コールドゲーム

ずいぶんとよく寝た気がするけれど、実際はそんなこともなく、せいぜいが6時間といったところだった。


今日という日も、別段何をする必然性もなく、けれどぼんやりとではあるが稼働するべきだと思いはするわけではあるが、かと言ってほいほいと出かけるわけにはいかなかった。

前の日、安心安定の産廃メーカーことニューギン殿の素晴らしき新台「バスタード」を打っていたときだ。潜伏8ループという失笑以外の何物でもない展開で、愚の骨頂と言わざるを得ない通常時を心で泣いて、顔でも泣きながらハッカ飴をガリガリと噛み砕きつつ消化していると、携帯が震えた。


「どうせまたくだらない飲み会の誘いだろう。行くに決まってるだろうが」と通知を見ると、なんのことはない。東京に働きに出てしまったかわいそうな友人からの連絡だった。休みで大阪に帰ってきている、明日の夜に帰るが、その前にちょっと顔を出すとのことだったので、思いを込めたあざらしさんのスタンプを送信してふたたび苦行に戻った。

液晶画面では安っぽいアニメーションでバカがバカなことをしていた。つまりは客をバカにしていたのである。

時刻は21時。すなわち空腹である。




そして今日の昼になって友人はやってきた。時間は守るタイプのやつである。ぼくの友人の中では少ないタイプのやつだ。

なんてことはない話をした。東京での仕事の話や、休みの日は何をしているとか、相も変わらず彼女はいないとか、職場の近くのラーメン屋の話とか。そのお返しにこちらも「俺様は無事にクソみたいに高い学費を払って大学を卒業して万民の夢である無職に就き、いまやっていることと言えば日中は期待値という数字のマジックみたいな、世界の真理みたいな、かいつまんで言えば信じる者は報われるかもしれないけど信じたところで別に徳が上がるわけではないものを追いかけてなんとか生活できそうである」ということを述べたら、鼻で笑われるかとも思ったが意外とそんなことはなかった。

そういう点で、お互いに大人になりつつあるということを嬉しくも思い、同時にどこか寂しくもあった。大人というのはいつの時代だってならなくて良いのならばその方が良いに決まっているものだからである。


夕方近くなり、しとしとと雨が降る中、友人は帰って行った。東京に帰るなどと言えば、戦前はどんなろくでなしの親でも泣いて止めたであろうが、いまやそれこそがまるで成功者への道だと言わんばかり。やれヒルズだ、やれお台場だ、やれ吉祥寺だともてはやされているが、しょせんは高くて高価いビルであり、埋め立て地であり、犯罪率の高い町である。とても人間の住むところではない。


友人を改札の向こうに見送ったあと、ちょっくらドンの野郎でもしばきに行こうかとすぐ近くのマイホへと足を向けたワシは、そう言えば傘の骨が折れていることに気づいたが、別に気にするほどのことでもなかった。折れても別に使えるのだ。人の心よりも傘の方がよっぽど強い。


最初の店で目に入ったのは、絶賛マイブーム中のマジハロ5だった。なんてことはない台だ。適当にボーナスを引っ張ってきて、あとはカボチャを栽培し続けていればどうにかなる台である。月火ちゃんが「ほらどすこい！」とのたまっているイヤホンを耳から引っこ抜き席に着いた。幸いにも132GでBIG1、REG2スルーである。なかなかどうしていい具合に育っておる。ボーナスを一発二発引っ張ってきてやればカボチャが出荷できるであろう。






最初のボーナスは439Gであった。解せぬ。




しかしREGで夜背景だったので結界防衛ゾーンは余裕であろう。






全然そんなことはなかった。ますます解せぬ。



しかしあと一発REGを引けばARTは固い。マジハロのボーナス確率は1でも1/167である。ならば引けぬ道理はない。





次のボーナスは590Gであった。これはどうやら私の知っているマジハロではなかったようだ。



しかしREGである。ARTにはもちろん突入した。



そしてこれである。

ボーナスを連れてきたのはことごとくが強チェリーであり、他のやつらの体たらくたるや。ただの賑やかしであった。

唯一の見どころは魔界に行ったことくらいであろう。もちろん行っただけである。なんの成果も得られなかったのである。まさに魔界観光である。勘弁してほしい。




親切なおいどんは先にここで述べておくでごわすが、今日の見どころはここで終わりでごんす。あとはただサンドから出てきたメダルを台に飲ませるだけの単純かつ破滅的なお仕事があるのみである。ご承知の方だけこの先に進んでほしい。そこにいるのはただの機械と化したバカモノだけなのだ。



妙な疲労感を背負ったまま別の店に行くと、打てなくなくもなくなくなくな台があったのでとりあえず消化しておくことにした。バジリスク絆の0スルー284Gである。



察しの良い読者の方ならばお気づきであろうが、もちろんなんてことはない。弦之助は来なかった。やつは来ない。具体的に言えば4回に1回ほどしか来ない。悪い時には11回に1回しか来ない。とにかく女を待たす。ろくなやつではない。やつに来世などないのだ。


455Gで謎当たりしたものの、朧待ちぼうけ。三日月だったが峠スタートだったので様子を見ていると14Gで巻物から当たるも、またもや朧立ち尽くし。峠では並んで歩いていたのに、どうしてすぐにいなくなるのか。失踪癖でもあるのか。ふたたび高確に引っ張られ解放されたのは41Gであった。



