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オカイ☆サロン
2017.07.08
純情演出モニターJUN① 純情編
ホールにおいて人々は刺激に慣れすぎました。
最初は新鮮な驚きがあったフラッシュするランプや液晶演出、大音量のBGMも今では日常の一つ。そこから生まれる感情も「ああ、このクソうるさい演出も期待値20%ってところか」などという数値上の計算しかありません。
これを受けてメーカーやホール、そして打ち手までもが「今まで以上に、もっと刺激を」と求めた結果、より派手にやかましい演出が誕生し、しかもそれが大人しい機械よりも稼働がよかったりするから始末に負えません。
もはやチキンレースと化した遊技機演出の加熱、衝撃で死人が続出してしまう前に、一旦頭を冷やすべきではないでしょうか。とはいえメーカーやホールの言い分もわかります、大騒ぎして巨大な役物を動かした方が客滞率が高いのであればそりゃあ動かします、商売ですから。
打ち手として、「最近の台はけしからん!」という意見も大切ですが、それを叫んでみたところで変革が起きるのには少し時間が必要かもしれません、ではどうすれば良いのか。
そう、打ち手自身が変われば良いのです。
インパクト志向の台があってもいい、しかしその一方で、ただ派手さを求め続けるのも得策ではないという考えを浸透させましょう。加熱し続けた市場を一旦冷静に見つめ、再びピュアな気持ちで遊技を楽しむ、そうすればまた別の視点で楽しめるホールが帰ってくる、そんな期待を込めてこの話を始めましょう。
――物語は、人一倍ピュアかつ感動屋の男、純(じゅん)を中心に――
ライターとは言っても弱小編集部の雇われであるため、取材に必要なアポ取りや写真なんかも自分で世話をする必要があり、ライティング以外にも幅広く対応する。急に仕事を入れてくる担当にはもうすこし余裕を見て連絡してほしいと言い続けているが、一向に改善される気配がないのが悩みだ。
今日も突然電話が入り、「取材の仕事、4時間後なんだけど行ける?」と悪びれも無く言う担当者に聞こえないようため息をつきつつ、急ぎで指定された繁華街のホールまでやってきた。
情けない声を出して後ろからついてきたのが、編集アルバイトの純。親しい間柄ではないものの、編集部内では何度か会ったことがある。
詳しくは聞かされていないが、なんでも今回の試験に必要な人間ということでお偉いさんから直々の指名らしい。パチンコを初めて2ヶ月、打ち方を知っている程度というシロウト同然の彼に何ができるというんだろうか。
会場は業界でも大手グループの一店舗だった。できるだけ実際の遊技環境に近くということで、営業終了後のホール内でおこなわれるらしい。私自身は入ったことのないホールだったが、機種ラインナップや遊技中の人数を見るとなかなかに活気がある店だと感じられた。
「まだ約束の時間には少し早いか」
「そうですね」
腕時計の針に視線を落としながら純と短く会話する。集合時間は23時だったが、時間は22:40。あと5分ほどでホールは遊技終了時間だ。
喫茶店に入って過ごすほどの時間でもない、傍にあったコンビニで缶コーヒーを2本買って1つを純に渡し、ここで時間まで待つことを伝えた。
ホール看板の横に見えるのは、業態を示す [PACHINCO & SLOT] の文字。
黙っているのもなんなので、どうでもいい話題を純にふってみる。ただ単に思いついたしょうもないオッサンの話だ。
「あー、今でこそけっこう洒落た外装の店も増えたけどな」
「あっハイ」
「昔はネオンでビカビカに彩られた、今思うとちょっと下品で妖しい光に囲まれた店ばかりだったなぁ」
「下品で妖しい、ってなんだか妙な気持ちになりますねぇ」
「下品と言えばそれさ、【パチンコ】って文字のネオンも【パ】の部分だけ電気が切れるなんて話もあったんだ」
「パチンコ、パ……チン、チンコ……」
手垢まみれのパチンコあるある話、今更小学生でも笑うかどうか。そんなことを考えながら甘ったるいコーヒーが入った缶を傾ける。
「ああっ!? ぶぁっ!! げほっ、そんなっ、ちん……ちんこって、もう、いやらしい、ああもうヤダやめてくださいよぉ、あぁー」
隣からの奇声に驚いて目を向けると、純が顔を真っ赤にしてコーヒーを半分くらいこぼしていた。いまどきこの話で笑うヤツがいるのかと思ったが、実際に横にいるこの若者は尋常ではない反応を見せて肩を震わせている。
