初めて見たパチスロ（1990年）

佐々木真パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

今に始まったことではないですが、喫煙者には肩身の狭い世の中となってきています。まだまだ詰める部分もあるでしょうが、パチンコ屋も喫煙室ありの全面禁煙となるようですね。

喫煙率は下がっていますし、世の健康ブームを考えたら当然のことでしょう。いや、私は喫煙者ですけど。ただ、タバコをちょっと吸いたいから『クラセレ』にお賽銭ということは減るのかな。喫煙室直行になることでしょう。

喫煙室を作るための改装費用、その間の休業分。それを賄うくらい非喫煙者の稼働が上がってくれればと願うばかりです。そういうアピールをしようにも広告規制が邪魔になる可能性ありますからなあ。

パチンコ店って、“潔癖的な方”には信じがたい世界だと思います。依存問題などもありますし。善悪の2択なら悪と捉える方が圧倒的に多いでしょう。でも、私は思うんですね。他人に迷惑をかけない程度の“チョイ悪”の背徳感も人生の楽しみって。そこから学ぶこともあります。パチンコ屋に集う人たちを見て、社会の縮図だな〜なんて斜に構えていたあの頃の私……。

初心者ホイホイのパチンコ環境

私がパチンコを始めたのは1990年のこと。高校を卒業して予備校生になったところからです。元々、中学時代から麻雀もやっていましたし、高校にも競馬新聞を持ち込むほど。濡れ手に粟という言葉が大好きそうなダメ人間なのは否定いたしません。

名門・代々木ゼミナールの門をともに叩いた悪友から教えられます。「絶対に勝てる良いものがある」と。それがパチンコでした。

▲『マジックカーペット』（1988年：SANKYO）貯留型羽根モノの名機

朝イチに台を抑えて200円分の玉を借りると、店員さんがドアを開けてV入賞してくれるモーニングサービスが多くの店で採用されていました。完走させられれば即流しでも2000円程度。良さそうな台を粘って3000発の打ち止めまでいけば7500円。負けても200円です。

いまは禁止されてしまっていますけどね。高校を卒業してすぐにパチンコデビューする人が多かった時代ということはご理解いただけるでしょう。40代中盤以上のパチンコ人口が多いのは、こういった間口があったのも大きかったと思っています。

友人などにパチンコ・パチスロをはまらせる場合、一番効果的なのは、当たりや連チャンゾーンだけ打たせるのが効果的なんです。楽しいところだけ打たせる。モーニングサービスは、まさにその極みですね。

新装では出玉を見せて当たり前。ユーザーに対する先行投資は年々減っていると寂しくなったりします。新規ユーザーが減って、一部の人の趣味となってしまい、狭いパイからの取り合いという構造になったのもありますが。

勝てるという釣り言葉もありますが、モーニングなしにしてもお財布にも優しかったですね。初打ち機種の『マジックカーペット』。羽根モノですがパンクありの8R制。2.5円交換の3000発定量という営業が主流だったこともあり、まあ普通にポコポコと当たるわけです。

パチンコって楽しい。ほかの機種も打ってみたい。これこそお店の思うツボ。モーニングで勝った分以上、デジパチや一発台で負けるようになっていきました(笑)。

それでも近づけなかったのが、パチスロのシマです。

シマに入るだけで視線が突き刺さる

パチスロが法整備されたのは1985年から。1988年に遊技機規則が改正され2号機に。1990年には同様に3号機となりました。いまの感覚にしてみると、号機が変わって一斉撤去となりそうですが、そんなことはまったくなく。どのホールも主力は1号機でした。

▲『ニューペガサス』（1987年：パル工業）1号機最大のヒット機種

1号機のみで認められていたのが“吸い込み方式”という特殊な抽選方法。規定枚数を飲み込ませるとボーナスが強制的に成立するものでした（機種によっては高確率での抽選）。

払い出された小役分も打ち込まなければ……というのはありますが、簡単に言えばストック機のネタ元。『モンキーターン』や『沖ドキ』といった5号機のARTやATのルーツです。

いろいろなサイトや攻略誌から情報を得ていればさほど怖くなさそうに感じますよね。1990年なんてインターネットも銀行ATMくらいしか使われていない時代。攻略誌を買えるコンビニすら多くないのが実情でした。それだけならまだいいのかも。

