あの日流した彼の涙を僕達はまだ知らない。

決勝戦のお題である「身近なパチンカー・スロッターへのインタビュー」に関して、私はいきなり躓いた。
予選の投稿を見ていただいた方がもしもいらしたら露見していると思いますが、なにしろ私には友人がＳ田くんという１人しかいない。

少し話がそれるが、私はHN［ぐらん］でやらせて頂いている。しかしパチ７ホームページの決勝進出者の欄にある名前は［グラン］(投稿時点)
お前みたいな存在、平仮名でもカタカナでもどっちでもいいだろと編集部の方に思われている、小さい存在の私にＳ田くん以外の友人がいる訳がないのだ。

インタビュー記事なのだから、人物的に魅力ある方にオファーし、それを伝えたいところだが、Ｓ田くんはまぁまぁなアレなので候補には挙がらないし挙げたくもない。

そこで白羽の矢を立てたのが、SNSで知り合い、連れ打ちも何度かさせていただいた通称［あまにぃ］である。私より少しだけ年上の、人の良い愛すべきオジサン。

そして彼は私の知る限り、最も勝ちに見放されたスロッターだ。人間設定がもしもあるならば、それは０で間違いない。ノーフューチャーである。

私も詳しく話を聞く機会は無かったので、此度のインタビューにかこつけておちょくってやりたいだけという気持ちがある事は否定出来ない。
ちなみに、あまにぃにはインタビュー依頼の最大理由である「とんでもねー負け組だから」は伏せてあるので、いろいろと気分良く応えて頂けた。

どんな話が聞けるのか、私自身も楽しみであるーーー



ーー今回はインタビュー依頼を快諾して頂きありがとうございます。

あまにぃ『いやいや、是非にと言われたら一肌脱がさせてもらいますよ！』

ーーあ、はい。では、まずは紹介も兼ねて簡単に質問させて頂きますね。


◆「あまにぃ」という男


ーースロット歴と、その出会いを教えてください。

あまにぃ『スロット歴は２０年超ですね。１８歳の時に東京の専門学校に通い始め、夏頃にバイトを始めようと選んだのがパチンコ屋でした。それまで打った事もなく、店員として働く中で、目押しを頼まれたりしても出来なくて申し訳ない気持ちになり、同じ学校の友人と打ちに行く事になった、というのが始まりですね。』

ーーその時に打った機種はなんですか？

あまにぃ『クランキーコンドル※ですね』
※４号機の技術介入機。リプレイハズシの精度で機械割が変動する、今でもファンの多いユニバーサルの名機。

ーー初心者にはなかなか難しい機種だったんじゃないですか？

あまにぃ『友人に教わりながらだったんですが、入ったよと言われてもボーナスも揃えられず…友人に色々やってもらいながら、その日はなんでか結構勝ったんですよね。今考えればそれが良くなかった…１人でもちょいちょい打ちに行くようになり、次第に目押しも上手くなってきてハズシも出来るようになった。そうなるとリーチ目が出る楽しさを覚え、授業中は雑誌のリーチ目表を眺めていました。』

ーー最初のマグレ勝ちにより、きっちり王道でハマっていった訳ですね。

あまにぃ『しまいには、授業は代返を頼み毎日朝イチから稼働して、昼休憩を利用して学校に行くスタイルが確立していました。根が真面目なので完全なサボりは出来なかったんですよね』

ーーちょっと何言ってるかよくわかりません。

あまにぃ『そうして稼働時間は増えたのですが、初打ち時の様には勝てず…当時は色々イベントあったじゃないですか？ボーナス後クレジットが落ちたら高設定とか。で、初めてそれに当たって喜んでぶん回したらボコボコに負けたり。』

ーーガセイベントも横行していましたからね…ちなみにそうした、あまにぃらしい無様な大負けってたくさんあると思うんですが、何か特別記憶に残っている事ってありますか？

あまにぃ『あります！忘れもしない！まずはリズムボーイズ※で人生初の１０万オーバー負け！』
※不思議な連チャンと不思議なハマりをする不思議な機種の代表格。メーカーとは何の関係ありません！

あまにぃ『適当に打つばかりではダメだと、雑誌等で情報を吟味し、当時有名だったＧ系列のＳ店に大好きなＢ-ＭＡＸ※を打ちに行ったら、高設定札が刺さったのに１２万超負けたり…ＡＴＭに数回走りました…』
※大量獲得と出目・技術介入で人気だったアルゼ(現ユニバーサル)の名機。