ああそうか、彼は人一倍敏感だったっけ、なんでもすぐ感動するしオーバーリアクションなんだ。そんな性質だからお偉いさんには気に入られやすいんだったな。
なんとなく彼を同行させた編集部の意図を理解しながら、約束の時間となったホール裏口に向かって歩き始めた。
『演出刺激適正調査試験』
会場で配布された資料の表紙にはそんな文字がおどっていた。
試験開始前にされた説明をまとめると、過激化を続ける遊技機の演出に歯止めをかけるべく、メーカーが協議して一定の「適正である」演出を探るための試験らしい。
なるほど、資料に列挙されているような主要メーカーが一定の基準をつくれば、行き過ぎた刺激を抑えられるし、開発コストの削減にもつながりそうだ。……まぁ、奇抜なアイディアで勝負を仕掛ける中小メーカーへの牽制の意味もあるのかな、などと裏の事情も勘ぐってしまうのは職業病か。
そんなことを考えていると、スーツ姿の司会進行担当が一歩前に出て開始を告げる。
「えー、それでは試験をはじめます、事前に依頼していた各社モニターの方、名前を呼びますので集まってください」
一定のリズムで次々と名前が呼ばれ、簡単に確認された後にパチンコ台前に座っていく。純の名前もすぐに呼ばれた、しかし呼ばれた本人は考え事をしているのか天井に視線を向けながらブツブツ言っている、仕方のないヤツだ。
「純、呼ばれたぞ」
「えっ!? ふあっ、ファイッ! いや、注目されると思うと緊張して……」
純はへこへこしてスイマセンを連呼しながら指定された椅子に座る。「ファイッ!」ってレフェリーじゃあるまいに、まったく、こんな調子でモニターなんてつとまるのか。
とはいえ私も未来のホールをうらなうこの試みは楽しみだ。新しい演出の概念をいち早く体験できるのは、パチンコファンとしても注目したい。
いつの間にかモニターとなった人間からはカラフルなコードが何本も伸びており、頭部には大きなヘルメットのようなものがかぶせられていた。それが心拍数や視線の動きを計測するために必要だということは察することはできたが、「リラックスしていつものように遊技して下さい」はさすがに無理だろうと苦笑する。
「それでは遊技を開始してください」
ほどなくして司会者から発せられたその声と共に、台の前にならんだ人間が一斉にハンドルへ手を伸ばした。
同時にシャッター音が鳴り響き、私も手持ちのカメラで会場全体の様子、台に向かう人間の後ろ姿、ついでに司会担当者も写真に収める。
一通り撮影を終えたと思ったその時だった、
打ち手の列から妙な声。 純だった、早くも驚きの演出が出たのか!?
そう思って近づくと、彼は私の顔を見るなりこう言った。
「ちょ、ちょっと触っただけで、玉が何発も……」
そこかよ!
演出の反応をみる以前の問題に直面した私は頭を抱えた。
なんてことはない単なるハンドルの自動打ち出しに、はじめてサマーキャンプに参加するアメリカ人少年のような興奮ぶりをみせる純、こんな彼からどんなデータを得られるというのだ、全く先が思いやられる。
しかし私はまだ気づいていなかった。天使のように微笑む純が繰り広げる、悪夢のような2時間30分の始まりに。
続く
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- 岡井モノ:ライター兼パチ7編集部員(別館)
- 代表作:オカイ☆サロン
学生時代友人に連れられ、はじめて『ジャグラー』を打って負けたその日、悔しくてなぜか『サバンナパーク』のゲームを買った異端の猛禽。パチ7自由帳において「何か変なヤツがいるな」と思われていたが、何か変なヤツのまま編集部に捕獲されたトリックプレイヤー。日本全国を旅する渡り鳥としての経験を活かしたコラムを、旅情たっぷりに綴るかと思わせながら特にそういうコラムを書いたりはしない。今日も今日とて奇策縦横。
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大田胃散みたいな扱いや!
……いやまてよ、依存性、クスリ……白い粉……いや、ダメ、ゼッタイ。
鬼軍曹のような苛烈さは持ち合わせていない様子であります。
その純とちゃう!
まだ子供が食べてるでしょが!
まさかの連続小説とは。
違う媒体で小説書くだけの実力を
見せてもらおうか!
…ちなみに読み飛ばしてやろうと意気込みましたが、結局最後までノンストップで読みました。
ありがとうオカイ、いい薬です
じゅぅぅぅ~ん!
ほたるw