台上のゲーム数カウンタとかありません(笑)。
ついでに言うと、台間のコインサンドすらございません(笑)。

ちょっとシマをすり抜けて向こうに。それだけでシマのほとんどの人からの視線が突き刺さるんですよ。毎回、1000円ごとに通路の端にある機械までコインを借りに行くのが面倒なんですね。その人の両替のパターンを覚え、何回歩くか覚えておく。そうすることによって、天井までの距離を推測していたんです。

いまのハイエナさんは、いろいろなホールを台上カウンタでチェックしていますけど、1軒に巣食わなければどうにもならなかったんです。しかも、7枚交換とか交換ギャップも大きい。

みんな視線だけ投げてくる割に、あまり移動しないんですね。良い台に座ったら動かない。天井狙いなんぞ、最終手段。でも、その最終手段のためにチェックは欠かさない。

これがわかった瞬間に思いましたよ。パチンコ屋に行くようになって1年間、パチスロを触らなかった俺、偉いって(笑)。

誰でも入れるように見えて、入っちゃいけない場所がある。社会でもいろいろそういうところありますよね。

1号機時代のパチスロ

“吸い込み方式”の『ニューペガサス』が人気と書きましたが、これをちゃんと打てるようになったのはずっとあとのこと。ほかの1号機はスロゲーセンで少し打てたくらいなんですけどね。この時代ならではの特徴を少しだけ解説しておきたいと思います。

１）攻め方が変わる
吸い込み方式は、払い出された小役分も飲み込ませなければボーナスが近付きません。増減枚数は同じになりますが、効率が変わりすぎるんですね。通常時はなるべく小役を獲得しないように打つ。って、吸い込み方式じゃなかった場合は、いまと同じように小役を獲得しなければならないわけで。

情報も少なかった時代に、どちらのシステムかも気にしながら探っていた当時の方々を尊敬するものであります。スロゲーセンでも初打ちする場合は毎回ヒヤヒヤですよ(笑)。

２）リーチ目がわかりにくい
ATやARTのような付加機能がないため、外見上はノーマルばかりとなるわけです。いまなら液晶演出やリーチ目で察知することになりますが、当然のごとく液晶はございません。リーチ目もテーブル制御が進化し始めるまでは、さほどあるわけでもなく。なんならリールのバックライトすらございません。下パネルも常に全消灯です。

そこで活用されたのが、ボーナス成立後の小役です。“等倍返し”というボーナス成立時点の枚数まで戻そうと小役確率を上げてくれる機能も主流でした。『ニューペガサス』なら、逆押しで小役テンパイせずからの左リール単チェリーなど。小役をハズしつつボーナス察知をしていたんですね。

３）一部機種には絶大な攻略法も
『トロピカーナ7X』や『ファイアーバード7U』は、BIG中に特殊な手順をすることによって、480枚や600枚を獲得することも可能でした。ほかの一般的な機種は360枚なので突出していますね。

私がパチンコ屋に入るようになったときには既になく。スロゲーセンで試行錯誤しながら楽しんでおります。はい。

こんなものかな。『アーリーバード』や『ブロンコ』の小役周期とか説明するとややこしくなるだけなんで。

6号機のデビューまではまだ時間があるので。昔話をしつつ、間をつなぎたいと思います（笑）。1996年あたりからは、4号機の進化の歴史になりそう。その時々の勝ち方やシマの空気感もちょいちょい混ぜて書きますね。次回は2号機！

ちなみに、シマの端にコイン貸し機があるのはまだ良いほう。その前はカウンタまで行って借りていたそうな。50枚ごとで紙に巻かれて出てくるコイン。投資金額を「1本」などと本で呼ぶのは、その名残です。次のパソコン通信（1995年あたり）の時代の方は「1K」。キロで呼びますね。ギガとかテラの時代に失礼いたしました(笑)。

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佐々木真: 代表作：パチスロ攻略ライターの思考ルーチン

裏モノ全盛期に“ギャンブル”としてパチスロを始めたが、技術介入機時代に最適手順を模索するなど“遊技”としての魅力にはまり、履歴書に大きな穴をあけてしまう。2000年よりパチスロ雑誌などで編集兼ライターの活動を開始。現在は、ほぼすべての機種の発表会や取材に参加。法律・規則などの知識をもとに、根幹システムの推測をライフワークとしている。