あのときオレはクズだった　第39回　~第2部ガイド~

田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

三刀流生活の負担が体に重くのしかかった結果……

　ボートレースと原稿で得たお金をフィリピンパブとチャイニーズパブの飲み代に変換する、ひとり等価交換運動をぐいぐい推進していた2008年当時。足立区の自宅と西日暮里のパブを往復するだけの堕落した日々を過ごしていたわけだが、夏が過ぎて肌寒くなってきた10月。出雲に神様が集結するため各地に神様がいなくなるといわれる神無月に、その後の生活を一変させる、神のようなマシンがひっそりと導入された。

　その機種の名前は、『CR闘牌伝説アカギ～闇に舞い降りた天才～狂気編』。

　もともと福本漫画は好きだったのだけど、麻雀はよくわからないし、アカギに特別、強い思い入れがあったわけでもない。最初は、大当り中のマキシマムザホルモンの曲を聴きたいだとか、そんな理由でみんなで連れ打ちをしただけだったのだが、2回、3回と打っていくうちに、気がつけばこの機種の虜になっていた。

　疑似3が発生して、保留玉の色が変わって、群予告が発生して最強リーチに行っても、最後のカットインが青というだけであっさりとハズれるクソったれな機種にうんざりしていたこの時期。安い予告の安いリーチでも、ひっそりと虎柄が出ただけでびっくりするほど簡単に当たってしまうアカギはとにかく新鮮だった。料亭疑似が2連しただけで恐ろしくアツい、そんなアカギのことばかり考えるようになって、11月の半ばからはボートと原稿の二刀流を捨て、ボートと原稿とアカギの三刀流生活が始まったのである。

　世のパチンカーのセンスを疑いたくなる話だが、アカギは世間的にまったく人気がなかった。攻略誌でも1、2回簡単に取り上げられただけであっさりと姿を消してしまったわけだが、そんな中で少ない情報網を駆使して探し出した、アカギ設置の優良店が荻窪にあった。足立区の自宅から荻窪までは、環七を車でかっ飛ばして40分。毎日9時に家を出て、朝の10時から22時半までびっちり稼働。それから40分かけて家に帰ったらその日のボートレースを全レーステレビで確認して就寝。翌日は4時に起きてボートレースのネット投票を事前に済ませ、9時まで全力で原稿を書いて、そのまま荻窪へと向かう。そんな毎日を送っていた。

　MAXタイプのパチンコだったので収支は荒れたが、それでも3.5円交換で千円あたり25回転もあれば、さすがにボーダーを超えていることはわかる。13時から閉店まで出っ放しの55連チャンでの快勝などもあって、1ヶ月で数十万の勝ち金を得るくらいは勝っていた。

　めちゃくちゃ楽しくて、かつお金になるアカギはなんて素晴らしいんだろう。このまま、人生をアカギと心中しよう。自身最高のパチンコに出会えたことで、日増しにそんな気持ちが強くなっていったわけだが、三刀流のハードスケジュールに飲み会も無理やり詰め込んでいたのが悪かったのか、とうとう体に重大なガタがでてしまった。

　その日も同じように早朝のボートの仕込みと原稿を終わらせるために4時に起きようとした。したのだけど、いくら体を起こそうと思っても、体が微動だにしない。金縛りとかそういう類の話ではなく、体がまったく言うことをきかなくなるというのは初めての体験で、正直、死を覚悟した。携帯はリビングに置きっぱなしだし、家にはもちろん誰もいない。このまま誰にも気づかれずにベッドの上で孤独死をするんだと本気で覚悟したが、それから10分に1センチのペースで体をゆっくりと動かしていき、約4時間後にようやく上半身を起こすことに成功した。

　起き上って改めて感じる主な症状は、右半身の強烈な痺れ。となると、まっさきに疑うのは脳梗塞である。とにかく一刻を争う事態ということで、そのまま貞子のように這いながら駐車場まで行き、なんとか車を運転して近所の総合病院に駆け込んだ。

