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転生スロッター・ジャック【第二話】
転生スロッター・ジャック【第二話】
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ポリンキーさん
連れ打ち大好きなラッコ。 コラムも漫画も携帯に指でかいてます。 やさしくしてね! - 投稿日:2018/06/21 01:19
ボーナス終了後、高確ロングっぽい所がまだまだ続き、チャンス目からミッションに入る。
「リプレイリプレイ…。」
ピピピッ
「おっ!…よしここは…。」
狙いどころを変え、赤7付近を狙うと…。
ずるっとバーが上段に滑ってくる。
「お!熱リプ!」
解除の可能性の高い方のリプレイだ。
演出成功でボーナスが確定。
スムーズに中押しでフラグ判別をする。
見事ビッグ。
きっちりとリプレイはずしをこなす。
「2コマはずしなんて余裕だったけど…。この視力だとちょっとミスりそうになるなあ」
ゲームセンターでファイヤードリフトを打ちながらぶつぶつと呟いている少年、古川純一。
「さて、5号機とも向き合わないと…。うわっもうこんな時間か…!母さんに怒られる…。」
ボーナス後、まだクレジットの残った台を名残惜しそうに見つめ、近くにいた青年に「打っていいよ」とメダルごと渡し、純一はゲームセンターを後にした。
12年前突然亡くなった伝説のスロプロ、ジャックポット古川こと古川丈二の葬儀は近親者のみでしめやかに行われた。
弟の三太はもちろん参列したが、三太の嫁、祥子は身重のため葬儀には来なかった。
もともとギャンブルの類いが祥子は嫌いだったため、三太は兄と会う機会を祥子に与えてこなかった。
疎遠になっていた三太のもとに突然の訃報が入り、丈二が何をしている人だったのかが祥子に初めて明かされた。
その後生まれた純一には、真面目で社会に出ても困らない人間になってもらいたい思いがあったのだろう、祥子は教育熱心な母親になっていった。
純一も素直に育ち、一生懸命勉強に励んだ。放課後は人並みに外で遊んだりもしたが、同年代の小学生と比べると視力が悪くなるほど勉強に費やした時間は多い。
ただ、成績はいたって普通。いや、中の下といってもいい。
それでも一生懸命勉強する純一の姿を祥子は嬉しそうに見守り、またそんな母親に応援されて勉強するのが純一は楽しかった。
墓参りに行ったあの日。
ファイヤードリフトに触れた瞬間、純一の脳内にはものすごいスピードで一人の男の人生、その記憶が溢れてきた。
それは他人の記憶が映し出されている、というものではなく「思い出した」と自分自身が思う感覚であった。
間違いなく、自分は「古川丈二」だった。
あの日、三度目の優勝をした日。
ダージンと飲みに行ったところで古川丈二としての記憶は途絶えている。
そして古川純一としての12年間の記憶も変わらず残っている。
確かに自分を12年間優しく育ててくれた父は、そういえば自分の弟じゃないか。そうだ。なぜ忘れていたんだ。
母親である祥子…。うん。たしかそんな名前の人と弟は結婚してたと聞いたような…。
これは夢かもしれない、例えそうだとしても丈二はこう考えるしかなかった。
俺は死んで、弟の子供に生まれ変わったのだ。
この12年でインターネット、携帯、あらゆる情報媒体はかなりの進化をとげている。それはこの12年間の純一としての記憶が知っている。
勉強に使う名目でわずかな時間さわれるネットを通じ、自分の死にざま、その後の業界、5号機についての情報はある程度手に入れた。
今まで通り小学生として学校にも毎日通う。
大人が子供のふりをしてるわけではなく、純一として生きてきた記憶も自分自身の記憶としてあるので、なんら無理せず小学生もやれている。
一つ、違うことと言えば、丈二の記憶がある以上、小学校の勉強などおちゃのこさいさいになったことだろうか。
純一は突如学校1の成績になった。
喜んでいる母親を欺くのは簡単だった。
放課後、図書館で勉強するふりをしてパチスロのあるゲームセンターに入り浸っていた。
この先自分がどうなっていくのかということよりも、今はただ体がパチスロを打ちたがっているのだ。
そして自分の死後登場したあらゆる台に興味がある。
「規制が入ってダメになるなんて話もあったが…。なんだよ。やっぱり面白いじゃねえかパチスロ。」
