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あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~
2015.10.30
あのときオレはクズだった 第40回 ~第2部ガイド~
田中(クズプロ田中→クズ田中→田中) あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~
迷い込んだ迷路の出口は、予想もしていなかった世界へとつながって……
とんでもなく面白いのに世間的な評価が鬼のように低いパチンコのアカギをしばらくは狂ったように打っていたのだけど、新陳代謝の激しいこの業界。人気のない台がいつまでも設置され続ける道理はないわけで、気がつけば徐々にアカギは減台されてシマの隅に追いやられて行き、釘も、見るも無残な姿に変わっていった。
いくら好きでも、会うたびにお金を持っていかれてはやがて気持ちも冷めるもの。そんなこともあって半年弱の逢瀬は終わりを告げ、気がつけば2009年もなかば。正直、特に熱中できるパチスロもなかったので、スロは打たずにパチンコばかり打っては負けるというライトユーザー丸出しの生活を送っていた。そして、この頃から、ライターの仕事というのが文章を書くことだけではなく、徐々に映像系の仕事が増えていくようになった。雑誌は読まないけれど映像は見るという人も増えていき、映像仕事の重要性が高まっていったわけだ。
この時代はまだそこまで主流ではなかったものの、これくらいから雑誌にぽつぽつと映像特典がつくようになり、そこには当然、その雑誌のライターが出演することになる。自分も呼ばれればこういう映像仕事にもたまに出させて頂いてはいたのだけど、やってみてすぐに、はっきりとこう感じた。
オレ、映像仕事、向いてない……。
そもそも、自分はパチスロを打っているときも、あまりパチスロそのもののことは考えていない。今日はどこに飲みに行こうかなあとか、5万勝ったら風俗行こうかなあとか、そんなことしかほとんど考えてないし、だいたい根暗で非社交的だからライター業を好んでいたわけで、カメラを向けられても、特に話したいことがないのである。それでも、なにか気の効いたことを言わなければいけないというのが、自分の中でプレッシャーであり苦痛になっていった。
恐らくは今後、さらに映像仕事の比重が増えていくことになるんだろうが、この流れは自分にとってけして好ましくない。これから先、自分はこうなっていくのだろうなと、ひそかにシミュレーションしてみた。
映像仕事の得意な人が人気者になっていく→人気があるからイベント仕事にも呼ばれるようになって、収入もばんばん増えていく。対して、自分のような人間は映像仕事でパッとしないのでいつまでもくすぶっている→もう映像仕事はやらなくていいやと仕事を断るようになる→あいつ仕事選ぶのかよと編集部の評価が下がって、それが文章仕事の依頼減少にもつながる→食えなくなる→孤独死する。
他人は他人。自分は自分。別にどうだっていいじゃないかとも思うのだけど、やっぱり自分が食えなくなっていくなかで、周りの人間がどんどん稼いでいるのを見るのはみじめなもの。そんな気持ちになるくらいなら、どうせ孤独死するくらいなら、いっそ別の仕事をしたほうがいいんじゃないだろうか……。
時代の流れについていけない人間は、いつだって淘汰されるものである。4号機から5号機の移行に対応できなかった多くのスロプロが廃業していったように、映像仕事に対応できないライターは消えゆくのみ。そんなことばかり考えるようになり、この頃から自分は、心のどこかで常に、この業界を辞める理由を探すようになっていった(この自分の心の動きを察知していた唯一の人が木村魚拓さんなのだけど、その話はまた今度)。
だけども、じゃあいったいこの業界を辞めてなにをやるのか。ギャンブルと酒のゴリ押しで人生ここまでやってきたわけで、これといってやりたいことなんてないし、得意なこともない。そんなときに、何の気なしに購入した本に、こんなことが書いてあった。
NPO法人というのは、圧倒的に若い人材が不足している。日本に3万以上あるNPO法人のなかで健全な運営ができているのは数えるほどで、ほとんどの法人は同じ問題意識を持った人が別で自分の仕事をやりながら手弁当で、つまり自分の財布から活動資金を持ちだして、それでなんとか運営しているようなところばかりである。
これを見て、興味を持った。当時28、29歳くらいの自分が若いかどうかはわからないが、「圧倒的に若い人材が不足している難しい業界」というところに惹かれた。
正直言って、NPO法人というものがなんなのかすらそれまで知らなかったし、ボランティアとか社会貢献だとか、そういった類のことになんて興味がなかった。いや、それどころか、そんなことをしている人間をバカじゃないかとすら思っていたわけだが、世知辛い東京砂漠でこれまで消耗してきた人生。これからは誰かのためになにかをやってみるのも悪くないなと、ふとそう思った。
そもそも自分のようなクズは、普通ならゴミのような人生を過ごすはずなのに、この業界に入って多くの先輩にかわいがってもらい、ライターとしてメシを食えるようにしてもらった。そういった周りの力がなければなにもできなかったわけで、だったら自分がたくさんの人から頂いたものを、今度は自分が誰かにおすそ分けしていかないと、罰が当たるってものである。よし、決めた。オレ、ボランティアやっていこう。
思い込んだらそれしか見えなくなる単純な性格は十分に自覚しているが、まさかこんな展開になろうとは、当の本人でさえ思っていなかった。だけど、ある意味で頑固な自分はこれ以降、NPO法人関連の本を買い漁って、読みふけるようになる。そして、とある旅行をきっかけに、ついに約10年お世話になったパチスロ必勝ガイドを旅立つことになるのだった。
あのとき打っていた 「怪盗天使ツインエンジェル2」 |
【メーカー】サミー 【販売年月日】2009年3月 【タイプ】ノーマル+RT
2009年はフジテレビNEXTというCS番組の制作に裏方として携わらせてもらった時期で、テレビに出るだけでなく、作ることの難しさ、大変さを経験させてもらった。いろんな機種、いろんなライターさんにスポットをあてた番組作りだったのだけど、印象に残っているのが、パチスロ攻略マガジンの「からマヨ」くんが打った『快盗天使ツインエンジェル2』の回で、ああ、こういう良いキャラの方がテレビに出るべきだなあと、そう感じさせられた。スポットを浴びる側ではなく、誰かにあてる側のほうが自分は性にあっているなあと、NPO活動に興味をもつ、ひとつのきっかけになった出来事……かもしれない。
クズの成績表:★☆☆☆☆(クズ要素皆無) |
いつか来る、いつか来るとは思ってましたが、「ライター→NPO転換期」のお話がやってきましたね。この流れにクズ要素は入り込む余地はないでしょうなぁ。
今回もクズ要素がないばかりか「だったら自分がたくさんの人から頂いたものを、今度は自分が誰かにおすそ分けしていかないと、罰が当たるってものである」とか言い出す始末ですからね。
おい!ナガブチと呼ばれて、パンストを買いに行かされていた時代を思い出せ!
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- 田中(クズプロ田中→クズ田中→田中)
- 代表作:あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~
パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。
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