　先生に症状を告げるとやはり脳梗塞の疑いがあるということで脳の検査と採血、そして神経系の反応検査を行い、さらには心音がおかしいというので心臓の検査も実施。長い検査を終えて診察室に入ると、検査結果を見ながら先生がこう言った。

　田中さん、若干心臓の働きが弱いというのは見られましたが、それ以外に大きな問題は見つかりませんでした。原因不明としか言いようがありません。

　とりあえず脳梗塞ではないということでホッとしたが、原因不明というのは、それはそれで怖いというか、すっきりしないものがある。そんなことを考えていたら、先生が別の紙を取り出して渋い顔をした。

　それよりも、お酒はどれくらい飲まれますかな？　今回の件とは直接関係はないと思うんですが、γ-GTP、簡単に言うと肝臓の数値。これ、成人男性の基準値が10～50のところ、田中さんは650もあるんですよね。これはちょっと異常ですよ。もう少し悪化すると、入院する必要があるかと思いますが、いったいどれくらいお酒を飲まれているんでしょうか？

　え～と、この間、マッコリ大会っていうのをやってマッコリを飲んだんですけどね。

　ほー、マッコリですか。

　ええ。そのときは、ひとりで12リットル飲みました。

　なるほど、12リッ……え？　12リットル!?

　お手本のような二度見をした先生は、バカげていると言いながら、カルテに日本語で｢マッコリ12リットル｣と書き込んで、さらにこう言った。

　とにかく、このままでは肝臓への負担が大きく、放っておくと肝炎や肝硬変に進行する可能性がありますから、お酒を控えるようにしてください。とりあえず定期的に検査を行って、数値を見ていきましょう。

　そうですね、わかりました‼

　満面の笑みでそう答えて病院をあとにしたが、それ以来、その病院には行っていない。だって、お酒なんて控えられるはずがないんだもの。

　こうやって問題を先送りにした結果、人は大きな病気にかかってはじめて、後悔というものを実感するのだと思う。行こう、人間ドック‼

あのとき打っていた
「CR蒼穹のファフナー」

【メーカー】SANKYO　【販売年月日】2009年3月　【タイプ】ハネモノ？
アカギを打っていた時期は、浮き沈みは激しいながらもプラスの収支を維持していたのだけど、アカギから遅れること5ヶ月、まったく人気のないアカギを尻目に鳴り物入りでデビューしたのが『CR蒼穹のファフナー』である。68.3分の1と高確率で抽選される液晶上の図柄が揃ったら、電チューが解放。羽に拾われた球が中央にある役物、そのVに入れば大当りという仕様だったわけだが、朝イチから打って12万も遣って、まさかの大当り0回。ただただVに入らない様子を一日中ながめていて、この台を破壊したいと、心からそう思った思い出の1台である。

クズの成績表：★★★★★（私は350）

650はすごいな。尊敬します。私も人間ドッグで350を叩き出して、先生に「常人の7倍くらいですよ!?」としこたま怒られましたが、13倍はさすがの一言。

…あれ？もしかしてγ-GTPってクズ度を示す尺度として使えるんじゃ…。

となると田中氏は常人の13倍クズということになり、私と比べると約1.8倍ほど貴方はクズということになる。割と納得できる結果である。凄い理論かもしれない。

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田中（クズプロ田中→クズ田中→田中）: 代表作：あのときオレはクズだった~田中の回胴回顧録~

パチスロ好きが高じて21歳の時にパチスロ必勝ガイドにてライターデビュー。若手時代は勝ちキャラだったものの徐々にクズっぷりを発揮し、昼はギャンブル、夜は酒をモットーに活動を行う。30歳で思い立ってフィリピンに英語留学へ行き、2012年の2月より世界の子ども支援を行うNPO法人セブンスピリットを設立。フィリピンのセブ島でNPO活動をしながら執筆も行っている。