ーーいいですね。そういうのもっとください。普通、そんなに負けていたら嫌になりませんか？

あまにぃ『はい…さすがにそのＢ-ＭＡＸの時はこんな店２度と来ない！もう打たない！と心に誓ったのですが、翌日同じ店同じ台で稼働して、ＢＩＧすら引けず負債を重ねました…』

ーー死体に鞭打たれた訳ですね、お似合いです。それ以降は？

あまにぃ『卒業後は、某巨大パチンコチェーンで働いたり全く他の仕事もしたりしましたがあまり変わらないですね。時間がある時に好きな機種を打つ。あれから結構時間が経ってるはずなんですが、サイクルはあまり変わらないです』


◆身代わり地蔵という生き方


ーーところで、あまにぃは一部で(私に)身代わり地蔵と呼ばれ、ありがたがられているとか…

あまにぃ『…確かに友人と打ちにいくと自分マイナス５万・友人＋５０００枚みたいな経験は枚挙に暇がないけど…特に最近はそれを感じますね、あの機種のせいで』

ーーそれはもしや…

あまにぃ『ええ、あいつです。ディスクアップ※』
※設定1でも完全攻略で１０３%。その甘さだけではなく、技術介入性・制御や出目で楽しませてくれるサミーの名機。

あまにぃ『あれ、１０３%って嘘ですよね？』

ーーいやいや、賛同を求めないでくださいよ…

あまにぃ『だって、全然勝てないんですけど…４号機世代なので技術介入には多少の自信がありますが、まず同色が引けない。引けたとしてreadyが鳴らない。鳴っても３Ｇばかり。ＤＴ突入率は１／５。これでどうやって勝てと？』

ーー闇が深いな…

あまにぃ『Twitterとか見てると、やれディスクアップは甘いだの通算○○枚プラスだの…なんでみんなの上振れ分の調整役を引き受けなきゃならないのか…』

ーー私は適役だと思いますよ？その身代わり地蔵ぶり、みんな感謝してますよ？

あまにぃ『……なんか勝ってる側みたいな言い方してますけど、あなただってこっち側でしょ？知ってるよ？ディスクアップの通算マイナス差枚、たしか２万…』

ーーあいつだけは許さない！絶対に！！


◆ディスクアップ

ーーとはいえディスクアップ。私達４号機世代にも刺さる名機というのは間違いないですね。

あまにぃ『どうしてもその機械割と技術介入に目がいきがちですが、実際ディスクアップの魅力はそれだけじゃないですよね。現在の規約の中でよくあれだけのＡタイプが出てきたなと感心するばかりです』

ーー同感です。あまにぃにもわかるディスクアップの良いところを教えてください。

あまにぃ『技術介入で言えば、自分で割を掴みとる自力感ですね。あとは出目だけで完結しない制御。同じ出目でも１コマ滑ってたら…など、奥が深く打っても打っても楽しめる。条件２確とか、最高です！まぁ、だからこそ負けてても打っちゃうんですが…ディスクアップって、完全無抽選のゾーンあるじゃないですか？ボーナスはもちろん、ラジカセすら出ないゾーン。』

ーー…否定しなきゃいけないんでしょうけど、正直同意を禁じ得ない(個人の意見です)。

あまにぃ『あれも、結局シンディに出会えるだけで許せちゃう。シンディかわいいよシンディ。おはシンディ※する為に打ってると言っても過言ではありません』
※その日最初のシンディ登場への挨拶としてネットで広まっている造語。この度公式LINEスタンプに採用されたという経緯がある。

ーーこの間の連れ打ちの時も、久々なのか反転シンディに興奮して写真たくさん撮ってましたね。正直気持ち悪かったです。今は主にどういう打ち方していますか？

あまにぃ『滑り音演出やレバーオンルーレットなど、ボーナス期待度が高い場面は中押しで赤７中下段狙いをしています。ディスクアップは変則押しでガセリーチ目とか出るんですけど、こちらに楽しみ方が委ねられているというか、意図したかはわかりませんが一通り順押し・順ハサミをやった後の新たな開発余地がある。中押し赤７狙いは第３停止まで期待が引っ張れるので気に入ってます。
中下段赤７停止から右下段に黒ＢＡＲ狙い。４コマ滑りでチェリー付き赤７降ってきて下段テンパイとかもたまりません！』

