- パチセブントップ
- コミュニティ
- パチ7自由帳トップ|ブログコミュニティ
- コラム(ブログ)詳細
あしの流・文章力アップアップ講座(会話文・インタビューヒント編)
あしの流・文章力アップアップ講座(会話文・インタビューヒント編)
-
あしのさん
あしのマスクの中の人。浅草在住フリーライター。インタビューウィズスロッター連載中。パチ7の他は『ナナテイ』『ななプレス』『悠遊道』などでも書いてます。ツイッターもあるよ!@Slot_Ashino - 投稿日:2019/11/19 17:45
文章力アップアップ講座!「インタビュー編」
遠藤周作という先生がいました。「海と毒薬」でデビュー。遺作は「深い河」です。先生の書く小説のテーマは常に「日本人的キリスト教観」でした。例えばマーティン・スコセッシ監督によって映画化されたことで話題になった『沈黙』なんかはモロにそれです。俺も大好きな小説なのですが、めちゃくちゃ考えさせられるんで読んだことがない人は是非一度読んでみてください。
ちなみにその『沈黙』の創作には、イギリスのとある作家の作品が強い影響を与えたと言われております。『権力と栄光』という作品で、書いたのは文豪・グレアム・グリーン。生前、遠藤先生はグリーンを意識し続けていたと言われていますが、確かに二人の作品はよく似ています。ただその「意識」というのは近親憎悪的なものじゃなくて、もっと暖かくて親しいもの。共感とか、連帯感に近いと思っています。
とうわけで遠藤周作先生のエッセイには、たびたびグリーンの小説への称賛が綴られています。グリーンがこう書いている。グリーンはこう言った。など。その中でこんな一節があります。
「グリーンは『会話こそ小説だ』と言っている」
俺がそれを読んだのは大学の頃でした。会話こそ小説。そうかねと。果たしてそれは正しいのかねと。みなさんどう思いますか?
さて。チワッスあしのっす。
本日は文章力アップアップ講座の第二回目。ちょうど「自由帳コンテスト決勝」の直前なので今回は「インタビュー記事の書き方」についてちょっと解説したいと思います。ただ、インタビューそのものにフォーカスを充てると汎用性が低い、使い所があんまりないテキストになっちゃうので、今回はもうちょっとだけ大風呂敷を広げて「会話文」に関するテクニックなんかをちょちょいと。
じゃあ行きます。本文開始!
●そもそも、会話文ってなによ?
まず「会話文」ってなんだろう。という事を考えてみましょう。会話文は当然ながら「人と人」が会話する文章です。地の文(叙述)との違いは「口語調である事」でしょうか。俺の文章、特にコラムは口語調で書いてる事が多いです。なので頭とケツを「」で括るとそのまま会話文になりそうなものなのですが、「対話」はしてないので対話文じゃないです。これを「独白」といいます。
独白文(モノローグ)
対話文(ダイアローグ)
はい、2つありますね。独白は相手が存在しないから会話文じゃないよと思うかもしれませんが、そうじゃありません。相手が居なくても自分で二役やれば良いです。例えば次の文章を御覧ください。
──申し上げます。申し上げます。旦那様。あの人は、ひどい。ひどい。はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねぇ。はい、はい。落ち着いて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇です。はい、何もかも、すっかり全部、申し上げます。
これは太宰治の『駈込み訴え』の冒頭部分です。イスカリオテのユダが銀貨欲しさにイエスを売る話ですね。文中で語ってるのがユダ。相手は当然ピラト総督になるはずなのですが、最後までピラトのセリフは出てきません。これが「独白」です。太宰は特にこういう形で頭からケツまで書ききる小説を多数残しています。「女生徒」とかね。これらをすべて「一人称独白形式」といいます。ではこの「独白」が会話なのかどうかを検証してみましょう。ピラトのセリフを()で補完します。
──申し上げます。申し上げます。旦那様。あの人は、ひどい。ひどい。(厭な奴なのか?)はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねぇ。(落ち着いて申せ)はい、はい。落ち着いて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇です。(では最初から、全部話してくれるな?)はい、何もかも、すっかり全部、申し上げます。
こんな感じですね。もともとの文章も注意してみると「ユダがピラトのセリフを補完する」形で、それとなく一人二役を演じているのがわかります。それが分かるのが「はい」という返答が入るから。ここでピラトが何かを言って、ユダがそれに答える形で次に進んでいるのが意識せずにも分かるようになっているのですね。なのでこれも立派な会話文と言っても良いと思います。
じゃあ次、これを「対話(ダイアローグ)」にした時、どんな文章になるのでしょう。見てみましょうか。
「申し上げます。申し上げます。旦那様。あの人は、ひどい。ひどい」
「厭な奴なのか?」
「はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねぇ」
「落ち着いて申せ」
「はい、はい。落ち着いて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇です」
「では最初から、全部話してくれるな?」
「はい、何もかも、すっかり全部、申し上げます」
はい、駄文ですね。これは全然ダメです。色々ダメなんですが、まず「テンポが悪い」というのがすぐに分かると思います。これは太宰が「独白文」で予め書いてる所に俺が無理くりセリフをねじ込んでるせいもあるのですが、そもそもユダの言葉があまり「対話文」として書かれてないからなんですね。
何が言いたいか。つまり独白には独白のテクニックがあるし、対話には対話の書き方があるぞと。そういう事です。両方とも口語調の会話文なのですが、会話をそのまま書くのが対話。片方に絞って書くのが独白だと思って良いです。
●対話? 独白? インタビューはどっち?