続いて隣の店へと入った。パチンコ店onパチンコ店である。何も知らぬ人から見ればまったくもってド畜生である。もちろん承知の上である。


ここでも雨のせいか知らないが、驚くほどスムーズに台を拾うことができた。雨万々歳である。


神々である。神々というやつは嘘つきである。まずやつらの語る純増はもちろん騙りである。純増3枚などあるはずもない。せいぜいが2.5枚である。でなければGG1セットでの獲得枚数が300枚超えなどというミッションがあろうはずもない。そもそも超えられないから搭載されているミッションである。


そして出ない。神々ほど出ないマシンを某は知らない。やつらはせいぜい出して300枚…失敬、250枚である。あるいは500枚である。ではなぜ皆が打つのか。


稀に出るからである。やつらは5000枚を一瞬に吐き出すこともある。もちろんその倍もある。その夢を見てみんな福ちゃんを放り込むのである。そして出てくるのは300枚……失礼、250枚なのだ。


だがおれっちはまだそれを知らない。せいぜい出せて3000枚だ。そこで打ち止めだ、赤玉だ、スープ切れだ。

Meは神々で5000枚以上出せるすべての人を尊敬している。おそらく絶対に自分にはできない所業だと思っているからだ。

もちろん拙者も1/8192くらいは引いたことがある。今まで凱旋で1度、ハーデスで2度ある。しかしGODを引いたところでさして出ないのが神々でもある。

しかしそれでも凱旋を打ちたくなるときはたまにある。年に10日くらいある。それはSGGとG-STOPとGOD揃いが楽しいからである。






他の356日は凱旋など大嫌いなのである(うるう年)。



この日のやつは凱旋の方だ。凱旋と言われても、まず最初の訪問を知らないので、どこに行ってからの凱旋なのかよくわからないが、それでも凱旋なのである。本人が凱旋だと言うのだからそうなのであろう。481Gで前日が250Gなので、合計で731Gである。リセットなら非常に良いのであるが、リセットだと願った瞬間据え置きになるのが凱旋の切ないところである。


シュレディンガーの猫みたいなものだ。箱の中の猫はふたを開けてみるまでは生きているか死んでいるかわからないという、世の中の中二病の100人に99人がさも堂々とのたまうあれみたいなものだ。目の前の凱旋がリセットか据え置きかは天井に行ってみなければわからないのであるが、少々場数を踏んだスロッターならわかってしまうのである。

もちろん、据え置きだ。その瞬間、510Gの仮天井だとかはなくなる。あっさりと当日1000Gを飛び越えていくからである。


途中、明らかに天国にいたのだが、そんなものはなかった。天井到達である。


凱旋のジレンマ、というものを知っているだろうか？

凱旋には夢がある。正確には、凱旋の天井には夢がある。50%で80%ループに当選するからである。ゆえに微妙なゲーム数で高モードにいると当たってほしくないのだ。下手なところで当たって単発よりも、天井に行っての爆連に夢を馳せるのだ。


しかしこれは罠である。まずヒキの弱い人間は天井で良い方の50%を引けない。引けないので、その先はない。すべては絵空事、二次元の嫁と同じである。




そしてもちろん、今回も単発である。何を隠そう、我は神々に嫌われている。凱旋にいたっては天井まで登ってから80%のループなど見たこともない。凱旋の天井は単発しか知らない。一度だけ2連したことがあるがあんなものは単発である。自力で1セット乗せたのだ、実質単発だ。


神に強盗されて向かったのはまたもやニンジャである。古来からある方のニンジャである。決して本編もないのにガイデンとか言っている方ではない。


ニンジャは0スルー295Gである。お察しの通り、天井で、ランプは青で、三日月である。とうとう弦之助には会えなかった。やつはどうせ陽炎と乳繰り合っているのであろう。


もう一度隣の店に行くと、ミルキィホームズの4話があったのでとりあえず触っておいた。お察しの通り、当たらずである。次が1話だったのでやめた。50枚ほどの残りメダルを流すことはむなしい。



最後にもう一度最初の店に戻ると、夜になり盛況さに磨きがかかっていた。なので意外に拾える台もあった。



パトレイバーである。キタックの新台である。キタックなのでもちろん、赤文字や少々のチャンスアップを信用してはならない。ランプが光らない限りは信用ならない。


ガチャ間405Gがあった。ガチャ間天井でチャンスの権利を2回もらえた。



わっちは知っている。このガチャガチャンスとかいうやつは1/6でAT直撃するという。もちろん嘘である。直撃しているところを見たことがない。何せキタックである。これで本当に1/6ならば逆に訴訟ものである。フランク三浦とともにキタックも訴えざるを得ない。


権利で出てきたのは強スイカと弱スイカであった。もちろん前兆に行って負けるのである。既定路線だ。


続いてガチャ間377Gも拾った。これは自力で権利を1回獲得した。もはやなんの小役が出てきたかは覚えておらぬ。ただATなどはなかったということだけは覚えている。

これでガチャガチャンスのAT当選率は0/7である。仕方のないことである。だって1/6のはずがないのだから。



∇4月13日収支
▼マジハロ5：－16980円(－849枚)
▼バジリスク絆(1台目)：－4859円(－273枚)
▼バジリスク絆(2台目)：－5403円(－285枚)
▼ゴッド凱旋：－23535円(－1316枚)
▼ミルキィホームズ：－961円(－54枚)
▼パトレイバー(2台合計)：－6580円(－329枚)

合計：－58318円(－3106枚)


きっちり立ち回った結果、今年に入って1日での最高負け額を計上したのである。敗因はわかっている。






ヒキ弱である。





期待値稼働はつらい。何せコールドゲームがない。どれだけ負けようと途中で終わることは許されない。目の前に打てる台があれば打たねばならない。そういう風にできている。

しかしもちろんコールド勝ちもない。なのでアホほど勝つ日もあるはずなのだ。




いまのところその気配は微塵も見えない。

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