ジャックポット古川として人の目に晒されながら打っていない頃、一人のプロ古川丈二として孤独に打っていた頃のことを思い出しながら黙々と打つ日が続いた。
「…あいつら元気かなぁ…。」
ふと昔の仲間たちの事なども思い出したりしたが、あえて調べたりはしてなかった。
どのみちこの姿では会えない。
昔を懐かしむ気持ちよりも、打ったことのない様々な5号機を打ちたい欲求のほうが強く、もどかしい気持ちを抱えながらショッピングモールに通う日々が続いた。
「今日もガセネタ掴まされたなあ…。」
フラフラとけして身なりが綺麗とは言えない男がベンチに腰掛けながら、ため息をつく。
薬局で買ったシリーズの中では一番プライスの安い栄養ドリンクをちびちび飲みながら、親子連れでにぎわう夕方のショッピングモール内を眺めていた。
「パチスロする金もないなあ。」
男は目的もなく歩いてみたが、ふとゲームセンターの前で立ち止まる。
パチスロコーナーを見つけたのだ。
暇潰しに…。と奥に2台ある大花火の空いている方に腰かけた。
100円で30クレジット。
どうせ遊びでやるなら今置いてない台のほうがいい。
だって、現役の機種で出しちゃったら悔しいじゃないか。
そんなことを考えながら、記憶を頼りに大花火をうち始める。
ハズシが昔は苦手で…って今も出来る気しねえけどな…。と毎ゲーム適当押しをしていた。
「あっ」
男の手がとまる。
声を出したのは隣で同じく大花火を打つ少年だ。
「…なにかな?」
男は少年に無表情で話しかけた。
「それ、入ってるぜ。」
なんだその言葉使いは!っていう気持ちより先に「入ってる?」という言葉が口をついて出た。
うなずく少年から台に目線を写し、ボーナスを狙うと…。本当に揃った。
少年は男の方を見ずに、自分の台のビッグを消化しながら、うんうん、と頷いた。
少年は2回のJACゲームを終え、リプレイはずしを行っていた。
きっちりと。
余裕で。
ビタ押しを。
かなりの早さで。
男は自分のボーナスを消化するのも忘れ、少年の美技に見とれていた。
残り4ゲーム。
少年は…リプレイはずしをした。
「え?!おい!ちょっ…。」
パンクしちまうぞ?と心の中で思いながら、だまって見守っていた。
最終ゲーム。
レバーを叩くと、鉢巻きリールが示したのはJACイン。
「おおお!すげーな!」
男は素直に声をあげた。
「ははは!俺には見えてんだよ!」
うっかり昔の決め台詞をいってしまい、少年、古川純一は我にかえった。
(やっべ。完全に今自分が小学生なの忘れてた…。)
「すげーな。まるでJPFみたいだわ…ってさすがに知らねえか。」
男が言う。
(ひー!!知ってたー!!なんかちょっと恥ずかしー!!)
怪しまれてはいないようだが、あわてて純一は取り繕うように話し始めた。
「ま、まあゲーセンだからギリギリまでやってみただけで、ホールだったら絶対やらな…やりませんよ。」
「ホールって…。もうこんな台ねえし、お前まだ入れないだろ。おかしなこという奴だなあ。」
完全にやぶへびである。
こうなったらややこしいことにならないうちに逃げるしかない。
「あ、おじさん。もう僕帰るんで、メダルあげます。さようなら。」
ペコリと頭を下げ、椅子からおりる。
「あー、ちょっとちょっと。ホール…は無理だけど、パチスロ好きなら今度面白いとこ紹介してあげるから。一応これ、名刺な。」
男から差し出された名刺を奪いとるようにもらい、再度頭をさげて純一は小走りで去っていった。
「…あの小学生…。いったい何者だよ…。面白いなぁ…。ていうか…。あやしいなぁ。」
男は自分の台も、貰ったメダルもそのままにして携帯をいじりながらその場から立ち去った。
「はぁはぁ。」
ある程度早足で進み、ショッピングモールから離れたところで純一は一息ついた。
「ちょっと…。気を付けないとな…。しかしあいつはなんなんだろう…。」
貰った名刺を見てみると「フリージャーナリスト:堀木ラッコ」と書いてあった。
「あやしいなぁ…。」
つづく。
9
ポリンキーさんの
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このコラムへのコメント(4 件)
一応ラストまで考えてるんですが、すでに書いてるうちに色々変わってます!
時間あるときに書いていきます!
ネタバレすると最終回までラッコは死にません(笑)言っちゃう
この先の展開がますます楽しみです!
フリーライターとかジャーナリストって
だいたい真実が明らかになる後半に…
おや誰かきたようだ