ではインタビューですけども、これは書く人によってまちまちです。インタビューを行うのには「インタビュアー(聞き手)」と「インタビュイー(話し手)」が必要です。なので対話文になって然るべきなのですが、例えば俺の「インタビュー・ウィズ・スロッター(以下IWS)」のように、インタビュアーの言葉がバリバリ出てくるインタビュー記事は結構少ないです。
雑誌なんかではインタビュアーがまるで不在であるかのように書いてある記事も別に珍しくありません。例えばじゃあ……、拙作からちょっと抜粋してみましょうか。伊藤ひずみ先生のインタビューから。
(IWS『伊藤ひずみ先生編』より)
「ひずみ先生、今日はお時間頂いてすいません……」
「いえいえ。こちらこそ!」
「早速ですけど子供の頃ってどんな子でした?」
「どんな子だったかなぁ……。保育園の頃とかは、倉庫の裏で土掘るのが好きでしたね」
「それただ掘るだけですか?」
「いや、ミミズとか捕まえてましたねぇ」
「あぁ、前世モグラだったんですね?」
これですね。これは俺とひずみ先生の言葉のキャッチボールなので「対話」です。これを雑誌のインタビューっぽく独白に編集してみるとこうなります。
(独白改造版)
「子供の頃がどんな子だったか? そうですね。保育園の頃とかは倉庫の裏で土を掘るのが好きでしたね。ただ掘るだけじゃなくミミズなんかを捕まえて。前世がモグラだったんじゃないかってくらいね(笑)」
これですね。これぶっちゃけどっちも正解です。要するに「インタビュー記事はインタビュアー不在でも構わない」んです。ホントにどっちでもOK。成立します。というかそっちのほうがインタビュー記事としてはメジャーで、俺の書き方が異端です。で、この両者にはそれぞれ長所・短所があります。羅列してみましょう。
【インタビュー記事の形式。長所短所】
対話文(IWSの場合)
長所
・ボケとツッコミに分れる事ができる。
・キャラを出しやすい。
短所
・長くなる
・流れが切れないのでトピックの移動が難しい。
・たまにインタビュアーが邪魔になる
独白文(雑誌など)
長所
・文字数を減らせる。
・流れを自由に切れるのでトピックの移動が簡単。
短所
・キャラを出しにくい。
・キャッチボールが出来ない。
・恥ずかしい話も独白なので語らせづらい。
こんな感じ。今思いつくのがこれというだけで、他にももっとあると思います。そして俺がオススメするのは断然上。会話文です。理由はひとつ。長所の部分にあるのですが「キャラを出しやすい」という所です。人のキャラ(空気感)というのは、コール&レスポンスで成立してる部分が大きいと思います。分かりやすいのが「口癖」ですが、独白の場合は口癖を何度も登場させるのが非常に難しい。なのでのっぺりした印象になる場合が多いです。実は俺も何度かIWSを独白形式に切り替えようとチャレンジしたことがあったのですが、その度に結局ファイルごと破棄してます。
ただ、対話形式はめっちゃ長くなります。独白だとバンバン先に進めるのになぁと思う箇所が、対話だと進めるのにも「流れ」が関係してくるので、スムーズに行かないことも多いです。例えばこの部分。
(IWS『伊藤ひずみ先生』編)
「書いて大丈夫ですかコレ……」
「まあ……どうだろう(笑)」
「この時の事件を振り返って、いまどう思いますか?」
「……振り返ってですか? えぇと……渋谷のヤンキー怖いなぁって」
※「ひずみ先生、高校の頃部活とかやってました?」
「一応テニス部だったんですけども、あんまり真面目にやってなかったです……。ずっと屋上でタバコ吸ってましたね」
「あら……。荒れてたんですね」
この※の部分。高校の部活のトピックに移動する場面なのですが、掲載された分はここに画像を差し込んで無理やり場面変換をおこなっています。これは画像を差し込めるのが前提のテクとして力技で突破してるのですが、当然自由帳コンテストなど「画像をあまり使えない」場合は無効です。で、IWSは注意してみるとそれをめちゃ多用してます。
で、これが独白だと簡単に転換できます。ちょっとやってみましょうか。
(同じ場面の独白)
「書いていいのかどうか分かりませんけどね。渋谷のヤンキーはやっぱり怖いです。あと高校生活で思い出すのはテニス部でした。まあ屋上でタバコすってばっかりでしたけど。え? いや、荒れてはいませんよ?(笑)」
楽勝ですね。自分で勝手に流れを作っていけるんでゴリゴリ進めます。何が言いたいかというと、独白のほうが楽勝なので、自信がない人はこっちで書き始めるのもアリかなと思います。
●形式は決まった! 次にキャラの出し方だ!