ーーあまにぃにしてはそれ、いいですね！私も今度試してみたくなりました！


◆６号機時代を迎えて

ーー私達は４号機時代からスロットを始めた世代な訳ですが、今は６号機へと移り変わるタイミングです。あまにぃは何か思う事はありますか？ というか、６号機って知っていますか？

あまにぃ『低設定での、ほぼ負けるしかない感覚は否定できませんね。有利区間の問題でもあると思いますが、結果低設定だけどたまたま事故って勝てた、みたいなパターンが激減するのは長い目で見て厳しいと思います。
あとはノーマルの６号機がどうなっていくかはもちろん気になります。出玉面での上限は正直不満ですがどうなっていくのか…設定が使われるのか…
ただ逆に、ホールの判別には良いと思います。誤爆での誤魔化しが効かないから、ホールが設定使っているか否かが伝わりやすい。
打ち手としては、設定６は安定感が段違いだと思うのでやる気のあるホールに行きたいですからね。』

ーー勝率で言えば６号機の設定６は安定していますからね。…そういえばこの間、叛逆※打った時に、あまにぃのくせに６確画面出してましたよね？私と一緒の時に出されたので、腹が立ちました。
※SLOT劇場版魔法少女まどかマギカ［新編］叛逆の物語。キラーコンテンツ６号機最初の１台。

あまにぃ『ああ、出ましたね。６確自体出たのは最後のＡＴ後だったけど、午後には確信して回してました。』

ーー先ほど話されていた「安定感が段違いの６号機の設定６」ですよね、羨ましい。結果はどうだったんでしょうか？いくらあまにぃとは言え、さすがに勝ったんですよね？勝ったんですよね！？

あまにぃ『え？一緒にいたのに聞きます？…普通に２万負けたよ？なんならプラス域にいた時間帯もほぼ無かったわ……そのうえ、あなたが引いたフリーズの動画は撮らされるし…なんで自分っていつもこうなんだろ…６確画面出た後にマイナスだけど時間的にやめなきゃならないあの辛さ、あなたにわかりますか？
フリーズ動画をTwitterにあげたらあげたで、自分が引いたフリーズと勘違いした人達からのたくさんの「おめでとう」に「僕じゃないんです…」と返さなければならなかったあの辛さ、あなたにわかりますか！？』

ーーいえ、わかりたくもないです。


◆明日に向かって打て！

ーーまだまだ聞きたい事はあるのですが、じゅうぶんあまにぃらしさは聞かせて頂けたと思います。ありがとうございました。

あまにぃ『え？もう終わり？まだ悲しい話と恨み節しか語ってない気がするけど…勝った話も少しだけありますよ、例えば…』

ーーいえ、大丈夫です。必要ありません。最後になりますが、これからのご自身について聞かせてください。

あまにぃ『なんだかんだでこれからも、好きな機種を好きな様に打っていくかと思います。幸い、回りに仲間も多く楽しく打てる環境なので。勝ちは大事ですが、何をもってして勝ちと言うかは自分次第。とりあえずの目標は、そろそろディスクアップに勝つ事ですかね(笑)』

ーー今後も、連れ打ちでの身代わり地蔵よろしくお願いします。あまにぃ、ありがとうございました。




後日、あまにぃから『あんな感じで大丈夫だった？決勝戦頑張ってね』とメッセージを頂いた。ありがたい。 お礼として、本当はあまにぃがディスクアップや６号機にもっと暴言吐いていたのを、彼の好感度の為にマイルドに書いてあげることにする。
続けて送られてきたメッセージには、あるスランプグラフが添付されていた。機種名には、ディスクアップ。

そのグラフは、序盤に大滑降をし、じわりじわりと盛り返すも再びの滑降。それでも諦めずにレバーを叩き、遂には±０ラインの少し下に到達していた。まるで大冒険。
添えられたメッセージにはこうあった。

『今日はあまり負けなかった、嬉しい！』

空を見ると、冷たくなった風の向こうに夕日が落ちかけている。その夕日の輪郭が、何故だかほんの少しだけぼやけて見えたのを、私はきっと忘れないだろう。

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