ。ネットはゲームメーカーのテクモとコラボしてからいわゆる「萌え路線」を突き進みつつあったけども、特にこの前年に発売された「スーパーブラックジャック」は今でもパチスロ史におけるひとつのマイルストーンとして語り継がれている。RIOちゃんの登場により、それまで「カミングアウトしたくても出来なかった」隠れオタクスロッターたちの行き場のないフラストレーションが一気に粉塵爆発を起こした格好だ。信じられんかもしれんが、当時はRIOちゃんの景品用ポスターが品薄になり、ネットで高値で転売されるという現象まで起きていたのである。それにより、パチスロに萌えってありなんや! と気づいたメーカー各社もこぞってそれを狙い始めるというパラダイムシフトが起き、ついには後年「萌えスロ」がひとつのジャンルとして確立するに至ったのである。

「あー……。今回はドレスの女の子かぁ……」
「イッイッイッイッ……。セーラちゃん……」
「ああ、セーラちゃんって言うんだァ……」
「うん。ステッキ持ってる」
「……ステッキ?」
「うん。ボーナス中。……イッイッイッイッ」

なんかよく分からんが、とりあえず万券をサンドにぶち込んで回しはじめる。何も起きず二枚目の諭吉が討ち死に。その間にもSさんは快調にボーナスを解除し続ける。「十字架」はボーナス中の小役ゲームでヒロインのセーラが成立フラグをナビしてくれるのだけども、Sさんのボーナス消化がやたら遅いなと思っていたら、何か知らんが彼はボタンを押す手を止めてやたら液晶をガン見している。

「イッイッイッイッ……」
「何見てんの……」
「あのね。セーラがさ。ステッキで小役をツンツンするんだよ……小役ツンツン。ブフォ……! イッイッイッイッ……」

何が面白いのかサッパリ分からんが、破顔して腹をおさえるSさん。さらに──。

「あしのくん、しかもね、パンツ見えそうなんだよ」
「……パンツ?」
「そう。セーラちゃん、これパンツめっちゃ見えそう」

言いながら、画面を下から覗き込むようにして体を傾けるSさん。イッイッイッイッという笑い声が聞こえる。

「見えそうじゃない?」
「……見えないよ」
「いやー、なんかねぇ、見えてると思うんだこれ」
「絶対ないね」
「そうかなぁ。見えてると思うんだよなぁ……。ウケる。イッイッイッイッ!」

……なんかねぇ。めちゃくちゃ気持ち悪いんだよ。マジで。小役ツンツンとかいう単語も厭だったし、見えるわけがないパンツを一生懸命見ようとするのも何かヤだったし、しかも台からはなんか不気味な鐘の音とかコウモリの羽ばたきとかが聞こえて来るしさ。へんな爺さんが墓掘ってるし、うわなんだこれ、と思ったもんだ。結局、その日のオイラの十字架初打ちは諭吉3名の屍を残して終了。このときの何か嫌な感じというのが後を引いたのか、十字架の稼働期間中はたぶん3回くらいしか打たなかった。

今でもたまにネットの萌えスロを打つたび、あの時一生懸命下から覗き込んで液晶の中の女の子のパンツを覗こうとする平井堅似の兄ちゃんの顔が脳裏に浮かんでくる。

 

まさかホントに見えるとは。

時を経て2017年頃のことだ。ご存知「まどかマギカ」に纏わるちょっとした議論がネット上で巻き起こった。前兆演出である「円環の理」中、主人公である鹿目まどかのパンツが見えるとか見えないとか。なんかそんな議論だ。

腰が砕けるほどどうでも良い議論なのだけども、オイラはそれを聞いた瞬間咄嗟に「見えるわけがねぇよ」と思った。いわずもがな、Sさんの事が頭にあったからだ。そもそもの議論内容がどちらかというとネタ寄りだったし、笑い話の一つとして「パンツ見える!」と言ってるだけなんだろうなと。あるいはまどマギ愛が行き過ぎた結果、なんか幻覚でも見てんだろうなと。そう思ってたのね。

でもねぇ、あれマジでパンツ見えるんだよ。検証動画を見てケツが浮くほど驚いて、咄嗟に「マジカよ!」って声に出したもんねオイラ。んでそれと同時に「十字架」で下から覗き込んで変な笑い方してたSさんとの思い出がグワーっと一気に脳裏に蘇った。

……あれ、もしかしてほんとに見えてたのか? とね。

もはや今となっては検証不可能だしそもそもやる気もないのだけども、どうなんだろう。もしかして見えてたんだろうか。というかオイラが「見えるわけない」と切り捨ててきただけで、もしかして他にも色々見えてる台があったのかもしれない。いやまあ別に全く惜しくもなんともないけども、ただ、もしかしてあの時Sさんは、オイラの狭い視野を笑っていたのかもしれない。

──イッイッイッイッとね。

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あしの
代表作:インタビュー・ウィズ・スロッター(稀にパチンカー)

あしのマスクの中の人。インタビューウィズスロッター連載中。元『セブンラッシュ』『ニコナナ』『ギャンブルジャーナル』ライター。今は『ナナテイ』『ななプレス』でも書いてます。

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