さて。独白にせよ対話にせよ。インタビューは「人」にフォーカスしてナンボです。そしてその「人」を書くのにもまた色々注意点があります。一人称は何か、とか。口癖。あとは喋るペース。区切り方。などなどなど。ICレコーダーをお持ちの方は是非インタビューを録音して、一回で良いから聞いてみてください。それだけでも相手を文章の上で再現するのがちょっとだけ簡単になります。なければないで大丈夫ですが、もしお持ちなら。
【空気感を出す要素】
・一人称(僕・ぼく・俺・オレ・私・オイラ)
・語尾(なのォ。だよね。なんですよ。だから)
・口癖(パァンなって。いうたらなぁ。ちゃうねん)
・間
こんな感じ。特に一人称は結構大事なので、しっかり確認しといた方が良いです。喋りでオレって言ってる人でも、書いてみると「僕」の方がしっくり来たり。IWSでは必ず「いまオレって言ってますけど、オレでいいですか?」って聞いてます。語尾もですね。例えば「そうだなァ」という言葉があった場合。これはくすだまんぼーさんへのインタビューはおっとりした感じを出すために。またペロリナさんの時は悪魔感を出すために、奇しくも同じ手法を使ってます。真逆なんですけどね。
で、難しいのが一番下。「間」ですね。これはテクニカルな部分ですが「ダッシュ」と「三点リーダー」は仕事道具の1つくらいに思って使った方が良いです。
──これがダッシュですね。入力方法は「だっしゅ」で出てきますが横書きの場合は「けいせん」で入力するほうが良いです(その方が切れない線になる)。「けいせん」で入力すると縦書き変換が出来ないので紙媒体だと怒られますが、そんなもん一括で置換なんかいくらでも出来るのであんまりナーバスにならないで良いです。というか怒られた事がないので罫線使ってください。それで文句言われたら「縦書きの仕事来たら使うね」で相手はなんも言えなくなると思います。
―― ←正しいダッシュ。ちょっと切れてる。
── ←「けいせん」で入力。間違ってるけどキレイ。
三点リーダーは「・・・」と書いちゃう方が多いですが、正式には「…」これです。これを2つ続けて打つのが正解。そして必ずその後には句点(まる)を打つ。こういう感じです……。入力方法はキーボードの「?」のキーを入力。そのまま変換で大丈夫。あるいは「さんてん」で変換しても大丈夫です。
ダッシュもリーダーも「間」を取るために使います。ダッシュに関しては文中に別の分を入れる場合にも多用します。たとえば「いちご」の説明を途中でしたくなったらこんな感じ。
「オレは生まれ故郷の特産品のいちご──丸くて甘い果物なんだが、それにミルクをかけて食うのが好きだ」
こんな感じ。独白の場合はそこまで気にならないかもしれませんが、特に対話文の場合は間のとり方はめちゃ大切です。ここを無視するとのぺっとしたリズムになっちゃいます。もしICがあるなら実際に聞きながら、間のある部分に「……」を入れていくだけでも違うので、是非チャレンジしてみてください。
というわけで、以上! 今回はインタビューに絡めて、会話文に関するテクニックでした。次回は地の文の説明をちょいと。
13
あしのさんの
共有する
このコラムへのコメント(6 件)
チワッス! 無料です! また書きますねー!
チワッス! すんません、つかっちゃいました! 伊藤先生ならきっと許してくれる……と(希望的観測
チワッス! 参考になれば幸いッス! 次はもうちょっと実践的なのを書きますね!
すごい勉強になります