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あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~
2015.09.18
あのときオレはクズだった 第37回 ~第2部ガイド編
田中(クズプロ田中→クズ田中→田中) あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~
悩みを吐き出した末に行きついた結論が、大きく人生を変える!?
閉店間際の旅行会社にかけこんで、フィリピンの本土に乗り込んだのが2009年2月のこと。パチスロ業界はすっかり5号機時代に突入しており、その時々に瞬間的なプチヒット機種はあったものの、4号機全盛時の勢いはすでになくなっていた。しかし、ライター業界は、まだまだバブルが始まったばかり。増刊系の本があまり発売されなくなったこともあって原稿仕事は若干減ったものの、イベント系の仕事はまだまだあり、ゆるい生活を送りながらもたまに東南アジアに出かける、そんな日々を送っていたのだった。
だけども、自分も気がつけば20代後半である。これまでなにも考えず適当に生きてきたけれど、果たしてこのままでいいのだろうか。普段はそんなことまるっきり考えないが、海外の街並みを眺めながら何時間もボーっとしたり、気の許せる仲間と酒を飲んでいるときに、ときおり現状について、将来についての話をするようになってきた。要するに、おっさんになってきたわけだ。
第一、もう7年以上もライターをしているけれど、どうにもパッとしない。もちろん、それなりに仕事は回ってくるし、うまくこなしてはいるけれど、かといってライターとして大成するような器じゃないことはこれまでで十分にわかった。じゃあ、このまま死ぬまで自分は、仕事をこなすために生きていくのだろうか。だいたいイベントに呼ばれて、代理店やホール関係者がぺこぺこしてくれて、1日でアルバイト時代じゃ考えられないようなギャラをもらってはいるけれど、そんなものは自分の実力でもなんでもない。実力のある先輩が引っ張ってくれているから仕事もお金ももらえているだけで、いったい自分という人間はどこにあるのだろうか。
そんなことを考え始めたら、止まらなくなってきた。このまま、ある種の後ろめたさを感じながら分不相応なお金をもらい続けることは、果たして長い目で見たときに自分にとってプラスなんだろうか。ここで変に勘違いしてしまったら、自分の人生はこの先、ツマらないものになってしまうんじゃないだろうか……。
そんな考えをこじらせた結果、自分が出した結論はパチスロ必勝ガイドを辞めることだった。正直、いまのままお金をもらいながらでも、自分さえしっかりしていれば大きく道を踏みハズすことはないだろうと頭では理解しているのだけど、それ以上に、自分が根っからのクズだということも十分に理解している。ラクな状況に身を置いたまま自分を変えられるような、己を律していられるような強い人間じゃないことは痛いほどわかっているので、なにかを変えようと思ったら、その要因を根本から断ち切る以外にないのである。
そう思ったらいてもたってもいられなくなり、ガイドに入って初めて、編集長に直接、電話をした。そして、話があるので飲みに行けませんかとお誘いをしたのだった。
編集部の近くにある、地下の小料理屋に編集長と入ったのは、その日の19時前だった。奥の小上がり席で最初のビールをグッと飲みほして、助走もないままに結論を告げる。
ボク、ガイドを辞めようと思います。
なにか相談ごとだとは思っていたが、まさか辞めるとは思っていなかったのだろう。編集長が一瞬、驚いた顔をしたのがわかったが、酒の勢いを借りながら、そのまま思いを吐き出していった。
ひとしきり話終わったところで、それまで黙って話を聞いていた編集長が、口を開いた。
フリーの立場で仕事をしているんだから、ギャラの良い仕事をどんどん受けることは当然のことだと俺は思うけど、それを後ろめたいと思うのであればイベント仕事は辞めればいいよ。でも、原稿に関しては先輩がどうこうではなく、田中に書いてほしいと思っているからこちらは依頼をしているわけで、それを辞める必要はないんじゃないか。
そんな話をしていただく中で、少し冷静になってきた。これまでも、設定変更がわかった店に通うのがツマらなくて行くのをヤメたり、そういった極端な決断しかできなかったけれど、原稿は望まれて書かせてもらっていることだし、自分のなかでうまく折り合いをつけてやっていけるかもしれないな。そう思ったら、なんだか少し心のつかえが取れて、編集長にイベント仕事はヤメるけど、ガイドの仕事はこのまま続けさせてくださいと、そう告げていた。
そんなこともあって、要するに元のサヤに納まることになったわけだが、実のところを言うと、話し合いの中盤くらいからは、ヤメるとかヤメないとか、そんなことはもはやどうでもよくなっていた。その地下の小料理屋で出された激ウマのしめ鯖をアテに芋焼酎のロックをぐいぐいやっていたらいい感じにデキあがってしまい、そんな小難しい話など、途中からは、もはやしたくなくなっていたのだった……。
結果、べろべろに酔っ払いながらどうでもいい身の上話を編集長に吐き出して、ぐいぐい酒を飲んだ挙句に1円も払わずに満足して帰るという、いったい今日はなんだったんだろうという飲み会を終えて、ひとり上機嫌で家に帰っていったのだった。
……編集長、あのときはごめんなさい。
あのとき打っていた「怪盗天使ツインエンジェル2」 |
【メーカー】サミー 【販売年月日】2009年3月 【タイプ】ノーマル+RT
2009年の代表機種といえば「忍魂」か、はたまた「ダッシュ勝平2」なのか、大穴の「うまい棒」、「アイアムコニシキ」あたりも見逃せませんが、やはり本命は『快盗天使ツインエンジェル2』でしょうか。当時、わたくしはフジテレビCSのパチスロ番組で裏方仕事をしていましたが、編集作業で30時間ぶっ続けでツインエンジェル2を打つ映像を観ていて、気が狂いそうになったことを覚えています。
クズの成績表:★☆☆☆☆(出たな!真面目クズ) |
本当に田中氏はデキの良いクズだよね。本物のクズだったらこんなこと考えないし、そもそも周りの人間も本物のクズは引っ張り上げない。
でも、ちょっとだけ出てくるものがクズなんだよね。中身は凄く綺麗な感じなんだけど、絞り出してみるとなんかきたねぇな、って感じはなんと例えればいいのでしょう。
う〇こか? いやう〇こは元々きたねぇか。
コンセプトとかは凄い良く出来てるのに、最終的なデザインとか表現がイマイチな感じ。
ところで編集長、僕の悩みも聞いてくれませんか?
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- 田中(クズプロ田中→クズ田中→田中)
- 代表作:あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~
パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。
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